本の内容
本書では、「成功者」に対するこの手の「努力と個人的資質がすべてを決める」という考え方が間違っていることを伝えたい。
その成功者がどんな人間かと訊ねただけでは十分ではない。
成功者たちの出自を訊ねてこそ、成功者とそうでない者の背後に潜む本当の理由が見えてくるのだ。
早くやること = 累積するアドバンテージ
少年の優位点は、優れた素質を持って生まれたことではなく、生まれが少々早かっただけだった。
最初の小さな優位点はなくならない。
成績がいいか悪いか、周囲の後押しがあるかないか、のパターンに子供を閉じこめ、その後もずっと同じパターンが続く。
早く生まれた子供の発育度を見て、先生はその子の能力と勘違いする。
そして、早く生まれた子どもを特別コースに入れる。
そこに入れられた子どもは、より高い技術を学びます。
このように、少し早く生まれたことによる優位性によって、まわりの環境も変わり、優位性に差が開いていきます。
3月生まれの私にとって、かなりショッキングな真実です。
マタイ効果
「誰でも、持っている人はさらに与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまでも取り上げられる。」
成功している人は特別な機会を与えられる可能性がもっとも高く、さらに成功する。
金持ちがもっとも減税の恩恵を受ける。
できのいい生徒ほどよい教育を受け、注目を集める。
成功とは、社会学者が好んで呼ぶ「累積するアドバンテージ」の結果である。
始めは小さな優位性だけど、それが積み重なり、差がどんどん大きくなる。
1万時間の法則
一流の音楽学校に入る実力を持つ学生がトップになれるかなれないかを分けるのは、「熱心に努力するかどうか」によることを示していた。
彼らを分けるのは、ただそれだけ。
さらに重要なことに、頂点に立つ人物は他の人より少しか、ときどき熱心に取り組んできたのではない。
圧倒的にたくさんの努力を重ねている。
専門家たちは、世界で通用する人間に共通する”魔法の数字”があるという意見で一致している。
つまり一万時間である。
10年とは何か?
1万時間に及ぶ厳しい練習をこなすために、だいたい必要な年月だ。
1万時間とは成功へのマジックナンバーである。
1万時間とは途方もなく膨大な量の時間だ。
10代の後半までに、自分の力だけで1万時間をクリアすることは、ほぼ無理である。
両親の励ましや支えが必要になる。
1万時間とは、毎日8時間ずつ訓練したとしても1250日だから、約3.4年かかる。
毎日3時間ずつしか訓練できないとしたら、実に9年以上だ。
学んだのは体力だけじゃない。ものすごい数の曲も覚えなくてはならなかった
思いつく限りのあらゆる曲を。ロックだけじゃない。ときにはジャズでさえ。
それ以前はステージで鍛えられてなかった。
だけど帰ってきたとき、ザ・ビートルズは他のどんなバンドとも違っていた。
それが成功を呼び込んだんだよ
ビートルズは、有名になる前にストリップ劇場で、1日8時間、週に7日も演奏したため、特別な存在になれたのだと思う。
好機
たいていの人が1万時間に達するためには、特別なプロジェクトに恵まれた場合か、並外れた好機に恵まれた場合に限られる。
ジョイには才能があった。学ぶ意欲があった。
それは重要な要素だ。
だが、ジョイが専門家になるためには、誰かがジョイに、いかに専門家になるかを学ぶ好機を与えなければならなかった。
ジョイは、天才的なコンピュータエンジニアですが、最先端の大学に入学し、好きなだけプログラムづくりに没頭できた環境があったため、専門家になることができた。
天才をつくるには、才能とそれを鍛える環境が必要だということです。
好機の共通点は何だろう?訓練を積むための、より多くの時間を与えてくれたことだ。
彼らの経歴を本当に際立たせているのは、驚くべき才能ではなく驚くべき好機である。
天才が世に出てくるためには、彼らの才能を引き出す環境が大切だということですね。
才能はあるけど、環境に恵まれなかったために世に出てこなかった人も多いと考えると、それほど不幸なことはありません。
「知能と成功との間には完璧な相関関係があるというにはほど遠い」。
アウトライアーにはよくあることだが、そのような挫折の中で仕事に励むことこそが、じつは黄金の好機だったのだ。
共同育成
共同育成には大きな優位点がある。
予定の詰まった中産階級の子供たちは、多様な体験の機会を次々に与えられる。
組織の中でチームワークと対処法を学ぶ。
大人と気持ちよく会話する方法や、必要に応じて自分の考えを相手に伝える方法を覚える。
結局、問題はたったひとつ、育った家庭環境にあった。
子どもたちに実社会で生きていく準備をさせるための周囲の社会だ。
仕事の意義
「自主性」「複雑さ」「努力に見合う報酬」の3つが、満足いく仕事に求められる特性であることは、たいていの人も同じ意見だろう。
人を幸せにするのは、9時~5時の仕事でいくら稼げるかではない。
「その仕事に充実感が持てるか」どうかだ。
長年続く厳しい労働を重荷とは思わなかったからだ。
ビルゲイツがレイクサイド校ではじめてコンピュータのキーボードの前に座った時、彼も同じように感じた。
ザ・ビートルズも週7日、1日8時間、演奏するように言われたとき、怯んだりはしなかった。
彼らは好機に飛びついた。
厳しい労働が懲役の意味を持つのは、仕事に意義が見いだせないときだ。
意義があれば、妻の腰を抱き寄せ、ダンスを踊りたくなるのだ。
成功
一生懸命働いて、自分の意見を主張し、頭脳と想像力を働かせれば、世界をあなたの望みどおりにかたちづくることができる、という教訓
成功した人々は一生懸命働いた。
成功とは、粘り強さ、辛抱強さ、勤勉を厭わない意志の結果であり、それらがあれば、たいていの人が30秒で投げ出すことに22分もかけて取り組める。
面白かったポイント
面白いエピソードが満載の成功本です。
第1章の生まれが少々早い子供は遅い子供に比べて体格が良いので多くのチャンスに恵まれるので更に優位になっていくということを、プロの選手の大半が早く生まれているというデータとともに紹介されている事実は衝撃でした。
ほんのわずかな優位性が可能性を左右するとは、3月生まれの私としてはショックです。
この事実は知っておくべきです。
世界に通用するトレーニング量は1万時間という法則も勉強になります。
1日3時間トレーニングしても1年で3時間×365日=1,095時間、1万時間を超えるには10年かかります。
いくら一生懸命に働いても同じ作業や単純な作業ばかりでは、スキルが積みあがらないので時間の使い方を変え、モーツァルトやビートルズ、ビルゲイツのように熱中したいと思います。
生まれた月だけでなく、生まれた世代によって成功するかどうかが分かれるということもショックです。
やるべきことは自分が熱中する新しいことを見つけて、好機を待つということでしょうね。
第2部「文化的遺産」の大韓航空機の事故や稲作をしてきた文化と努力家の関係、貧しい地域の子供向け教育プログラムの話など、どれも興味深いエピソードです。
自己啓発本では信念を持って一所懸命努力すれば願いが叶うという本が多いですが、家庭や社会などの環境や制度が成功するために如何に重要なのかということが理解できました。
多くの好機が提供される環境作りにも携わっていきたいですね。
満足感を5段階評価
☆☆☆☆☆
目次
プロローグ ロゼトの謎
第一部好機
第一章 マタイ効果
第二章 一万時間の法則
第三章 天才の問題点 その一
第四章 天才の問題点 その二
第五章 ジョー・フロムの三つの教訓
第二部 「文化」という名の遺産
第六章 ケンタッキー州ハーラン
第七章 航空機事故の“民族的法則”
第八章 「水田」と「数学テスト」の関係
第九章 マリータの取引
エピローグ ジャマイカの物語