内容
マーケティング4.0
社会的になればなるほど、自分だけのために作られたものをほしがる。
ビッグデータ分析に支えられて、製品はよりパーソナライズされ、サービスはよりパーソナルになる。
デジタル経済では、これらのパラドックスをうまく利用することが成功へのカギになる。
現在の移行期には、新しいマーケティング・アプローチが必要だ。
マーケティングはデジタル経済におけるカスタマー・ジャーニーの質の変化に適応する必要があるということだ。
マーケターの役割は、認知から最終的に推奨に至るまで、カスタマー・ジャーニーの間中、顧客の道案内をすることである。
マーケティング4.0とは、企業と顧客のオンライン交流とオフライン交流を一体化させるマーケティング・アプローチである。
接続性
接続性は競争や顧客に対する見方も変えている。
今日、競争相手との協働や顧客との共創はきわめて重要だ。
接続性の高い世界において、ブランドや企業にとって重要な課題は、オンラインとオフラインの要素を統合して総合的な顧客体験をつくり上げることである。
接続された世界において、マーケティング・ミックスの概念は顧客参加の増大に対応できるように発展してきた。
マーケティング・ミックスの4Pは、4C(共創、通貨、共同活性化、カンバセーション)に改められるべきだろう。
接続性以前の時代には、顧客個人がブランドに対する自分の態度を決めていた。
だが、接続性の時代には、ブランドの当初の訴求力が、顧客を取り巻くコミュニティの影響を受け、顧客の最終的な態度を決定する。
接続性以前の時代には、ロイヤルティは往々にして顧客維持率とか再購入率として説明されていた。
だが、接続性の時代には、ロイヤルティは究極的には、ブランドを推奨する意思として定義される。
購買決定
購買決定を下す際、顧客は基本的に三つの要因に影響される。
第一に、テレビ広告、印刷広告、広報活動など、さまざまな媒体を通じたマーケティング・コミュニケーションである。
第二に、友達や家族の意見である。
第三に、過去の経験にもとづいた、特定のブランドに関する個人的な知識や態度である。
カンバセーション
別の視点から見ると、ヘイター・グループは、ラバー・グループを活性化して、マクドナルドやスターバックスを批判から擁護させるための必要悪なのだ。
好意的な意見と批判的な意見の両方がなければ、ブランドに関するカンバセーションは面白みのないものになり、人々をあまり魅了しなくなる。
男性・女性
女性市場は、家庭にいる主婦、職に就きたいと思っている主婦、職に就いている女性、キャリア・ウーマンの四つのセグメントに分けられると述べている。
簡単に言うと、女性の世界は家庭と仕事を中心に回っている。
女性がよく直面するジレンマは、家庭と仕事のどちらか一方を選ぶべきか、それとも両者のバランスをとるべきかという問題である。
だが、女性のほうがマルチタスキング(複数の仕事を同時にすること)に向いている。
男性の購入までの道筋は短く真っ直ぐなのに対し、女性のそれは螺旋形で、前の段階に戻って新しい情報を集めたり、次の段階に進むのが適切かどうか検討し直したりすることが多い。
女性は通常、オンライン上での調査に何時間もかけ、おまけに店頭でも、何時間もかけて品質を吟味したり、価格を比較したりする。
それに対し男性は、通常、調査にあまり時間をかけず、自分のほしいものをできるだけ早く手に入れようとする。
女性は男性より詳しく調査するだけでなく、ブランドについてのカンバセーションも多い。
友達や家族の意見を求め、他者の助けを喜んで受け入れる。
男性が買い物を済ませたいと思うだけなのに対し、女性は完璧な製品、完璧なサービス、完璧な解決策を見つけたいと願う。
PARとBAR
5Aに沿って考えると、測定する価値があるのは二つの指標、つまり購買行動率(PAR)とブランド推奨率(BAR)だ。
PARは企業がブランド認知をブランド購買に「コンバート」することにどれくらい成功しているかを示し、BARは企業がブランド認知をブランド推奨に「コンバート」することにどれくらい成功しているかを示している。
要するに、認知(A1)から行動(A4)へ、そして最終的に推奨(A5)へと進む顧客の割合を調べるわけだ。
PARとBARは、マーケターが自分の使ったカネ、とりわけブランド認知を生み出すために使ったカネの生産性を測定することを可能にする。
PARとBARは、実のところマーケティング投資収益率(ROMI)の優れた測定指標であることがわかっている。
ほとんどの産業にとって、最大のマーケティング支出は広告によって認知度を高めるために使われる。
したがって、ROMIの算出式ではブランド認知度を「マーケティング投資額」の代用とみなすことができる。
それに対し、「収益率」は二つの要素を含んでいる。
ひとつは購買行動で、これは企業の視点から言うと、直接、売上に変換される。
二つ目は推奨で、これは間接的に売上増大に変換される。
マーケターはさらに、認知から推奨までのすべての段階でコンバージョン率を測定すべきである。
ブランドの認知から訴求へのコンバージョン率が低い場合、それは顧客誘引力が弱いことを表す。
ブランドを認知している顧客が、当該ブランドを魅力的だと思わないわけである。
それはポジショニングのまずさやマーケティング・コミュニケーションのまずさが原因かもしれない。
これらの問題が修正されたならば、誘引力レベルはもっと1に近くなるはずである。
あるブランドにおいて、訴求から調査へのコンバージョン率が低い場合、それは顧客の好奇心が低いからである。
顧客はブランドについて質問したり、もっと調べたりしたいという思いには至らない。
これは通常、企業が顧客間のカンバセーション(ネット上や直接の会話)をスタートさせたり、情報共有を促進させたりすることに失敗したせいである。
だが、ブランドの好奇心レベルは決して高すぎてはいけない。
顧客がブランドについて抱く疑問が多すぎるとき、それはブランド・メッセージがあいまいであることを意味している。
好奇心レベルが高すぎる場合、ブランドが顧客の質問に(自社のコミュニケーション・チャネルを通じて)直接、また(忠実な推奨者を通じて)間接的に答える十分な能力を備えていることも必要だ。
残念ながらマーケターは、顧客と推奨者とのカンバセーションの結果は決してコントロールできない。
したがって、5A全体のコンバージョン率のうち好奇心レベルだけは、1に近づくべきではない。
あるブランドにおいて、調査から行動へのコンバージョン率が低い場合、それはコミットメントの低さを示している。
人々は当該ブランドについて語っているが、購入にコミットしてはいない。
これは通常、当該ブランドが販売チャネルを通じて、確認済みの関心を購入にコンバートできなかったということだ。
この失敗を生じさせる可能性があるマーケティング・ミックス(4P、すなわち製品、価格、流通、プロモーション)の欠陥は、いろいろ考えられる。
顧客が試用中に実際の製品を期待外れだと思うかもしれないし、価格が高すぎるかもしれない。
セールスパーソンが力不足だとか、製品が市場で簡単には入手できないといった問題も考えられる。
これらの問題を修正することは、ブランドがコミットメント・レベルを高める助けになるだろう。
あるブランドにおいて、行動から推奨へのコンバージョン率が低い場合、それは親近感の低さを示している。
当該ブランドを経験した顧客が、それを推奨したくなるほど感動してはいないということだ。
コンバージョン率の低さはお粗末なアフターサービスや製品性能の結果かもしれない。
顧客は当該ブランドに引きつけられて購入したが、購入した製品にやがて失望したのである。
使用経験の改善は、親近感レベルを高める助けになるはずである。
誘引力
今日、ブランドを魅力的にする要因は何だろう。
顧客が技術ベースのインタラクションに取り巻かれているデジタル時代には、人間らしさのあるブランドが最も魅力的になる。
顧客は人間中心のブランド、人間のような特性を持っていて、顧客と対等な友人としてインタラクションできるブランド、をますます求めるようになっている。
強力な社会的・環境的価値を支持するブランドに引き寄せられる顧客もいる。
こうしたブランドは、マーケティング3.0を実践して、顧客にとってフィールグッド・ファクター、すなわち心地よくする要素を提供している。
経験を重視し、ある種のライフスタイル運動を象徴するブランドにも、顧客は引き付けられる可能性がある。
コミットメント
さまざまなタッチポイントが、それぞれ予算も目標も異なる組織内の別々の人間に管理されているので、シームレスな経験を提供するための最大の障害は縦割り構造の組織である。
これは通常、チャネル間の対立に結びついている。
マーケターは縦割り組織の壁を打ち破り、顧客の身になって考える必要がある。
最も完璧なシナリオを使ってカスタマー・ジャーニーのマップを作成し、顧客を購買にコミットさせるために、それぞれのチャネルの役割を明確にする必要がある。
この場合、チャネルは、(特定の市場セグメントに対処する)市場スペシャリストや(特定の製品カテゴリーを販売する)製品スペシャリストから、(カスタマー・ジャーニー全体で特定の役割を果たす)活動スペシャリストに変貌するべきである。
特定の活動のスペシャリストであるにもかかわらず、通常、それぞれのチャネルに売買成約の権限が与えられている。
親近感
長期志向のマーケターは、売買の成約を、もっと大きな実りをもたらしうるリレーションシップの出発点とみなす。
それは推奨を獲得するための決定的瞬間でもある。
ほとんどの顧客にとって、使用やアフターサービスを含む購入後経験は、製品やサービスの実際のパフォーマンスがマーケターによる購入前の主張と一致しているかどうかを評価することに他ならない。
実際の経験が期待と一致したり期待を上回ったりすると、顧客は親近感を育み、忠実な推奨者になる可能性が高くなる。
その結果、マーケターは顧客から顧客生涯価値(CLV=顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の指標)や顧客紹介価値(CRV=顧客が企業に新規顧客をもたらす影響力の指標)を引き出すことができる。
ゲーミフィケーション
顧客にとって楽しいエンゲージメントを築くもうひとつの方法はゲーミフィケーションで、これはゲームの仕組みを使ってブランドとのエンゲージメントを強化するものだ。
ゲームは楽しく、夢中にさせ、競争をあおるので、潜在意識下で特定の顧客行動を促してくれる。
スターバックス・リワード・プログラムは、このコーヒーチェーン・ブランドが顧客と強いエンゲージメントを築くために使っている方法だ。
同社は、取引のたびに顧客にポイントを与え、蓄積ポイント数に応じたさまざまなレベルや節目で、それぞれ異なる特典や利益を与えている。
取引回数を増やしてレベルを上げる意欲を顧客に起こさせるのが狙いである。
ゲーミフィケーション、ゲームの原則をゲーム以外の場面で利用すること、は、顧客エンゲージメントを増進する強力な手法である。
ゲーミフィケーションは主として、エンゲージメントを築く二つの重要な場面で使われる。
それは、ロイヤルティ・プログラムと顧客コミュニティだ。
カスタマー・ジャーニーの類型
蝶ネクタイ型は、完璧なブランドの重要な特性を表している。
蝶ネクタイ型のカテゴリーでは、あるブランドを認知しているすべての人が、そのブランドの高い評判ゆえに自ら進んで当該ブランドを推奨する。
これはつまり、そのブランドが1という完璧なBARスコア(認知=推奨)を達成するということだ。
加えて、当該ブランドの訴求力はきわめて強いので、ブランドに引き付けられるすべての人が、それを購入する(訴求=行動)。
明確なポジショニングと適切な好奇心レベルのおかげで、当該ブランドに引き付けられる人は、もっと調べる必要があるとは必ずしも思わないのである。
人間中心
人間中心のマーケティングでは、マーケターは、マインドとハートとスピリットを持つ全人的存在としての顧客にアプローチする。
顧客の機能的ニーズと感情的ニーズを満たすだけでなく、顧客の潜在的な不安や欲求にも対処する。
デジタル化が進む世界でマーケティング4.0に移行すると、人間を中心にすることの重要性はますます高まると予想される。
横の関係のリーダーは、他者を支配する権限は有していないが、他者を引きつける六つの人間的特性を備えていると述べている。
身体的魅力、知性、社交性、感情性、パーソナビリティ(人間力)、道徳性だ。
これら六つの特性を備えていれば完璧な人間であり、ロールモデルになる人間といえる。
ブランドが、威圧的にならずに友人として顧客に影響を及ぼしたいと思うなら、これら六つの人間的特性を備えなくてはいけない。
強力なパーソナビリティを持つ人々は、自己をきちんと認識できている。
自分は何が得意かを自覚しており、何をまだ学ぶ必要があるかを認めている。
彼らは自信と自発性を持って自分を高めようとする。
同様に、強力なパーソナビリティを持つブランドは、自らが何のために存在しているのか、自らの存在理由、を正確に知っている。
その一方で、欠点を見せることを恐れず、自らの行動に100%責任を持つ。
人間中心の時代に顧客を引きつけるために、ブランドはますます人間的特性を採り入れるようになっている。
これを行うためには、ソーシャル・リスニングやネトノグラフィーや共感的リサーチによって、顧客の潜在的な不安や欲求を明らかにする必要がある。
こうした不安や欲求に効果的に対処するために、マーケターは自社ブランドの人間的側面を構築しなければならない。
ブランドは見た目が魅力的で、知的に説得力があり、社交性豊かで、感情的訴求力があり、同時に強力なパーソナビリティと道徳性を示さなければならない。
コンテンツ
コンテンツは確かに新しい広告だが、両者はまったくの別物だ。
広告が製品・サービスの販売を促進するために伝えたいと思う情報を含んでいるのに対し、コンテンツは顧客が自分の個人的・職業的目的を達成するために使いたいと思う情報を含んでいるのである。
ヒップマンクが提供する当を得たコンテンツは、顧客の調べる手間を実際を削減し、カスタマー・ジャーニーのパターンを理想的な「蝶ネクタイ型」に一歩近づける可能性がある。
長期的には社内にコンテンツ制作能力を持つようにする必要がある。
その能力がない場合は、外部からの調達を検討しなければならない。
第三者によって制作されたコンテンツのスポンサーになることだ。
ユーザー生成コンテンツをキュレートすることである。
北米のB2BおよびB2Cのマーケターは、対面イベントが最も効果的なコンテンツ・マーケティング手法であるという点で意見が一致している。
対面イベントでは、デジタルのコンテンツ・マーケティングに欠けている、より有意義な人間と人間のインタラクションが可能である。
インフルエンサーにブランデッド・コンテンツを推奨、拡散してもらうためには、コンテンツの質だけでは十分ではないことが多い。
互恵原則が適用されるので、重要なのはインフルエンサーとウィン・ウィンの関係を築き上げることだ。
そこでマーケターはインフルエンサーに、当該コンテンツを拡散することは自分の信用を高めるのに役立つと確信させる必要がある。
自分の到達範囲の拡大に熱心なインフルエンサーもおり、マーケターは彼らにより大きなオーディエンス集団へのアクセスを提供することによって、到達範囲の拡大を手助けできる。
オムニチャネル
オフラインで買い物をするとは、つまるところ、購入を約束する前に五感を使って製品・サービスを経験するということだ。
そのうえ、実店舗でのショッピングは、社会的ライフスタイルであり、ステータスでもある。
オフラインで買い物をするとき、人々は他者に出会ったり他者に見られたりすることを予想するが、それは人間対人間のつながりを得るということでもある。
モバイル・コマース、ウェブルーミング、ショールーミング、それにチャネル分析を含むこれらのトレンドは、ブランドの販売チャネルとコミュニケーション・チャネルを強化、統合して、全体的なオムニチャネル経験を提供するので、マーケターにとって必ず理解すべき重要なトレンドである。
ソーシャルCRM
カスタマー・ジャーニーにおけるこの最後の段階こそが、デジタル・マーケティングを伝統的マーケティングと区別する要素なのだ。
デジタル経済では、モバイル接続とソーシャル・メディア・コミュニティの空前の普及により、推奨の力が増幅されるからである。
初回購入者を忠実な推奨者にコンバートするためには、一連の顧客エンゲージメント活動が必要である。
デジタル時代にエンゲージメントを強化できる一般的な手法は三つある。
一つ目は、モバイル・アプリを使ってデジタルな顧客体験を高めること。
二つ目は、ソーシャルCRMアプリケーションを使って、顧客をカンバセーションに参加させ、ソリューションを提供するという手法。
三つ目は、ゲーミフィケーションの利用であり、これは適切な顧客行動を促進することによって、エンゲージメントを強化する助けになる。
これらの三つの手法は、併用できないものではない。
それどころか、マーケターは最善の結果に至るために三つを組み合わせて使うべきである。
ソーシャルCRMのユースケースは、通常、三つある。
ひとつは顧客の声を聴くこと。
ブランドは、ソーシャル・メディア上で自らについて交わされる一般的なカンバセーションから、知見を引き出すことができる。
二つ目は、ブランドを一般的なカンバセーションに参加させること。
企業は、より好ましい結果を得るために、意見を述べてカンバセーションに影響を与えるチームを任命してもよい。
三つ目のユースケースは、ブランドの危機につながりかねない不満に対処することだ。
企業は顧客の問題に対して、それが急速に広まる前にソリューションを提供する必要がある。
ソーシャルCRMはソーシャル・メディア・マーケティングと同じものではない。
両者の違いはぼやけてきてはいるが、ソーシャル・メディア・マーケティングがソーシャル・メディアを通じてブランド・メッセージやコンテンツを伝える活動であるのに対し、ソーシャルCRMは顧客の問題を解決する活動だ。
問題解決の結果、顧客を感嘆させることができれば、ソーシャルCRMは優れたソーシャル・メディア・マーケティングの取り組みにもなる。
両者の違いをもうひとつあげると、ソーシャル・メディアの乱立により、ソーシャル・メディア・マーケティングはソーシャルCRMより変化が激しい。
したがってブランドは、より多くの顧客に到達するためにさまざまなソーシャル・メディア・プラットフォームを利用するとともに、新たに登場するプラットフォームのトレンドを絶えず追いかける必要がある。
一方、継続的なダイアログに適したソーシャル・メディア・プラットフォームは数少ないので、ソーシャルCRMは比較的安定している。
ワオ
第一に、ワオは予期せぬ驚きから生まれる。
ある程度の期待は持っていたが、それよりはるかに多くのものを得たとき、それがワオの瞬間だ。
予想していた結果からの逸脱が、ワオを生み出す要因なのである。
第二に、ワオは個人的なもので、それを経験する人だけが誘発できる。
三つ目の特性として、ワオには伝染力がある。
ワオの瞬間を経験した顧客は、多くの他者にそのすばらしい出来事を伝え、広めるだろう。
企業やブランドは、カスタマー・ジャーニー全体にわたって、自らの創造性を強化し、顧客とのインタラクションを向上させる必要がある。
顧客の視点からすると、企業やブランドが与えてくれるものには三つのレベルがある。
喜び、経験、エンゲージメントだ。
製品の卓越性に重点を置く企業やブランドは、顧客に単に喜びを与える。
こうした企業やブランドは、顧客のニーズやウォンツを満たす製品・サービスを開発することに力を集中する。
だが、もっと前進する企業やブランドは、製品・サービスに加えて魅力的な顧客体験も提供するだろう。
このような企業やブランドは、店頭での経験とデジタル世界での経験に差異を設けたサービス・ブループリントやサービス・デザインで顧客とのインタラクションを向上させる。
最後に、最も高いレベルで活動する企業やブランドは、顧客と個人的なエンゲージメントを築き、顧客に自己実現の手段を与える。
個々の顧客の不安や欲求に対処する顧客体験に加えて、人生を変えるようなパーソナリゼーションをデザインするのである。
面白かったポイント
マーケター必読の書です。
マーケティングのROIをしっかり測定すること、カスタマー・ジャーニー毎にしっかり打ち手を打つことが大切です。
各状態毎の打ち手のアイデアが整理されているので、どこが不十分なのかが明確になります。
具体的な施策はやってみないと分からないところも多いですが、体系的にまとまっているのが良い。
科学的アプローチでマーケティング活動を進化することができると思います。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆
目次
■第1部■ マーケティングを形づくる基本的なトレンド
FUNDAMENTAL TRENDS SHAPING MARKETING
【第1章】 つながっている顧客へのパワーシフト
Power Shifts to the Connected Customers
●パワーシフトが引き起こす変革
●排除から包摂へ
●縦から横へ
●個人から社会へ
●まとめ――横のつながりを重視する包摂的、社会的なビジネス環境
【第2章】 つながっている顧客に対するマーケティングのパラドックス
The Paradoxes of Marketing to Connected Customers
●新しいタイプの顧客の登場
●接続性の神話を打ち破る
パラドックス1:オンライン交流対オフライン交流
パラドックス2:情報を持っている顧客
パラドックス3:批判的な意見
●まとめ──パラドックスの中のマーケティング
【第3章】 影響力のあるデジタル・サブカルチャー
The Influential Digital Subcultures
●デジタル時代における三つの主要セグメント
●若者──マインドシェアの獲得
●女性──市場シェアの拡大
●ネティズン──ハートシェアの拡大
●まとめ──若者、女性、ネティズン
【第4章】 デジタル経済におけるマーケティング4.0
Marketing 4.0 in the Digital Economy
●伝統的マーケティングからデジタル・マーケティングへの移行
◎セグメンテーションとターゲティングから、顧客コミュニティの承認へ
◎ブランド・ポジショニングと差別化から、ブランドの個性や規範の明確化へ
◎4Pを売り込むことから、4Cを利益につなげることへ
◎顧客サービス・プロセスから、協働による顧客ケアへ
●伝統的マーケティングとデジタル・マーケティングの統合
●まとめ──デジタル経済の中でマーケティングを再定義する
■第2部■ デジタル経済におけるマーケティングの新しいフレームワーク
NEW FRAMEWORKS FOR MARKETING IN THE DIGITAL ECONOMY
【第5章】 新しいカスタマー・ジャーニー
The New Customer Path
●顧客と有意義なつながりを築く
●どのような道筋をたどって購入するかを理解する──4Aから5Aへ
●認知から推奨に進ませる──Oゾーン(O3)
●まとめ──認知、訴求、調査、行動、推奨
【第6章】 マーケティングの生産性の測定指標
Marketing Productivity Metrics
●ブランドの認知率と推奨率の相関関係に着目する
●PARとBARの導入
●PARとBARを分解する
●生産性を向上させる
ソリューション1:誘引力を高める
ソリューション2:好奇心を最適化する
ソリューション3:コミットメントを強化する
ソリューション4:親近感を高める
●まとめ──購買行動率とブランド推奨率
【第7章】 産業類型とベスト・プラクティス
Industry Archetypes and Best Practices
●カスタマー・ジャーニーを類型化する
●四つの主な産業類型
パターン1:ドアノブ型
パターン2:金魚型
パターン3:トランペット型
パターン4:漏斗型
●理想的なパターン 蝶ネクタイ型
●四つのマーケティング・ベスト・プラクティス152
●まとめ──さまざまな産業から学ぶ
■第3部■ デジタル経済におけるマーケティングの戦術的応用
TACTICAL MARKETING APPLICATIONS IN THE DIGITAL ECONOMY
【第8章】 ブランドの誘引力を高める人間中心のマーケティング161
Human-Centric Marketing for Brand Attraction
●デジタル化により高まる人間的性格の重要性
●デジタル人類学を使って人間を理解する
◎ソーシャル・リスニング
◎ネトノグラフィー
◎共感的リサーチ
●人間中心のブランドの六つの特性を構築する
特性1:身体的魅力
特性2:知性
特性3:社交性
特性4:感情性
特性5:パーソナビリティ
特性6:道徳性
●まとめ──ブランドが人間味を持つとき
【第9章】 ブランドへの好奇心をかき立てるコンテンツ・マーケティング
Content Marketing for Brand Curiosity
●コンテンツは新しい広告、ハッシュタグは新しいタグライン
●段階的なコンテンツ・マーケティング
第一段階:目標設定
第二段階:オーディエンス・マッピング
第三段階:コンテンツの構想とプランニング
第四段階:コンテンツの制作
第五段階:コンテンツの配信
第六段階:コンテンツの拡散
第七段階:コンテンツ・マーケティングの評価
第八段階:コンテンツ・マーケティングの改善
●まとめ──コンテンツでカンバセーションを生み出す
【第10章】 ブランド・コミットメントを生み出すオムニチャネル・マーケティング
Omnichannel Marketing for Brand Commitment
●オムニチャネル・マーケティングの台頭
トレンド1:ナウ・エコノミーの中でモバイル・コマースに集中する
トレンド2:「ウェブルーミング」をオフライン・チャネルに持ち込む
トレンド3:「ショールーミング」をオンライン・チャネルに持ち込む
●ビッグデータ分析でオムニチャネル経験を最適化する ●段階的なオムニチャネル・マーケティング
第一段階:カスタマー・ジャーニー全体に、考えられるすべてのタッチポイントとチャネルをマッピングする
第二段階:最も重要なタッチポイントとチャネルを特定する
第三段階:最も重要なタッチポイントとチャネルを改善、統合する
●まとめ――オンライン・チャネルとオフライン・チャネルの最良の要素を統合する
【第11章】 ブランド・アフィニティを築くためのエンゲージメント・マーケティング
Engagement Marketing for Brand Affinity
●デジタル時代にエンゲージメントを強化する
●モバイル・アプリでデジタル経験を高める
第一段階:ユースケースを決定する
第二段階:主な機能とユーザー・インターフェースをデザインする
第三段階:バックエンドの統合を確立する
●ソーシャルCRMでソリューションを提供する
ステップ1:察知・対応能力を築く
ステップ2:ソーシャルCRM担当スタッフを育成し、権限を与える
ステップ3:コミュニティの関与を利用する
●ゲーミフィケーションで望ましい行動を促進する
ステップ1:促したい行動を決める
ステップ2:顧客の登録方法と階層化方法を決める
ステップ3:表彰と見返りを決める
●まとめ──モバイル・アプリ、ソーシャルCRM、ゲーミフィケーション
むすび──「ワオ! 」を生み出すブランドになろう