内容
なぜ、顧客が動いたのか?
その行動変化の理由である心理変化に触れないままでは、大規模なマーケティング投資でスケールさせることができません。
顧客を把握しないマーケティングは必ず、部分最適の連続から縮小均衡に陥ります。
見方を変えれば、拡大するデジタル世界で顧客を捉えるための新しい手技手法に囚われて、ますます顧客から遠ざかっているのです。
認知
マクドナルドは徐々に主導権を奪いましたが、初期のハンバーガーチェーンという認知形式に遅れたことで多くの投資と時間が必要になりました。
つまり、強い「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」に加えて「ターゲット顧客での早期の認知形成」が成功の3要素だと言えます。
ここで使う認知は、ブランド名での単純認知でなく、カテゴリー便益を伴った認知を指します。
アンケート調査では、「このカテゴリーに関して知っているブランド名をお答えください」という設問で確認できる認知です。
スマートニュースなら、「ニュースアプリに関して知っているブランド名をお答えください」という設問に対して、競合含む対象ブランド名の選択肢を提示して選んでいただきます。
顧客ピラミッド
顧客分析については、購買情報を元に顧客を3つに分類する「RFM分析」が有名です。
Recency(直近でいつ購買したか)、Frequency(購買頻度)、Monetary(購買金額)の3軸で顧客セグメントを分析する方法です。
あるいは年間の購買額や購買数での顧客セグメント分析が行われることも多いと思います。
ロイヤル顧客数×単価×頻度の向上(スーパーロイヤル化)=ロイヤル顧客層の売上-費用=利益
顧客ピラミッドで考える、戦略の選択肢
- ロイヤル顧客のスーパーロイヤル化
- 一般顧客のロイヤル化
- 離反顧客の復帰
- 認知・未購買顧客の顧客化
- 未認知顧客の顧客化
5つの顧客セグメントのどこに注力すべきかは、競合環境、顧客特性、利益性などで異なります。
一般的に、上位に投下するほど利益性が高まり安定するものの、同時にニッチ化を招き、規模拡大のスピードは見込めなくなることが多いです。
CRMやロイヤルティプログラム偏重によって陥りがちなパターンです。
また、逆に下位層に向けてマスメディアでコミュニケーション投資をすれば、短期間での規模拡大は期待できますが、顧客獲得コストは高く利益を圧迫しがちです。
しかし、このマスメディアでのマーケティング投資も、N1分析で大きく成功確率を上げることが可能です。
顧客ピラミッドから組み立てると、さらに深い部分まで見通すことができます。
「アイデア(独自性+便益)」=Whatが見えると、
それが受け入れられるターゲット=Who=N1も見えますし、
行動データ、心理データ分析の中で、
いつ(When)、どこで(Where)、どのように(How)「アイデア」を届けるかも見えてきます。
1 積極 ロイヤル顧客 ── 大量に購入(使用)し、かつ、ロイヤルティも高く、顧客として失うリスクは低い層。
2 消極 ロイヤル顧客 ── 大量に購入(使用)しているが、ロイヤルティは低く、顧客として失うリスクは高い層。
3 積極 一般顧客 ── 購入量は少ないがロイヤルティが高く、積極的ロイヤル顧客化する可能性が高い層。大量に購入していない理由としては、競合ブランドのロイヤル顧客である、販売網のリーチや店舗内露出が少なく手に入りにくい、その商品の便益には満足しているがロイヤルティに結びつくような、また、価格を合理的だと感じられるような独自性を理解していない、認知していない、など。その理由を見つけ出し、解決策を提案できれば、1に移行する可能性は高い。
4 消極 一般顧客 ── 購入量は少なくロイヤルティも低く、離脱の可能性が高い一過性の顧客層。ほとんどの商品で顧客数が多いのは、この層。
5 積極 離反顧客 ── ロイヤルティが高いが、何らかの理由で購入しなくなった層。競合ブランドや他のカテゴリーの代替品にスイッチした場合、また転居などで物理的に販売網のリーチから離れてしまった場合や、家族構成の変化や出産・子育てのようなライフスタイル変化などを機に発生。再度、顧客化することは比較的簡単。
6 消極 離反顧客 ── 競合ブランドや他のカテゴリーの代替品にスイッチした場合、また需要自体がなくなったなど、現在購入しておらずロイヤルティも低い層。
7 積極 認知・未購買顧客 ── 独自性とその便益の理解が薄い、また購入のきっかけがないために顧客化していない層。または、販売網リーチに入っていない、購入場面の認知がないなど。
8 消極 認知・未購買顧客 ── 独自性と便益の理解が薄い、また、購入する強い理由ときっかけがない顧客層。
9 未認知顧客 ── 商品名の認知もなく、購入までのハードルが最も高い層。ほとんどの商品やサービスにとって最大のセグメントであり、イノベーター理論で言うレイトマジョリティ、ラガードが大部分を占めるが、中長期の安定的成長を目指す上で開拓すべき層。
AARRRモデル
アプリのビジネスで用いられるビジネスモデルに「AARRRモデル」というものがあります。
ユーザー行動を
- A ユーザー獲得
- A 商品使用とユーザー活動の活性化
- R 継続使用
- R 他者への紹介や推奨
- R 収益化
の5段階に分けて、リアルタイムデータで可視化・分析し、「プロダクトアイデア」自体を様々な変数の組み合わせとして捉えるモデルです。
面白かったポイント
顧客管理の基礎を学ぶことができます。
商品力×発信力の組み合わせというマーケティングの基本です。
著者は消費財からスマホアプリという経歴で、旧来型のマーケティングとデジタルマーケティングの両方を知っている、その変化についても書かれています。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆
目次
・有効な「アイデア」の定義と見つけ方
・分析対象とする“N1"の選び方
・ターゲット顧客を「未認知」~「ロイヤル」の5つに分ける「顧客ピラミッド」の作成と分析方法
・販売促進活動とブランディング活動を同時に可視化・定量化し、マネジメントする「9セグマップ」の作成と分析方法
・潜在顧客を顧客化、さらにロイヤル化する打ち手の開発方法
・競合から顧客を奪う「オーバーラップ分析」の方法
・破壊的イノベーションに顧客を奪われるリスクの防ぎ方