内容
PMFの定義
顧客のニーズを満たす商品で、正しい市場(潜在的な顧客がたくさんいる市場)にいることをPMF
あなたが製品をつくるスピードと同じスピードで、顧客は製品を買っている、またはあなたがサーバーを追加するのと同じスピードで利用が拡大している。
顧客からのお金があなたの会社の預金口座に積み上がり続けている。
あなたが可能な限りのスピードで営業パーソンとカスタマーサービス担当者を雇っている。
つまり、あなたが顧客からの膨大なリクエストについていけないとき、あなたは PMFに達しているといえる。
それはたいていの場合、製品を維持しながら走り続けるだけで手一杯で、製品に大きな変更を加えることさえできなくなるような状況だ。
PMFが見つかる前は大きな岩を押しながら山を登っている状況だが、 PMFを見つけた後は山頂を越えて大きな岩が転がるのを追いかけている状況である。
PMFシグナル
□顧客からの問い合わせが殺到する
□異様に低い金額で問い合わせや受注が獲得できる
□顧客からの機能要望に商品開発が追いつかない
□サーバーを増強しても、すぐにサーバーが止まってしまう
□事業の成長に採用が追いつかない
□予算を使っても使っても、利益が出てしまう
営業に関するPMFシグナル
□商談から受注までの期間が短い
□受注数が伸びていて、解約も少なく、顧客が満足している
□比較的ジュニアな営業パーソンでも、受注できている
マーケティングに関するPMFシグナル
□低いCPAでリードを獲得できる
□顧客獲得コストが低く、十分な利益が出ている
□プレスリリースを配信したところ大きな反響があった
□顧客が満足しており、事例インタビューを快諾してくれる
□特別な販促活動をやらなくても、噂を聞きつけた顧客からの問い合わせがある
その他のPMFシグナル
□顧客に提供できる価値を明確に説明できる
□競合に比べて選ばれる理由を明確に説明できる
□顧客からの喜びの声が届く
□顧客が他の顧客を紹介してくれる
PMFしていないシグナル
営業に関するPMFしていないシグナル
□商談から受注までの期間が長く、見込み客の検討の熱量が低い
□受注数は伸びているが、解約率が高く、顧客が喜んでいない
□営業研修/トレーニングを行い、営業力を強化しても受注率が上がらない
マーケティングに関するPMFしていないシグナル
□プロモーション予算を投下するとリード数は増えるが、受注につながらない
□顧客獲得コストが高く、受注しても利益が出ない
□プレスリリースを配信しても反響がない
□事例インタビューを依頼できるほど、満足している顧客がいない
その他のPMFしていないシグナル
□顧客に提供できる価値を明確に説明できない
□競合に比べて選ばれる理由を明確に説明できない
□既存顧客などからの紹介が発生していない
□問い合わせが発生していない
PMFがある状態では顧客が増え、売上も上がり、顧客獲得のコストも低く、顧客は喜び、結果として新規事業は目標数値を次々と達成していきます。
スタートアップであれば銀行の残高がどんどん増えていきます。
PMFに失敗する理由
「PMFするまでコードを書くこととユーザーの声を聞くこと以外、なにもするな」とスタートアップの世界ではいわれるように、顧客の声を聞くことと、実際に商品を開発することがPMFに至るための最重要行動です。
一方でPMFを遠ざけてしまう行動としては、以下が挙げられます。
・ミッション、ビジョン、バリューの明文化
・予算作成
・仕組み化
・業務効率化
・組織づくり
・現場への権限委譲
・メディア露出
・プロモーション予算の投下
・営業パーソンの育成
・ブランディングへの投資
・意匠的デザインへの投資
・カンファレンス参加
・飲み会での人脈づくり
社内調整が必要な企業内の新規事業では、次のような事柄も加わるでしょう。
・役員会や投資家向けの資料作成
・資料作成のための度重なるリサーチ
フィットジャーニー
CPF
フィットジャーニーの1つ目のフェーズはCPF(Customer Problem Fit:カスタマープロブレムフィット)です。
想定している課題を顧客が抱えているか、それがどれほど深い課題なのか、競合が存在する場合は競合がこれまで解決できていない課題はなにかを検証するプロセスとそれが検証された状態を指します。
バーニングニーズ(Burning Needs)とよばれる「髪の毛に火が付いていて、すぐに消すことが求められる」ような切迫したニーズや課題を特定できるのが望ましい。
PSF
フィットジャーニーの2つ目のフェーズはPSF(Problem Solution Fit:プロブレムソリューションフィット)です。
CPFで顧客がすぐにでも解決したい課題を特定できたら、次に自分たちが提供する解決策が顧客が求めるものかどうかを検証します。
解決策の提示の仕方としては以下のような方法があります。
・営業資料やランディングページ
・紙芝居や動画
・モックやプロトタイプ
・MVP(Minimum Viable Product:必要最小限の価値を提供できる商品のこと)
SPF
3つ目のフェーズはSPF(Solution Product Fit:ソリューションプロダクトフィット)です。
解決策がプロダクトとして実現可能か、商品が解決策を十分に実現できているかを検証します。
PMF
4つ目のフェーズが本書の主題であるPMF(Product Market Fit:プロダクトマーケットフィット)です。
このフェーズでは、商品が市場で受け入れられるかを検証します。
SPFが確かめられた商品を開発・リリース。
実際に販売活動を行い、商談を獲得できるのか、受注できるのか、そして、商品を利用してもらった顧客が満足してくれるのか、を検証していきます。
このフェーズの目的は事業の成長ではなく、PMFの達成であることを意識しましょう。
GTM
PMFを達成できたら、GTM(Go-to-Market:ゴートゥーマーケット)のフェーズです。
GTMとは、自社の商品をどのような流れで顧客へ届けるかをまとめた戦略のことです。
GTMの指標としては売上や受注数、ユーザー数などの事業の成長とユニットエコノミクスを使いましょう。
売上や受注数、ユーザー数は事業の成長率を表しています。
成長率の目安としては競合他社や類似ビジネスモデルの企業の成長率を調査し、ベンチマークとすると良いでしょう。
たとえば、SaaSの世界では、ARR(Annual Recurring Revenue:年間定期収益)を毎年、Triple(3倍)、Triple(3倍)、Double(2倍)、Double(2倍)、Double(2倍)に成長させていくモデルがあり、その頭文字をとってT2D3とよばれている指標があります。
これが時価総額1,000億円を超えるユニコーン企業になるための指標として使われます。
ユニットエコノミクスは第6章の PMFの測り方で詳しく解説しますが、ここで確かめるべきことは次の 2点です。
・ユニットエコノミクスが合うような単価で商品を販売できるか
・自社商品で設定できる単価に対して、顧客に商品を届けることができる営業やマーケティングチャネルが存在するか
1点目の「ユニットエコノミクスが合うような単価で商品を販売できるか」に関しては、主に次の3つの価格設定の方法で単価を決めていきます。
・顧客価値ベース
・競合他社ベース
・コストベース
Growth
フィットジャーニーの最後がGrowth(グロース)のフェーズです。
GTMのフェーズでユニットエコノミクスが成り立つチャネルを発見できたら、それを拡大再生産していく方法を考えます。
いわゆるスケールのフェーズになり、営業・マーケティングへの投資だけでなく、組織の拡大に伴う採用や育成も視野に入れる必要があります。
バリュープロポジション
1.顧客が望んでいる価値と、自社が提供できる価値を合致させること
2.競合他社が提供できない、自社独自の価値を提供すること
「1.顧客が望んでいる価値と、自社が提供できる価値を合致させること」がないと、そもそも顧客に検討してもらうことができません。
また、「2.競合他社が提供できない、自社独自の価値を提供すること」がないと、競合他社と比較されて価格競争になったり、受注率が低くなったりしてしまいます。
誰が事業を立ち上げるべきか
そもそも起業や企業内の新規事業は誰が担うと成功率が高まるのでしょうか。
起業の成功条件に関する研究を紹介している『〈起業〉という幻想』(スコット・A・シェーン著、白水社、2017)によると以下のように整理されています。
・大学(できれば大学院)を卒業し
・ビジネスの経験が10年程度あり
・できればマネジメント経験もある人が
・その人が経験がある産業で
・成長や利益獲得を目的に創業し
・ビジネスプランを策定して
・マーケティングプランも策定し
・価格競争ではなく品質で勝負する事業で
・むやみに多角化せず
・資本金を多く確保し
・資金繰りに注意を払いながら経営する
身も蓋もない項目が並びますが、この中では「ビジネスの経験が10年程度あり」「その人が経験がある産業で」という項目がポイントです。
Google Ventures(現GV)のアナリストによると、VCから出資を受けた起業家が成功する確率は15%になり、一度失敗して再起したときの成功確率は16%で、一度成功して二度目の起業をした場合の成功率は29%になるとのことです(出典:https:// www. fastcompany. com/ 1826876/ googles-creative-destruction)。
これは成功した起業家は事業立ち上げのやり方に対する解像度が上がり、成功確率が高まると捉えることができます。
失敗した起業家は、事業立ち上げでの失敗例やよくある落とし穴は学べても、どうしたらうまくいくかは学ぶことができないのかもしれません。
解像度を高める 16個の方法
- 商品を自分で使ってみる
- 競合商品を使ってみる
- インタビューする
- 顧客を観察する
- 顧客に営業する
- インタビューや商談などの録画視聴会
- アンケートをとる
- ドメインエキスパートを仲間にする
- ペルソナを作成する
- カスタマージャーニーマップを作成する
- 顧客の声の収集
- 受託する
- リリースしてみる
- 経営者などの意思決定者が定期的に顧客と会う
- 解像度向上に責任を持つ人や部署を置く
- 失敗事例も共有する
録画の視聴会
録画の視聴会であれば、人数制限なく、臨場感を持って情報を伝達することができます。
このとき、録画データを共有するだけでなく、時間を取って「視聴会」を開催することが重要です。
録画データを共有するだけでは、録画を見た人、見ていない人が出てしまいますし、視聴に時差があると共通の解像度を持つにも時差が発生してしまい、具体的なアクションにつなげるのが遅れてしまう弊害があります。
請求書受領ソフト「バクラク」などを提供するLayerXでは、録画した商談を視聴しながら、チーム内で話し合いを行っているようです。
たとえば1時間の商談が終わったら、すぐにチームで話し合います。
許可を得て商談を録画していれば、見ながら足りない部分を話し合います。
このサイクルをいかに早く短くするかが重要です。
スタートアップだけでなくデジタル業界の巨人は、いかに顧客からのフィードバックサイクルを短くできるか、マーケティングや機能開発に生かせるかを競い合っています。
私もユーザーとのミーティング録画を、隙間時間を見つけては見直しています。
PMFの測り方
虚栄の指標
虚栄の指標(vanity metrics)とよばれるものです。
他者にとっては一見ポジティブで見栄えが良いものの、実際の成果や成長に対してはほとんど関係がない指標を指します。
以下が代表的な虚栄の指標として挙げられます。
・SNSでの言及数
・プレスリリースの掲載数
・PV数
・アクティブ化や有料化につながっていないユーザー数
・イベント登壇数
・ピッチイベントでの入賞
・資金調達の成功
・資金調達の調達額
・従業員数
遅行指標
遅行指標とは、PMFを測る指標としては有効ですが、事後的にしかわからないものを指します。
とくに事業立ち上げの初期フェーズにおいては、使いづらいかもしれません。
具体的には以下の 3つです。
・リテンションレート
・ユニットエコノミクス
・レベニュー
リテンションレート
リテンションレートとは商品が実際に使い続けられているかどうかを計測する指標で「何日後に何%の顧客が残っているか」を計測します。
toC向け商品なら、1日後、7日後、30日後(28日後)の顧客維持率となります。
toB向け商品なら月次や年次の解約率を使うことが多いでしょう。
ユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスは顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)を顧客獲得コスト(CAC:Customer Acquisition Cost)で割った計算式で求めることができます。
一般的には、ユニットエコノミクス(LTV÷CAC)が3以上だと望ましいとされています。
レベニュー
レベニューとは事業で稼いでいる定期的な収益を指します。
SaaSの世界では「T2D3」といわれるTriple(3倍)、Triple(3倍)、Double(2倍)、Double(2倍)、Double(2倍)でARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)が成長している企業は、時価総額1,000億円以上のスタートアップを指すユニコーンになれるとされています。
遅行指標の特徴
これら3つの遅行指標はどれも有用ですが、一定以上の期間を経ないとわからないというデメリットがあります。
リテンションレートやユニットエコノミクス、レベニューは半年や1年以上、事業を運営し、本当の顧客維持率や継続期間、収益性がわかるまでは仮定の数字を使うしかありません。
先行指標
先行指標は遅行指標と比べて早期にPMFを達成しているかどうかを判断できる指標です。
具体的には次の3つが挙げられます。
・ショーン・エリステスト
・NPS
・エンゲージメント
ショーン・エリステスト
ショーン・エリステスト(Sean Ellis' s test)とは、「このプロダクトが使えなくなったらどう感じるか?」とユーザーに尋ねて、「とても残念」「まあ残念」「あまり残念ではない」「無回答(もうこのプロダクトを使っていない)」の4段階で答えてもらう計測方法です。
「とても残念」の回答が全体の40%を超えたら、PMFしていると判断できます。
NPS
NPS(Net Promoter Score:ネットプロモータースコア)とは、顧客ロイヤルティを測る指標です。
顧客に友人や知人におすすめしたいかどうかを尋ねて、0(まったく思わない)から10(非常にそう思う)の11段階で評価してもらいます。
0~6を「批判者」、7と8を「中立者」、9と10を「推奨者」とし、推奨者から批判者を引いた数をスコアとします。
エンゲージメント
エンゲージメントとは、新規ユーザーが商品の使用を開始後、利用を停止していないか、どの程度、アクティブに利用しているかを分析する方法です。
アクティブに利用している状態の定義は商品カテゴリーごとに異なり、経費精算ソフトの利用ユーザーであれば月に1回程度であろうし、メールアプリであれば毎日、もしくは日に何度も利用していることが重要になります。
先行指標の特徴
先行指標は長くても3か月、短ければ2週間程度で、新規事業がPMFに至っているか否かを計測できます。
たとえば、ショーン・エリステストは「過去2週間以内に2回以上その商品を使ったことがある顧客を対象にすること」が推奨されています。
短いサイクルで自分たちがPMFに近づいているかを確かめることができる有用な指標となるでしょう。
定性的な指標
PMFを達成した商品でよく見られる指標はたとえば、以下のようなものがあります。
・商品ができていないのに契約が取れる
・商品の熱狂的なファンが存在する
・今まで社長しか売れなかった商品が新卒1年目やインターン生でも売れるようになる
一方で、商品をリリースしたものの契約が取れず、熱狂的に喜んでいるファンもおらず、社長や営業部長しか売れない状態は「PMFがない」と判断しても良いでしょう。
著名投資家のマーク・アンドリーセン氏は以下のように語っています。
顧客が製品に価値を感じていない、口コミが広がっていない、利用量がそれほど急速に増えていない、プレスリリースへの反応もイマイチ、「ぼんやり」している、セールスサイクルが長い、案件がなかなか成約しない、といった状況はPMFが起こっていないと判断できる。
PMF後の 4つの成長の方向性
1度PMFを達成したということは「特定の市場で、市場のニーズを満たす商品を提供できた」ことを意味します。
これをふまえて、事業を継続的に成長させていく方向性は大きく次の4つに分けられるでしょう。
①既存セグメントの獲得に注力する
例:営業やマーケティング投資を増やして同セグメントでの新規獲得を強化する
効率の良いチャネルが見つかれば、そこへの追加投資は手堅い成長手段の 1つです。
同じチャネルに集中投資する場合、投資効率自体は徐々に低減していきますが、費用対効果が合う限りは集中投資を行いましょう。
自社のマーケティングコミュニケーションにおける階段の各ステップで顧客が離脱しているポイントを明確にし、離脱を補うコンテンツや接点の創出に注力します。
よくあるのは展示会で獲得したリードに対して、商談を打診する電話を大量にかけてしまうケースです。
商材にもよりますが、情報収集段階が多い展示会来場者に対して電話をしても商談や受注にはつながりにくいでしょう。
この場合、検討タイミングが来るまでメールやインサイドセールスでコミュニケーションを取ったり、事例を紹介するセミナーに誘導したりするなどの階段が重要になります。
展示会の名刺からいきなり受注を目指していては、売れるものも売れません。
②既存セグメントにアップセルする
例:新しい機能を開発し、既存顧客からのアップセルを狙う
アップセルを行う場合、その方法は主に下記の3つがあります。
・価格を改定する
・課金方法を変える(固定課金、従量課金、固定+従量課金など)
・オプション機能をつける
③新しいセグメントに広げる
例:既存顧客はIT業界が中心なので、製造業にも広げる
代表的なセグメントの区切り方を紹介しましょう。
・購入決定者の新しいものに対する感度
・会社規模
・業界
・利用シーン
・地域
④クロスセル商品を開発する
例:既存顧客の人事担当者に採用管理システムだけでなく、採用代行サービスを販売する
PMFトリガー
新規事業にはPMFを達成するにあたって引き金となった出来事があることです。
これを「PMFトリガー」と名付けます。
PMFトリガーとして、以下の7つを見出しました。
1 顧客に向き合う
2 入念なリサーチ
3 受託開発・コンサルティング
4 コンセプト創出
5 ターゲット変更
6 キラー要素の発見
7 市況変化への対応
顧客企業向けに受託開発やコンサルティングを提供した結果、新規事業のアイデアが見つかったり、顧客に提供する商品の精度を上げたりすることができたケースです。
受託開発やコンサルティングは顧客企業と深くつながることができ、その中で顧客の課題や求めている機能、予算感、導入までの意思決定プロセスなどを把握しやすい特徴があります。
単に商品を提供するだけよりも、多くの情報を得ることができるのです。
ソフトウェアの提供だけでなく、オフラインの業務支援までやっていることを聞き、経費申請作業の代行までをサービスに含めたところ、他社よりも高価格で売れるようになったようです。
また、9-9節で紹介するWACULでも、マーケター向けのSaaSを提供している中で顧客がツールを使いこなせない事態に直面。
そこで人がツール活用のサポートを行う、「1か月半に1回のリモートミーティング」を導入したところ解約率が低下し、PMFに近づいたといいます。
事例
NPS
初期から NPSを採用しています。
毎月の計測では回答率が下がる恐れがあり、逆に期間が空きすぎると差分が見えにくいため、今は四半期単位での計測に落ち着いています。
NPSは一般的には競合他社と比較する目的で用いられることが多いのですが、同領域に競合が少ないFLUXでは、前回と比較してどれだけ良くなったかを測る定点観測の意味合いで活用されています。
稟議
多くの企業は採用管理システムの予算を確保しておらず、あったとしても人材獲得フィーのみだということが見えてきました。
そのため市場自体を創造する、つまり「企業の勘定科目を1個追加する」(庄田氏)ためにはどうすれば良いかを考え、実行することになったのです。
PMF
タイミーがPMFを迎えたのはいつ頃だったのでしょうか。
小川氏は「30%の手数料を支払ってでもタイミーを全店舗で導入したいと思ってくれる企業が出てくれた時」がPMFだと考えており、そのタイミングはリリースから3か月後に訪れたといいます。
ユーザーがどのようなペインを抱えていて、自分たちがどのようなソリューションを提供し、それに対する満足度はどうだったのか。
最初はこの3つをひたすら考えれば良いと思っていますし、タイミーでもそこに集中しました。
プロダクトの使い方を説明することがカスタマーサクセスの職務ではない。
それを通じて顧客が自走できる状態をつくった上で、(成功体験を積んだ顧客が)他社に対してまでプロダクトを広めてくれたというところまでがカスタマーサクセスだと思うんです。
その意味で、PMFはカスタマーサクセスをしたのかどうかにも近いと考えています。
オフライン業務支援
単にソフトウェアを提供するだけでなく、顧客が面倒だと感じているオフラインの業務オペレーションを代行することで付加価値を築いていると耳にして、同じようなことができるかもしれないと思ったんです。
(オフラインの業務の代行は)一見大変そうで非効率にも感じるけれど、顧客にとっては大きな課題になっているかもしれないと。
BtoBのSaaSのPMF
BtoBのSaaSのPMFにおいては、以下の4つのプロセスを検証する必要があるといいます。
(1)プロダクトが売れる
(2)売れた相手を特定のセグメントとして抽象化したときに、一定程度の規模があることを確認できる
(3)プロダクトをしっかりと活用してもらったり、顧客に価値を感じたりしてもらえる
(4)それが継続利用や単価アップにつながる
とくにエンタープライズ向けのSaaSのような場合は、プロダクトを売るまではPMFの過程の中の10~15%ほどに過ぎません。
むしろそこから先の方がはるかに長いです。
それを考えるとまずはとことん売ってみるしかなく、「PMFするまでは攻めるべきではない」と難しく捉え過ぎないことも重要だと思います。
見える化
「企業はマーケティングに多額の予算を投資しているものの、それがどれくらい売上につながっているのかがわからない」という課題があることに気がつきました。
この課題に寄り添う形で生まれたのがMAGELLANだったのです。
「広告の事業成果に対するROIを把握して予算配分を最適化したい」
一度必要性を感じていただいていた方には、解約の原因になった部分を改善できれば、もう一度使っていただける可能性がある。
これはBtoBビジネスならではの特徴かもしれませんが、一度エントリーしてくださった顧客はすべてクライアント候補になると考えています。
PMFのポイント
MAGELLANでの実体験も踏まえ、平尾氏が考えるPMFのポイントについて聞きました。
最も大切なのは「答えは顧客にある」ということです。
その上で具体的なポイントとしては3つあります。
1つ目は徹底的に顧客に向き合い、顧客の実態をつかむための体制をつくること。
2つ目が一般的に成功するとされているモデルを鵜吞みにしないこと。
そして3つ目がPMFは終わることがなく、永遠に追い続けるべきものであるということです。
プロダクトとサービスの両面
KARTEはいろいろな使い方ができる分、シンプルなプロダクトではないので、プロダクトだけを提供していてもダメなのだという事実を、改めて突きつけられました。
私たちのプロダクトは、プロダクトとサービスの両面があって成立する。
だからこそ顧客の活用状況をつぶさに見て、丁寧なコミュニケーションを取っていかなければならないと痛感したんです。
ツールに「ここを改善してください」といわれても、多くの人は改善しないんです。
顧客がツールを使いこなせないという課題を解決するため、同社がAIアナリストに追加したのが「1か月半に1回のリモートミーティング」、今でいうカスタマーサクセスが始まった瞬間でした。
月1回にしなかったのは、そうすると利益に見合わなくなってしまうためです。
ミーティングでは、パワーポイントにサイトの画面改善案をまとめて、改善案をより具体的に提案しました。
これにより、顧客企業はやるべきことが明確になると同時に、カスタマーサクセス担当者によって改善施策の実行までしっかりと背中を押されることで成果を出すための行動まで起こすようになり、解約率は落ち着いていきました。
PMF
田部氏が考えるPMFとは「モデルができている状態」のこと。
プロダクトを広めるためにどのぐらいプロモーション予算を投下すれば、どれほどの効果が得られるか、という方程式が見えている状態だといいます。
その方程式が見えていれば、予算を投下すればするほど業績が伸び続ける状況をつくることができます。
プロダクト改善
BtoBプロダクトにおけるラクスルの基本的な考え方は、価値は高いけれど時間のかかることをまずは属人的にやってみて、それをテクノロジーで再現するということです。
継続してプロダクトを使ってもらうために、「企業の意思決定の場で使われているか」、そして「その会社の日常的なルーティン業務に組み込まれているか」を重視し、顧客企業の使用頻度や使用場面を観測しながら、プロダクトを改善していきました。
カスタムプランをやめる
これをやることで、3つ良いことがありました。
1つ目は、オペレーション品質が全体として上がった。
覚える内容が標準オペレーションのみなので、ミス発生率がすごく減る。
2つ目は、オペレーターとして採用できる母数が増えて採用スピードが上がる。
3つ目は、顧客の期待値が適切に調整されるので、クレームやインシデントも減る。
期待値が高い顧客に合わせることができればもちろんベストなんですけど、高い人には高いもの、低い人には低いもの、とやると、安定したいいサービスがつくりにくくなるんですよね。
記事広告
記事広告のコストは1回で100~200万円ほど。
初期のマーケティング施策としては高額だが、結果的には今でもその記事広告から顧客が増えており、「数年にわたる資産」になっているといいます。
ほかにも14日間の無料お試しプランを提供したり、Google、Yahoo!、Facebookといった広告媒体で、顧客の顔写真や実名を含んだ事例バナーを積極的に出稿するといった施策を採りました。
こうした施策が奏功し、新規登録が徐々に増加。
初めはゼロの日もあったのが、半年後には毎日3~5件の契約が取れる状態になりました。
新規顧客が増えるたびに、チームメンバーは1社ずつ手書きで社名を書いて、当月の契約実績をオフィスの壁に貼っていたといいます。
コンサルティングサービス
そのサービスは時給換算で10万円程度で売れていました。
当時、日本で一番高い戦略コンサルタントの時給が15~20万円であるとどこかのブログで読んだ記憶があり、それと同じぐらいだからきっと儲かるだろうと思いました。
面白かったポイント
PMFの教科書というだけあって、よくまとまっている。
特に、フィットジャーニーと指標のまとめは参考になる。
また、事例のまとめは、ベンチャーあるあるが多く学びがある。
この本にも書いているが、失敗の原因は分析できるが、成功の要因は再現性がない。
この本を読んだからPMFできるかどうかは分からないが、この本に書いてあることはやりきる価値があると思う。
要約すると身も蓋もないが、成功するためには経験量を如何に速く獲得するかだと思う。
とにかくスピードが正解。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆
目次
第1章 PMFとはなにか
第2章 新規事業がPMFできずに失敗する理由
第3章 PMFを達成するまでの道のり
第4章 PMF達成の肝となるバリュープロポジション
第5章 PMFを達成しやすい組織をつくる
第6章 PMFの測り方
第7章 PMFした後のさらなるPMFに向けて
第8章 PMFの引き金となるPMFトリガー
第9章 14社から学ぶPMFの実現と事業成長のノウハウ