内容
起業参謀
スタートアップとして重要なことは、一時の勢いや一過性で勝つだけではなく、長く勝ち続ける仕組みを作ることである。
どんなに優れた起業家でも、スタートアップは1人の力で勝ち続けられるほど甘くはない。
スタートアップが大きく成長するためには、起業家のかたわらでそれを支える存在が欠かせない。
スタートアップを取り巻く環境の多様な転換が描かれたロードマップの中で、特に人材育成が大きな論点となっている。
「第一の柱」のパートにおいて、「スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築」と書かれている。
さらに、そこには「メンターによる支援事業の拡大・横展開」という項目がある。
起業家と起業参謀とは漫才の「ボケ」と「ツッコミ」だと考えている。
起業参謀とは起業家のボケに対するツッコミ役といえる。
このツッコミ役がいなければ、スタートアップがうまく回っていくことはない。
後ほど解説するが、ビジョナリー(先見の明がある人)である起業家/創業者(ボケ)に対して、起業参謀はクリティカルシンキングに基づいて事業の実現可能性を高めていく重要な存在(ツッコミ)であることをご理解いただきたい。
単純に知識や情報を提供するだけなら、人間よりも AIのほうが優秀だろう。
しかし、一見何の関連もなさそうなところを抽象化してつなぎ合わせ、気づきを与えながら腹落ちさせて起業家を動かしていくということは、 AIにはまだ不可能だ。
それこそが起業参謀の役割だ。
起業参謀は広く知見を持つべきだ。
金槌しか手元にないと釘を打つことしかできない。
起業参謀も同様で、もし自分がマーケティング(金槌)の専門性しか持っていなければ、マーケティングに関することしか示唆を出すことができない。
起業参謀に「十徳ナイフ的な知見」があれば、起業家の状況に合わせて、様々な知見/リソースを提供することができる。
マクロ/ミクロの行き来、コンセプト/戦略/戦術など様々な視座を行き来しながら、示唆を提供できる。
起業参謀は、戦略家として着想したりビジョンを掲げたりする力だけでなく、起業家の多様なニーズに応えるために、ヒト、モノ、カネに関する知識・スキルをすべて持ち合わせる必要がある。
起業家と壁打ちして行動の量/質を高めていく役割を担っているのだ。
「優れた起業参謀」がいるかどうかが、事業の成否を決める大きな要因となっている。
必要なのが「②What型」の起業参謀だ。
「What型」は、「Why型」のビジョンを一旦受け止めながらも、対話/傾聴を通じて咀嚼し、フォローしているメンバーが動きやすいように仕組みを作ったり、戦略/戦術に落とし込める。
時として、摩擦を恐れずにWhy型の起業家にとって「耳の痛いこと」をも直言する。
「圧倒的な成果」を上げるために進言し、必要に応じて自ら実行し、「背中」で引っ張っていくリーダーだ。
「ロマン」と「ソロバン」の両方を持つ人材といえる。
私の感覚だが、What型人材は、求められている数に比べて圧倒的に足りていない。
つまり、ビジネスの現場において非常に「貴重な存在」ということだ。
時期尚早の拡大
スタートアップの文脈だと、 PMFしていないにもかかわらず、どんどん、顧客獲得のみに焦点を合わせてしまって、顧客が絶え間なく離脱/解約している状況だ。
これが最もよく見られるのが「ムラがある状況」だ。
これは時期尚早の拡大(Pre-mature Scaling:プレマチュアスケーリング)とも言われる。
まさに「うまいラーメンができる前に、ラーメンをどんどん売ってしまう」というプレマチュアスケーリング(時期尚早の拡大)の事例だ。
これがスタートアップが潰れてしまう最大の理由の1つになっている。
戦略と戦術
「戦略」は「どこで戦うのか」を見極めることであると説明した。
「戦術」は「その選んだ戦場/セグメントでどう勝つのか」を見極めることである。
改めて、「戦略」と「戦術」の違いを以下にまとめる。
戦略・大きな方向性・どこで戦うか?・どうリソースを配分して戦うか?・いかに戦わないか?
戦術・個別の施策・どうやって戦うか?・所与のリソースでどう戦うか?・いかに勝つか?
メンタリング
メンタリングとは、指導する側(メンター)と指導される側(メンティ)が1対1で対話し、成長支援や示唆出しを行うことだ。
メンタリングとは「答えを教える」というスタイルではなく、対話を通じて気づきを与え、「自発的な成長を促す」ことが特徴だ。
メンタリングは、メンターが人生の先輩やロールモデルとして、メンティの課題に対してアドバイスや経験のシェアを行う。
経験や知見をシェアすることで、結果として課題解決のスピードを上げることが可能になる。
コーチングとは、質問や問いかけなどを傾聴することで、対象者の中から答えを導き出すことだ。
アドバイスや経験をシェアすることはしない。
メンタリングとコーチングの大きな違いは、対話の中でのアドバイスの有無である。
ティーチングはその名の通り、先生(ティーチャー)が生徒に授業を行うように経験豊富な人が、経験が浅い人を相手に自分の知見やノウハウを伝える手法である。
したがってティーチングにおけるコミュニケーションのスタイルは、指導者から指導を受ける側への一方通行となる。
ティーチングは指導者側が明確な答えを持っているという前提で行われることが多い。
最終的に起業家が腹落ちして行動するには、「頭での理解」と「腹落ち(=高い納得感)」の両方が必要になる。
それを実現するには、高い論理性と高い共感性が必要になってくる。
最終的に、人はロジカルだけではなく、決して論理的とはいえない「好き」「嫌い」で判断する場合も多い(特に、こだわりの強い起業家にはその傾向が強い)。
この「起業家」は何に動かされるのか、根本の価値観や指向性がどうなっているのかを捉え、提案をしていく必要がある。
コミュニケーション
抽象化して構造化することは、本質的な事業の理解につながる。
一方で、抽象論のみでは、起業家の理解が進まないケースも多い。
そのため、事例などをアップデートし、具体例を提示できるようにする必要がある。
日頃から日本経済新聞やNewsPicks、動画、書籍などから参考になる事例を吸収して、ストックしておこう。
普段からストックして武器となる資料を作成しておくと、インプットからアウトプットのスピードを速めることができる。
具体と抽象の両軸を持つことが大切だ。
好奇心が強い人には、起業参謀を目指すことをおすすめする。
年間で何百人の起業家に対峙しても毎回毎回置かれている状況やビジネスモデルがユニークで、飽きることはない。
事業フェーズも違えば、起業家のタイプも違い、事業領域も異なる。
常に自己研鑽や学習が必要だが、そういったことが好きな人には、天職になるだろう。
起業参謀には、起業家以上に常に学習意欲と知的好奇心を持って、自分の知見や経験の幅を広げたり、深めたりする姿勢は欠かせない。
TAM、SAM、SOM
TAMは、Total Addressable Marketの略称で、「ある事業が獲得できる可能性のある全体の市場規模」を意味している。
「当該対応可能市場」「対応最大可能性市場」とも言い換えられる。
SAMは、Serviceable Available Marketの略称で、「ある事業が獲得しうる最大の市場規模」を指す。
SOMは、Serviceable Obtainable Marketの頭文字であり、「ある事業が実際にアプローチできる顧客の市場規模」の意味である。
極端なことを言えば、起業家が行おうとしていることが、既存の延長線上であれば、あえてリスクを取ったり、資金調達に挑んだりするよりも、既にその問題に着手している会社に入社して行ったほうが早いだろう(リソースも潤沢で効率的だ)。
課題を構造化していく質問リストを紹介する。
- Why?(何でそうなっている?)
- Cause and effect?(因果関係って本当にある?)
- So what?(つまりどういうこと?抽象化すると?)
- What else?(他に理由/代替案がある?)
- Factorized?(因数分解できている?)
- Visualize with Value Chain?(バリューチェーンで表現できる?)
- Quantified?(課題や効果を定量化できている?)
- MECE?(MECE感はあるか?)
- Facts?(事実ベースになっているか?ただ単なる解釈か?)
- Use cases?(事例はある?)
- Solution or Action?(ソリューション/アクション仮説は?)
- Magic Stick?(魔法の杖があればどうしたい?)
- Bias free?(自分の確証バイアスを除外している?)
UX
2005年、ジョブズはチームを集めて宣言する。
UXの要件として以下を挙げる。
- タブレットを作りたい。キーボードもスタイラスペンもなし
- 入力はスクリーンを直接指でタッチして行う
- 複数の入力を同時に処理できるマルチタッチ機能を持つスクリーンを実装
- デバイスを持ちやすく操作しやすい形状にする
- iPodの機能を踏襲する
5つの不の解消
出会い方の演出を意識するためには「5つの不」を解消する必要があると考えている。
不認知:そのプロダクトについて認知していない(知らない)
不信:そのプロダクトについて信頼がない
不適:そのプロダクトが自分に合っていない
不要:そのプロダクトが自分に必要ない
不急:そのプロダクトを今手に入れる理由がない
顧客がプロダクトやサービスと出会うきっかけは、主に以下の4つがある。
- 広告などをきっかけに知る「有償トリガー」
- アプリストアで特集されたりメディアで露出する「名声トリガー」
- すでに利用している誰かの話を耳にしてサービスを使う「口コミトリガー」
- メールやスマホなどの通知で知る「自己トリガー」
重要なことは、プロダクトとサービスの出会い方を「より自然に」していくことだ。
広告で出会うのではなく、ユーザーが取っつきやすいトピックや共感しやすいトピックから入り、「育成」「啓蒙」するのも有効になる。
マジックモーメント
Twitter(現X)は、10人以上フォローすると利用者の定着率が上がる傾向を発見した。
つまり、Twitterユーザーにとって10人フォローして、自分の画面がフォローしている人たちのツイートで埋まることが、「アハ体験」だったのだ。
しかし、以前のTwitterは、サインアップした後にアカウントをフォローするまでの間に、プロフィールを作る、メイン画面で流れてくるツイートを見るなど、ユーザーがやるべき工程が多く、10人以上のフォローになかなかたどり着かなかった。
最初のサインアップ後のUXを大幅に変えたのだ。
サインアップした直後に、「あなたの趣味は何ですか」と興味のある分野を選択させ、その趣味嗜好に近い人気アカウントのフォローの提案をすることで、一気に10人以上フォローさせることに成功したのだ。
Twitterは広告モデルなので、当然ユーザーが活性して、日々の利用率(DAU:Daily Active User)が上がることが、広告収入につながる。
このアクティベーションプロセスを改善したことが、Twitterの収益の大幅な改善につながったのだ。
ポケモンGOなら最初にモンスターと遭遇したタイミング、出会い系のアプリのTinderならば最初にマッチしたタイミング、Instagramなら最初に投稿して、「いいね!」がついたタイミング、月額制ファッションレンタルがキャッチコピーのエアークローゼットは、商品が自宅に届いて箱を開ける瞬間、まさにオープンボックスした瞬間がマジックモーメントになる。
自分たちのサービス/プロダクトにとってのマジックモーメントは何なのか。
この発見が、大きなUX改善/顧客の定着率向上につながるのだ。
「8.ユーザーにリソースを投資させる」。
これは、ユーザーに関連情報を入力させたり、コンテンツを投稿してもらう、フォローさせることなどを意味する。
これにより、企業と顧客のつながりが強固になりエンゲージメントが高まることにつながる。
マーケティング
マーケティングの価値を一言で表現すると「顧客とプロダクトの最適な出会い方を演出すること」と考えている。
前節でも述べたが、プロダクトの購入に至るまでに「5つの不」を解消する必要があると考えている。
不認知:そのプロダクトについて認知していない(知らない)
不信:そのプロダクトについて信頼がない
不適:そのプロダクトが自分に合っていない
不要:そのプロダクトが自分に必要ない
不急:そのプロダクトを今手に入れる理由がない
ユニットエコノミクスを達成せずに、拡大してしまうことは、ただ単なる「膨張」にしかすぎないことにくれぐれも留意したい。
Section4で示した、顧客獲得に活用するべき施策のモデルを改めてご覧いただきたい。
顧客獲得のプロセスも、いきなり広告を打ち込むのではなく、その前に事例を作ったり、オーガニックな顧客獲得を行うなどの「型」が存在するのだ。
私は、「スケールしないことをしろ」というポール・グレアムの言葉を「ユニットエコノミクスが健全化するまでスケールするな」と解釈している。
逆に言えば、ユニットエコノミクスが健全化したあとでスケールすれば、当然バケツに水(キャッシュ)がたまっていくので、事業がうまくいく確率は高まるということだ。
PMF前や達成時点では、ユニットエコノミクスを達成している(利益が出ている)スタートアップはほぼない。
口コミは一方的に提供される情報ではなく第三者の中立的な視点に立って提供される検証済みの情報だ。
BtoBの場合、口コミや紹介で購買に至るのが実に70%以上と言われている。
カスタマーヘルススコア
カスタマーヘルススコア(CHS)とは、顧客が健全に製品やサービスを利用しているか、顧客が満足しているかを示す指標だ。
Deployment:ユーザーは正しく利用開始できているか
Engagement:ステークホルダーとエンゲージできているか
Adoption:製品を広く/深く活用してくれているか
ROI:製品の価値を感じているか(費用対効果があるか)
Deployment:
ユーザーは適切にプロダクトを利用開始できているか
プロダクトやサービス導入直後の顧客が初期設定やオンボーディングをきちんとできているかの指標。
つまり製品が正しく使える状態になっているか、を測るものである。
計測する指標例
購入されているユーザー数に対して、実際にプロダクトがデプロイ(実装)されている数の割合がどの程度か?(高い:80%以上、中高:60%-79%、中:40%-59%、低:39%以下)
チュートリアルの視聴が完了して、自分たちでオペレーションができるオンボーディングが完了している割合がどの程度か?(高い:80%以上、中高:60%-79%、中:40%-59%、低:39%以下)
Engagement:
ステークホルダーのエンゲージメント
ステークホルダーとは、契約いただいている製品やサービスの活用やその更新のために関係を持つべき複数の人のことだ。
オペレーションを実際に行う担当者だけでなく、そのマネジャーや経営陣などのペルソナがいる。
計測する指標例
オペレーションを担当しているユーザーのNPS(ネットプロモータースコア:顧客ロイヤリティを測る指標)が高い状態にあるか?(高い:9.5以上、中高:8.6-9.4、中:7.7-8.5、低:7.6以下)
マネジャーの一定レベル以上の位の方と3ヶ月ごとにビジネスレビューを実施したか?
キーとなるユーザーがイベントに参加しているか?
Adoption:
製品を広く/深く活用してくれているか
ただ単にプロダクトが設置されて使用されているだけでなく、プロダクトが「広く」「深く」活用されているかを検証する。
広さは、カスタマーが製品をフル活用できているか、を見る。
Adoptionを計測する目的は、カスタマーがプロダクトをちゃんと使えているか、を知りたいからだ。
計測する指標例
製品の中で複数機能がある場合、どれくらいの機能数を使ってくれているか?
キーとなる機能を使ってくれているか?
プロダクトの最新バージョンを使っている割合
トレーニングを完了しているユーザー割合
ROI:
製品の価値を感じているか
ここでは顧客が製品やサービスに価値を感じているか、を検証する。
つまり製品に対して、かけた費用(Investment)に対して価値(Return)が出ているかどうかを見ていく。
提供しているツールやログを通じてデータで取れる方法があれば、それらを活用する。
大事なことは、スコアと継続率・解約率が相関しているかどうかである。
スコアが高いにもかかわらず解約していたり、スコアが低いにもかかわらず継続しているようなことがあれば、カスタマーヘルススコアの設定自体が間違っていることになる。
MOAT
①Technology/IP/Engineering(技術力)
②Data/Insight(データ量・データモデル・インサイト)
③Network effect/Business Relationship Asset(ネットワーク効果・取引関係の質・量)
④Brand/Awareness(ブランド価値・認知度)
⑤Culture/Team/CXO(会社の文化・MVV・チーム・経営陣の優秀さ)
⑥Operational Excellence(オペレーショナルエクセレンス・標準化)
⑦Strategy(ストラテジー・戦略性)
フライホイール
ユーザーに対するUX向上が達成できたら、どのようなポジティブな効果があるのかを書いてみる。
メルカリの場合、買い手のUXが向上したら「出品数」が増える、売り手のUXが向上したら「購入数」が増える。
結果として「取引数(売上)」が増える。
また、売上が増えるので、それに伴い「ユーザー獲得のマーケティング予算」「購入者のレビュー数」「アプリの開発予算」も増えていく。
データアセット
出品者のレビューが増えることによるレビューDBの充実
マッチングが増えることによって、購買傾向がわかるマッチングDBが充実
購入者が増えることによる購入者DBの充実
出品者が増えることによる出品者DBの充実
ノウハウ/UX
マーケティング予算が拡充することによるマーケティングノウハウの蓄積
アプリの開発予算が増えることによるより良いUXの提供
ブランディング
マーケティング予算を投下することによりブランディング向上/第一想起の獲得
ライフジャーニー
①これまでの人生で影響力のあったイベントを書き出してみよう
②なぜそれらのイベントに浮き沈みを感じるのか、自分に与えた意味を書いてみよう(意味付け)
情熱:やりたいこと(Want)できること(Can)の掛け合わせ
使命:やりたいこと(Want)必要とされること(Needed)の掛け合わせ
専門性:できること(Can)稼げること(Get Paid)の掛け合わせ
天職:必要とされること(Needed)稼げること(Get Paid)の掛け合わせ
自分をメタ認知し、セルフアウェアネス(自己認識)を高めると自身のことをもっと深く知ることができる。
優れた起業家/ビジネスパーソンになるためには、自分自身のことを深く知る必要がある。
そうすることで、今何が足りていて、何が足りていないのかを見極められるようになり、より質の高い意思決定ができるようになる。
CXO
「スタートアップCXO」は部署/ファンクションをまたいで俯瞰的かつ大局的に事業を把握し、必要なリソースを配分し、かつディレクションする力を持つ人材だ。
優れた起業参謀は、ある意味「優秀な外部CXO」として欠けている視点を補い、事業全体のバランスが歪にならないように指摘していくことが求められる。
KPI
スタートアップの初期段階では、細かすぎるKPIを設定する必要はない。
複雑化させずに、たとえば、AARRRモデル(アーモデル=海賊指標/Acquisition:獲得、Activation:活性化、Retention:継続、Referral:紹介、Revenue:収益)のようなシンプルモデルで追っていけるとよいだろう。
先に進んだ段階においては、顧客のN数が増えるに伴いデータポイントが増えるため、メッシュを細かくして、より解像度の高い施策を打つことも有効になる。
たとえば、SaaSモデルを展開していて、売上がある程度立ってきた段階であれば、カスタマーヘルススコアを活用し、ユーザーのエンゲージメント向上のプロセスを可視化する。
また、オンボーディング完了率を計測して、もし、それが低く、その後のエンゲージメント向上につながらないのならば、対応策を講じる。
AARRRモデル
AARRRモデル(海賊指標)とは、サービスの成長段階を表す5つの言葉の頭文字をつなげたものである。
それぞれ、Acquisition(獲得)、Activation(活性化)、Retention(継続)、Referral(紹介)、Revenue(収益)の5つである。
その成長段階ごとに可視化することで、現在のビジネスステージの確認や、課題の抽出が容易となる。
Acquisition:獲得
ユーザーはどこから獲得されているのか?
Activation:活性化
ユーザーはどれくらい好ましい経験をしているのか?
Retention:継続
ユーザーは継続してサービスを利用しているのか?
Referral:紹介
ユーザーは友人や周りにこのサービスを伝えているのか?
Revenue:収益
全体を通じて、ユーザーの行動は的確にマネタイズされているのか?
この5つの段階に分け、分析する。
実際、顧客の獲得に集中しても、顧客がそのビジネスやサービスで好ましい経験を得られなければ、継続的な利用や紹介、そしてビジネスの収益化に結びつかない。
逆に、いくら素晴らしいサービスを提供しても、顧客が増えなければ、それが実際に経験され、活性化されるまでビジネスが広がるのは難しいといえる。
スタートアップ
スタートアップのゴールは、ラッキーパンチで、人が欲しがるものができる状態を目指すのではない。
顧客の成功に至るまでの道筋を型化/標準化して、その知見を自社の競合優勢性に転換すること。
つまり「仕組みで勝ち続けること」
SmartHRもローンチ間もない頃は、MRRや売上ではなく、NPSや解約率に焦点を合わせた。
そのために、顧客との契約単位を年間契約ではなく、月契約に変えた。
そうすることで当然、毎月解約が発生するが、解約に際して顧客が不満に感じたポイントを学習することにフォーカスしたのだ。
シリーズB期に差しかかったら、上場後も見据えて、新たな新規事業を仕込むことが重要になる。
上場を境に既存事業の拡大がネックとなり、リスクの高い新規事業に対する投資に対して保守的になってしまうケースがある。
そうなってしまうと、上場後に成長の伸び代が減ってしまい、外部環境が変わり、主力事業のプロダクトが陳腐化してしまうと、成長が鈍化してしまうリスクがある。
それを避けるためにも上場前の段階で、今後伸びそうで、かつ自分たちの事業とシナジーが見込めそうな新規事業にリソースを投下していくことが重要だ。
CS
ハイタッチとは、システムやツールを介することなく、顧客の元に行き、直接話したり、サポートすることだ。
使いこなすためにハンズオンや対面、勉強会など一対一に近い状態で手厚くサポートを行うことだ。
ロータッチとは、セミナーや複数名集めた研修会など1対複数で顧客支援することだ。
テックタッチとは、Webサイトのコンテンツや動画などで、直接人を介さない自動化されたデジタルなサポートである。
ストーリーブック
我が社はこんな会社です
- 会社の概要(創業年、資本金、本拠地)
- 事業概要(PMFしたコア事業 +周辺事業)
- 会社の実績(創業からのマイルストーン:ローンチサービス/売上/トラクション/特筆すべきマイルストーン/その年を一言でまとめると)
- 会社のミッション
- 会社のビジョン
- 会社のバリュー(行動方針)
- 会社のメソッド
社長はこんな人です
- 私はこんな人間です
- 社長としての喜びは
- 創業のきっかけは
- 得意なこと
- 苦手なこと
- 趣味
- 出身地
- 家族構成
- 経歴
会社のビジョン
- 会社の目指す未来像
- 会社の3年後、5年後、10年後の姿は
- なぜそのような姿を目指すのか
- その実現のために必要なことは
- これから3年、5年で起きると予想される市場の重要な変化
- 1年後、2年後、3年後の会社の状態ゴールは
会社の魅力
- 仕事の魅力
- 一緒に働く人の魅力
- 業界/領域/市場の魅力
- 環境面の魅力
- その他の魅力
仕事の魅力
- 仕事のどこが魅力か?
- 一緒に働くチームメンバーのどこが魅力か?
- 当社への貢献度の実感をどのように感じるか?
- 社会的な貢献性は?
- 影響範囲、インパクトは?
- 独自性は?
- 新規性は?
- 総じて積める経験は!
面白かったポイント
すばらしいノウハウ集です。
私は起業家より参謀よりなので、この本はめちゃくちゃうなずくところが多い。
起業参謀は知的好奇心旺盛なのが向いているのはその通りだと思う。
そのため、1社に収まるのではなく、複数のクライアントを抱えるコンサルがやりたくなるのだと思う。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆
目次
はじめに なぜ、起業参謀が必要なのか?
第一部 起業参謀の概念、思考法やプロセス編
第1章 起業参謀の価値とは
第2章 最大成果を上げる要諦とプロセス
第3章 起業参謀に必要な5つのケイパビリティ
第二部 起業参謀として活躍するために必要な「5つの眼」のフレームワーク編
第4章 PFMFを目指すための「鳥の眼」を身につけるフレームワーク
第5章 変化し続ける顧客心理を捉えるための「虫の眼」を身につけるフレームワーク
第6章 勝ち続ける仕組みを作るための「魚の眼」を身につけるフレームワーク
第7章 メタ認知力を高めるための「医者の眼」を身につけるフレームワーク
第8章 圧倒的行動量を引き出すための「人(伴走者)の眼」を身につけるフレームワーク
おわりに 起業参謀がスタートアップの道を照らす