内容
「成果を出す営業社員を輩出し続ける人材育成の仕組み」
組織として必要な「ビジネス成果」が最初にあり、そのための「育成施策」が企画・実施され、「効果」がどうだったかを検証するというサイクル
育成の本来の目的は何か。
それは「ビジネスの成果」を出すことです。
ならば、組織として求める成果を起点にした育成サイクルを構築し、データを使ってそのサイクルを回していく具体的な流れをつくる必要があります。
育成は研修で終わりなのではなく、ビジネスに直結する継続的・戦略的な取り組みであることをお伝えしたいと思います。
人事白書
「仕事を覚えてもらうための取組み」の調査で一番多かったものは「とにかく実践させ、経験させる」 59. 5%でした。
ちなみに 2番目は「仕事のやり方を実際に見せている」 55. 2%で、より現場での経験を重視した取り組みになっています。
この結果も、トレーニングで学んだだけで身になるわけではなく、実践を通じて学習していく
プログラム
・営業現場向けには、トレーニング、ツール、コンテンツ、コーチングを主に提供・営業マネージャー向けには、データ分析やマネージャーコーチングスキルアップを提供
「トレーニングの内容が明日から使えるかどうか」ということは営業現場にとってはとても重要な点です。
「明日から使えるかどうか」はその企業にマッチした具体例が盛り込まれているかどうかに左右されます。
ハイパフォーマーの使っていた資料や敏腕マネージャーのノウハウであれば是が非でも吸収しようとします。
反復活用は 1人では進めにくいため、第三者からのフィードバックが必要となります。
「主観ではできている」と思っても「第三者から見たらできていない」ということは往々にして起こることで、軌道修正が都度必要となるためです。
イネーブルメントは、
マクロ視点で見ると「これまで部門横断で管理していた育成施策」を統括
ミクロ視点で見た場合、トレーニング、コーチング、営業コンテンツ、営業支援のためのシステムなど「現場ですぐ使える実務的なプログラム」
トレーニングから行動の変化、結果としての成果の達成まで、営業成果に向けて一気通貫した育成の仕組みがイネーブルメントなのです。
・成果までのステップ(社員がイネーブルするステップ)に沿ってイネーブルメントのプログラムの柱が4つある
柱 1:トレーニング
柱 2:コーチング
柱 3:ツール/ナレッジ
柱 4:システム
・育成がスケールする要素は3つある
スケール要素 ①:コンテンツ
スケール要素 ②:マネージャー
スケール要素 ③:システム
営業プロセス管理
〈営業初期フェーズ〉
・保有している案件金額、件数
・新規に創出した案件金額、件数
〈営業中盤フェーズ〉
・案件停滞日数(活動がない案件の日数)
・各フェーズのConversion Rate(次のフェーズに進んだ件数と金額)
・競合に対する勝率
〈営業終盤フェーズ〉
・受注件数、金額
・平均案件金額、件数
・受注までの日数
営業プロセスに即してデータを分析し、必要な対策を打っていくのがイネーブルメントの基本的な動き
インサイドセールス
電話やWebを使って見込み客のニーズを掘り起こして顕在化させるインサイドセールス部門をつくり、組織的に常に案件をつくり続けることによって、営業成果の最大化を図るというものです。
インサイドセールス部門の役割は「案件の発掘」
優秀なインサイドセールスは、会社として追うべき案件かどうかを見極めて営業に見込み客情報を渡します。
MA
システムを使ってマーケティング部門と営業部門の橋渡しを自動化すること(マーケティング・オートメーション、以下 MA)です。
MAを活用することで
・自社に興味があるお客様は誰なのか
・そのお客様は自社の何に興味があるのか
・そのお客様は過去どのくらい自社のホームページを訪れているのか
・そのお客様の温度感はホットなのかコールドなのか
SFA(営業支援システム)、CRM(顧客管理システム)を組み合わせることで、
・誰が/いつ/どんなメールをお客様に送ったのか
・誰が商談を持って行って、どんな活動をしているのか
・最終的に受注に至ったのか失注になったのか
という自社とコンタクトが始まってから受注に至るまでの流れが記録され、部門横断的に社内で情報が共有されます。
営業トレーニング
・本当に追うべき案件かどうかを見極めるための「案件見極めトレーニング」
・潜在ニーズを顕在化させるための「ヒアリングトレーニング」
・初回訪問前に顧客課題を想定するための「仮説立案トレーニング」
・コンサルティング型の提案書をつくれるようにするための「提案書トレーニング」
・複雑なプロジェクトを前進させるための「プロジェクトファシリテーショントレーニング」
・3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社製品)を柱としてコンテンツを提供する
・製品・サービスの理解(インプット)だけでなく、デモやロールプレイ(アウトプット)をセットにしてプログラムを構成する
・製品・サービスを実際に購入した顧客にスピーカーとして来てもらって、勉強会を開く
営業マネージャーには、2つの重要なコーチングスキルが求められます。
1つは、商談を的確に理解してコーチングができること、もう 1つが、営業担当者のスキルレベルに応じたピープルコーチングができることです。
ツール/ナレッジ
サイクルを回すのがツール/ナレッジの提供です。
①横展開すべきツール/ノウハウを収集する
②収集したものをコンテンツ化する
③汎用化/体系化して誰もが使える形で提供する
④利用率や参加率で効果を測る
担当者
イネーブルメントを進めるにあたって、イネーブルメントの担当者は何人くらいが妥当なのでしょうか。
理論的な裏付けがあるわけではありませんが、さまざまな企業のケースを見てきた経験からいうと、支援対象の営業人員の1~3%といったところが目安の数値となります。
新入社員は入社後1カ月間、ほぼ缶詰状態で約20あるオンボーディングプログラムを受けている。
インプット系のプログラムは動画になっており、新入社員が動画を見て学習し、トレーナーがテストで理解度をチェックして、合格しないと次のプログラムに進めない仕組みになっている。
ソリューション系のプログラムは、トレーナーがレクチャー形式で教え、ロールプレイングもかなりの数をこなす。
最後には、営業部長を相手に1時間に及ぶ商談を再現したロールプレイングの試験があり、これに合格しないと現場に出られない。
一発合格の例はまだない。ここでかなり鍛えられる。
機能としては、営業フロントにSales Techを浸透させるための橋渡し役として、
①データ収集・基盤整備、
②データ分析、
③マーケット分析、
④提案ツール企画、
⑤営業フロントコーチング
の5つの機能が求められている。
KPI
現在は、受注率を最も注視している。
パイプラインに変なものが紛れ込んでいないか、ムダのない営業ができているかを見ている。
Data. CampのメンバーのKPIとしては、特別なものはセットしていない。
研修の回数や、用意した資料の枚数の数値は、商談・受注といった営業の成果とつながるものではない。
イネーブルメントチームのKPIは以下のとおりである。
・入社後の立ち上がり早期化……いかに早期に一人前の営業として立ち上がるか?
・営業達成率の向上の中央値……平均値だとハイパフォーマーに引っ張られる可能性があるので、全社的な底上げができているかどうかの指標として見ている。
・案件単価……値引きをしないで複数の商材を提案することは難しいことであり、営業力を強化して一番効果が出るところだ。
・戦略的に売りたい商材を売るためのトレーニングや施策
・退職率の変化
・トレーニング後のアンケートのコメントや満足度
イネーブルメントの取り組み
①イネーブルメントへの取り組みの起点は全てビジネス成果の実現
②イネーブルメント専門組織を設置
③SFAの活用が大前提になっている
④プログラム開発は内製で、実務的なプログラム提供を重視
⑤KPIは各社とも営業成果指標と連動
⑥ラーニングカルチャーを実現
トレンド
海外では今後イネーブルメントのトレンドは、トレーニングやコーチングなどの育成機能だけでなく、Sales Hiring(営業の採用)、Sales Compensation(営業向けの報酬設計・管理)、Sales Operation(営業管理)などの営業支援機能が包括的に含まれてくるといわれています。
面白かったポイント
こういう体系的にまとめられている本は頭が整理されるので読むべき。
要約すると、トレーニングコンテンツを整備して、マネジメントしようということ。
KPIは、トレーニングをやったかどうかではなく、経営数値に紐づけようということですね。
満足感を五段階評価
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