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『デジタル時代の基礎知識『ブランディング』』山口 義宏

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内容

ブランド戦略

ブランド戦略とは、既存の商品・サービスそのものや、広告、営業、接客など、その他あらゆる顧客接点で与えている印象を、一貫性があるように整えることが主な内容になります。

自社の商品・サービスを、他社のものと区別してもらう。それがブランドの目的なのです。

 

消費者の頭の中で、優れた価値が想起される「知覚された価値」があって、はじめて購買検討の候補になります。

ブランドは頭の中で「識別記号」と「知覚価値」が結びついた総体。

識別記号:コカ・コーラのロゴ、赤と白の色、腰がくびれたビン

知覚価値:炭酸飲料、さわやか、刺激的、ハッピーな気分転換

強いブランドは、識別記号が多くの人に知られ、豊かな知覚価値を想起させ、消費者の選択購買に大きな影響を与えます。

 

すべての顧客接点の印象の蓄積が、そのブランドに関する識別記号や知覚価値を頭の中に形作っていきます。

企業が直接コントロールできるもの

  • 商品、サービス
  • 広告キャンペーン
  • 販売店
  • 接客スタッフ
  • 自社サイト

 

企業が直接コントロールできないもの

  • 消費者の口コミ
  • メディアの報道
  • 知人の評判
  • 販売店

 

「バラバラの体験が引き起こす消費者の混乱」はブランドをつくるうえで大敵です。

 

ブランド力=体験の魅力度×体験の量・時間×体験の一貫性

 

一口に一貫性といっても、2つの軸が存在します。

1つ目は顧客接点の一貫性。2つ目は時系列の一貫性です。

 

消費者にどんな印象を残すのかを計画し、その実現に向けて顧客接点となる施策間の一貫性を実現するのが重要になっているといえます。

 

経営戦略、ブランド戦略、マーケティング4P施策

経営戦略、ブランド戦略、マーケティング4P施策の3つを大きなブロックで分解し、相互に影響を与え合うものとして理解することを推奨します。

ブランド戦略とは、識別番号と知覚価値を設定し、既存顧客や潜在的顧客に対して、どのようにそれを浸透させていくかの中期的な方針。

ブランド戦略は事業戦略とマーケティング4P施策を整合させる核。

 

ブランディングによって強いブランドを育てることができれば、巨額な販促費で値引きをしなくても、顧客に選ばれ、利益の出る、事業成長の基盤になります。

 

味もサービスもいい、値段も手頃、そんなレストランにたまたまめぐりあっても、なぜか再び行くことがなかったという経験はありませんか。

その原因の1つがブランドの刷り込み不足です。

よい体験をしても、素材の産地、シェフの経歴、心に染み入るサービスなど、消費者の頭の中にブランドが刷り込まれる体験が伴わないと、リピートが発生しません。

 

下位のチャレンジャーのブランドは、上位と差別化しなければ選ばれる理由がありません。

特に好かれたい相手を設定することは施策の判断基準となり、その一貫性がブランドのファンを生み出す源泉となります。

ブランドターゲットは象徴的顧客像を守るためにリーチの広い施策に適用し、セールスターゲットは個別対応できる販売現場のセールストークの判断基準に適用するといった使い分けが大切です。

 

感情の喚起につながるアプローチは、大きく分ければ「チャンス喚起」と「リスク喚起」の2つしかありません。

男性の普遍的な願望「今の自分のままで、魅力的な女性のほうからアプローチされたい」

リスク喚起型は、購買につながりやすいという研究結果も存在しますが、一方で下品に煽りすぎると、顧客を脅かしているように感じられ、社会から批判されるリスクもあります。

 

「何か突き抜けてほかと違うところがある」か「同じ要素を持っていてもナンバーワンのレベル」か、そのどちらかを持っているブランドはとても強いです。

 

SNSアカウント

SNSアカウントの価値を分解すると、

  1. 伝える内容・コンテンツ
  2. 伝える切り口・編集技術
  3. 投稿者の人格や個性を感じさせるトーンアンドマナー

この3つの掛け算で成り立っています。

 

企業公式アカウントを諦めて、経営者層個人のアカウント発信に切り替えるのも1つの有力な方法です。

中小企業のオーナー企業であれば、オーナー個人の色、スタッフの色を出すなど、何らかのキャラクターを前面に立てる戦略も有効です。

 

インサイト

インサイトを掘り出すテクニック。

人は言動に矛盾がある。

矛盾は、購買行動にも表れています。

そして、その矛盾に気づくことがインサイトをあぶり出すきっかけになります。

 

「好みの男性のタイプを教えて下さい」

それを聞いたあと、「過去に付き合った人はどんな人か教えてください」と質問します。

すると、面白いことに、両者が完全に一致することはほとんどありません。

 

顧客体験

UXはその名の通り、顧客体験そのもの、顧客体験のすべてを表している一方で、UIは顧客と機器の境界でしかありません。

UXは全体像であり、UIはUXに含まれる、より狭い概念です。

 

顧客体験のデザイン

第1は消費者側の行動プロセス。

「試す・買う」「開封・設定する」「使用する」「共有する」「サポートを受ける」というように分類します。

 

そして第2に、プロセスごとにインサイトを掘っていきます。

そこには期待や希望、不安や不満など、様々なタイプがあります。

それらの期待に応えるもの、不安を解消するものは何だろうかと、ステップごとに理想の体験施策のアイデアを洗い出していきます。

 

それらの施策を整理していくと、自社だけでできることもあれば、協働パートナーを見つける必要があるものも出てくるでしょう。

あるいはいきなり全部は実現できないが、3年後までにはやれそうだ、という話になるかもしれませんが、いずれにしても目標が立てられます。

 

お客さんの行動を点ではなく、線や面で捉えることで、モノ由来の発想から自由になれることです。

モノ自体で差別化できなくとも、いくつもある顧客体験のプロセスをそれぞれ差別化できないか検討することで、価値を高めるポイントを見つけたり、価値として一貫性を持たせて印象に残すべきポイントが見えてきたりします。

 

面白かったポイント

ブランド戦略という一般的にはフワッとしたテーマを分かりやすく言語化した良書です。

 

具体的に役立つテクニックを発見するというよりも現在の経営活動がブランド軸で見た場合、軸がぶれていないかどうかをチェックするために使えそうです。

要は、企業のコアバリューが顧客のインサイトに刺さるように、すべての顧客接点で一貫性を持つことがブランド力を高めるポイントとなります。

 

マーケッターにおすすめです。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

 

目次

●INTRODUCTION どんな会社でもブランド戦略が必要な理由
・ブランドは情報処理を簡略化する

●CHAPTER 1 ブランドって何?
・重要なのは“事実"ではなく“知覚された価値"
・ブランドに求められる一貫性のある体験

●CHAPTER 2 ブランド戦略って何?
・ブランド戦略は競争力を安定させる
・ブランドターゲットとセールスターゲット

●CHAPTER 3 デジタルで進化するブランド戦略
・ブランド戦略におけるUXとUI
・デジタルによってさらに広がる顧客体験

●CHAPTER 4 ブランド戦略の実行
・インサイトを理解するための心構え
・ブランド体験を評価するフレームワーク

●CHAPTER 5 ブランド戦略の定着と組織的学習
・PDCAサイクルにおける3つの観点
・学習できる組織をつくるために

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