本の内容
少し意識的に自分の仕事や近所の商店街などで起こっていることを見るだけで、ウォール街が気がつくよりずっと以前に、すごい銘柄を見つけることができる。
大切なことは、ウォール街が知る前に、消費の最前線にいるあなたが知るチャンスのほうが高いという点である。
慢性的に損をする者と成功者との分かれ目は、知識や下調べとともに性格的な心構えにある場合が多い。
投資家の運命の決め手は、相場や選ぶ銘柄ではなく、投資家自身なのだ。
このつまらない単純な仕事でセブン・オークス社は大儲けし、株主もかなり恩恵を受けた。
こういう、名前だけではわかりそうもない、一見つまらなそうな仕事をしている高収益の会社こそ、私は大好きだ。
株で成功する資質
これが最も重要なポイントである。
資質として出てくるのは、忍耐強さ、自主性、常識、苦痛についての耐久力、こだわりのない自由な思考力、利害に対して超然としていられる強さ、根気、謙虚さ、柔軟性、独自の調査をする意欲、失敗を認める強さ、パニックを無視する力などである。
完全な情報がないなかで決断する能力も大事である。
最後に、自分が持つ変な信念や思い込みを除かなければならない。
はっきりしていることは、株で金儲けをするのに株式市場全体の予測をする必要はないということだ。
投資先
買いに入る最良のシグナルは、気に入った会社を見つけることがすべてである。
よいと思ったら、株を買うのに早すぎるとか遅すぎるなどは関係ない。
もしも、ある製品の好調さを理由にその会社の株に投資しようと考えているのであれば、その製品の成功がどれほどその会社の収益に寄与するのかを調べるのが先決である。
ある会社が特定の商品から利益を受けると期待するならば、その会社の規模が重要な要素になる。
六つの一般的な分類のなかで各企業の株価の動きをとらえることにしよう。
すなわち、低成長株、優良株、急成長株、市況関連株、業績回復株、資産株の六つである。
まず、第一歩として、株がどのカテゴリーに属するか調べるべきだ。
これで少なくともどういうストーリーになるかがわかる。
次にそのストーリーの結末を知るべく、細部を詰めていくのである。
完璧な会社を示す特性
- 面白味のない、または馬鹿げている社名
- 変わり映えのしない業容
- 感心しない業種
- 分離独立した会社
- 機関投資家が保有せず、アナリストがフォローしない会社
- 悪い噂の出ている会社
- 気の滅入る会社
- 無成長産業であること
- ニッチ産業であること
- 買い続けねばならない商品
- テクノロジーを使う側であること
- インサイダーたちが買う株
- 自社株買戻し
私が何より避けたいのは、超人気産業のなかの超人気会社である。
多角化ならぬ多悪化を行なう会社の犯す過ちは、高すぎる買収価格、全く知らない分野の会社の買収、である。
これでは損失は保証されたも同然だ。
忘れてしまいがちなのは、もしその会社の見通しがそんなにものすごいのなら、来年か再来年でも投資するのに遅くないということである。
会社が実績をあげてからでも間に合う。
評価を確立した会社からでも一○倍株はとれるものである。疑わしきは待てだ。
株価が高すぎるかどうかを判断する手っ取り早い方法は、株価のラインと収益のラインを比べてみることである。
ポートフォリオ管理
要は、銘柄数を幾つにするかではなく、それぞれの会社がいかによいのかを調査することが大事で、ケースバイケースということになる。
私の考え方としては、以下のような銘柄をたくさん保有することがベストである。
①自分の得意な分野に関係する銘柄
②あらゆる調査の結果、非常に有望な見通しを発見したとき
通常、私は、10~20%くらいを確実な株に、10~20%を市況関連株に、残りを業績回復株に投資する。
私のファンドは全部で1400銘柄を保有しているが、100銘柄で資金の約半分、200銘柄では約三分の二を占めている。
また全額の1%は、いわば第二群の約500銘柄の株式に投資し、定期的に調べて、後の大量投資に備えている。
高成長株を四社、業績回復株で四社保有し、スリルを緩和させる意味で、ポートフォリオのなかに安定株を二社組み入れるというのもよいだろう。
繰り返しになるが、分別のある買い方を心掛けるべきである。
ある人々は自動的に勝者株価が上がっているものを売り、敗者株価が下がっているものを保有し続けている。
これは咲いている花をむしりとり、雑草に水をやるのと同じことである。
よりよい戦略とは、ストーリーとの関連で株価がどう動いていくかによって、株の組み入れを増やしたり減らしたりして循環させることだと、私は思う。
株価についてよく聞く多くの馬鹿げた(そして危険な)話
- もうこんなに下がったのだから、これより下がりようがない
- 株価が底値にきたら、それとわかるものだ
- こんなに株価が上がってしまって、これ以上の上値などあるはずがない
- わずか三ドル。何を失うというのだろう
- 結局、株価は戻る
- 夜明け前はいつも一番暗い
- 一○ドルに戻ったら売る
- 何を心配することがあろう。保守的な株はあまり値が動くことはないのに
- 何かが起こるには、もう時間がたちすぎている
- 得べかりし利益、なぜ買わなかったのだろう
- これは逃がしてしまったが次は捕まえよう
- 株価は上がったのだから正しかったのだ。下がってしまったから間違っていたのだろう
面白かったポイント
1977年から90年までマゼラン・ファンドの運用を担当。
この間に同ファンドの資産を2000万ドルから140億ドルへ世界最大規模に育て上げ、全米No.1と称される伝説のファンドマネージャー。
1400銘柄も保有しているので、どんな運用方法をしているのかとても期待して読みましたが、意外にもオーソドックスな手法で、バフェットや邱永漢の投資スタンスに近いなという印象です。
巨額の資金を運用するには、この方法しかないのかなと思いました。
ピーター・リンチは、機関投資家より我々のような個人投資家の有利さを分かりやすく説明してくれるので、自信が持てるようになりますね。
理解できる銘柄、ありきたりな銘柄を買うというのは非常に堅実で現実的な印象を持ちます。
「ウォーレン・バフェットは、株式の先物やオプションは違法にすべきだと言っているが、私も賛成である。」
先物オプションを主に売買している者としては、耳が痛い忠告です。
第15章の最終チェックリストは、価値ある内容です。
また、各部の最後にポイントがまとめられているのも、投資アイデアを得るのにとても役に立ちます。
長期の投資家は要チェックです。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆
目次
第1部 投資を始める前に
株式投資家になるまで
ウォール街の矛盾した表現
これはギャンブルなのか?何なのか?
鏡の前のテスト ほか
第2部 有望株の探し方
一〇倍株をねらえ
ついに見つけたぞ!何を?
完璧な株、なんて素晴らしい!
私が避ける株 ほか
第3部 長期的視野
ポートフォリオをつくる
売り買いのベスト・タイミング
株価についてよく聞く多くの馬鹿げた(そして危険な)話
オプション、先物、カラ売り ほか