売買システム入門

投資

『売買システム入門』トゥーシャー・シャンデ

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本の内容

トレーディングシステムデザインの原則

優れたトレーデイング・システムとは、それを実際に使用する人の個性に合ったシステムを指す。

幸運にもそのようなシステムを見つける最も手っ取り早い方法は、トライアル・アンド・テラー(恐怖)のプロセスを経ることである。

 

まず信条を決める

この信条こそが成功のカギを握っているのであり、トレーディング・システムの根幹をなすべきものである。

その信条をもとにトレーデイング・システムを構築していくことができる。

 

たとえば、

  • テクニカル分析だけを基にトレードしたい
  • トレンドに沿ってトレードしたい
  • 必要に応じてできるだけ長く玉を維持したい
  • トレード枚数を変動させたい
  • 値動きに関する自分の分析だけを利用したい
  • 日足データを使って分析したい
  • システムを使ってトレードしたい
  • リスク管理の一貫としてストップオーダーを利用したい

 

トレードシステムの6つの基本原則

プラスの期待収益率

期待収益率 = アベレージトレード

期待収益率 = 純利益÷総トレード数

期待収益率 = (勝率×平均利益)-(1-勝率)×(平均損失)

 

トレード枚数を複数にすることにより、ドローダウンの大きさを変えずに利益を拡大することも可能である。

トレード枚数が一定しているよりも、状況に応じてトレード枚数を変化させる戦略の方がボラテイリテイを縮小できる。

 

目標パフォーマンスを設定し、取引口座に投下できる資金量に応じて、リスク管理を徹底し、マネー・マネジメントを詳細を練り上げ、ポートフォリオを設計することが必要条件となる。

 

リスク管理とは事前に設定してある仕切りルールに乗っ取り、建玉をうまくコントロールする一連のプロセスのことを意味する。

 

マネー・マネジメント・ルールは建玉枚数やポジションに対する許容リスクをどの程度にするかということを定めるルールである。

各トレードに対する許容リスクつまり掛け金は総資金の2%以内にするというのが一般的なルールである。

 

機械化されたシステムを使用することで、トレーディングに関する決定にブレが生じにくくなる。

機械化されたシステムが価格データを分析するプロセスは予測することが可能であり、判断の下し方も一定する。

 

システム作りの原則

 

システムデザインの基礎

マーケットトレンドを判断する

マーケットにトレンドが現れているかどうかを常に正確に判断することができれば、利益を計上できるトレード戦略を立てることは可能である。

 

単純な言葉で表現すると、マーケットは2つの状態に大別できる。

トレンドが現れているか、レンジを形成しているか、の2つの状態である。

 

トレンドが現れている、現れていないマーケットを見極める方法として、ワイルダーのADXを利用することもできる。

ADXが下降していたり、20以下の数値を付けていたり、またこの両方の条件を満たす場合にはマーケットは方向性に欠ける状況にある。

 

トレンドに従うべきか、従わないべきか?

一般的なポジション・トレーダー(片張りトレーダー)にとってトレンドフォローはより良い戦略と言えるだろう。

しかし、手数料が低くスリッページが小さいのであれば、カウンタートレンド戦略も魅力的な戦略となり得る可能性がある。

 

トレードスタイル

 

最適化すべきか、否か?

最適化を行うことで、どんな場合にも多くの恩恵に与かれる可能性を秘めている。

 

システムが利益を上げることが期待できないマーケットの状況というものが分かるようになる。

モデルの背景にある大まかなアイデアについて実証検分を行うことができる。

ストップロスを設定する効果について理解することができる。

 

ストップロス

レンジを形成するような状況では、ストップを大きく設定するので損失が続くことを避けられる。

トレンドが現れている状況では、ストップロスの大きさによって結果を大きく左右されるようなことはない。

このためトレンドが発展しているマーケットではストップを小さく取るのが効果的。

 

理解しておく必要があること

トレーディング・システム構築は後ろ向きに行うものであり、後講釈的なものであることを理解しておく必要がある。

過去のマーケットの動きを知った上でシステムを構築するため、後講釈であるとのとらえ方は正しい。

 

また過去の値動きパターンが全く同じ形で繰り返されるとは限らないということも理解する必要がある。

このため将来の結果を正確に予測することは不可能であり、システムがシミュレーション結果と同じように利益を上げたり損失を被るとは限らない。

 

トレーディング・システムを構成する要素の中ではトレーダー自身が最も予測不可能なものかもしれない。

 

トレーディングシステム開発

65SMA-3CCトレンドフォローシステム

65SMA-3CCは、トレンドの転換を確認するために65日間移動平均線(SMA)より上や下で3日連続引ける(3CC)ことを条件とする単純なトレンドフォローシステムである。

 

移動平均線の65日という日数は、13週 SMA(13×5) に相当し、四半期を意味する。

単純なトレンドフォローシステムの長所は大きなトレンドに沿って仕掛けることが保証されている。

複数のマーケットで利益を上げることに加え、さまざまな時間枠で見ても利益を計上することができる。

 

65SMA-3CCシステムは、強力なトレンドが現れているときに全利益の稼ぎ出すシステムである。

逆に横ばいの動きが続いたりトレンドが現れない状況では、損失が膨らむことになる。

 

勝率は20~50%程度。

トレンドフォローシステムの場合、30~50%という勝率を残すのが一般的である。

 

仕掛け

システムの発するシグナル通りに注文を出し、確実に成立させるためには翌日の寄り付きの成り行き注文で仕掛けるべきである。

 

検証結果

このシンプルで最適化を施していないトレンドフォロー・システムを検証した結果は勇気づけられるものである。

それぞれのマーケットで1枚ずつトレードした結果として138万6747ドルの利益を計上し、23に上る幅広いマーケットのうち19のマーケットで利益を上げることに成功している。

 

たった4%のトレードが巨額な利益をもたらすことを考えると、仕切りの戦略に関しては注意深く決める必要がある。

ここで細心の注意を払わないと、結果的に負けトレードになるようなトレードがもたらす限られた利益を確保することができるかもしれないが、逆に本当に巨額な利益をもたらしてくれるトレードを逃してしまうことになりかねない。

 

ストップロスの有効性

リスク管理の点から考えると、マネーマネジメント・ストップを初期設定することは有効である。

これは最大損失額や最大ドローダウンを縮小させる効果があるためである。

 

フィルターを加えることの効果

  • ダマシのシグナル数が減少する
  • 日中ベースで見た最大ドローダウンを軽減することができる
  • プロフィットファクター(純利益÷純損益)を改善することができる
  • 平均損益が上昇する
  • 勝ちトレードの平均日数が延びる

 

仕掛け

 

チャネル・ブレイクアウト-プルバック・パターン

20日の新高値を付けた後の下落局面で買いポジションを建てる買いシグナルのみのシステムをCB-PBシステムと呼ぶ買いシグナルのみのシステム。

 

仕掛け

  • 当日終値が過去20日間の最高値を上回った場合、大引けで買い
  • 当日終値が過去20日間の最安値を下回った場合、大引けで売り

 

狭い値幅で上下動を繰り返した後に上昇トレンドが現れる。

これは直近20日高値を更新したことで確認できる。

現実には20日高値を更新してからも横ばいの動きが続く可能'性があったり、その後に20日安値を更新してしまうことさえ考えられる。

 

20日高値を更新後、7日以内に新たに5日安値を更新した場合、翌日の寄り付きで買いを仕掛ける。

プルバックシステムは単に上昇トレンドの途中に現れる小さな修正局面のこと。

 

5日間の新安値を付けた時点でその安値が 50日SMA の上に位置している場合は上昇トレンドが続いていると定義する。

下落トレンドの場合は5日間の新高値を付けながら50日SMAの下に位置していることが条件となる。

 

仕切り

仕切りポイントはトレイリング、仕掛けたX日後といったルールに加えて、直近20日高値にストップポイントを設定しておく。

X日は、短期だと5日、中期だと50日を設定する。これらの数値は任意に選択する。

 

過去 20日間の最高値からデイリートレーシングレンジ(当日の高値と安値の差)の10日SMAを3倍した分を差し引いたポイントにトレイリングストップを設定し、買いポジを手仕舞う。

過去 20日間の最安値からデイリートレーシングレンジ(当日の高値と安値の差)の10日SMAを3倍した分を加えたポイントにトレイリングストップを設定し、売りポジを手仕舞う。

 

CB-PB戦略は中長期のトレーディング戦略をもちいる場合の方がより大きな利益を期待できる。

 

マネー・マネジメントの概念

破産の確率を1%以下に減らすことがマネー・マネジメントのゴール

 

破産の確率を決める3要素

1.勝率

2.ペイオフ比率(平均損失に対する平均利益の比率)

3.トレーディングに投下する資本の比率

 

1、2はシステムデザイン、3はマネーマネジメントで決まる。

レバレッジを高め、常に2%以上の資金をリスクにさらす理由はほとんどない。

 

破産の確率

 

マネー・マネジメント戦略は1トレード当たり資本投下額を明確にする。

トレード枚数を決める。

 

各ポジションのリスク許容額を総資金の1~2%とするのが一般的なことだと説明した。

これを基に、1枚当たりのリスクが許容リスクよりも小さい場合には、複数枚数をトレードすることも可能である。

 

トレード枚数 = リスク許容額(総資金の1~2%) ÷ 1枚当たりのリスク

 

ポジションサイズ

 

賭け方が資金残高曲線に及ぼす影響

ハーフ・オン・ロス

前回トレードが損失に終わった場合1枚減らし、逆に利益を計上した場合には同じように2枚トレードする。

 

利益の減少率は少ないのに、資金残高曲線の標準偏差が大きく減少した。

「マーケットの魔術師」の中で多くのトレーダーが、損失が続く時はポジションサイズを小さくしていると答えている。

これは、勝ちトレードや負けトレードは連続して起こる可能性が高いということを暗示している。

 

ハーフ・オン・ロス戦略

 

トレーディングシステムの運用

運用するための2つのステップ

1.トレードプランを明確にすること

2.そのトレードプランを実行すること

 

トレードプラン

  • トレードするマーケット
  • トレード枚数
  • 注文方法
  • 仕掛けのルール
  • 仕切りルール
  • リスク管理のルール

 

プランを立てずにトレードすることは絶対に避けるべきである。

長期的な成功を確実にするためには、どんな例外も作らずにシステムのシグナルに従うことである。

例外を作りたいのであれば、それらを書き出し厳密に検証してみるべき。

 

トレードプラン1

トレードプラン2

プランを立てることと、それを実際に実行に移すことは別物。

システム運用の程度を測る優れた方法として、日々日記をつけることが挙げられる。

 

ニュースや政治状況が勃発した出来事に対するマーケットの反応、窓(ギャップ)、値幅の大きさ、判断を下したときに抱いたときに抱いた感情や分析内容をすべて書き記しておく。

感情記録の日記をつけることで、心理面でのデータを得ることができ、トレード追跡能力が完全な形となる。

 

面白かったポイント

裁量取引をやってきた私にとって、ビジネスと同じように投資ルールを作り、検証し、実践し、改善することができるのだと理解できたことが何よりも大きかったと思います。

トレーディングシステムの考え方や構築方法について一通り学ぶことができてとても勉強になりました。

 

仕掛け、仕切り、資金管理、感情コントロールそれぞれで、いろんなためになるアイデアを得ることができるので、トレーディングシステムを構築したい人にとっては必読書になるでしょう。

 

しかし、ボリュームが多くまた、紹介されている7種類のトレーディングシステムのロジックの説明が難解で一回で理解するのは難しいと思います。

これは、実践しながら何度も読み返すことが大事だと思います。

 

私も最初に読んだ時に重要だと思わなかったアイデアが経験を積んでから再読してみると、どうしてもっと早く実践していなかったんだと後悔することがよくあります。

 

アイデアが理解できるくらい投資レベルがアップしたのだと自分に言い聞かせていますが。

また、気づきが得られるのでパフォーマンスが停滞したら読み直したい本ですね。

 

本書で得られたトレーディングシステムの基本原則は厳守です。

  • トレンドに従い、トレンドに沿ってポジションを増やし、利を伸ばし損切りを早く
  • 一定の複数枚数を投入するよりも枚数を変化させる方が最大損失額は小さい
  • 各トレードに対する許容リスクつまり掛け金は総資金の2%以内
  • 同時に複数のマーケットでトレードする場合、相関関係の低いマーケットを対象にする
  • トレーディング日記をつける

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

 

目次

第1章 トレーディング・システムの開発と実行
第2章 トレーディング・システムデザインの原則
第3章 システムデザインの基礎
第4章 トレーディング・システム開発
第5章 トレーディング・システムのバリエーションを構築する
第6章 資金残高曲線分析
第7章 マネーマネジメントの概念
第8章 データスクランブル
第9章 トレーディング面でのシステム

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