内容
『孫子』は、始計篇から始まって、作戦、謀攻、軍形、兵勢、虚実、軍争、九変、行軍、地形、九地、火攻、用間の計十三篇で構成されている。
合理的な思考を積み重ねることによって戦争に内在する法則性を取り出すことに成功している。
しかもその考え方はあくまでも柔軟であって、どこにも無理がない。
基本的な前提
- 戦わずして勝つ
- 勝算なきは戦わず
勝利
勝つための必須「五条件」
- 的確な判断力
- 兵力に応じた戦い方
- 共通の目標のもとに、組織としてのしっかりしたまとまりをつくれ
- 万全の態勢を固めて敵の不備につけこむのだ。
- 将軍が有能であって、君主が将軍の指揮権に干渉しないこと
「彼を知り己を知る」
彼我の戦力を分析・検討した上で、勝算があれば戦い、勝算がなければ戦うべきでない。
勝算もなしに、やみくもに戦いを挑むのは、愚策である。
兵力に応じた戦い方を心がける。
つまり、十倍の兵力なら包囲し、五倍の兵力なら攻撃し、二倍の兵力なら分断し、互角の兵力なら勇戦し、劣勢の兵力なら退却し、勝算がなければ戦わない。
兵力の多少はあくまでも相対的な条件にすぎず、こちらは集中し、相手を分散させることができれば、いくらでも逆転に結びつけることができよう。
主導権を握るためには、まず「先手必勝」である。
「人のやらないことをやれ」
人と同じことをやっていたのでは、競争ばかり激しくなって、「労多くして功少なし」という結果に終わってしまう。
人のやっていないことに目を付ければ、成功の確率はグンと高まるにちがいない。
中小企業が生きのびるためには、大企業の手薄な部分、苦手としている分野に着目しなければならない。
そこをねらって集中的に食い込みをはかれば、小なりとはいえ、互角以上の勝負ができるのではないか。
見込み違いの理由
- 調査不足
- 希望的観測
- 思い込み
入手可能なあらゆる情報を総合し、徹底的な検討を加えたとしても、あとは神のみぞ知る、といった不確定な領域はどうしても残る。
人間のやることに完璧はありえない。
神の手にゆだねる領域をできるだけ少なくする努力が必要なのである。
敵の戦力、味方の実力を十分に把握していても、地の利が悪いことに気づかなければ、勝敗の確率は五分五分である。
戦上手は、敵、味方、地形、の三者を十分に把握しているので、行動を起こしてから迷うことがなく、戦いが始まってから苦境に立たされることもない。
やたら猛進することを避け、戦力を集中しながら敵情の把握につとめてこそ、はじめて勝利を収めることができるのである。
無理は長続きしない。
無理をすれば、どこかにボロが出、弱点が生じてくる。
粘り強く戦うためには、できるだけ、無理は避けて余裕のある態勢をつくらなければならない。
気持ちにゆるみが生じるのは、多くは業績が好調なときである。
誰でも苦しい戦いをしているときは、緊張感をみなぎらせて、精いっぱいの頑張りを見せる。
だが、ピンチを脱して業績が上向いてくると、やれ安心と、心に隙が生じてくる。
じつは、そのときが最も危ないといってよい。
臨機応変の運用に強くなるためには、実戦経験を積まなければならない。
実戦のなかで鍛えられることによって、定石以外の知恵が身についていく。
実戦経験以外にマスターする方法は、事例研究であり、先輩の経験に学ぶ姿勢である。
孫権のすすめた本は、
- 『孫子』以下の兵法書
- 『戦国策』以下の歴史書
兵法書には、戦いの原理・原則が書かれている。
しかし、原理・原則を知っても戦いには勝てない。
勝つためには、さらに臨機応変の運用をマスターしなければならない。
そこで必要になるのが、歴史書の勉強である。
歴史書には、負けたケース、勝ったケース、さまざまな事例が紹介されている。
いわば事例研究の宝庫といってよい。
君主
君主と国民を一体にさせるもの、それが道である。
これがありさえすれば、国民は、いかなる危険も恐れず、君主と生死をともにする。
トップ
トップたる者、発言はくれぐれも慎重にしなければならない。
これはトップだけでなく、すべてのリーダーの自戒するところでなければならない。
将軍とは、智、信、仁、勇、厳の五条件を満たす人物でなければならない。
- 智とは、勝算のあるなしを見極める力。
- 信とは、嘘をつかない、約束を守るということだ。
- 仁とは、思いやりである。
- 勇とは、勇気、決断力のことである。
- 厳とは、厳しい態度、信賞必罰をもって部下に臨むということだ。
将たる者は、みずから必死になってはいけない。
総合的な判断と、冷静な態度で対処することを心掛けるべきだ。
名将といわれる人々は、いずれも部下の統率に並々でない神経を使ってきた。
彼らに共通しているのは、「厳」と「仁」の使い分けである。
まず、「厳」すなわち信賞必罰のきびしい態度で臨む。
しかし、「厳」だけでは、命令に従わせることはできるが、心服されるところまではいかない。
そこで必要になるのが「仁」、すなわち思いやりである。
トップと補佐役の関係は、トップが太っ腹であること、補佐役が有能であること、そして両者が深い信頼関係で結ばれていることが理想である。
強い組織
強い組織をつくるカギは
- 数
- 勢
- 形
数とは、指揮命令系統を確立して、しっかりした組織管理を行うことである。
勢とは、流れに勢いがあることで、押せ押せムード。
形とは、有利な態勢をつくれということです。不利な態勢におちいり、相手のペースで戦うことを余儀なくされれば、持てる力を十分に発揮することができない。
以上、統制力、勢い、有利な態勢の三つの要件をつくり出せるかどうかは、組織をあずかるリーダーの手腕にかかっているといってよい。
兵士を死ぬ気で戦わせるには、死地や亡地に投ずることだと「孫子」はいう。
この世の中で、水ほど弱いものはない。
そのくせ、強いものに打ち勝つこと水にまさるものはない。
その理由は、水が弱さに徹しているからだ。
面白かったポイント
戦略本といえば、孫子の兵法です。
経営者やビジネス戦略を立案する担当者なら一度は読んでいると思います。
戦いに勝つための定石は、ビジネスにも通じるところが多いです。
ビジネスは競合と戦うことがメインではありませんが、戦略の立て方、あるべきトップの姿勢、強い組織の作り方は参考になるところが多いです。
- 勝つための定石を頭に入れ
- 情報収集に努め
- 勝てるチャンスが来るまで待つ
- 打てば響く強い組織を作る
ことがポイントだと思います。
このような古典は読むたびに響くところが変わるので、定期的に読み返したいと思います。
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