マイケル・ポーターの競争戦略

ビジネス

『マイケル・ポーターの競争戦略』ジョアン・マグレッタ

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内容

「戦略の本質は、何をやらないかを選択することだ」

なぜなら戦略が失敗する原因として最も多いのが、これを怠ることだからだ。

 

適合性

適合性は、バリューチェーン内の活動間の相互関係に関わるものだ。

適合性の考え方は、ある面では実にわかりやすい。

ビジネスでの競争に必要な職能分野を連携させることの大切さ──と難しさ──は、経営者なら誰でも知っている。

だが適合性には単なる連携を超えて、競争優位を「増幅」させ、その持続性を高めるはたらきがある。

 

ユニーク

組織が競争に勝てるかどうかは、独自の価値を生み出せるかどうかにかかっている。

ポーターは、一位を目指すのではなく、ユニークな存在になれと諭す。

競争の本質は、競合他社を打ち負かすことではなく、価値を創造することにある。

 

戦略は、競争にさらされた組織がいかにして卓越した業績を達成するのか、その方法を説明する。

この定義は単純そうだが、そうではない。

 

ビジネスでは複数の勝者が繁栄、共存することができる。

このような競争は、競合他社を破壊することではなく、顧客のニーズを満たすことに焦点を置く。

あたりを見回してみよう。

満たすべきニーズは無数にある。

つまり、勝つための方法もそれだけたくさんあるのだ。

 

競合企業が互いの製品を模倣し合えば、顧客は価格の低下というメリットと引き換えに、選択肢の減少という代償を強いられるかもしれない。

業界が標準的な製品・サービスに向かって同質化すれば、「平均的」な顧客は恩恵にあずかるだろう。

だが平均とは、要求の多い顧客と少ない顧客の中間をとったものだということを忘れてはならない。

つまりどちらの集団にも、平均的な製品・サービスではニーズを十分に満たせない顧客がいるのだ。

 

利益

競争の主眼はライバルを負かすことにあるのではない。

肝心なのは利益をあげることだ。

 

買い手(法人、個人にかかわらず)の価格感度は、業界の製品が次のような場合に高くなる傾向にある。

◎差別化されていない

◎買い手のほかのコストや予算と比較して、相対的に高価である

◎買い手の製品・サービスの質に影響をおよぼさない

 

参入障壁

参入障壁にはいくつかの種類がある。

生産量が増えると、単位あたりコストは下がるだろうか?

顧客がサプライヤーを変更すると、スイッチングコストが生じるだろうか?

ある企業の製品の利用者が増えるにつれて、利用者にとっての製品の価値は高まるだろうか?(これはネットワーク効果と呼ばれる)。

供給サイドの規模の経済性で検討したように、ここでもやはりその価値がどこから生じ、金銭に直すといくらほどになるのかを明らかにする必要がある。

企業の安定したイメージや評判が、その製品を「安全」な選択肢にしていることもある。

ネットワークの大きさが価値の源泉という場合もある。

 

事業に新規参入するための「入場料」はいくらだろう?

どれほどの資本投資が必要か?

 

業界の既存企業には、規模とは別に、新規参入者にもちえない強みがあるだろうか?

たとえば独占的な技術やゆるぎないブランド、有利な立地、流通チャネルとの結びつきなどだ。

 

競争の真の目的は、ライバル企業の商売を奪うことではない。

利益をあげることだ。

ビジネスにおける競争の本質は、利益をめぐる攻防であり、業界が生み出す価値の分配をめぐる駆け引きである。

 

バリューチェーン

経済的目標とは、すべてのインプット(投入物)のコストの総和を超える価値をもつ製品・サービスを生産することだ。

別の言葉でいえば、資源を有効に利用することが組織の本来の務めなのだ。

 

企業がプレミアム価格を持続できるのは、独自性と価値のあるものを顧客に提供できる場合に限られる。

割高な価格を要求できることが、差別化の本質である。

ポーターのいう差別化とは、割高な価格を要求できる能力のことだ。

 

卓越した収益性を構成する二つめの要素は、相対的コストだ。

つまり、何らかの方法で競合他社より低いコストで生産できるということだ。

これを実現するには、製品・サービスをより効率的に開発、生産、配送、販売、サポートする方法を見つけなくてはならない。

 

戦略に関わる選択は、相対的価格または相対的コストを自社に有利に変えるために行なうということだ。

当然ながら、最終的にものをいうのは価格とコストの差だ。

どんな戦略も、相対的価格と相対的コストの関係を自社に有利に動かすものでなくてはならない。

 

活動とはさまざまな経済的機能やプロセスのことで、たとえばサプライチェーンの管理、営業部隊の運営、製品開発、顧客への配送といったものが含まれる。

一般に活動は人材や技術、固定資産、運転資本、さまざまな種類の情報などを用いて行なわれる。

経営者はマーケティングや物流といった職能分野の観点からものごとを考える傾向にある。

自分の専門知識や所属組織がそのような体系で分類されているからだ。

 

だが戦略を考えるうえでは範囲が広すぎる。

競争優位を理解するには、活動に焦点を絞ることが何より大切だ。

活動は従来型の職能より範囲が狭い。

他方、組織のスキルや強み、能力(自社の得意なこと)という観点からものごとをとらえる経営者もいるが、これはあまりに抽象的で、往々にして範囲が広すぎる。

価格やコストに影響をおよぼすために経営者として何ができるかを明確に考えるには、活動のレベルまで掘り下げ、「自社の得意なこと」を、自社の行なう特定の活動に具現化する必要がある。

 

企業が製品を設計、生産、販売、配送、サポートするために遂行する活動の集合は、バリューチェーンと呼ばれる。

バリューチェーンはより大きなバリューシステムの一部である。

 

バリューシステムは、エンドユーザーのための価値創造に関わる、より大きな活動の集合

バリューチェーンは、企業を戦略的に意味のある活動に分解する強力なツールだ。

そうすることで企業は自らの競争優位の源泉、つまり価格の引き上げまたはコストの低下をもたらす特定の活動(非営利組織なら、支援対象者にとっての価値を高めるか、支援にかかるコストを減らすような活動)に焦点をあてることができる。

 

自社の相対的なコストポジション(RCP: Relative Cost Position)は、バリューチェーン内の一つひとつの活動を実行するコストによって構成される。

自社と競合他社のコスト構造には、実質的または潜在的な違いがあるだろうか?

このとき難しいのは、各活動に伴うすべてのコストをできる限り正確に把握することだ。

これには直接の事業コストや資産コストだけでなく、活動を行なうことで生じる間接コストも含まれる。

 

ほとんどの事業では、価値提案の三角形はさまざまな組み合わせをとり得る。

たとえば市場のほぼすべての顧客を対象とするが、特定のニーズまたはニーズ群だけを満たそうとする企業もある。

そうかと思えば的を絞った顧客基盤に対応し、そのニーズをきめ細かく満たそうとする企業もある。

より高い価値をプレミアム価格で提供する企業も、効率性を武器に低い相対的価格を提供する企業もある。

 

戦略の第一の条件は、価値提案がライバル企業のものと異なることだ。

ポーターの定義からいえば、ほかと同じ顧客に対応し、同じニーズを満たし、同じ相対的価格で販売する企業に、戦略はない。

最高を目指して競争しているだけだ。

 

アラビンド

アラビンドは、フォードが庶民にも買える自動車を製造するために用いた設計要素の中核を応用して、白内障手術を誰にでも受けられるようにしている。

その要素とは、活動の標準化、労働と設備の専門化、止まることのない量産製造ラインといったものだ。

 

ドクターVの解決策は、有償患者に市場価格を請求することだった。

アラビンドのコストは一般的な医療機関を大幅に下回るため、一人の有償患者で二人分の無償医療を賄える。

これがごく大まかにいって、アラビンドの競争優位のそろばん勘定だ。

 

ドクターVの築いた組織が、金銭以外の二つの大きな見返りを提供するからだ。

一つには、卓越した専門能力の開発に真剣にとりくんでいる。

たとえば大がかりな研修を開催したり、有力病院と提携するなどしている。

 

二つめは、無私の奉仕と思いやりの精神に訴えるからだ。

アラビンドは使命を帯びた組織であり、その使命は漠然としているようだが、アラビンドの競争優位を目に見える形で高めている。

アラビンドはこの理念があるからこそ、必要な人材を採用、保持し、活動を並外れた方法で、つまり価値提案に合わせて特別に調整された方法で組み合わせることができるのだ。

 

トレードオフ

トレードオフは、戦略における道路の分岐点のようなものだ。

どちらか一方の道を行けば、同時にもう一方を行くことはできない。

 

優れた戦略をもつ企業は、戦略を損益計算書に直接結びつけているというのがポーターの持論だ。

 

トレードオフが生じる状況はいろいろあるが、ポーターは特に三つを強調する。

第一が、製品の特性が両立しない場合、つまりあるニーズを最もよく満たす製品が、ほかのニーズをあまりよく満たせない場合だ。

 

第二が、活動そのものにトレードオフが生じる場合だ。

別のいい方をすると、ある種の価値を最もよく実現する活動の組み合わせは、別の価値を同じようによく実現することはない。

小ロットの特注品に合わせて設計された工場は、大量生産や規格品の製造には効率が悪い。

 

トレードオフが起きるもう一つの状況は、イメージや評判の不一致が生じる場合だ。

たとえばフェラーリがミニバンを発売するなど想像できるだろうか?

 

トレードオフがなければ、優れたアイデアは簡単に模倣される。

製品の機能も、サービスも、価値を実現するどんな方法も模倣できてしまう。

だがトレードオフが存在するとき、模倣者は経済的ペナルティを被る。

 

トレードオフは、「何をやらないか」の選択を、「何をやるか」の選択と同じくらい重要なものにする。

戦略を策定するにあたっては、どのニーズに対応し、どの製品を提供するかを決定することが重要なカギを握る。

だがこれと同じくらい重要なのが、どのニーズに対応しないか、どの製品や機能、サービスを提供しないかの決定だ。

難しいのはここからだ──この決定を守り抜かなくてはならない。

 

あらゆる顧客のあらゆるニーズに対応しないことを意図的に選択しない限り、どんな顧客のどんなニーズにもうまく対応することはできないのだ。

何をやらないかをはっきり打ち出す。

これが、やると決めたことで成功する最良の方法だ。

企業は戦略的トレードオフを受け入れ、一部のニーズに意図的に対応しないことによって、自ら選んだニーズに初めて真剣に対応することができる。

いいかえれば、戦略におけるトレードオフの役割は、一部の顧客を意図的に不満にさせることなのだ。

 

適合性

適合性が戦略において果たす役割を考えると、また別のよくある誤解が浮き彫りになる。

それは競争での成功が、たった一つのコアコンピタンス、つまり企業が非常に得意とする一つのことによって説明できるというものだ。

これの何が誤っているかといえば、優れた戦略はたった一つのものごと、たった一つの選択によって成り立っている考える点だ。

それに、優れた戦略がいくつかの独立した選択から生まれることもまずない。

優れた戦略は多くのものごとのつながりに、つまり相互依存的な選択を行なうことによって成り立っている。

 

ポーターがあげる三種類の適合性は、それぞれ少しずつ違う方法で作用して、競争優位に影響をおよぼす。

 

第一の適合性は、基本的な一貫性だ。

これは、一つひとつの活動が企業の価値提案と連携して、価値提案の主要なテーマに少しずつ貢献する状態をいう。

たとえばZARAの成功のカギを握る、スピードについて考えてみよう。

ZARAは何ごとにも必要以上の時間がかからないよう、バリューチェーン内のすべての段階の活動を組み合わせている。

すばやい対応が可能なデザインチームを構成し、工場を近くに配置し、自前のトラック部隊で迅速な配送を保証し、IT投資によりデザイン部門と製造部門の敏速なコミュニケーションを確保している。

これら一つひとつの活動が、スピードに貢献する。

このようにZARAは基本的な一貫性の条件をクリアしている。

 

第二の適合性は、活動が互いを補完または補強するときに生じる。

一つひとつの活動の価値が、ほかの活動によって高められる、真の相乗効果だ。

ZARAの人通りの多い立地にある店舗と多数の新作は、互いを補強し合う。

店舗が非常に目立つ場所にあることが、二週間に一度在庫商品を回転させるという目標の達成に役立っている。

大きなディスプレイ・ウインドウは、顧客を引き寄せる灯台のようなものだ。

 

ポーターの第三の適合性は代替だ。

ある活動を行なうことで、ほかの活動を行なわずにすむようになる場合に生じる。

イケアの本物の部屋のようなディスプレイと製品につけられたタグは、店員を代替する。

ZARAの絶好の店舗立地と商品の回転の速さは、従来型の宣伝を不要にしている。

 

活動マップ

ポーターは「活動システム・マップ」と呼ぶツールをつくった。

これは企業の主要な活動と、活動と価値提案との関係、活動間の関係を図に表したものだ。

 

これをやるには、まず価値提案の核となる要素をあげる。

たとえばイケアについて、次の三つを考えてみよう。

特徴あるデザイン、低価格、即日使えることだ。

 

次に事業で行なわれている最も顕著な活動、たとえば顧客価値の創出と最も関係が深い活動や、多額のコストを生じる活動などを特定する。

当該企業がそれぞれの段階で選択した独自の活動を書き出してみよう。

これをすることで競合他社との対比が明らかになる。

たとえばイケアのバリューチェーンと従来型の家具店のバリューチェーンをざっと比べただけで、イケアの店内サービスと配送の独自の組み合わせが浮き彫りになる。

 

続いて以下のようなマップに活動を書きこみ、適合性が存在する箇所を線で結ぶ。

つまり活動が価値提案に寄与している箇所や、二つの活動が互いに影響をおよぼし合う箇所だ。

イケアのマップでは、フラットパックが低価格とすぐに手に入る喜びに一役買っている。

フラットパックのおかげで顧客が自分で家具をもち帰れるからだ。

イケアの活動をまるごとマッピングすると、緻密に絡み合う蜘蛛の巣状のマップができあがる。

この形状は戦略にとってプラスになる。

反対に結びつきが少ないマップは、戦略の脆弱性を示すことが多い。

 

活動マップを使うことで、それぞれの活動が全体的なポジショニング(どの顧客に対応し、どのニーズを満たし、相対的価格にどの程度寄与しているか)をどれだけよく支えているかを把握できる。

活動マップは適合性を強化する方法を見つけるのに役立つ。

各活動の責任者に聞けば、活動の成果がほかの活動によって阻害されていないかどうかはたいていわかる。

 

ZARAの成功をもたらしているのは、相互に依存する活動が織りなすシステム全体であって、一つや二つの強力な部分ではない。

ZARAが活動を組み合わせるにあたって行なったさまざまなトレードオフと、それら活動が互いに与え合う影響が相まって、成功をもたらしているのだ。

適合性とは、一つひとつの活動が──および活動に必要なスキル、能力、資源が──システム全体とも、戦略とも切り離せない状態をいう。

 

適合性は模倣をさらに難しくする。

模倣の恩恵を受けるには、相互依存的な活動が織りなす網の目全体を模倣する必要があるからだ。

たとえ重要な相互関係を理解できたとしても、すべてを模倣するのは至難の業だ。

適合性を実現するには組織に大きな負担がかかる。

製品の機能や営業部隊の手法をとり入れるのは簡単でも、活動システム全体を再現するとなると一筋縄ではいかない。

多数の作業グループや部署、職能の全体にわたって意思決定や行動をすり合わせなくてはならない。

 

優れた戦略は、すべての部分が継ぎ目なく組み合わさる複雑なシステムのようなものだ。

企業の行なう活動の一つひとつが、ほかの活動の価値を増幅させる。

これが競争優位を、そして持続性を強化する。

 

「適合性は」とポーターはいう、「活動間の結びつきを強め、最も緊密に結びついたバリューチェーンを生み出すことで、模倣者を閉め出すのだ」。

 

継続性

継続性は企業のアイデンティティを強化する──企業のブランドや評判、顧客との関係を築く。

継続性は個々の活動を改善するとともに、活動全体の適合性を高める。

組織は継続性のおかげで、戦略に即した独自の能力やスキルを強化できる。

 

唯一必要なのは、今後五年ないし一〇年間で相対的に堅牢なのはどの顧客やニーズか、というごく大まかな感覚だ。

戦略は、自らの選んだ顧客やニーズ──そしてこれらを適切な価格で満たすために必要なトレードオフ──がこの先もなくならないという、暗黙の賭けともいえる。

 

戦略変更が必要になるのはいつ?

第一に、顧客のニーズが変化するうちに、企業の価値提案が完全に時代遅れになることがある。

第二に、さまざまなイノベーションによって、戦略の基盤である重要なトレードオフが効力を失うことがある。

第三に、技術や経営面での飛躍的進歩が、既存の価値提案を完全にだめにすることがある。

 

戦略は到達点ではなく、道筋である。

有効な戦略は動態的なものだ。

戦略が定義するのは、市場で期待される成果であって、それを達成するための手段ではない。

戦略では方向性を維持することが欠かせないが、競争優位を維持するにはある種の変化が絶対に欠かせない。

第一に、つねに業務効果の限界線上にいなくてはならない。

そうでなければ、戦略の意義がなくなる。

戦略と相反しないベストプラクティスや、そのために必要なトレードオフを絶えず導入し続けなくてはならない。

この側面で後れをとるとコスト面で不利を被り、ほかの優位が損なわれてしまう。

 

将来的に重要になることを最初からすべて把握するのはまず不可能だということだ。

したがって変化を避けて通ることはできず、変化への対応力が決定的に重要になる。

しかし方向性を継続することで、変化に効果的に対応できる可能性が高まるのだ。

 

一〇の実践的な意味

1.最高を目指す競争は、一見正しいように思えるが、実は自己破壊的な競争方法である。

2.利益を生まない規模拡大や成長には、何の意味もない。競争の目的は市場シェアではなく、利益にある。

3.競争優位の目的は、ライバル企業を打ち負かすことではなく、顧客のために独自の価値を生み出すことにある。競争優位は必ず損益計算書に反映される。

4.戦略には特徴ある価値提案が絶対に欠かせない。だが戦略はマーケティングだけの問題ではない。特別に調整されたバリューチェーンがなくても実現できる価値提案は、戦略的に意味がない。

5.あらゆる顧客を満足させようと思わないこと。一部の顧客を意図的に不満にさせるのが、優れた戦略の特徴である。

6.戦略は組織がやらないことをはっきり打ち出して、初めて意味をもつ。トレードオフは、競争優位を実現し持続させる、戦略のかすがいだ。

7.優れた実行の重要性を過信してもいけないし、甘く見てもいけない。実行それ自体は持続的な優位の源泉にはならないが、これに後れをとると、どんなにすばらしい戦略があっても卓越した業績をあげることはできない。

8.優れた戦略は、一つではなく多数の選択に立脚しており、さまざまな選択間の結びつきのうえに成り立っている。一つのコアコンピタンスが持続可能な競争優位を生み出すことはまずない。

9.不確実な状況下で柔軟性を保つのは得策のように思えても、何の主義主張も持たず、何のとりえもない組織になるのがオチだ。変わりすぎることは、変わらなすぎることと同様、致命傷になりかねない。

10.一つの戦略に徹するうえで、大胆な将来予測は必要ない。戦略に徹することで、イノベーション能力と混乱への対応力がかえって高まるのだ。

 

需要サイドと供給サイド

よくある間違いは、マーケティングと戦略の混同です。

顧客やニーズに目を向けるうちに戦略が生まれるのは、ごく自然なことです。

だから価値提案を中心に据えた戦略をもつ企業が多い。

これは戦略の需要サイドにあたります。

 

だが堅牢な戦略の必要条件は、特別に調整されたバリューチェーン、すなわち価値を実現するための独自の活動の組み合わせをもっていることです。

つまり、戦略とは供給サイドの話でもあるのです。

戦略は需要サイドの選択と、バリューチェーンについての独自の選択(供給サイド)とを結びつけるもの。

この二つがそろわなければ、競争優位をもつことはできません。

 

強み

たとえばある企業が、顧客サービスが得意だと自負している。

そこでこれを「強み」として戦略を立てようとする。

ですが戦略における本当の強みは、競合他社よりうまくやれることでなくてはなりません。

そしてなぜ「うまく」やれるかといえば、競合他社と違う活動の組み合わせを選び、違う活動を行なっているからこそなのです。

 

戦略を自らだめにする企業が多い、というのが私の持論です。

誰に何をされるわけでもない。自分で潰している。

戦略が内部から崩壊するのです。

 

戦略の本質は、独自の道を生み出すことにあります。

特徴ある終点を目指して自分の土俵で戦う。

独自の価値を創造するために、自ら選んだ道を行くのです。

 

成長圧力

成長圧力は、戦略にとって最大の脅威の一つですからね。

ちなみに私のいう成長とは既存事業での成長であって、多角化による成長のことではありません。

もちろん難しさにかけては、どちらもひけをとらないのですが。

どんな成長でも、成長しさえすればいいと考える企業が多すぎます。

その結果、やり過ぎてしまうのです。

新しい製品ラインや市場セグメント、地域に手を出したあげく、独自性を失い、妥協を生み、適合性を損ない、しまいには競争優位を弱めてしまう。

 

利益ある成長

戦略を破綻させることなく、利益ある成長を実現するためのヒントをあげましょう。

第一に、けっしてまねしないこと。新しい製品やサービスを加えたり、似たような顧客層に進出したくなる誘惑はつねにあります。

第二に、戦略的ポジションを掘り下げるのはいいが、広げてはいけません。一般に、成長性は高いが独自性を発揮できない分野で熾烈な戦いをするより、独自性をもつ分野のニーズや顧客への浸透度を高めた方が、より速く、またずっと大きな利益をあげながら成長できるものです。成長機会を探すなら、まず現在のターゲット顧客層の中核に深く食いこむことです。

第三に、地理的範囲は的を絞った方法で拡大すること。国内の戦略的機会を掘り下げつくしたら、つねに海外という選択肢があるのです。

 

戦略はどうやって利益をあげるかという、基本的な存続性に関わる問題を超えて、もっと複雑な質問を投げかけます。

競合他社を上回る利益をあげるにはどうすればいいか、どうすれば卓越した収益を生み出せるのか、またその優位を長期間持続させるにはどうすればいいのかという問題です。

ビジネスモデルは、自社の収益と自社のコストとの関係にスポットライトをあてます。

だが戦略はさらに一歩踏みこんで、相対的価格と相対的コスト、またその持続性という重要な問題を考えるのです。

つまり自社の収益とコストが競合他社と比べてどうかということです。

そしてこれらをバリューチェーン内の活動に、また最終的には損益計算書と貸借対照表(バランスシート)に結びつけるのです。

 

戦略立案を成功させるカギ

一つは、当該事業を担当するチーム全員を集めて、一緒に計画を立てることです。

作業を分割して行ない、最後にホッチキス留めすればいいというものではありません。

戦略は事業の個々の部分ではなく、全体に関わるものです。

それは優れた戦略の基本原則です。

優れたマーケティング戦略なるものは存在しません。

あくまで全体戦略のなかの優れたマーケティング戦略だというだけです。

各事業部に計画を立てさせると、一貫性のある戦略ではなく、断片的な「ベストプラクティス集」になってしまうおそれがあります。

だからこそ戦略立案では経営陣全員を巻きこんで、業界や競合企業、機会、バリューチェーンについて考え、最終的にポジショニングと方向性について何らかの決定を下さなくてはならない。

続いて全員でそれを具体的な行動に落としこむ必要があります。

 

戦略の目的は、組織の全員の足並みを揃え、組織にとって望ましい選択を単独でも下せるようにすることにあります。

 

経営陣がいくら意欲にあふれていても、戦略をうまく実行できない。

これまで私は経営陣が反対者を野放しにした例を数多く見てきました。

彼らがもたらす負のエネルギーと混乱、時間の無駄は、戦略に大きなダメージを与えます。

もちろん意見が合わないのは健全な状態だし、経営者は自分の主張を述べ、考え直す機会を与えられるべきですが、いつかは議論に終止符を打たなくてはなりません。

これは民主主義やコンセンサス、万人の幸福とはまた別の話です。

要するに方向性をきめ、それに向けて全員を鼓舞するということなのです。

 

戦略は企業が目標を達成するために選択するポジショニングのことであり、行動は企業がそのポジショニングを実現するために進む道筋である。

 

面白かったポイント

めちゃくちゃよかった。

自分がこれまでやってきたことはバリューチェーンの設計・構築だということがよくわかりました。

しかし、これを周りに理解してもらうのは難しい。

経営者やCOOレベルじゃないと無理だろうな。

 

適合性や活動マップもまさに自分が考えていることそのものです。

言語化してもらえてとても気持ちがいい。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

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