内容
MOpsチーム
MOpsチームはマーケティングチームに所属しますが、実際の施策の企画や運用などは行わず、システムやデータの管理、プロセスの管理・運用に徹し、舞台裏からマーケターの生産性向上などをサポートします。
組織自体がこれらのデータを適切に処理できるよう、オペレーションモデルを構築することが求められているのです。
もともとこのオペレーションという考え方はデータやシステムを活用してシステム開発現場のコラボレーションやプロセスを強化し、生産性を高める専門チーム、DevOpsが起源になっています。
そのスキルやノウハウは組織全体に広がり、今ではカスタマーサクセスやリーガルといった部署でもオペレーションというコンセプトを運用しています。
次の図を見るとMOps(マーケティングオプス)はSales Ops, Customer Success Ops, Growth Ops, Web Ops, Loc Ops, Product Ops, Data Ops, Partner Opsと実に様々な部門と関わっているのがわかります。
レベニュープロセスにおけるマーケティングの責任範囲が増えている今、このように様々な部署と連携しながらデータの活用をすることは大前提になっているのです。
多くの欧米企業では適切な組織構造とそれに合ったジョブディスクリプション(職務記述書)が整備されているため、自然と仕事のポータビリティが上がり、業界全体でノウハウがたまります。
このため、欧米企業ではオペレーションモデルがある程度標準化され、共通認識されているのです。
MOpsの業務は一言でいうと、「人、マーケティングテクノロジー、マーケティングプロセスを横断的に俯瞰しながら戦術を作りメンテナンスすること」です。
明確な責任範囲があることはとても重要です。
日々施策を大量に実行しているフィールドマーケターにMOpsの業務内容もやってもらうのは現実的ではありません。
スキル面の課題がありますが、業務量的に難しいでしょうし、効率性を考えても管理者と実務者の責任範囲は明確に線引きするべきなのです。
ものづくりの生産現場でも部品の組み立てをする方と機械のメンテナンスや管理をする方は違います。
これと全く同じことで、管理者であるMOpsは施策の生産性を上げる環境づくりに、実務者であるマーケターは営業案件創出の戦略・戦術設計に集中する、といったように専門性を持って協業することでマーケティング部門全体の効率性を高めるアプローチがマーケティングの世界でも取られているのです。
運用する中でたまったノウハウや、ベストプラクティスなどを全て記録し、その情報をアップデートして社内に共有するのも MOpsの役割の1つです。
チケットによる管理を徹底することの一番の利点は、全施策のデータが同じフォーマットで整理されるため、過去施策の分析が詳細に行えるということはもちろん、MOpsチームが全てに目を通しているため、効率的にベストプラクティスやノウハウが蓄積されるということです。
マーケティング施策の企画や実行を担当するマーケターと、ツールの管理やマーケティングプロセス全体を構築・管理するMOpsの業務は明確に分けられています。
これまでメールの配信からコンテンツの執筆、MAの設定、データの分析まで各自で行っていた体制から、それぞれの専門性を持った担当者が管理することで効率性や質は向上するものの、一方で業務の幅が狭まりタスク化してしまうという側面もあります。
また、プロジェクトマネジメントツールを用いて管理することにおいても、振られるタスクを機械的にこなす感覚になる方もいるため、ソフト面でのフォローが必要になります。
あくまでもこれらのツールはこれまで行っていた施策を効率的に管理することで、本来マーケターが一番集中するべき施策の企画や実行に時間やクリエイティビティを投じられる環境を作ることが目的です。
その背景を理解してもらい、そのメリットを体感してもらえるまでは、自社に合った MOpsの運用の形や方法を模索する必要があります。
また、プロセス化することで効率を上げるのは重要ですが、最後までそれを動かすのは「人」です。
数値やデータにこだわりながらも、オペレーションモデルやプロセスのその先には人がいることを忘れずに取り組むことが大変重要です。
デジタルIQスコア
2020年にガートナー社のアナリストであるベンジャミン・ブルーム氏が発表したMarketing Technology Drivers of Genius Brand Performanceという調査レポートは、デジタルIQ(デジタルIQスコア)というガートナー社が独自に開発した、デジタルパフォーマンスを評価する指標と、マーケティングテクノロジーの活用度合い(多さ)の相関性の分析結果が掲載されています。
このレポートではGeniusと名付けられたデジタルIQの高いトップブランドは、大手企業(グーグルやアドビ、セールスフォース)の統合ソリューションのみならず、個別かつ細部にわたる利用シーンで使えるポイントソリューションを含めた複雑なマーケティングテクノロジースタックを構築していることがわかりました。
様々な機能が備わっている統合ソリューションで固めるだけでなく、特定機能に特化したツールをつなぎ合わせることで、より良いカスタマーエクスペリエンスを提供しているのです。
テクノロジースタック
マーケティングテクノロジースタックとは、「指数関数的に増えるマーケティングテクノロジーの中から適切なツールを選択し、適切に組み合わせて計画的に活用するためにポートフォリオを構築すること」と定義されています。
ソーシャルメディア管理ツールからMA、CMS、広告プラットフォーム、BIツールまで多様なツールを使用する中で、各ツールが素晴らしい機能を持っていても組み合わせによっては協調性が欠け、各ツールの利点がつぶれてしまうことがあります。
この話はよくオーケストラにたとえられますが、音色の全然違うバイオリンを集め、オーケストラのサイズに合わない特大シンバルを買ってしまっては指揮者がどんなに頑張っても素敵な音楽にはなりません。
マーケティングテクノロジースタックもそれと同じで、目先のニーズだけに捉われず組み合わせた時の全体像や1、3、5年後に向かいたい方向を踏まえて各ツールを選定することが大変重要です。
マーケティングテクノロジースタックはマーケティング組織の成熟度を測る1つの方法でもあるため、欧米では自社のマーケティングテクノロジースタックを公表する会社もあるほどです。
テクノロジースタック構築において念頭に置くべきは「どのツールが必要か」ではなく「どの問題の解決やニーズに対応したいか」、いわば要件定義です。
❶マーケティングチームの将来目標を明確化し要件定義を行う
1年先、3年先、5年先のスパンでマーケティングチームが目指したい理想像や改善したいポイントを明確化します。
この方向性が会社全体と合致しているか、そしてそれを実現するにはどれくらいヘッドカウントが必要か、予算はどれくらい見込めるかなども考慮して目指すべき姿をしっかり把握します。
理想像が固まったら実現に必要な機能やツールを羅列し、特に考えておくべきタイムラインがあれば併せて考えます。
例えば、今後1年以内にABM施策を展開したい場合、CRMに企業属性データを組み合わせる機能(データエンリッチメント)が今期末までに、ウェブサイトにパーソナライゼーション機能が来期末までに必要だ、など必要な機能やツールとその時期をつなげて考えることで、マーケティングスタック全体の形や雰囲気も見えてきます。
全員が同じ方向性でテクノロジーツールの選定ができるよう、将来のビジョンも含めてチーム全体で話し合いましょう。
❷主要ツールのリサーチ
必要な機能やツールの中で、ECやMAなどの長期的に使うツールやマーケティング活動の中心になるツールは、この時点で候補を挙げ、機能の違いなどの調査を始めます。
各ツールの機能を深く理解するには相当のリサーチと時間が必要になります。
場合によってはマーケティングチームだけではなくエンジニアや営業、カスタマーサクセスチームなど様々な部門と提携しながら、以下の点をチェックして選択肢を絞っていきます。
・既存マーケティングツール・システムとの統合の可否:
検討しているツールは既存ツールとどのレベルでデータ連携ができるか、連携完了までの工数はどれくらいか、他部門システムとの連携ができるかなどを確認します。
・既存ツールと併用する、もしくは置き換えるうえで発生するボトルネックの有無:
「今まで作ったランディングページの移行ができない」「メールのテンプレートを一から作り直す必要がある」など検討しているツールを導入することでボトルネックが生まれる点を全て洗い出し、比較検討します。
・カスタマーサービスの提供内容:
検討しているツールベンダーで自分のチームに必要なカスタマーサービスが受けることができるか確認します。
・パートナーエコシステムの確認:
検討しているツールベンダーのテクノロジーパートナーやソリューションパートナーのリストを確認し、今後のニーズに沿っているかを確認します。
・分析機能:
検討しているツールのデフォルトの分析機能だけで十分カバーできるか、もしくは別にBIなどの分析ツールを導入する必要があるかを確認します。
❸テクノロジースタックをデザインする
調査を済ませ必要なツール群が見えてきたら、テクノロジースタックの全体像を落とし込みます。
これには次の図のガートナー社のマーケティングテクノロジートランジションマップが参考になります。
ここでは各マーケティング施策、ツールやベンダーがどのように関わり合っているかが地下鉄マップを模して表されています。
テクノロジースタックはカスタマージャーニーに沿ったシンプルなリニア導線を描きがちですが、実際のマーケティング活動やカスタマージャーニーはもっと複雑でもはや直線では描ききれなくなっています。
まさにこのようなマーケティング活動全体を俯瞰した視点で自社のマーケティングテクノロジースタックを把握することが大変重要になるのです。
❹ロードマップを敷く
マーケティングテクノロジースタックの設計から導入までは大変時間のかかる作業であり、継続的に改善を繰り返す必要があるため、構築プロセスに終わりはありません。
だからこそ要件定義を行ったうえでロードマップを作成し、明確なタイムライン通りに手をつけることが大切です。
デザインしたマーケティングテクノロジースタックの中で優先順位の高いものを特定し、ロードマップに落とし込んでいきます。
新しいテクノロジーが出ても踊らされることなく、自社に最適かどうかという観点でロードマップの編集、アップデートを行います。
CRO
マーケティング、営業、カスタマーサクセスを統合的に管理する「レベニュー組織」が存在している企業では、マーケティング、営業、カスタマーサクセスの他にMOpsやSales Ops(セールスオペレーション)、CS Ops(カスタマーサクセスオペレーション)など、レベニュープロセスにおけるオペレーション業務をまとめたオペレーション部門をCRO(チーフレベニューオフィサー、参照)下に直接配置し、レベニュー組織の一部として運用するケースもあります。
日本にいるデジタルマーケター人口は約2万人程度と言われています。
この少ない人材のプールの中だけでMOps人材を育成し登用していくのは困難でしょう。
一方日本にいるIT人材の人口は約132万人です。
レベニュープロセス
収益効果を可視化するための第一歩は、レベニュープロセスマネジメントの設計と構築です。
レベニュープロセスマネジメントを行ううえで投資コストを把握するために注目すべきがリード、商談、受注の3点です。
RevOps
MOps、Sales Ops、CS Opsは全て収益を生み出すためのデータ、テクノロジー、プロセスを支援するために存在します。
これらのチームを1つの旗の下に統合することで、戦略や目標に対して共通理解を持ち、その実現に向けた協力や知識の共有が可能になります。
テクノロジーやデータのサイロ化を防ぎ、真に統合された収益プロセスを構築し、収益やROIの最大化を図るRevOpsは必要不可欠になってきているのです。
先ほど述べた通り、まだこのコンセプトは新しく定義もやや流動的ですが、RevOpsの代表的な役割を以下に挙げます。
・プロセスの整備:
マーケティングからカスタマーサクセスまで、レベニュー活動全体を通して統合されたプロセスの構築をリードします。
これにより自動化による生産性向上はもちろんのこと、各チームのコラボレーションを加速させ、部門間の調整などにも積極的に働きかけます。
・プラットフォームの整備:
組織内にサイロ化するデータを統合し、収益やパイプラインの状況、各活動の直接的・間接的なインパクトを可視化し、将来予測、戦略立案に活用できるような形にプラットフォームを整備します。
RevOpsを運用するうえで一番大きなチャレンジは人材の確保です。
RevOpsを担う人材はテクノロジーとビジネス双方への深い理解はもちろん、部門間を調整するコミュニケーションスキルやリーダーシップも要求されます。
組織の規模に応じてRevOpsチームを設立するか、既存のチームメンバーにRevOpsの責任を分散させるか検討が必要になります。
RevOpsを専門的に担当した人材は多くないため、Sales OpsやMOpsの人材がRevOpsを担うケースが増えるでしょう。
コミュニケーションプラン
MOpsの体制を作るうえで次に取り組みたいのがコミュニケーションプランの策定です。
ビジネスプロセス全体で専門性の強化が進む中、マーケティング部門内や営業、カスタマーサクセスなどの重要関連部門と効率的に連携するためのコミュニケーションを計画する重要性が高まっています。
コロナ禍でミーティングがオンラインに移行したこともあり、戦略的に取り組む必要性も出てきました。
コミュニケーションプランをデザインする際は、次の表のように現状マーケティング部門が行っているミーティングやコミュニケーションチャネルを全て書き出し、それぞれのコミュニケーションチャネルのアジェンダや目的、参加者、頻度と形式を埋めていきます。
そもそも不要なもの、ツールで補えるもの、そして合併できるものはないかを確認し、効率性とコミュニケーションのスムーズさ・簡便さの両方の観点でコミュニケーションプランを策定します。
例えば、チケットで施策の管理をしていれば、進捗をアップデートするだけのミーティングを減らすことができるでしょう。
ビジネスプロセス全体だけでなくマーケティング部門内での専門性の強化が進む今、適切なコミュニケーションプランを練ることは組織の体制づくりと同じくらい重要になっています。
コミュニケーションプランをベースにマーケティング部門内はもちろん、関連部門とのコラボレーションを加速させる体制を作ることも、組織的なマーケティング運用を実現するうえで重要なポイントになるのです。
ノウハウシェア
チームワークが重要なマーケティング部門にとってチーム全体が共通知識やノウハウを持ち、常にアップデートすることはマーケティング施策の成功に欠かせません。
この一元化されたナレッジベースを構築することはMOpsの体制づくりの中でも大変重要になるでしょう。
ConfluenceやNotionなどのプラットフォーム上でチームがいつでも誰でもアクセスできる社内Wikiページを作成し、そこにノウハウやベストプラクティスはもちろん、マーケティング部門の組織図やマーケティングカレンダーなど、マーケティング部門に関わる情報を全て載せることで、個人の学びをマーケティングチーム全体の学びとして吸収するようにしているのです。
次に取り組みたいのがマーケティングチームのテクノロジー教育とオンボーディングプロセスの策定です。
まずは使用しているマーケティングテクノロジーツールの運用ルールを策定し、教育コンテンツを作ります。
マーケティングカレンダー
実際のマーケティング現場では非常に計画的に緻密なマーケティングを実現しています。
最低でも半年先、もしくは1年先までのマーケティングカレンダーが決まっているのが当たり前なのです。
このカレンダーは「6月にXという展示会に出展する」や「9月にYに関するウェビナーを開催する」などの粗い粒度のものではなく、「9月X週目のウェビナー集客用ランディングページ作成を7月Y週目にリードタイム3日間で完成させる」や「11月X週目の自社イベントのMAプログラム作成を7月X週にリードタイム1日間で完成させる」など、各施策を実現するのに必要なアクションアイテムレベルに落とし込んだものであり、これら全てが半年から1年先までプロジェクト管理ツールに登録されている状態なのです。
このレベルで先々まで計画できる、ということはプロセスが確立していることを意味しています。
組織的にマーケティングプロセスを運用すると過去データから目標達成までに必要なマーケティング活動量や施策数が見えているため、それを必要工数に落とし込んだ計画が立てられるのです。
そのため、月半ばにして「今月の新規リード数が足りない!」と急いでウェビナーを開催したり、広告を打ったりという「とりあえずやる施策」は全くありませんでした。
緻密に考えられ、データドリブンに意思決定したマーケティング計画の中でチーム全体、そして会社全体が動いているため、もしも期待した通りの結果が出なかったとしても、その理由を突き詰めてそこから学ぶという姿勢が徹底されているのです。
大きな方向性として1年単位で各施策の活動量を定めていくことが必要です。
それでは必要なステップを紹介しましょう。
❶過去のデータからレベニュー目標達成に必要なマーケティング指標を確認する
過去のマーケティングパフォーマンスデータを参考にしつつレベニュー目標値から逆算する形で必要なパイプライン数、SQL数、そしてMQL数などを算出し、目指すべきマーケティング指標を導き出します。
❷目標MQL数を獲得するために使用するマーケティングチャネルのそれぞれの目標値を決める
目標MQL数がわかったら、過去データをもとに展開するマーケティングチャネルごとの目標値を設定します。
ここで大切なのは第4章05節で解説した通り、チャネルごとの目標は新規獲得リード数やCPAではなく、新規獲得MQL数とCPMQL(MQL獲得単価)を重視するということです。
獲得リード数やCPAという入り口の指標に惑わされず、実際にマーケティング目標に貢献しているチャネルを特定することが重要です。
❸チャネルごとの目標値を達成するための施策を書き出す
チャネルごとの目標値が決まったら最後に施策レベルで展開してカレンダーに落とし込みます。
この際はキーメッセージと施策を時系列で連動させること、そして自社のバリューと認識を合わせて方向性を決めることを念頭に計画することが重要です。
他チャネルで展開している施策との親和性なども考慮しながら設計することで、チャネルをまたいだマーケティング施策においても一貫性のあるコミュニケーションを保ち、自社のバリューを顧客に浸透させて高い効果を生み出します。
新たなマーケットへ挑戦する場合、序盤はフロー型、徐々にストック型の施策へと移行することを意識しておく必要があります。
最初からストック施策を中心に組み立ててしまうと、効果を生むまでに時間がかかり本来の効果も不透明になりがちだからです。
これらを考慮したうえで、集客のポートフォリオを設計していきます。
MA
MAは、パーソナライズされたメールを配信する機能として理解されていることが多いですが、本来の機能はマーケティングの収益管理です。
複数のマーケティングチャネルやタッチポイントを経由して購買意思決定に至るケースが一般的です。
この背景を考慮し、商談や受注に影響を与えた複数のチャネルやタッチポイントをそれぞれ評価し、貢献度に応じて収益効果を配分することでより的確なROIを算出するために用いられるのがマルチタッチアトリビューションという分析方法です。
マルチタッチアトリビューションの中でも、フルパス型モデルと呼ばれる分析方法はファーストタッチ時、リード獲得時、商談作成時、そしてラストタッチ時の4つのタッチポイントを重点的に評価するモデルで、グローバルでも採用する企業が増えています。
施策の基準
・MQL(Marketing Qualified Lead):マーケターと営業の間で定めた基準をクリアした有望なリード
・SAL(Sales Accepted Lead):営業が案件化への対応を承諾したリード
・SQL(Sales Qualified Lead):営業が案件化可能と判断したリード
このようにマーケティング部門から営業部門へリードの適性評価を行い、優良なリードを営業案件として引き渡すプロセスの中で重要な役割として注目されたのが、インサイドセールスです。
リード獲得から受注までの期間が長いビジネスの場合は、MQLを成功基準とすることをお勧めします。
点数は「属性スコア」と「行動スコア」の2つの基準でつけることが一般的です。
属性スコアでは、ターゲット企業の属性(業界:自動車業界、従業員数:XXXX名以上、年間売上高:XXXXX円以上、所在地:日本または東南アジアなど)と、その企業の属性ごとにバイヤーペルソナ(所属:購買部門、役職:部長クラス以上など)を定め、点数をつけます。
まさにこれは第3章で解説したターゲット層そのものです。
行動スコアでは、ウェブページへの訪問、フォームへの入力、ウェビナーへの参加といったリードの行動を収集して点数をつけます。
属性と行動の2軸で加点や減点のスコアを決め、それらを自動的に計算するのがスコアリングの機能です。
属性スコアは「自社がターゲットにしたリード」、行動スコアは「顧客側の現在の興味度合い」を表し、この2つの観点の掛け合わせによる評価で点数が加算されます。
そしてある一定の数値をMQLのしきい値と定め、定義します。
顧客の段階に合わせてフォームからMQL判定に必要な情報を収集していく仕組みこそが、リードナーチャリングです。
リードナーチャリングは「顧客の興味関心を高め購買に導く仕組み」と曖昧な言葉で語られることが多いですが、「MQLを判定するための情報をウェブフォームを通じて収集する仕組み」と言い換えた方がわかりやすいかもしれません。
見込み顧客の購買検討段階とカスタマージャーニーを明確にし、それに応じたコンテンツとフォームを整備する必要があるのです。
複利の効果
金融投資の世界でも語られることですが、わずか0・1%の改善でも複利の効果が大きな改善につながります。
ABテストの結果、差が0・1%や0・01%とわずかであろうと、数値が上回ったものを正規の値として次の改善に生かすという意思決定のプロセスが重要です。
これを高速で回すことでわずかな差も大きな効果に変わっていくのです。
マーケティングの世界では0・1%の改善は大変大きな改善であることも多いです。
面白かったポイント
マーケティング組織を進化させる取り組みが言語化されていて我が意を得たりという感想。
学びになったのはテクノロジースタック、生産性をあげるためのこれからのキーワードになると思う。
The MODELが好きな人は絶対好きな本。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆
目次
序章 マーケティングオペレーション(MOps)が注目されている理由
第1 章 MOpsの役割
第2 章 MOpsの体制づくり
第3 章 顧客価値を創造するオペレーションモデルの設計・運用
第4 章 成果を可視化するレベニュープロセスマネジメントの設計・運用
第5 章 業務を最適化する生産性ダッシュボードの設計・運用
第6 章 自社に最適なテクノロジー選定と構築
第7 章 MOpsの進化と展望
第8 章 MOpsリーダーズの実例インタビュー