内容
問いに答えるためには、以下の5つのアウトプットが必要だ。
- 業務・課題仮説・施策仮説一覧
- 現状のビジネスプロセス図
- DX後のビジネスプロセス図
- 施策仮説による工数削減幅
- 施策仮説の優先度一覧
業務の把握
この後の検討をスピードアップするために、詳細や具体的な内容は、各ビジネス部門から業務の内容を簡単に説明した資料をもらって、事前に読み込んでおく。
新入社員になったつもりで、最新版の業界本をもう一度読み直すことも有用だ。
詳細検討時には、業務で使っているシステムの固有名詞が多く出てくる。
話についていけるように、IT部門から社内システム一覧をもらい、主要なシステム名と内容は押さえておく。
各施策の優先度検討
施策全体のインパクトは、施策により各工数がどれくらい下がりそうかを、ざっくりと計算して合計し、「施策仮説による工数削減幅」として定量化する。
また、各施策を多面的な観点から評価し、「施策仮説の優先度一覧」を作成する。
そのうえで、優先度の高い施策から詳細検討・実行するものを選び、責任者を割り当てる。
この段階は、詳細な検討をしていたらキリがなく、施策はやってみないと分からない部分も多い。
議論を長引かせず、不明瞭な部分は仮定を置いて、数週間で優先施策を決めきることが重要だ。
課題仮説
各業務のうち、該当するものには、課題仮説と施策仮説も記載する。
課題仮説の例は、以下のようなものだ。
- 工数がかかる
- 業務の重複がある
- 手戻りが発生しやすい
- 必要なインプットが足りていない
- 必要なインプットを安定して取得できていない
- アウトプットの品質がバラつく
- アウトプットの精度が低い
施策仮説
課題仮説を記載したら、課題解決のための施策仮説を書き出していく。
施策仮説はデジタル化だけとは限らない。
デジタル化であるデータ化・自動化・高度化以外にも、そもそもの業務廃止・プロセス変更も含めて、下記のような問いを発しながら、あるべき姿を模索していく。
- この業務は必要か?
- この業務のやり方を変えられないか?
- どのような情報の流れとするか?
- 集まる情報から業務をどのように改善するか?
施策仮説の種類には、「データ化」「自動化」「高度化」がある。
「自動化」は「システム化」「AI識別」「AI実行」、「高度化」は「見える化」「予測」「最適化」に更に分かれる。
業務に必要なインプットが足りていない、または安定して取得できていない場合、施策種類は「データ化」となる。
データ化は、取得するデータの設計と入力作業の簡素化が肝である。
業務に重複がある、繰り返し作業が多い、工数がかかるものは、「自動化」の検討対象だ。
その上で、業務を明確なルールで記述できるものは「システム化」、明確なルールで記述できず、言語化しにくい人の判断が入っているものは「AI識別」と「AI実行」に分ける。
アウトプットの精度が低い、アウトプットの品質がバラつく、手戻りが発生しやすい業務は、「高度化」の検討対象だ。
そのなかで、意思決定の解像度を上げるため、今まで見えなかった粒度で事象を把握する施策は「見える化」に分類される。
また、今まで勘と経験で行っていた数値や確率(ターゲティング等)の見積りを機械で行う施策は「予測」で、制約がある中でもっとも成果が出る選択肢を見つける施策は「最適化」に分類される。
ヒアリング
1.組織構成
(ア)部門内はどのようなグループに分かれており、それぞれの役割は何か?
(イ)各グループの人数はどれくらいか?
(ウ)仕事を外部人材に発注しているものはあるか?
(エ)仕事を発注している外部人材の人数はどれくらいか?
2.業務
(ア)業務の流れ
①部門内の業務を大きく分けると、どのように流れているのか?
(イ)各業務の内容(それぞれの業務で同じことを聞く)
①業務の前工程 前工程として、どの業務プロセスから渡される、どのようなインプットを使うのか?
‐複数ある場合は、それぞれを把握する
‐前工程にないインプット情報もある場合は、それも把握する
②具体的な業務内容(可能であれば、実際に業務をしているところを、ビデオで撮影する)
各工程は具体的にどのようなものか?
どのインプットから、どのような判断をして、何をアウトプットしているのか?
③業務の後工程
その業務で作成したアウトプットは、後のどの工程で使うのか?
‐複数ある場合は、それぞれを把握する
④業務システム・ツール
どのような業務システムやツールを使っているのか?
‐該当するシステムとツールは、他のどの業務プロセスまでカバーしているものなのか?(他部門含めて)
具体的に、該当するシステムとツールで、どのような作業を行っているのか?
‐どのインプットから、
‐どのような判断をして、
‐何をアウトプットしているのか?
3.課題仮説
(ア)各業務プロセスの中で、投入工数の多いプロセスは何か?
(イ)各業務プロセスの中で、リードタイムが長いプロセスは何か?
(ウ)各業務プロセスの中で、作業が重複しているプロセスはあるか?
(エ)各業務プロセスの中で、人によってアウトプット精度のバラつきが大きいプロセスは何か?
①バラつきが大きい要因は何だと思うか?
(オ)各業務プロセスの中で、手戻りが多いプロセスは何か?
①手戻りが多い要因は何だと思うか?
(カ)前工程のビジネス部門からもらうインプットに、品質のバラつき、受領するタイミング、手戻り等の課題を感じたものはあるか?
(キ)その他にも非効率に感じている点など、業務の課題仮説はあるか?
因果仮説
相関とは、結果として事象が連動することは分かっているが、確かなロジックのつながりは不明なものだ。
相関があっても、実際は把握できていない第 3の理由に基づいていたり、たまたまの結果であったりすることがある。
対して因果とは、確かなロジックにより事象がつながっているものだ。
原因と結果のロジックがあるので、予測やシミュレーションが当たる可能性が高い。
面白かったポイント
DX実装の流れがこの本の大事なところ。
内容は業務改革プロセスに近い。
前半の機械学習と後半のDX実装の事例は初心者にわかりやすい内容。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆
目次
第I部 DX実務担当者が知っておくべき基本
第1章 本書が扱うDXの範囲と定義
第2章 DX実装の流れ
第3章 DX実装に必要なリソース
第4章 機械学習の基本
第II部 DX実装の実務
第5章 ビジネスプロセスの再設計
第6章 見える化の実装
第7章 予測モデルの実装
第8章 部門を横断した統合予測モデルの実装