瞬考

ビジネス

『瞬考』山川隆義

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内容

仮説

ありていに言えば、「単に知っているから」仮説が湧くのだ。

知っていることは、すぐに思いつける。

 

仮説構築力の源泉となるのは、インプット。

アナロジーによってメカニズムを発見し、蓄積していくことが重要。

 

瞬考の要諦

「自分自身で鋭い仮説を生み出す」瞬考の要諦をお伝えしておこう。

それは次の6つである。

1求められる仮説とは「相手が知らなくて、かつ、知るべきこと」を捻り出すこと

2仮説構築をするためには、事象が起きたメカニズムを探る必要がある。メカニズム探索では、「歴史の横軸」「業界知識の縦軸」そして、その事象が起きた「背景」を意識する

3導き出した仮説を「メカニズム」として頭の中に格納し、それらをアナロジーで利用する

4事例などのインプット量が仮説を導き出す速度と精度を決める

5「一を聞いて十を知る」人ではなく、「一を聞いて十を調べる」人が仮説を出せるようになる

6あらゆる局面でエクスペリエンス・カーブを意識する

 

7バーチャル知識ネットワークを総動員する

 

メカニズム

プライベートにおいても、ビジネスにおいても、そして社会全体においても、現在起きていることには、過去に行ってきた(起きてきた)ことと何らかの因果関係、すなわち「メカニズム」が存在する。

 

メカニズムはいくつもの構成要素の因果関係によって作り出されており、それを解明できれば、仮説が自然と湧くようになる。

最適な打ち手を講じることも可能となる。

また、解明したメカニズムからの類推で、今後何が起きるかを、見通すことができるようになる。

 

メカニズムの構成要素を大雑把に分けると、次の三つである。

1過去に行ってきた活動の累積

2取り巻く環境(社会、競合、自分の能力)の変化

3現状の打ち手

その結果が、「現在起きていること」である。

 

一を聞いて十を調べる

「一を聞いて十を調べる」を繰り返している人と、そうでない人とでは、時間が経てば相当な差がつくのは当然である。

「一を聞いて十を調べる」習慣があれば、毎回調べた際の知識がコツコツと積み重なっていくことになるが、この積み重ねが累積経験として含蓄されていく。

 

差別化の本質の一つは、累積である。

ワンショットではない。

実際に知識を含蓄した後でないとわからないことだが、長い時間をかけて累積的に積み上がった知識量には、他人は追いつけなくなっているはずだ。

 

インプット量のクリティカル・マスのようなものがあって、それを超えると、あらゆる事象に興味が持てるようになるタイミングがやってくる。

そうなれば、日々接する情報が、脳内で火花を散らすようにつながりを持ち出す。

そういう体感ができれば、心の底から「インプットすることが楽しい」状態になれるはずである。

 

企業情報を頭に入れる

「歴史の横軸」と「業界知識の縦軸」の二軸によるインプットの土台をしっかり作ることができれば、色々なインタビューにも行きやすい。

会社の経営陣が、いつ入社し、どのような役割を経験してきたかを把握するのだ。

経歴を見れば大体のことはわかるが、会社の歴史と経営陣の歴史を照らし合わせることで、どのようなことを体験しているかを押さえておく。

 

資料やPC上に「データがあること」と、「頭に入っていること」は、まったく異なるため、毎日少しずつでいいから、企業情報を頭に入れる。

このインプットは、瞬考の基礎になる情報である。

瞬考ができるようになるために一貫して重要な考え方は、「一を聞いて、一を調べて終わる」のではなく、「一を聞いたら十を調べる」である。

 

米国株決算マン(米国企業決算から見るビジネス最前線)が運営しているnoteを購読させてもらっている。

決算発表ごとに、分析レポートが出され、最新のアメリカ企業のビジネスモデルや収益力が記載されているため、非常に重宝している。

日本の株式については、会社四季報オンラインだけでなくKabutanや東京IPOを始め、多数のサイトが存在するためそこから情報を得ているが、直近の情報は、官報ブログが運営しているnoteを購読させてもらっている。

 

米国株式市場でのIPOは、3D開発プラットフォームのユニティ・ソフトウェアが2・4兆円の時価総額をつけ、クラウドデータプラットフォームのスノーフレークは7・2兆円という大型の上場となった。

スノーフレークにはウォーレン・バフェット氏やセールスフォースのベンチャーキャピタル部門も投資している。

 

基本的に、強いところをより強くするほうが、競争相手をより引き離すことができるわけで、競争劣位を覆すには、凄まじい投資を行うか、フォーカスして新たな特殊な戦略に賭けるしかない。

 

企業サイクル

成長期はワンマンでガンガン引っ張っていけばよいのだが、そのうち競合が出現する。

そうなると優位性構築を行うための差別化が必要になる。

すなわち戦略が必要だ。

 

しかしそのフェーズが終わると優勝劣敗がはっきりしてくるので、効率化を促進することでキャッシュを生み出すフェーズとなる。

その頃には成長も鈍化し、効率化もやり尽くしてしまうことになるので、新たな事業を生み出す必要性が発生する。

そのため、再び創業期のフェーズに入るのだ。

 

神社とファンクラブ

一見、共通点がないように思えるが……。

─お賽銭=投げ銭

─おみくじ=ガチャ

─破魔矢・お守り=グッズ

─お経=アルバム

─お祭り=ライブ

─お祭りの出店=コンサート会場のグッズ販売

 

みんなが飛び込んでくる池を作る

─世の中には優秀な監督の卵たちがいるはずだが、どこにいるかはわからない

─探しに行くには膨大な時間と手間がかかる

─よって、優秀な監督の卵が集まる池を作ることにする

─まずは監督の卵たちに、自分の作りたい映画の予告編を3分で作成・応募してもらう

─3分動画なので映画を作るよりは、はるかに低予算で制作可能である

─その予告編のオーディションをして、将来の有望監督候補である未完の大器を集める

─3分動画だから審査する側の手間も少ない

─優勝の副賞は、3000万円相当でその監督が映画を制作できる権利にする

─著名な監督が指導しサポートする

 

「自分から才能を探しに行く」のではなく「みんなが飛び込んでくる池」を作ることで、パワーバランスで優位に立つことを目指す。

 

ネットワークで戦う時代

これからはスタンドアローンで戦う時代ではない。

ネットワークで戦う時代だ。

ネットワークにつながっていないコンピュータにはパワーがないのと同様に、ネットワークがないビジネスパーソンには厳しい時代になる。

いくら頭がよく切れ味があっても、相手から「情報ネットワークに組み入れたい」と思われなければ、スタンドアローンで戦うこととなる。

ITの歴史を振り返ると、スタンドアローンのスペシャリストコンピュータは捨てられてきた。

 

人々がつながったこれからの時代は、プロデューサーの時代である。

誰にどのような能力があり、どのようなことが得意かを把握して、物事の実現に向けて、最適な人を集め、実行をプロデュースする人材、「ビジネスプロデューサー」が求められる。

 

楽曲の制作方法が、作詞家・作曲家・歌手という分業制から、シンガーソングライターになり、再び小説とアニメーションと歌手という分業制になりつつあるわけだが、実は漫画でも同じようなことが、ずっと以前から起きている。

 

ネットワーク時代の問題解決のスタンダードになるだろう。

1課題を定義し

2課題を因数分解し

3課題を解決するのに必要な能力・機能を明確化し

4その能力・機能を調達し

5調達した人材、AIを統合しながら課題を解決する

こうして、最小限の労力で、最短の時間でアウトプットを出す、ビジネスを動かしていくのがビジネスプロデューサーである。

 

ビジネスプロデューサーとしての働き方を実践するためには、誰がどういうことができて、どういうことが得意かについて、常に視野を広範囲に向けて、広く知っておくことが重要だ。

その最低基準とは、「丸投げされても成果を出せること」である。

より具体的に表現すると、目標設定さえすれば、あとはプロセスに途中介入しなくても、プロとして求められる基準を満たしたアウトプットをきちんと出す人のことだ。

 

トップの目指し方

1参入するマーケットが伸びているか

2競合が弱くて、自分がトップになれそうかどうか

3累積経験が利いて、後で参入してきたライバルが損するかどうか

 

スペシャリストとしてのポジションを固めた後は、「選ぶ側」であるビジネスプロデューサーとしての思考法、戦い方を身につけたほうがよい。

まず、ビジネスプロデューサーは、仕事を依頼する相手が「丸投げして成果を出せる人かどうか」を見極める必要がある。

「丸投げ」というと、無責任なニュアンスを感じとるかもしれないが、そんなことはまったくない。

プロジェクトにおける責任は、最終的にビジネスプロデューサーが負うので、「丸投げする」というのは大きなリスクなのだ。

だからこそ、キャスティングの際は、「この人は絶対信用できる」という人に頼まなければならない。

プロフェッショナルとして信頼しているからこそ、丸投げができるわけである(ただし、丸投げする前に、ビジネスプロデューサーはスペシャリストが仕事を完遂できるよう、彼らの能力や資質、人間性を見極めたうえで、タスクを因数分解しておく必要がある。これはビジネスプロデューサーに求められるスキルの中でもかなり高度なものに分類される)。

仕事を依頼するスペシャリストが、「信頼できる人物か」「なんとしてでも仕事をやり遂げる人なのか」を見極める能力が求められるし、依頼が完了し、仕事が始まった後でも、各担当者の行動特性を把握しながら、プロジェクトを進めていく必要がある。

また、万一の場合を考えながら、いつでもスイッチャブル(交代可能)な代役を検討しておくなど、全体を統括していく俯瞰力が求められる。

 

各分野のスペシャリストを集結し、統合しながら仕事を進めていくのがビジネスプロデューサーだ。

そのすべての起点となるのが、「信頼」である。

ビジネスプロデュースは「信頼」が起点となって、それがあって初めて物事が動いていく。

信頼がなければ、絶対に物事は動かない。

信頼が起点となって、ビジネスは動いていくのだ。

信頼は「一生懸命さ」から生まれる。

 

今日からできること

君の分析能力を使い、マザーズ(今のグロースの一部)に上場しているベンチャー企業の決算発表を全部分析してみてはどうか。

ついでにその競合まで全部分析したうえで、分析から出た仮説を資料としてまとめて、それを持って、社長に話に行ってみなさい」

「最初は会ってくれないかもしれないが、そのうち君の分析能力を見込んで、会ってくれる経営者が出てくるはずだ」

「1社でも会ってもらえる社長がいれば、必ず2社になるし、積み重ねれば100社になるはずだ」

「もし、100人の社長に会って、連絡先を教えてもらって、電話一本で話せるような関係になれば、コンサルタントとして圧倒的な差別化になるし、財産になるはずだ」

 

面白かったポイント

面白かった。

情報をインプットし続けるというのは若い時はやっていたが、歳をとり仕事に慣れるにつれてやらなくなっていった。

足腰を鍛え直すために、もう一度四季報の写経でもやるか。

 

あとは、人とのつながりについてもう一度考え直していきたい。

無理にネットワークを作るのは無意味ですが

ネットワークの価値を上げるには自分の価値を上げないといけないのも事実。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

目次

第1章 仮説が湧くのは「知っている」から
YOASOBIはなぜヒットを連発できるのか?
丸腰で飛び込んだコンサルティング業界
仮説本を何冊読んでも仮説を思いつけるようにはならない
エンジニアリングとコンサルティングの共通点

第2章 一瞬で仮説をはじき出す「瞬考」
瞬考のポイント
これができれば、コンサルティングファームでパートナーになれる
仮説は「メカニズム」と「アナロジー」から生まれる
瞬考を行うには、インプット、インプット、インプット
事例が増えれば差分がわかる、差分がわかればメカニズムがわかる
「一を聞いて十を知る」人は、「一を聞いて十を調べる」人
まずは「歴史の横軸」、そして「業界知識の縦軸」
「歴史の横軸」を長く取ることの意義
「業界の縦軸」を幅広く見据えることの意義
すべての物事には「背景」があり、そこに「メカニズム」が隠されている
敏腕マネージャーが独立する韓国、大物芸能人が独立する日本
メカニズムから未来予測もできる
瞬考のための四季報丸暗記

第3章 瞬考の実践例
DXの次に来た新規事業の波
DXが進むとIPに富が集約される
「歴史は繰り返す」をエンタメ業界から考察する
「歴史は繰り返す」を証券とNFTから考察する
神社とファンクラブビジネスの共通点を考察する
レコードの復活と書籍の未来を考察する
BTSの曲作りとLinuxを考察する
経済アナリストより、投資家より、2年早く「伸びる企業」を見つける方法
成長企業を見つける方程式
みんなが飛び込んでくる池を作る
コモディティ化したらひねりを入れろ
困ったら歴史に立ち帰る
個人のキャリアもメカニズムで戦略を立てよ

第4章 瞬考とビジネスプロデューサー
IT原理からキャリアの打ち手を考察する
半導体の世界で起こったことがリアル世界に反映されつつある
スペシャリストとビジネスプロデューサー
スペシャリストのトップの目指し方
ビジネスプロデューサーは人間の行動特性を見極めなければならない
ビジネスプロデューサーは「信頼」を結びつける職業
信頼と紹介とビジネスプロデュース
信頼の生まれ方と瞬考
ビジネスプロデューサーを目指すために今日からできること
ビジネスプロデューサーの統合力
信頼をつなぎあわせた、その先に

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