本の内容
変動相場制のもとでは、公共投資や減税などの財政政策は効きません。
なぜなら、赤字国債の発行による公共投資→長期金利の上昇→円高→輸出減少・輸入増加という形で、公共投資の効果が海外に流出してしまうからです。
ただし、十分に金融緩和がなされていると財政政策が効果を発揮するケースもあります。
財政政策によって生じた円高を金融緩和によって円安にして打ち消すことが可能だからです。
同じ財政政策でも減税のほうがフェアです。
公共投資は特定の業界への利益供与につながりますが、減税はすべての国民に対して公平に行われます。
金融政策の目的が何かといえば、物価を安定させること。
デフレのときには世の中に出回るお金の量を増やし、インフレのときにはそれを減らすことで物価を安定させるのです。
実質金利とは、名目金利から物価上昇率(インフレ率)の予想を差し引いた金利です。
そして、経済に影響を与えるのは、名目金利ではなく実質金利なのです。
実質金利はいくらでも下げられます。
物価上昇率の予想に働きかけるのです。
それを実現するのが量的緩和政策です。
量的緩和政策とは、民間の金融機関が日銀に持っている当座預金残高の量を調整することで金融緩和を行います。
大恐慌は金融政策の失敗によって起こり、そこからの脱出も金融政策がカギだといいます。
名目金利がゼロでも、金融政策でインフレにすれば、実質金利がマイナスになって不況から脱出できる。
お金を持っている人の利息を多少増やすことと、お金を借りてまで事業をしている人がお金を借りやすい状態にしておくことを比較すれば、後者の方が経済に与える影響は大きいのです。
消費者物価は、基本的には世の中に出回るお金の量によって決まる。
国民全体の財布の大きさで消費総量は決まり、財布が大きければ、一般物価は上昇しますし、小さければデフレが続きます。
個別の価格は需要と供給の関係で決まり、値上げと値下げは入り混じりますが、なかなか一般物価は上昇しないのです。
一般論として、二国間で物価上昇に差ができると、低いほうの国は長期的に通貨高になります。
日本の物価上昇率がゼロのままでも、アメリカの物価上昇率が上がればどんどん円高が進みます。
海外の物価が上がったときには、お金を国内から海外にとられ、国内の所得は減ります。
いま物価がどういう状態にあるのか(インフレ、デフレ)を判断するのに3つの指標を見ています。
それは、消費者物価指数、単位労働コスト、GDPデフレーターです。
このうち一番重要視するのがGDPデフレーターになるでしょう。
コアCPIは、CPIから生鮮食品を除いたもので、コアコアCPIは、CPIから酒類を除いた食品とエネルギー価格を除いたものです。
天候に左右されやすい生鮮食品や原油価格の影響を受けるガソリンなどの影響を取り除き、核となる物価を把握しやすくなります。
コアコアをみないと物価の状況はよくわからないんです。
現金需要がきわめて旺盛な状態、現金がジャブジャブ、では、インフレ予想が生じても現金の一部が債券購入にまわり、債券価格を下支えするので金利はなかなか上昇しません。
金融政策と株価は、意外に、しかも強い関係があることがわかります。
為替は、中期的には金利にも反応します。
金利の高い通貨が強くなります。
金利の絶対的水準が高いかどうかより、どういう方向に動くかという方向感が重要です。
埋蔵金とは、外為特会のような特別会計における、超過積立金のことです。
アメリカ国債を買ったときに円高が緩和されますが、いつかは売る必要があります。
売ったときは逆に円高になるわけです。
為替介入の効果が大きかったとしても、結局は効果がたいしてないということになります。
為替の安定、資本移動の自由、金融政策の独立性の三つを同時に達成できない。
面白かったポイント
リーマンショック後に出た本で少し内容が古いですが、金融政策について非常に分かりやすく解説してくれています。
これまでの日銀がいかにダメだったのかがよく分かり、なんてことをしてくれたんだと読んでいて怒りを覚えるほどです。
高橋さんの解説から、黒田さんの政策はやるべきことをやっているということですね。
金融政策で効果が出るにはタイムラグがあるということなので数年後に正しかったどうかの結果がでますね。
金融政策は一般の人にとってはとっつきにくい内容ですが、生活に直結することでもあるのでビジネスマンはもちろんできればみんなが知っておきたい知識ですね。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆
目次
第1章 金融政策とは
第2章 金融政策の理論的根拠
第3章 物価とは―原油高騰で物価は上がるのか?
第4章 インフレ目標
第5章 金融政策と株価の関係
第6章 金融政策と為替
エピローグ 世界同時不況にどう立ち向かうか