爆速成長マネジメント

ビジネス

『爆速成長マネジメント』イラッド・ギル

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内容

あらゆるスタートアップ向けのアドバイスはコンテキストでしか役立たない。

誰にでも当てはまる汎用アドバイスがあるとするなら、「そんな汎用的なアドバイスなど存在しない」ことだろうか。

あくまであるひとりの体験談であり、全能なマニュアルではないことを踏まえてほしい。

 

プロダクト・マーケットフィット後にやるべきこと

プロダクト・マーケットフィットの次のお題は、市場を獲ることです。

具体的に言うなら、市場すべてにプロダクトが行き渡る方法を考え出すこと、そして独占的な市場シェアを獲得する方法を考え出すことです。

ほとんどのテクノロジー関連市場は、シェアのほとんどを1社で独占している傾向があるためです。

投資家視点で語ると、その最大手の会社の企業価値そのものが、その分野で新規に生み出される価値そのものとなります。

この立場になった企業は新製品の研究開発を含め、何でもやりたいことを実現できるリソースを持つようになります。

 

2つ目は次のプロダクトを成功させることです。

私たちはプロダクトサイクル・ビジネスの世界で戦っています。

テック事業のプロダクトはいずれ必ず陳腐化し、そのペースは想定より速くなっています。

手持ちのプロダクトで市場を勝ち取ることだけに集中してイノベーションを怠れば、プロダクトは古くなり錆びていきます。

その錆びついたものより優れたプロダクトをいずれ別の誰かがつくり、あなたのプロダクトは市場から追いやられます。

 

2つのタスクには共通項もあります。

市場シェアを獲れれば、新プロダクトの研究開発用に多額の資金を投下できるようになります。

また、M&A用の予算を確保できるので、必要なら2つ目のプロダクトは買収で手に入ります。

 

そして3つ目にやるべきことは「残り全部」です。

プロダクトと流通網に合わせて組織をつくり上げる作業です。

財務、人事、法務、マーケティング、広報、IR、採用で競争優位性を持つようにします。

後回しにできると考えがちですが、それができるのもほんの少しの間だけです。

素晴らしいプロダクトと良い営業体制が整っていれば、後回しにしても許される期間はあります。

しかし放置するほどリスクは上がり、致命的な失敗を負いかねません。

 

人事

最も失敗事例が可視化されているのは人事です。

人事組織の強化を後回しにして大きなトラブルに直面しているシリコンバレー企業は、水面下のものを含めかなりあります。

もう少し早く人事に真剣に取り組んだら、問題は起こらなかったでしょう。

しかし何らかの理由で当時はそれが重要ではないという決断が下されたわけです。

人事は真剣に取り組む必要があります。

 

社員数が50人から150人くらいの範囲のどこかですね。

50人を超えて150人に向かうまでに人事部門をつくらないと、間違いなく何らかの大失敗をするでしょう。

150という数字がダンバー数、つまり人間が直接人を認知できる上限だからです。

社員数が50人から150人となる段階で、全社員がお互いの顔と名前を知っている状況が失われます。

見知らぬ人たちが社内をうろついているような状況です。

 

マーケティング

現代の消費社会において、マジョリティ層は既存のもので十分に忙しいからです。

明確な理由で説得されない限り、彼らは新しいものに手を出す理由がありません。

マーケティング、グロースハック、ユーザー獲得など、説得方法の呼び方はなんでも構いませんが、この層にプロダクトを行き渡らせる機能をつくることが極めて重要です。

B2B事業でも同様です。

世界のほとんどのビジネスパーソンやCIOなどテクノロジー領域の意思決定者は、朝起きて「よし!今日は事業を革新する新サービスを探すぞ」と行動したりしません。

ビジネスパーソンは終日忙しいので、彼らに届ける手段を用意しなければいけないのです。

こちらも市場シェアの課題と直結します。

アーリーアダプター層とやり取りを続けていれば市場の5%を獲得できるかもしれませんが、95%のシェアは獲得できません。

そのままでは、別の誰かがその95%を手中に収める日がいつか訪れます。

 

価格

「うちの製品は魔法のように便利で誰にも真似できない素晴らしいものだが、価格は日用品のように安くしなければならない」といった思い込みです。

そんなことはなく、実際は真逆です。

高い価格にできれば、より営業とマーケティングに投資できるようになり、より市場を勝ち取れる可能性が高まり、今後取り組みたいと思っているすべての研究開発やM&Aを実現できる可能性が高まります。

高価格にすると急成長につながるという、二次元的な思考を持つべきと常に起業家たちに伝えています。

 

ネットワーク効果

ネットワーク効果の弱点は、普及の時と同スピードで減退することです。

効果が持続している時はよいものの、減退もまた恐ろしい速さで進むのです。

ネットワーク効果が非常に強固なポジションを築き上げるのは事実ですが、崩れる時は一気に崩れ落ちるリスクがあります。

自社の強みがネットワーク効果であると語る会社は心配になります。

どれだけ安定性があるかわからないからです。

 

データネットワーク効果が最も価値を発揮する最新の領域はディープラーニングだと言われていますが、ディープラーニングそのものにもイノベーションが起き、少量のデータセットで実現する手法が出てきています。

大量のデータを価値とするデータネットワーク効果と相反するイノベーションが、最も価値を発揮するであろうと言われるディープラーニングで起きているわけです。

そもそもの根拠すらブレているためリスキーに感じます。

 

投資比率

「投資比率は何%が適正です」と数字で回答するのは頭の悪い大企業がやりそうなことなのでやめておきます。

ちなみにこうした大企業は研究開発費を全体予算の何%にしていると語るでしょう。

一方で、本当に研究開発に関わったことがあれば、金額の問題ではないことは明らかです。

誰が担当しているかが重要なのです。

素晴らしいプロダクト発明家と素晴らしいアーキテクトさえ揃えれば、素晴らしいプロダクトは約束されたも同然です。

 

組織構造

マトリクス型は失敗に向かって一直線なので、独立したチーム同士のフラットな構造がよいと投資先には伝えています。

ジェフ・ベゾス式のピザ2枚型チーム作り(ピザ2枚を囲める程度の人数とコミュニケーション濃度)に私は賛成です。

ヒエラルキーは多くの場合イノベーションを殺してしまいますし、マトリクス型組織構造がうまくいく例はほとんど見かけません。

もちろん例外もありますが、新規事業の開発には独自の思考と高速の実行スピードが要求されるため、小規模チームで運用する以外に道はないと思っています。

 

CEOの役割

自分自身のタイムマネジメントで重要な要素は次の通り。

  • 権限委譲
  • カレンダーの振り返り習慣
  • 「ノー」という回答を増やす
  • これまでの働き方が通用しないことを自覚する
  • 人生で本当に大切なものに時間を充てる

 

会議

社員が30人近くなったら、週次の全社会議を実施する。

  • 定例化し、毎週実施する。
  • 重要な評価指標をレビューする。
  • 全体戦略やプロダクト戦略の課題と、日々の業務との関連性を説明できるようにしておく。社員に議題を用意させ、発表させても構わない。なお、この会を事業部の詳細報告をする場とせずに、指標と戦略について語る場にすること。
  • 全社会議はCEOのためではなく、直属の幹部メンバーのためだと意識すること。CEOは各幹部から報告を受けるが、幹部たちはこの会議でしか担当外の組織の状況を把握できない。全社会議は、社員同士の知識共有、問題提起、関係構築、協力体制、戦略共有などを目的に議論する場だ。

 

計画

短期視点になりすぎたり長期視点になりすぎたりしないように、バランスを意識すべきです。

個人的には2つの資料でこれを考えています。

ひとつ目はストライプで「チャーター」と呼んでいる長期計画。

チーム、プロダクト、会社の存在理由、その全体戦略がどんなものか、ここから3~5年後の成功がどんなものかを示す資料です。

2つ目は短期計画で、「直近で私たちが目指しているものは何か」という質問に答えるものです。

結果ベースのマネジメントモデルやOKR(目標と主要な結果)などを使います。

メンバー同士で「私たちが長期で目指すのはこれ。四半期ではこれを目指すために指標Xと指標Yを伸ばします」と語れるような仕組みです。

 

創業資料

真剣に考えたことがあるのですが、「創業資料」をすべての会社がまとめておくとよいでしょう。

特に社員数が50人や100人を超えるとより重要になります。

会社のミッション、ビジョン、そして全体戦略目標が書かれているものです。

 

取締役

取締役の「採用」条件を明確にする。

  • 経験(実務経験、業界経験、専門分野の経験)
  • 爆速成長企業への関与
  • 地頭と知性
  • 事業センスと戦略センス
  • 起業家フレンドリーな姿勢
  • 投資家/VCへのリスペクト

 

取締役の候補として、次のような態度をとる人物は要注意だ。

  • 創業者を「ガキ扱い」し、自身を「大人の監視役」と考える恩着せがましい年寄りの管理型経営幹部。このような人物の口車にのせられると、判断を誤ったり、創業者がCEOから外されたり、CEOがビジョンなしの「管理者」に差し替えられたりする危険がある。
  • 取締役を創業者の上司だと勘違いするマイクロマネジャー。
  • 事業成長への興味よりも役職による金銭報酬に意識が向いている人物。
  • 取締役になるのが目的の人物。取締役になることで自身の威厳が増すと考えたり、就任を利用して他の複数企業の取締役になろうと行動し始める人物。
  • 会社の投資家陣と人脈を築きたいと考える人物は、投資家に気に入られるために創業者を裏切るような最悪のケースも想定しなければならなくなる。
  • VCの手先。取締役あるあると言えるほど頻繁に起き、かつ対策が重要であるため別途説明する。

 

プロダクト・マーケットフィットにたどり着き、スケールに舵を切ると、取締役に求められる能力や人脈、必要なアドバイスの種類も変化する。

上場に向けて準備し始めると、より多くの独立系取締役や実務者が必要となり、業務特化型の取締役も必要になる(たとえば財務/監査委員会対応に向けた CFO経験者など)。

 

取締役会

取締役会の議題は「私たちは何のゲームで勝とうとしているのか」という質問に集約されます。

すべてのスタートアップは「死ぬことが前提の脱出ゲーム」から始まります。

崖から飛び降り、落下中に飛行機を組み立てるというたとえを私はよく使います。

前提が死ぬ運命なのです。

永続的な価値を持つものを生み出すために、ギャンブル性の高い環境で資産を投下しなければなりません。

アーリーステージは皆揃って同じ立場です。

誰もが「そのゲームの真っ只中だ」と答えられるでしょう。

難しくなるのはこの最初のギャンブルで勝ち抜き、いくらかの資産を築き上げた時です。

上場前の段階で起きます。

会社の強みとなる資産は組織や人材かもしれないし、市場でのポジショニングかもしれないし、キャッシュフローを生む事業かもしれない。

一度こうした資産を持つとゲームのルールが変わります。

何かを改善するために大きくリスクを背負って資産を投下することと、築き上げた資産の価値を減らさないことの適切なバランスを取る必要があります。

 

当然ですが優先順位をつけることも重要です。

私がこうした案を取締役会で出す場合、「何が大事かは君たちで判断してくれ。『ご意見ありがとう。ただ直近で対応すべきものとは考えていません』と言ってくれていいからね」と会話の最後に付け足すようにしています。

 

スタートアップの成功には、コミットしていて、モラルと権威があり、身を捧げていて、「最終的には自分がなんとかする」タイプの情熱を持つ人物がいることが必須です。

外部の専門家を採用してうまくいかない原因は、そうした情熱がないためです。

 

コミットメントがある人物なら、より多くのリスクを取るつもりもあるでしょう。

どのスタートアップにも、あらゆる人から「全然ダメだ、ばかげている」と言われ続ける暗黒期が存在します。

その時にこの人は何と言うだろうか。

「私が思いついたわけじゃない」と答えるのは管理者マインド。

創業者マインドの人物は「そんなことはない。この事業が成功するのはわかっている。私が成功させる。そのリスクと困難を受け入れ、血と汗を費やし、批判に耐え抜きやり切ってみせる」と答えます。

共同創業者にはこういう特性が必要です。

 

取締役会を生産的にするために、 CEOは会議前に次の実施に努めるべきだ。

  1. 取締役会の少なくとも48~72時間前に資料を共有する。参加者が事前に確認できるようにしておく。
  2. (創業者でない取締役が3人以上いる場合)事前に各取締役と30~60分の1on1電話ミーティングをしておく。取締役会の前に各メンバーから議題に対する意見(そして時折愚痴)を聞いておく。
  3. (創業者でない取締役が複数人の場合のみ)会議前夜の夕食、または当日に昼食/夕食を共にする。強制ではないが、こうした会を開けば取締役同士が絆を深め、会社に対する気持ちが強まると期待できる。特に取締役たちが物理的に離れた場所にいて、会のために飛行機を使うような場合に効果的だろう。

 

取締役問題のほとんどを解決する案がひとつあります。

スタートアップ界隈では到底受け入れられないのですが、常任の取締役を置かない運営方法です。

排除できない取締役の席は誰にも提供しません。

エンジェルリストと私の会社では実際にこの方法を取り入れました。

これまでの取締役のすべてに排除できる条件を付けています。

半永久的な取締役がそもそも存在しないのです。

 

人材

業務内容や求める経験と経歴を明記したジョブ・ディスクリプション(職務内容書)をそれぞれの役職で用意しておくことをお勧めする。

同時に、求めていないことや重視していない要素をリスト化しておくとよいだろう。

このジョブ・ディスクリプションは面接官に事前に共有し、人事からのメモを付け、求める人材像や優先事項への理解を深めてもらうように努めるべきだ。

 

私がこれまでに関わったすべての会社で、面接実施まで、オファーまでの素早さが内定承諾のコンバージョンに大きく影響する。

採用のコンバージョンに限らず、各面接にどれだけ時間がかかっているかは重要指標として常に追うべきだ。

面接間の時間を短縮し、オファーをすばやく出せるように最適化すべきだ。

 

採用担当組織内の役割分担

  • ソーサ―
  • リクルーター
  • 候補者リサーチャー
  • 採用マーケティング担当者
  • 大学のプログラム

 

社員のオンボーディング

バディシステム

爆速成長企業には独自の社内用語や社内ツール、社内特有の運用ルールが存在する。

新入社員にはパートナーとなる「バディ」をつけよう。

バディは指揮命令系統に属さない同僚として、ランチをしたり、社内の人をつなげたり、新入社員の「社内で質問するには当たり前すぎる」質問に答える役割を担ってくれるだろう。

バディシステムは1~3か月間ほど運用することが多い。

 

目標を設定する

マネジャーは、新入社員に 30日、 60日、 90日の目標を設定するとよいだろう。

こうすると、新入社員は自身の目指す方向性、コンテキスト、構造を把握できるようになる。

個人が優先すべきものが何か、何を成し遂げることが重要なのかはっきり示される。

 

古参社員

古参社員が長期に通用するかは、会社の拡大につれて短期的、中期的に自身の役割や影響力が小さくなるにもかかわらず、その間も学び続ける姿勢があるかを見るとわかる。

そういう社員は会社が拡大し続ける中で、長期的には自身の役割と影響度が大きくなることを理解している。

 

メディア露出

ほとんどの創業者、いやすべての創業者と言い換えましょう、は、メディア露出の重要性を過大評価しています。

もちろん露出も良いことです。

間違いなく役に立つし、価値もあります。

しかし、メディア露出に注力しなかったことを後悔するスタートアップよりも、会社全体がメディア露出に振り回される過ちを犯すスタートアップの方がはるかに多いのです。

 

多くの創業者はその誘惑に負けてしまいます。

それほど大変なことでもないし、旅行もできるし、会社の経費で落とせる。

そして自分が特別な存在に思えます。

創業者にはなるべく少なくするようにと私は伝えています。少ないほどよいと。

大成功している創業者を見ると、こういうことをしていないのがよくわかります。

 

経営幹部

経営幹部に求める資質

役割に関係なく、経営幹部が備えているべき重要な能力や資質を紹介しよう。

 

1担当部門の専門知識

・担当部門の主要な問題点や失敗の発生ポイントを認識しているか。

・組織内のメンバーはその人物の意見を尊重し、学びを得られると思っているか。

・会社の現在の規模や成長曲線と合っているか。会社のフェーズに合う人物を採用する必要があり、立場が上過ぎる人も下過ぎる人も雇ってはいけない。アルファベットのCFOのルース・ポラットを、売上がまだない 10人規模の会社の財務責任者として雇い入れる必要はないだろう。

 

2担当部門でチームをつくり、マネジメントする能力

・その幹部は優秀な人材を採用できるか。さらに優秀な人材を連れてくる採用文化を築けるか。

・担当部門でメンバーのやる気を引き出す方法を理解しているか。セールス担当とプロダクトマネジャーでは、望むインセンティブは異なる。

・部門の社員を適切にマネジメントできるか。デザイナーのマネジメントはえてしてカスタマーサポートチームのマネジメントとは異なるアプローチが必要になる。

・必要に応じて階層を増やした組織をつくれるか。過去にどんな規模の組織を管理した経験があるか、またその経験が現在のニーズにどう適合しているか。ここでも12~18か月先を考えるべきだ。

 

3人間関係を築く力

・ほかの経営幹部とうまくやっていけるか。

・担当部門に限らず、会社全体で相互に助け合う環境を構築できるか。

・自身の信条と異なる方針でも、会社にとって最も正しいことを実現しようとしているか。

・企業文化に合っているか。他の社員と同様に、文化に合う経営幹部と合わない経営幹部がいる。

 

4コミュニケーション能力の高さ

・会社横断のコミュニケーションが得意か。

・チームの変更、昇進、ロードマップ策定、目標設定その他について、ほかの経営幹部やCEO、創業者陣を常に巻き込めるか。創業者が内向的だったり発言が少ないタイプだったりする場合、経営幹部にとって創業者とのコミュニケーションには職人技が必要になる。

・根本的な問題を理解し、チームにそれを伝えられるか。取締役会、外部パートナー、顧客、その他主要な利害関係者と適切なコミュニケーションをとれるか。

・「社内横断型の共感力」で他部門の協力を得る効果的なコミュニケーションができるか。

 

5オーナー・メンタリティ

・担当領域にオーナーシップを持ち、スムーズかつ効果的な運用に取り組んでいるか。

・課題を自身事として捉え、解決しているか。CEOが概要を理解して関与できるほどに抽象化しながら、CEOが毎日全情報を把握しなくても済む、良い意味でのブラックボックス化ができているか。

・経営幹部という立場は、オーナーのように考え取り組むべきだということを理解しているか。

 

6スマートさと戦略的思考力

・担当部門を戦略的、全体的に考えているか。社内のあらゆる部門を戦略的に構築できることは意外と知られていない。CEOとして常々、「戦略的なXの組織はどのようなものか」と自問するのはよい訓練となる(Xには人事、オペレーション、プロダクトなどの言葉が入る)。

・担当部門の成熟度が会社の競合優位性につながることを理解しているか。ひとつか2つ優れた分野があれば多くの会社は成功できる。しかし、複数部門で秀でている企業は圧倒的に優位になれる(アップルはハードウェア設計、サプライチェーン、マーケティングすべてに強い)。

・原理原則に基づいて考えているか。専門知識を会社、チーム、プロダクトの文脈に当てはめて貢献できるか。それとも、前職の経験を単純に繰り返そうとしているだけなのか。

 

経営幹部なら30日以内で大体わかり、60日経つ頃には確実にわかります。

当然、事業の複雑さによっても変わります。

たとえばオープンドアのように、最高レベルの経営幹部でも全体を完全に把握するのに時間がかかる複雑な事業もあります。

ただ、一般的に経営幹部となる人たちは仕事に非常に精通しているので、キャリアの中で培ってきたパターン認識能力から素早く本題に着手できるはずです。

彼らが早期に苦戦しているようなら、それは危機的状況と認識した方がよいでしょう。

 

管理職だろうと現場だろうと、活躍している人の席にはいつも誰かが相談に来ています。

助けてもらえると思うから相談しに行くのです。

担当組織外の社員も含めて多くの人が幹部に会いに来ているようなら、それはとても良いサインと言えるでしょう。

 

1~3か月先を考える人は悪くはないですが、理想とも言えません。

6~12か月先読みタイプこそが極めて優秀な経営幹部です。

常に課題の解決策を持っているので、組織内では完璧な人物と思われがちです。

でもその理由は、常に6~12か月先のことを考えているからとも言えます。

この先何で行き詰まるか、改善まで時間を要するものが何かを正しく把握しています。

課題が可視化される頃には「ああ、それにはこう対応すればいいよ」と即答できるのです。

 

COO

COOを採用する時は、求める背景や経験を持つ人物をCEO自身が見つける必要がある。

創業者を支え、実務を行い、ビジョンを実行してくれる人物が理想だ。

 

一般的に、技術系・プロダクト系の創業者は、プロダクトや全体戦略に携わり続けたいと考える(そしてそうあるべきだ)。

COOは創業者が疎い事業領域や興味のない領域、あるいは単に管理する余裕のない部門を巻き取ってマネジメントし、体制を構築する。

COOの責務には次のようなものが考えられる。

 

1経営陣の対応領域を増やす。

COOは、技術系やプロダクト系の創業者のビジネスパートナーの役割を果たせる。

 

2会社のスケーリングに貢献する。

爆速成長企業には、事業拡大と仕組みの導入に特殊なニーズがある(たとえば、採用体制、コーポレート・ガバナンスなど)

 

3経営陣と組織の土台をつくる。

COOは、創業者が苦手とする分野、たとえば財務、会計、セールスなどを担当する経営幹部の採用やチームづくりに責任を持つことが多い。

プロダクト、エンジニアリング、マーケティングの経営幹部の採用に貢献することもある。

 

4創業者が取り組む時間がない、向いていない、または興味がない領域を担当する。

一般的にCOOは「ビジネスサイド」(組織設計/ M& A、事業開発、セールス、人事、採用など)のマネジメントを引き受け、創業者はプロダクト、デザイン、エンジニアリングに注力する(たとえばマーク・ザッカーバーグがフェイスブックでプロダクトを重視する姿勢)。

逆に、CEOがセールスに集中するためにプロダクト中心型のCOOを採用するケースもある。

 

5会社の次のフェーズに向けた文化をつくる。

シェリル・サンドバーグは、人材育成と卓越したマネジメント体制の文化を持ち込み、フェイスブックの組織全体の運営手法を改革している。

 

次の要素もあれば、なお望ましい。

1成熟していてエゴがない。

創業者のビジョンに賛同し実行するために、自身のエゴを抑えられる経験豊富な人物。

 

2創業者、 CEOとの相性が良い。

COOが創業者とうまく意思疎通できないと、対立と不幸な結末が訪れるだろう。

 

3会社や組織をスケールさせた経験がある。

1000人の組織のマネジメント経験と、 20人から1000人に会社を成長させた経験とは似て非なるものだ。

組織づくりだけではなく、急速なスケールが求められる場合は、過去に爆速成長を経験した人を探すとよい。

 

4起業家精神がある。

スケールの経験があると同時に、スタートアップで働いたことがある人(または大企業でゼロから何かをスケールさせた経験がある人)が理想だ。

 

5担当部門の専門知識がある。

COOは、担当部門での経験と専門知識を持っているべきだ。

 

6採用能力がある。

COOは会社の組織図の骨格をつくる。

優秀な人材を採用でき、自ら経営幹部をマネジメントできることが重要だ。

 

7見習う要素があり尊敬できる。

初めて創業者やマネジャーを務めるCEOに、マネジメントやその他のことを教えてくれるCOOは心強い。

ビル・ゲイツが学びを目的に経営幹部を雇った話は有名だ。

 

8仕組みづくりに長けている。

理想的な COO候補者は、他社でうまくいっている仕組みやベストプラクティスを参考に、会社に合う新しい仕組みを開発して導入する。

 

COOを採用する時は、創業者が譲れない責任領域がどこなのか(デザイン、プロダクト、マーケティング、エンジニアリングなど)、そして何を本当に委譲したいのか(事業開発、セールス、企業開発、財務、人事、オペレーションなど)を明確に決めておくこと。

これが明確でないと、初めの一歩から失敗のリスクを抱えることになる。

 

COOは一般論では組織のナンバー2として語られることが多い役職ですが、実際は創業者や会社の特徴によって必要な能力が異なる極めて属人的な役職です。

CMOやプロダクトヘッドなど、担当分野がおおかた定まっている役職とは違い、COOの役割は環境によって可変的です。

COOのいる会社を5つ挙げれば、職務内容や責任領域はすべて違うでしょう。

 

影響が大きいのはビジネスの変化の速度、成長率のグラフの角度です。

急激な成長スピードを観測したタイミングでCOOを追加するのがよいでしょう。

 

CEOが降りるタイミング

創業者が燃え尽きる理由は2つあります。

というか、理由は何百もあるでしょうけど、ひとまず2つとさせてください。

 

ひとつは、創業者が疲弊し切っている時。

関わっていた課題解決領域に情熱を持てなくなり、何かまったく違うことをしたいと思うようになったり、しばらく休みたいと思ったりします。

これが燃え尽きシナリオその1で、次に話すシナリオその2と同じくらいの頻度で起きていると思います。

 

疲弊による燃え尽きは、自分がやりたくない仕事をやり続けていて、そこから抜け出す方法を見つけられない状況のシナリオ2と混同されがちです。

自分が情熱を持つ分野に戻れていない状態が長く続く時の苦しみです。

 

肩書き

個人的には「できる限り肩書きを低くする」方針を勧めたい。

階層構造の問題が起きづらくなり、肩書きが上の人物の発言が優先されることを防げる。

 

スケーリング中の企業がよく直面する課題に技術的負債の処理があります。

一度足を止めてインフラを再構築したり再発明したりしなければならない時があります。

 

成果物が良いものかどうかが一目瞭然な部門です。

たとえばデザインなど。

若手で実績の少ないデザイナーに任せても、できが良いかどうかは一目でわかります。

一方で、CEOがはっきりと状況を理解しづらい、見えないものが多い部門では熟練者を採用した方がよいでしょう。

エンジニアリング部門での設計や、社内システムの運用などが該当します。

 

エンジニア型の起業家がトラブルに陥りやすい領域は、マーケティングや財務関連だと思います。

ビジネスモデルを固めるという非常に重要な課題がある中で、ビジネス系の起業家が優秀なエンジニアの見極めに苦労するように、エンジニア系の起業家は優秀なビジネス系人材の見極めに苦労します。

 

ギャップフィラー

目的から考えた方が自然かもしれません。

ギャップフィラーは、担当部門をスケールさせ、チームの発展のために意思決定するというユニークなポジションです。

ただし、チームをひとつの方向に引っ張りすぎないよう注意が必要です。

なぜなら、適任のリーダーを連れてきて、仕事を引き継ぎ、その人がチームをまとめる必要があるからです。

大きな目標を設定して、チームとともに全力でそれに向かって突き進める適任のリーダーを採用するのがギャップフィラーの仕事なので、そこはバランスが大事です。

そして成功するには、CEOや経営陣から認められ、信頼されていることが重要です。

 

ギャップフィラーはCEOや経営陣に、会社の段階に合わせ、それぞれ異なる経験や異なるタイプの人材を採用する必要があると説得しなければなりません。

ギャップフィラーとしてその部門を任せる候補者を見つけ、面接の準備をし、終わったら振り返りを行い、なぜその候補者を採用しようとしているのか経営陣に説明しなければならないので、これは非常に重要です。

 

ギャップフィラーは、初期の社員と現役の経営陣の両方から広く慕われ、信頼されている必要があります。

信用と信頼がなければ、担当チームの社員に受け入れられず、力を合わせるのは難しいからです。

サポート面で言うと、私が見てきた中でギャップフィラーがうまく機能するのは、その人が経営幹部でもあり、CEOやCOOに報告する立場にある場合だけです。

この立場だからこそリソース不足を明らかにしたり、サポートを求めたり、社内でうまくいっていることを彼らに伝えられます。

採用に影響を与え、経営幹部の採用を早めることもできます。

 

こういう言い方は好きではありませんが、指数関数的な成長をしている会社は、どこもこの役割が必要だと思います。

急拡大している企業は、外から見るとすべてうまく行っているように見えますが、あまりに速く成長しているため、社内はかなり混乱しています。

そしてその混乱具合を前々から想定して対処するのは難しいので、どの企業でもこの役割が必要になるのではないでしょうか。

 

急拡大している会社では次のようなことが起きます。

まず、全員の仕事量が2倍から5倍に増えます。

皆なんとか穴を埋めようと必死に働き、その結果、様々な仕事を担うようになります。

次に、人をどんどん採用します。

それで問題が解決するかと思いきや、仕事量は増える一方です。

増えた人員で今までできなかったプロジェクトなど、より多くの仕事に着手するからです。

そして組織の穴が埋まるよう人員を採用し続け、均衡状態に到達すると突然、個人の役割と仕事の範囲が狭くなります。

このフェーズは、特に会社が指数関数的に成長している時期に入社した初期の社員にとって、適応しにくい時期です。

これに適応できる人、つまり仕事の範囲が狭く、より焦点の絞られたものになることに対応し、変化を受け入れられる人は会社と共に成長できる人です。

 

グロースの速度は経営陣の経験と結束力によります。

30人の経験豊富なマネジャーが揃っていて、全員が会社の戦略をしっかり理解していれば、驚異的なスピードで拡大できます。

とはいえ、それには適切な幹部を選んで採用し、強い結束力を発揮しなければならないのですが、実際にそうした経営幹部を30人揃えてスタートした会社を私は知りません。

ただ、総じて言えばグロースの速度は、経営陣の力量に関係していると考えています。

 

多様性

ひとつ目は、イノベーションに貢献する分析的思考や複雑な問題解決では、多様性のあるチームの方が優れていると示す研究結果が多くあるからです。

チームの多様性と業績には相関があるという研究もあります。

後者は、あまり多くの人には響かないようです(何がどう影響しているのか、他の要因があるのかがわかりづらいため)。

ですが、チームの多様性と困難な問題を解決する能力との因果関係を示す豊富な研究結果には多くの会社が関心を持っています。

 

異なる視点を持つ人たちを集めると、イノベーションを起こしやすいチームになることがわかっています。

企業が多様性を追求する2つ目の理由は、幅広いユーザーに受け入れられるプロダクトやサービスが開発しやすくなるからです。

 

3つ目の理由は、採用が非常に難しくなっていることと関係しています。

多くの会社は今、「良い人を見つけるのは簡単じゃない。自分たちの人脈だけではダメだ。異なるバックグラウンドを持つ人たちにアピールできる会社にしないと人を増やせなくなる」と考えています。

私が一緒に仕事をしている会社の何社かにとってはこれが多様性を追求する最大の理由です。

 

社員エンゲージメント

これも調査研究があって、社員の退職を予測するよい方法は、「1年後もこの会社で働いていると思いますか」と尋ねる方法だそうです。

このように社員に直接尋ねることで、社員が実際に会社をどう思っているか把握できます。

 

資金調達

資金調達を行う。

3年分以上の預金を蓄えるのが理想的。

必要なら低めの評価額でも資金調達をしよう。

高望みしないこと。

 

ブランドマーケティング

ブランドマーケティングはブランドに対する印象形成、認知度の向上、ロゴのデザイン制作といったマーケティングの中でもより感覚的な部分に焦点を当てた分野だ。

 

広報

広報の仕事には、ストーリーづくり(会社のことを外部に伝えるストーリー)、メディア対応(メディアへの働きかけや問い合わせ対応、コンテンツ制作への協力)、イベント登壇(講演やネットワーキングを含む)、顧客の声や受賞歴の宣伝といったプロダクトにまつわる活動がある。

広報活動は企業のあらゆる活動に恩恵をもたらす。

企業は広報活動を通じて、プロダクトや役員のプロフィール、企業文化のストーリーを外部に伝えられる。

 

最近では広報にインフルエンサー対応を含めることもあるが、これはマーケティングが担当している場合も多い。

また、広報は企業が危機に陥った際の対応窓口となる。

広報の仕事とは総じて、会社のストーリーを継続的に報道機関やより広い世界に伝えることだ。

 

マーケティングでは提供機能を社内全体で共有するのがベストプラクティスです。

全事業部がひとつのマーケティングチームと関わり、それぞれのキャンペーンで、オペレーションやクリエイティブ面で協力できる仕組みをつくるということです。

完全な縦割りではなく、全事業部のリーダーが共通して使えるような組織がいいでしょう。

そもそもマーケティングは、最初から会社の共有機能と考えてチームを立ち上げるのがよいと思います。

 

自社に肯定的な報道があると、友人や家族から(もしかすると有名人からも)注目を集められる。

だが、それは会社の成功を反映したものではない。

メディア掲載より、収益性やスケールできる売上の方がはるかに重要な指標だ。

 

広報の主な仕事は会社の意義を伝えること、認知度を上げること、プロダクトや経営陣の評判を高めることなのです。

 

プロダクトマネジメント

優れたプロダクトマネジャーは、プロダクトのビジョン、ロードマップ、目標、戦略を決め、計画通りにプロダクト開発を進められる。

 

プロダクトマネジャーの役割は次の通り。

1プロダクトの戦略とビジョンを定める。

プロダクトの目的は何か。

顧客は誰か。

主な機能とユースケースは何か。

プロダクトの成功を示す指標は何か。

市場の状況はどうなっていて、自社プロダクトをどのようにポジショニングするか。

差別化のポイントは何か。

プロダクトの主要な流通網は何か。

ビジネスモデルや価格設定はどうするか。

 

プロダクトマネジャーはプロダクトの戦略を決めるのに他部門(デザイン、マーケティング、セールス、エンジニアリング、データサイエンスなど)と協力するが、最終的に責任を負うのはプロダクトマネジャーである。

プロダクトの戦略とビジョンには顧客の声を反映する必要がある。

プロダクトのどの段階でもユーザーに意見やフィードバックを聞き、反映できるようにしよう。

 

2プロダクトの優先順位づけと問題解決。

プロダクトマネジャーはプロダクトにまつわるあらゆるトレードオフを考慮してロードマップを決める。

そのためにできることは次の通りだ。

プロダクトの仕様書(PRD)をつくり、フィードバックを集める。

ロードマップ立案のためのミーティングを開催する。

関係部門と協力し、開発する機能の価値と工数のトレードオフを考え、開発の方針を決める。

 

計画の推進

タイムラインの設定、リソース配分、障害の解消。プロダクトマネジャーはエンジニアリング部門と綿密に協力し、チームが目標に向かって進めるよう次のようにサポートする。

(1)エンジニアリングやデザイン部門と話して開発リソースを確保し、メンバーの開発へのモチベーションを高める

(2)機能を減らし、優先順位をつけ、簡潔なロードマップをつくる

(3)削減できる不要な機能や作業時間がないか確かめる

(4)社内(デザインやセールス部門)や外部(顧客やパートナー)からの要望を吟味し、有益でないものは断る

「計画の推進」と言うと、プロダクトをローンチするまでの話と捉える人が多いが、実際にはローンチ後のメンテナンスや機能改善、プロダクトの提供終了を決めるところまで含まれる。

 

プロダクトマネジメントは、エンジニアリング、デザイン、セールスなどと協力するが、各部門との距離をうまく保つ必要がある。

エンジニアリング部門は自分たちが開発しているのだから、プロダクトの意思決定権も自分たちが持つべきと考えているかもしれない。

デザイン部門は、自分たちの仕事とプロダクトマネジャーの仕事が重複していると考えているかもしれない(実際はかなり異なる役割を担っている)。

セールス部門は、なぜプロダクトをもっと早く開発できないのか、なぜプロダクトマネジャーはセールスがエンジニアと直接話そうとするのを阻むのかと不満に思っているかもしれない(これはエンジニアが、セールスからの細々とした要望に気を取られることなく開発に集中できるようにするためだ)。

 

プロダクトマネジャーは、社内外の関係者からエンジニアやデザイナーを守る「盾」としての役割も果たす。

セールスやマーケティング担当者は、エンジニアに自分たちのほしい機能の開発を優先してもらいたいと思っている。

プロダクトマネジャーは、週次のミーティングで話し合えるようにエンジニアリング部門への意見や質問を取りまとめたり、セールスからの問い合わせ窓口になったりするとよいだろう。

こうしてエンジニアリングやデザイン部門が、セールスとマーケティング部門から来る要望に時間を取られ過ぎずに済む。

とはいえ、エンジニアに顧客のニーズをわかってもらう最善の方法は、顧客と引き会わせることだ。

顧客からのフィードバックを直接聞くことで見方が変わったり、生産的な議論をするきっかけになったりする。

 

優れたプロダクトマネジャーの特徴

プロダクトマネジャーの採用では、次の点に注目しよう。

1センスの良さ。

これは顧客のニーズを理解する洞察力があるということだ。

どんな機能が顧客のニーズを満たすのか。

別の業界から来たプロダクトマネジャーの場合、自社の顧客のニーズを最初から知っているわけではないだろう。

それでも優れたプロダクトマネジャーは顧客を知り、ニーズを理解するために必要なスキルとツールの知識を持っている。

 

2優先順位を決める力。

各機能が会社にもたらす価値とコストを比較して、開発の優先順位がつけられる。

セールスチームのための新プロダクトか、顧客のための新機能か、どちらの開発を優先すべきか。

価格はコンシューマー向け、あるいは中小企業のオーナー向けにすべきか。

80%の完成度でもすぐにでもローンチすべきプロダクトはあるか。

そのプロダクトはどんな問題を解決するのか。

 

3実行力。

プロダクトマネジャーの仕事の大部分は他部門の社員と話をし、プロダクトのローンチ、メンテナンス、カスタマーサポートに必要なリソースを調達することである。

プロダクトマネジャーはエンジニアリング、デザイン、法務、カスタマーサポートなどと協力して、ロードマップ通りに開発が進められるよう立ち回らなければならない。

 

4戦略的思考。

業界はどう変化しているのか。

プロダクトをどうポジショニングすれば競争を回避できるか。

1970年代にインテルが行った大胆な価格戦略はよい例だ。

当時、インテルは売上原価を下回る価格で新製品を売り出した。

販売数が多ければ製品の製造コストは下がり、販売単価が低ければ需要は増えると考えたからだった。

発売した新製品は、2年先の予想を超える売上を記録した。

コスト構造が大幅に改善したことで事業の収益性が高まり、インテルにとって持続可能なビジネスとなった。

 

5優れたコミュニケーション能力。

プロダクトマネジャーの仕事はプロダクトにまつわるあらゆるトレードオフを判断することだが、その決定事項について関係者に説明し、同意を得る必要がある。

 

6指標とデータを読み解く力。

プロダクトは数値目標を目安に改良していく。

プロダクトマネジャーはエンジニアリングやデータサイエンス部門と協力し、適切な指標を選ばなければならない。

これは言うほど簡単なことではない。

適切に思える指標でも、チームに弊害をもたらすことがある。

 

プロダクトマネジャーの4タイプ

採用したいプロダクトマネジャーのタイプは、プロダクトの種類によって異なるだろう。

会社によっては、次に挙げるプロダクトマネジャーの4タイプのうち、複数の特徴を持つ人が望ましい。

プロダクトマネジャーの中には複数の特徴を持つ人もいれば、ひとつの特徴だけを持つ人もいる。

 

1ビジネス型プロダクトマネジャー。

ビジネス型プロダクトマネジャーは、顧客の要望をロードマップに落とし込むのがうまい。

法人向けソフトウェアや、コンシューマープロダクトでもパートナー企業と接する分野で活躍していることが多い。

セールス部門と力を合わせ、顧客にプレゼンするのが得意。

それでいてエンジニアリングやデザイン部門と協力し、開発する機能の価値とコストとのトレードオフを判断するのに必要な技術力を持ち合わせている。

プロダクトの価格設定、顧客のセグメンテーション、顧客のニーズに関わる分野で最も力を発揮する。

 

2技術型プロダクトマネジャー。

技術型プロダクトマネジャーの多くは優れた技術力を持ち、インフラや検索品質、機械学習などプロダクトの裏側の部分でエンジニアと協力して仕事をするのが得意。

ユーザーに対する洞察力を身に着け、トレードオフの判断が的確にできるようになれば、法人向けサービスからコンシューマープロダクトまで幅広く対応できるプロダクトマネジャーになれる。

 

3デザイン型プロダクトマネジャー。

コンシューマープロダクトを担当していることが多く、ユーザー体験を重視する。

コンシューマープロダクトではデザイナーから転身していることが多い。

デザイナーはユーザー体験やビジュアル制作で素晴らしい才能を発揮するが、ビジネスを成立させるために必要な判断(広告モデルや価格設定など)をしてきた経験が少なかったり、プロダクトの細部にこだわりすぎたりする傾向がある(そのためプロダクト開発に時間がかかってしまう)。

デザイナーからプロダクトマネジャーになった人は研修を受け、トレードオフ(たとえば、デザインとマーケティングの間でどう折り合いをつけるか)を的確に判断する力を身につけよう。

デザイン型プロダクトマネジャーは、外向きの仕事やプロダクトのビジネス面より、エンジニアリングやデザインチームとの仕事に時間をかける傾向にある。

 

4グロース型プロダクトマネジャー。

分析的で数字を重視する。

顧客のプロダクト利用で最も重要な指標を見つけ、その指標を改善するのが得意。

最も優秀なグロース型プロダクトマネジャーは創造的で、強気に目標を追求する。

フェイスブックのグロースチームはメール配信とファネルの最適化、サインアップやコンバージョンでの大規模な多変量テストを通じてプロダクトをとことん改善し、数千万人のユーザーを獲得した。

グロース型プロダクトマネジャーは、エンジニアリング、マーケティング、ユーザー体験、場合によってはパートナーシップやセールス部門と協力する。

グロースマーケティング部門がプロダクトマネジメントの役割を担う場合もある。

その場合、プロダクトマネジャーはマーケティング部門に所属しているだろう。

 

一般的に、バックエンドを重視し、高い技術力を必要とするプロダクトほどプロダクトマネジャーの数は少なくなる。

たとえば、データベースの会社はコンシューマープロダクトの会社に比べ、エンジニアの人数に対するプロダクトマネジャーの割合は低い。

グーグルの場合、検索インフラチームにいるプロダクトマネジャーは数人だったが、UIとビジネスを重視するモバイルチームには多くのプロダクトマネジャーがいた(モバイルチームのエンジニアの人数は検索インフラチームよりはるかに少ない)。

 

プロダクトマネジャーの採用面接で重視すること

1プロダクトに対する洞察力。

次のような質問をしよう。

毎日使っているプロダクトはあるか。

あなたならプロダクトXをどのように変更するか。

特定のユーザー向けにするなら、プロダクトXのデザインをどう変えるか。

どんな機能を追加し、どの機能を廃止するか。

あなたがゼロから会社を始めるとしたら、どんなプロダクトをつくるか。

その理由は。

たとえば、子供向けモバイル端末を開発するなら、何を考えるか。

 

2プロダクトへの貢献度。

私がグーグルにいた頃、今まで出会った中でもずば抜けて優秀なプロダクトマネジャーが何人かいたが、たまたまよいタイミングに居合わせただけで、能力に劣る人も何人かいた。

有名なプロダクトに関わったプロダクトマネジャーを面接する時は、どのようにプロダクトに貢献したかを掘り下げて聞こう。

たとえば次のような質問をする。

プロダクトの要件定義とローンチでどのような役割を果たしたか。

誰がどの機能を思いついたか。

プロダクトの価格を現在のものにしようと提案したのは誰か。

 

3優先順位の決め方。

優先順位に関する質問はトレードオフそのものではなく、トレードオフを判断する際に使うフレームワークについて質問しよう。

実例やケーススタディを用いた内容がいいだろう。

たとえば、過去のプロダクト開発で、検討している機能が複数ある場合、どのように開発の優先順位をつけたかを聞く。

プロダクトマネジャーとしてどう意思決定をしたか。

何を重視し、どのようなデータを見て方針を決めたか。

経営陣からの要望に反して開発を断ったり、廃止したりした機能はあったか。

 

4コミュニケーション能力と問題解決力。

面接しているプロダクトマネジャーは前の会社の経営陣に、何かしらのビジョンやプロダクトを売り込んだだろうか。

エンジニアリングやデザイン部門と意見の相違や対立が起きた場合、どう解消したか。

プロダクトマネジャーとしてどのように他部門との信頼関係を築いたか。

どんなコミュニケーションのアプローチが適切と考えるか。

何をいつ伝えることが重要か。

ミスコミュニケーションによる問題はあったか。

問題が起きたらどう対処し、再発を防ぐために何を変えたか。

プロダクト、デザイン、エンジニアリング部門が対立することはよくある。

変化が早い環境ではなおのことだ。

プロダクトマネジャーには他部門との信頼関係を築き、すぐに対立を解消できる能力が必要だ。

 

5指標とデータを読み解く力。

以前関わったプロダクトではどんな指標を見ていたか。

その指標を選んだ理由は。

その指標を目標にしたことよる弊害はあったか。

どうすればそうした弊害を防げるか。

この会社のプロダクトでは、どの指標に注目すべきか。

その理由は。

指標はどのくらいの頻度で、どのような状況で見直すべきか。

プロダクトのローンチは成功だったかどうか、どのように判断するか。

 

優秀なプロダクトマネジャーには、そのままでは行き詰っていたであろうプロダクトや機能をローンチへと導き、エンジニアリングやデザイン部門と共にプロダクトのトレードオフを判断して開発を進め、ビジネスを成功させる戦略的視点を持ってプロダクトを率いてきた素晴らしい実績があるものだ。

 

プロダクトマネジメントのプロセス

仕様書テンプレートとロードマップの作成。

プロダクト開発の出発点は、何をつくるかを明確にし、周りの合意を得ることである。

プロダクトの要件は何か。

どのように動作するのか。

技術的な設計を考えるのはエンジニアリング部門の担当だが、プロダクトの要件を定めるのはプロダクトマネジャーの仕事だ。

誰のためのプロダクトなのか。

どのようなユースケースのためにあるのか。

何を解決するためのプロダクトなのか。

主な機能は何か。

プロダクトに影響を与える要素はどれか。

仕様書に大まかなワイヤーフレームやユーザージャーニーの説明を入れるといいだろう。

 

流通網と顧客基盤

スタートアップは非常に魅力的でユニークなプロダクトを開発し、競合から多くの顧客を獲得して成功を得たケースが多い。

スタートアップにとって顧客基盤は将来に渡り、重要な資産となる。

さらに最初のプロダクトで獲得した顧客に次のプロダクトをクロスセルすることで、顧客が自社プロダクトにかけるお金と時間を増やせるだろう。

プロダクトが成功し、事業が軌道に乗った会社の創業者は、プロダクトの開発能力こそ自分たちの最大の資産と考えがちだ。

しかし実際は、最初のプロダクトで得た流通網と顧客基盤が最大の資産なのである。

 

1顧客が乗り換えたくなる魅力的なプロダクトを開発する。

最初のプロダクトで大規模な顧客基盤を構築する。

 

2グロースを積極的に追求する。

グーグル、フェイスブック、ウーバーなどの大手テック企業は、初期から積極的にグロースを追求していた。

対してグロースに積極性でなかった企業は彼らほどの成功を手にすることはできなかった。

主力プロダクトがうまくいっていると、流通網を疎かにしてしまいやすい。

 

3流通網が最大の資産だと理解する。

企業買収や自社開発で揃えたプロダクトを流通網で消費者に提供する。

たとえば、ウーバーによるウーバーイーツの展開やジャンプの買収などがこれに当てはまる。

 

4自社だけですべて開発できないと理解する。

企業買収でプロダクトを拡充し、流通網に供給すること。

CEOは企業買収への抵抗感を克服する必要がある。

自社で開発した方が簡単であるとか、買収した会社を統合するのが難しいという意見をよく耳にする。

だが、爆速成長企業にはすべてを自社で賄うリソースはない。

爆速成長企業の多くは、買収企業が多すぎるのでなく、少なすぎるのが課題となっている。

企業はプロダクトだけでなく、流通でも競争している。

様々なプロダクトを買収や自社開発で、流通網に供給していこう。

 

資金調達

それは企業は以前ほどお金を必要としなくなったということです。

会社をつくる費用はかなり安くなっています。

ソフトウェアはすべてオープンソースです。

必要なハードウェアはすべてアマゾンが提供するアマゾンウェブサービス(AWS)内にあります。

マーケティングはすべてグーグル、ツイッター、フェイスブック、スナップチャット、アップストア、メールで行えます。

必要な人材もエンジニア採用がほとんどで、さらにその半分は外注できるでしょう。

加えて、カスタマーサービスの多くはコミュニティ内で対応できます。

 

今の時代、起業家が目指すべきは、数十億ドル規模の企業をひとりないしは2人、しかも匿名で築き上げた、ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトのような起業家でしょう。

あるいは50人ほどで、190億ドルの売却を果たしたワッツアップのような会社をつくることです。

 

少なくとも起業家にとっては、資本を与えようとする人が増えるのは良いことです。

一般的に言って、手にするのが高価で、難しいものの競争が増えるのは良いことなのです。

 

基本的に会社はベンチャーキャピタルと「アドバイス」「コントロール」「お金」の3つを取引します。

調達元の選択肢が増えるほど、この3つを分けられます。

適任の人からアドバイスを聞き、最も調達しやすいところから資金を手に入れ、会社をコントロールする権利を渡さずに済むようになるのです。

だから、選択肢が増えるのは良いことです。

 

ペルソナ

どの会社にも共通するのは、最初からターゲットとなる顧客のペルソナを正確に特定できていることだと思います。

大きな市場で事業を展開していて、ターゲットとなるペルソナが明確なら、事業を広げる前に、できる限りスケールに注力すべきでしょう。

 

面白かったポイント

ベンチャー経営幹部は必読の本です。

こんなに具体的に経営幹部、人材、プロダクト、マーケティングについて語られる本はありません。

 

ベンチャーはどんなプロダクトを作るのか?ありきなんですが、爆速成長しようと思ったら人・組織のマネジメントが最重要になります。

どんな組織構造にするか、どんな役割にするか、どんな人材を採用するか、ベンチャーの経営者の悩みはこれだけです。

 

自分がこれまで担ってきた役割も定義されていて非常にスッキリしました。

日本の組織設計はこの本を基にやるといいでしょう。

 

何度も読み直したり、辞書的に使っていきたいと思います。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

目次

第1章 CEOの役割
意思決定と幹部マネジメント クレア・ヒューズ・ジョンソン(ストライプCOO)に聞く

第2章 取締役会のマネジメント
取締役/CEOの交代とガバナンスの重要課題 リード・ホフマン(リンクトイン共同創業者、グレイロックパートナーズのパートナー)に聞く
第1部 取締役会のマネジメント バール・ラビカント(エンジェルリスト会長兼共同創業者)に聞く

第3章 人材の募集、採用、マネジメント
CEOの成長痛 サム・アルトマン(Yコンビネーター社長)に聞く

第4章 経営チームをつくる
第1部 経営幹部の採用、マネジメント、解雇 キース・ラボワ(コースラ・ベンチャーズ パートナー)に聞く
COOを雇うこと アーロン・レビィ(ボックスCEO兼共同創業者兼会長)に聞く
スケーリングは人数のことではない マリアム・ナフィシー(ミンテッド創業者兼CEO)に聞く

第5章 爆速成長期の組織構造
ウルフを呼ぶ:組織の穴を埋める「ギャップフィラー」という仕事 ルチ・サンビ(ドロップボックス元オペレーション担当役員)に聞く
文化は委任できない パトリック・コリソン(ストライプ共同創業者)に聞く
多様性は十分条件ではなく必要条件 ジョエル・エマーソン(パラダイム創業者兼CEO)に聞く

第6章 マーケティングと広報
嵐を乗り切るマーケティングと広報部隊をつくる シャノン・スタボ・ブレイトン(リンクトイン最高マーケティング責任者)に聞く
本当に必要な広報チームのつくり方 エリン・フォース(カットライン・コミュニケーションズ共同創業者)に聞く

第7章 プロダクトマネジメント

第8章 資金調達と企業評価額
第2部 株式公開する理由 キース・ラボワ(コースラ・ベンチャーズ パートナー)に聞く
第2部 レイターステージの資金調達をハックする ナバール・ラビカント(エンジェルリスト会長兼共同創業者)に聞く

第9章 M&A
ユーザーと世界のために、責任を持ってスケールする ヘマント・タネジャ(アドバンスト・エネルギー・エコノミー共同創業者)に聞く

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