ウィルスの経済インパクトは、ヒトとモノが動かないことです。
これによる影響を受ける業種、恩恵を受ける業種について見通しを考えます。
影響を受ける業種
ヒトが動かない影響
連日ニュースで報道されているように、ヒトが動かないことにより直撃する業種は、
- 観光産業(ホテル、航空、レジャー)
- イベント業界
- 小売り(百貨店など)
- 外食
などです。
観光産業
特に、インバウンドの恩恵を受けてきた
- ホテル
- 航空
- 百貨店
などの業界が大ダメージを受けています。
ちなみに、2019年の訪日外国人旅行消費額は4兆8,113億円(前年比+6.5%)で7年連続過去最高を更新しています。
- 中国:1兆7,718億円(36.8%)
- 台湾:5,506億円(11.4%)
- 韓国:4,209億円(8.7%)
- 香港:3,524億円(7.3%)
- 米国:3,247億円(6.7%)
2020年3月5日に中国・韓国からの入国が規制され、3月22日にはアメリカからの入国も規制されています。
また、訪日外国人旅行消費額の構成比をみると、
- 買物代(34.6%)と最も多く
- 宿泊費(29.4%)
- 飲食費(21.6%)
の順で多くなっています。
インバウンド市場は崩壊状態で、需要を見込んでいた小売業や宿泊業、飲食業は大ダメージです。
今のところ、いつ収束するのか、収束してから回復するまでどれくらいかかるのか、見通しがまったく立っていませんが、かなり悲惨な状況です。
旅行代理店である
- HIS
- KNT-CTホールディングス
などは、予約のキャンセルや新規予約の減少から大きく業績を下げています。
ホテルもインバウンドと国内旅行の減少で大打撃です。
春節時期の中国人団体客のキャンセルや出張やイベントの中止を受けて個人旅行を控える動きが業績悪化を招いています。
航空業界は最も悪影響が懸念されます。
- JAL
- ANA
- LCC
は、インバウンドや出張、旅行がなくなり打撃が大きいです。
減便や運休で対応していますが、どこまで持ちこたえられるのか厳しい見通しです。
全日空(ANA)が全社員の3割にあたる約5000人の客室乗務員を数日間、休ませる方針も発表されました。
鉄道も苦戦していますが、一番深刻なのが新幹線です。
イベント中止や出張自粛を受けて、利用者は50%以上減っています。
テーマパークも深刻です。
- ディズニーリゾート
- USJ
などは休園しています。
観光産業は先行きも不透明で、深刻な状態です。
- いつ収束するのか見通しが立たない
- 収束してもヒトの移動が戻るまでに時間がかかる
- オリンピック開催も危ない状況
小売り
中国の長期休暇である春節と武漢市の封鎖が重なり、インバウンドが急減しました。
春節はインバウンド消費が期待できる百貨店にとって重要な商戦期です。
もともと、2019年10月に行われた消費増税によって消費が落ち込んでいた上に、この春節需要を失ったのは大きな痛手です。
- 三越伊勢丹ホールディングス
- 高島屋
などは、大きく売上を減らしています。
百貨店が回復するためには、
- 人の動きが元に戻ること
- 購買意欲が回復すること
を待たなければいけません。
2020年3月19日バーバリー(BURBERRY)がブランドの小売店舗の売上がこの6週間で通常時と比べ40~50%ほど落ち込んだと発表。
ドラッグストアもインバウンド需要を失うことになりますが、マスクや消毒商品の需要が高まり、売上を下支えするでしょう。
家電量販店もインバウンド需要を失います。
注目するべき点は、オリンピックです。
オリンピックが開催される年はテレビがよく売れるのですが、開催される可能性がかなり低くなりました。
外食
外出自粛やイベント中止でマイナスに働いています。
同様に、居酒屋も3月4月の歓送迎会などのイベント見送りが影響するでしょう。
人材
企業業績へのダメージが明確になり、時間差で影響を受けるのは、
- 人材業界
です。
リストラは増え、求人は急激に減少するでしょう。
人材業界は、景気に連動するので、これから厳しい状況になるでしょう。
モノが動かない影響
商社・貿易
モノが動かないことによって、直撃を受けるのは、
- 貿易、輸入業
です。
ただし、物流は止まったわけではなく、買い物はネット通販にシフトしているので大きく落ち込むことはありません。
しかし、工場がストップしてモノが製造できずに、取引が減少するところが出てきています。
メーカー
また、世界的に工場もストップしているので、メーカーもダメージを受けています。
- 自動車
- 家電
- アパレル関係
- 建設
- 住宅
に影響があります。
特に中国の工場が、春節以降2カ月に渡って生産がストップしています。
中国の工場は、世界のメーカーのサプライチェーンに組み込まれているので、大きな影響です。
本来の稼働状況に戻るには、1年以上かかると言われています。
住宅や建設業界も便器やドア、家具などの供給が遅れている、または見通しが立たない状況で、住宅やビル、店舗の建設も遅れています。
今後は、商品不足の問題が現れてくるでしょう。
サービス関連
メーカーの販売に影響を受け、時間差で影響を受けるのは、
- 広告宣伝
- オンラインサービス
- 月額課金サービス
などです。
企業業績へのダメージが明確になり、販売が落ち込むと、真っ先に見直されるのが固定費です。
今期は予算が固まっているので、3月末まで減少が見込まれるものの来季は抜本的に予算の見直しが行われるでしょう。
不況に入ると売上が下がり、費用対効果が見込めない広告宣伝費は真っ先にカットされます。
パフォーマンスが悪い月額課金サービスも見直されるでしょう。
このように、ウィルスでヒトとモノが動かなくなることで、あらゆる業種に影響が広がっています。
恩恵を受ける業種
引きこもり需要
経済全体に大きなダメージがありますが、引きこもりによって需要が高まる業種もあります。
- ネットショップ
- デリバリー
- オンラインスクール
- VOD(ビデオオンデマンド)
- ゲーム
など、ネットで完結するサービスが伸びています。
2020年3月16日にアマゾンは、全米で新たに10万人を採用すると発表しました。
世界的に学校が休校になったため、オンラインスクールが普及しています。
映画は、ネットフリックスやアマゾンプライム、YouTubeの視聴者も増えています。
テレワーク
仕事にもよりますが、自宅でできる仕事はテレワークにシフトしていきます。
- テレビ会議システム
- チャットツール
- オンライン決裁
- ホームオフィス
などのネット関連のサービスです。
テレビ会議システムは、Zoomに注目が集まりました。
株価が暴落している中、Zoomの株価は上昇しました。
Slackやチャットワークなどのチャットワークにも注目が集まっています。
チャットワークでコミュニケーションを取りながら、Zoomで会議をするといった感じです。
日本の企業に残っている無意味なハンコ文化も変化を迎えそうです。
オンライン決裁システムの導入も進むでしょう。
家で仕事をするとなったら、仕事用の机や椅子の需要も増えていくでしょう。
日本の場合は、書斎がない人も多いかもしれません。