3つのステップで成功させるデータビジネス「データで稼げる」新規事業をつくる

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『3つのステップで成功させるデータビジネス「データで稼げる」新規事業をつくる』EYストラテジー・アンド・コンサルティング

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内容

データが価値を発揮する

データが価値を発揮する「単位」は、データをどのような単位で分析するとインサイトを得られるのか、という観点になる。

単位としては、大きく分けて次の3つがある。

①個のデータ=個々のデータを分析すると分かること

②集合したデータ=まとまりあるデータとして分析すると分かること

③グループ化したデータ=データを特徴ごとに類型化することで分かること

 

一方、データが価値を発揮する「タイミング」は、データをどのようなタイミングで分析するとインサイトが抽出されるのか、という観点となる。

タイミングには大きく分けて次の3つがある。

①瞬間のデータ=データが発生した瞬間で分かること

②定点のデータ=定期的にデータを分析して分かること

③推移のデータ=データが蓄積され時系列となって分かること

 

このように、データのインサイトを抽出するためには、まず「単位」と「タイミング」の観点から社内にあるデータを整理する。

そして、整理したデータを次の3つの方法で分析し、そこからどんなことが示唆されるのかを抽出する。

①比較する

②分解して内訳を見る

③通常では考えられない傾向を探す

 

きめ細かな個別対応

なお、「きめ細かな個別対応」をデータ活用で実現する場合、「従来の提供サービスを細分化して提供できるようにする」ケースと、「従来はサービスの対象にならなかったユーザーにもサービス利用の敷居を下げる」という主に2つのケースが考えられる。

 

はずみ車

データビジネスにおける他社との競争は、「いかに早く『提供価値を高める要素』を獲得し、価値向上のはずみ車を回せるか」の競争である。

 

データビジネスのはずみ車を回し始める上で、「関係性のアセット」は、強力な武器となる。

関係性のアセットとは、

・既存事業で培った顧客や仕入れ先、協業先など「現在持っている取引先との関係性」

・既存事業の運営で培った市場認知やブランドイメージによる「他社との関係性の築きやすさ(未来に築きうる関係性)」

 

メインストリーム層の攻略

新サービスの実用性を重視するメインストリーム市場の消費者を攻略する上で有効な売り方とはどのようなものか。

この層が重視する実用性は、「実際に使ってみて効果があるかどうか」という使用時の効果だけでなく、使い始めるまでの時間や手間、使い始めてからの煩わしさも含まれる。

そのため、メインストリーム層の開拓には、まず「新しいサービスを利用する上でのハードル/障壁」を克服することが重要となる。

つまり、スケール化するには、メインストリーム層の抱えるハードル/障壁を明確にし、その解消の算段を立てること、それを解消できる売り方をすることが重要となる。

 

4つのハードル

1つ目の「スキルのハードル/障壁」は、例えば、「社内の人材の不足により、新サービス導入に向けた検討ができない」、「社員のITリテラシーが低く、ITサービスを使いこなせない」などの課題である。

これらの課題は主に、提供機能のシンプル化、導入時の設定要素の削減、サポートの拡充などの対応をとることで克服できる。

 

2つ目の「資力のハードル/障壁」は、「新サービスに投資を回す余力がない」、「〝低収益性の罠〟に陥り、投資余力を捻出できない」などの投資余力全般に関わる課題だ。

これらの課題は、主に価格設定の見直しや、従量課金制への移行、無料提供機能の実装(フリーミアムへの移行)などで克服できる。

 

3つ目の「アクセスのハードル/障壁」は、「他社の導入事例が少なく、自社に合う(導入効果のある)サービスが分からず、導入に踏み切れない」、「サービスについての情報源が限定的であり、そもそもサービス自体を認知していない」など、情報の入手や理解、利用の困難さなどの課題だ。

これらの課題は、導入実績などの情報発信を積極的に行うだけでなく、無料お試し期間の設定、解約の条件の低減など、使い始めやすくすることで克服可能となる。

 

4つ目の「時間のハードル/障壁」は、「購入までの手続きが面倒で、サービスの利用開始を見送る」、「財務面などの企業体力が乏しいため、新サービスの導入/定着までの過渡期における生産性低下に耐えられない(結果的に導入を見送る)」など、購入から導入までにかかる手続きの煩雑さに関わる課題である。

これらの課題は、提供方法の簡略化、定着化サポートの拡充、既存の手段からの移行支援などで克服できる。

 

ハードルの克服方法

データサービスを使い始めるまでのハードル/障壁を克服するために必要となるのが「ローエンド化アプローチ」だ。

繰り返しになるが、初期市場の開拓で有効だった機能の追加や高度化は、得てしてメインストリーム層にとっては、「高機能すぎる使い勝手の悪いサービス」という印象につながりやすい。

そこであえて、機能を絞り込む(場合により、機能のレベルを落とす)。

そうすることで、サービスの使い道を限定して、提供価値や機能を分かりやすくし、さらに機能を落とした分、価格も下げる(ローエンド化する)ことで、メインストリーム層にとっての「サービスの手にとりやすさ」を向上させる。

このような形でメインストリーム層の開拓を図るのがローエンド化アプローチである。

ここで重要なポイントは、「サービスの本質を見極め、思い切った機能の絞り込みを行うこと」である。

ちょっとした機能のそぎ落とし、絞り込みではメインストリーム層が抱く「使いにくそう」といった印象は払拭できないだろう。

そのため、あえて単機能ソリューションに仕立てるくらいの思い切りを持って、機能を絞り込むことが重要となる。

 

データサービスを使い始め、実際に効果を出す上でのハードル/障壁を克服するために必要なのが、「ホールプロダクト化アプローチ」だ。

「ホールプロダクト化」はあまり馴染みのない言葉かもしれないので、まずは概念の説明から始めたい。

データサービスを購入する顧客は、サービス自体ではなく、それを用いて得られる効果を求めている。

ただ、データサービスを購入すれば誰でも効果を得られるわけではない。

自らサービスを使いこなし効果を得られる顧客もいれば、そうでない顧客もいる。

そして一般的にメインストリーム層には、使いこなせず効果が得られない顧客が多いとされている。

そのためメインストリーム層には、できるだけすぐ簡単に使いこなせて効果を実感できるサービスが必要だ。

そこで必要となる考え方が、ホールプロダクト化である。

これは、メインストリーム層が期待する、使いこなせて効果の出るようなサービスにより近づけるための補助や補完サービスを段階的に揃えるモデルである。

例えば、本章冒頭の「宿泊施設のシフト最適化サービス」であれば、データに基づいて最適なシフトを提示するだけでなく、繁忙期・閑散期に合わせた人材採用の方法や、従業員に担当してもらう仕事の見直しも必要となる。

そのため、ホールプロダクトとして人材採用の指南や業務設計のコンサルタントサービスを提供することが有効な手段となるだろう。

ここでのポイントは、「自前主義に陥らないこと」である。

ホールプロダクトは、得てして自社単独での提供は困難となる場合が多く、結果的にスケール化に至らない場合が多い。

そのため、ホールプロダクト化アプローチでは、他社との協業を念頭に、真に顧客が求める効用を得る上で必要となるものを提供すべきである。

 

UGC

シャトレーゼでは、Twitterアカウントの運用方針を、「ファンと口コミの増加」「来店促進」の2軸に定めた。

これはUGCを広め、それをきっかけとして来店促進につなげる狙いだ。

そのために、Twitterアカウントの投稿では「いい部分のみ抜き取り、良く見せようとする広告的な表現ではなく、商品を素直に伝えるユーザー目線の画像でエンゲージメント率を高める」ことや「ユーザー参加型企画」などを意識し設計した。

 

例えば、自社商品を使ったカクテルの作り方を紹介し、消費者も真似て作るよう呼びかけ、さらには作ったカクテルの画像の投稿を促した。

そしてその投稿を公式アカウントでリツイートすることで、ユーザーの承認欲求を満たし、さらに「公式の投稿を真似たら公式アカウントに紹介してもらえる」というインセンティブを与えることに成功。

結果的にUGCを生み出すサイクルを創出している。

 

BtoCカスタマーサクセス

もともとBtoBの企業のLTV(顧客生涯価値)を高める方法として主流だった「カスタマーサクセス」が、toC企業でも新設されているケースがある。

また今後、「優良顧客の囲い込み」が重要になることからも、その流れは衰えないと予測される。

しかし、カスタマーサクセス新設の際に、ボトルネックになるのが「顧客の属性の多様化に伴い、成功体験へ向けた打ち手も多様化するため、各顧客に最適な成功体験を提供できない」ことだろう。

それを解決するために、AIにより顧客情報の分析だけでなく、顧客の成功体験向上のための様々なアプローチを試行錯誤させ、さらにはアプローチ実施の意思決定まで行わせることで、顧客ごとに最適な打ち手を試算して案内する。

そうすれば、成功体験を提供できる確度を上げられると推測される。

インターネット広告市場では、企業から消費者に一方的な広告を表示する、という従来の手法の効果に限界が見え始めている。

前述したような消費者の趣味嗜好の多様化に対応するため、AIの力を借りた試行錯誤や、自社が持つ顧客(ファン)から得られるデータ(口コミ、態度変容など)を活用したマーケティングの検討が重要になるだろう。

 

面白かったポイント

データをビジネスにするための教科書という印象。

メインストリーム層の攻略の章は面白かった。

業界別データビジネスは面白い読み物でした。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆

 

目次

第1部 データをカネに換える”データビジネス”とは何か
第2部 データビジネスの思考法
第3部 ステップ(1)データビジネスのアイデアをつくるための思考法
第4部 ステップ(2)データビジネスを事業化するための思考法
第5部 ステップ(3)事業として儲けを出すための思考法
第6部 データビジネスの実践ケース

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