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『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』佐藤航陽

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内容

テクノロジーの発達プロセス

物理的な位置に着目した際にも、テクノロジーの発達していくプロセスには、ある法則性が存在しています。

先ほどテクノロジーは人間のもつ機能の拡張だと述べましたが、その拡張は常に「身体の近く」から始まります。

 

最初は手足の拡張です。

鈍器・斧・弓などの武器は手を拡張し、草履は足を拡張しました。

そして、その後身体から離れ、物理的に離れた空間において人間の機能を拡張していきます。

掌の上にあった道具は、身体を離れ器具として室内に配置され、さらに室外へ飛び出し、汽車や自動車のような移動手段になって距離を克服し、最後は重力すら克服し飛行機として空へ、さらには地球を飛び出し宇宙へと向かっていきました。

 

テクノロジーは一定の順番を経て、物理的に遠くへと浸透し、浸透すればするほど日常の風景となり存在感を消していきます。

さらにテクノロジーが浸透する順番もある程度の法則性があります。

新しいテクノロジーは基本的には「消費者」から使われ始めて、次に「企業」で活用されて、最終的には「行政」に組みこまれます。

 

一部のギーク(技術オタク)が熱狂していて、それ以外の人がピンと来ていない・理解できないという状態が、取り掛かるタイミングとしてベスト。

 

メタバース

メタバースの本質は「インターネットが扱うコンテンツが2次元から3次元に進化すること」

 

賢い企業はVRの最適化を後回しにするはずです。

まずは3DCGの技術を磨きまくり、3~5年後を見据えてVR端末に対応していく。

多くのIT企業が、そういう動き方をするはずです。

 

『Fortnite』の中ではデジタルスキン(アバターと呼ばれる自分の分身に着せる服)を毎年約5500億円売り上げています。

これはグッチなどのラグジュアリーブランドと変わらない規模です。

 

Web3時代の覇者

絵師・漫画家・デザイナー・イラストレーター・CGクリエイターなどはこれまで趣味としてSNSに作品をアップするなどしていましたが、YouTuberのようにそれらが爆発的な収入に直結するというほどではありませんでした。

今後はメタバースによって3Dデータの需要が増加しますし、NFTによってデジタル作品に数千万円の価値がつくということも増えていきます。

Web2・0の時代では注目という形でSNS上のトラフィックを集めることができた人たちがYouTuberやインフルエンサーとして経済的な成功を手にしましたが、Web3の時代では人々が欲しがる作品をデジタルデータという形でゼロから作ることができるクリエイターが経済的な成功を手に入れることになるでしょう。

 

こういうシミュレーションをするときに『3D EXPERIENCity』のようなサービスはとても役立ちます。

2020年には、日本も国土交通省が『PLATEAU(プラトー)』というプラットフォームを立ち上げました。

 

バーチャル・ヒューマン

つまり人間は、他の人間には関心度がとても高い。

肌の質感や、表情の微妙な変化にピンとくる。

なのに世界の背景には、驚くほど鈍感である。

この特性は、メタバースの空間を作る上での非常に重要なポイントです。

 

本物の人間そっくりに造形されたバーチャル・ヒューマン「imma」(イマ)も人気です。

2018年にInstagramのアカウントが開設され(アカウントは「imma. gram」)、フォロワーは35万人以上います。

2021年夏には、東京パラリンピックの閉会式にも登場しました。

 

実在する人間のモデルは、加齢にともなって見た目が変化していきますし、いつまでも若々しいわけでもありません。

だったら自分たちのブランドに合ったバーチャル・ヒューマンを新たに作ってしまうか、immaのようなバーチャル・ヒューマンを探し出してスポンサー契約を結んだほうが、コスト・パフォーマンスが良いのです。

 

生態系の特徴

①自律的であること

第1に、うまく回っている生態系は自律的です。

指示や命令がなくても個々の参加者が自分で考えて行動し、改善を繰り返すことができます。

外部からの指示にしたがって生態系が回るのではなく、まるで集団そのものに意思があるかのように動くことができる。

自律的に回っている生態系は、うまくいっている証拠です。

生態系を自律的に回すためには、参加者が生態系内のルールをよく理解し、自分が何をすればよいかわかっている状態が保たれていなければいけません。

 

②有機的であること

第2に、それぞれの参加者がお互いに連携しながら、一つの生態系全体を成り立たせていること、つまり生態系が有機的であることもポイントです。

生命は信じられない数の細胞が集まって相互作用を進めながら、一つの生物として活動します。

生命と同様に、生態系もそこに参加する各人が交流しながら、全体を形づくっていくものです。

生態系が有機的であれば、参加者同士で相互コミュニケーションは常に行われます。

新しい人が入ってきたり、誰かが出て行ったりしても同一性を失いません。

人の出入りがあっても、以前と変わらずに動き続けます。

 

③分散的であること

第3に、生態系が分散的であることもポイントです。

「分散的」の反対語は何でしょう。「中央集権的」です。

生態系の真ん中に、常に指示をする司令塔がなければ成り立たない。

こういう生態系は、司令塔を失った瞬間大混乱に陥ります。

分散的な生態系は、司令塔なんて必要ありません。

指揮官がどこにもいなくても、全体が止まることなく動き続けます。

 

カリスマと仕組み

カリスマを中心に集団を作っていくやり方は、手っ取り早い近道のように思えるかもしれません。

しかし、これは一種のドーピングのようなものです。

カリスマに依存した集団は立ち上がりのスピードは速いですが、構造としては非常にもろいという弱点があります。

カリスマの存在が、実質的にはその集団にとって最大の急所です。

カリスマを叩くことによって、その集団を停止させることができるからです(単一障害点)。

 

仕組みとして回り、参加者にそれぞれの役割があり、自分の利益のために自分で考えて行動する。

こういう集団は、全体としてますます繁栄していくでしょう。

 

価値

人間が作る「社会」という生態系でやりとりされる価値は、3種類に大別されます。

①実用的価値、 ②感情的価値、 ③社会的価値の3つです。

 

これらの3つの価値の大きさは同じではありません。

「 ①実用的価値 > ②感情的価値 > ③社会的価値」の順番に大きくなります。

皮膚感覚で考えればわかるとおり、自分の役に立つことに人間は一番強く価値を見出すものです。

衣食住が満たされ、まともに生きていける状態でなければ、感情的な価値に対価を払おうとはなかなか思えません。

ボランティアや寄付も、余裕のある人でなければ興味をもちにくいのが現実です。

 

ただし世界が徐々に豊かになっていくにつれて、「 ①実用的価値 > ②感情的価値 > ③社会的価値」の配分は「 ①実用的価値 <②感情的価値 <③社会的価値」へとスライドしていくでしょう。

 

生態系の設計

①マッチングの支援

当たり前ですが、生産者に価値を供給してもらい、その価値が消費者に適切に届くようマッチングを促す仕組みが必要です。

また提供される価値の種類が増えていったとき、消費者の好みに合わせて見つけやすくしてあげなければなりません(検索性の向上)。

消費者の好みに合った生産者や、価値をおすすめしてあげる仕組み(レコメンデーションの実装)が生態系には必要です。

 

②信用の可視化

これはすべての生態系にいえることですが、生態系には「参加者の信用が可視化される仕組み」が絶対に必要です。

生態系には常に新しい参加者が入ってくるため、やりとりする相手が本当に信用できる人なのかわからないと、怖くて誰も動けません。

参加者が悪質な詐欺師だったり、悪意をもつ人物であったりする可能性も普通にあります。

そのため、参加者が生態系の中での行動を、お互いに評価する仕組みを導入してあげましょう。

信用を可視化するための指標を定めて、その指標を全員が見られる仕組みを作るのです(評価制度の導入)。

 

こうした信用情報が蓄積されていくことによって、新しい参加者はさまざまな判断がしやすくなります。

すると意思決定のコストはどんどん下がっていき、生態系内での価値のやりとりが活性化していくのです。

 

④自助努力できるための知見や道具の提供

生態系の強みは、参加者が自発的に努力することによって、全体が盛り上がっていく点です。

そのためには、貪欲で向上心がある生産者ほど、さらに成果を出しやすくする環境を整備してあげなければなりません。

 

生態系には、多様なモチベーションをもった参加者が入ってきます。

「今のままでもかまわない」という人もいれば、「もっと能力を伸ばして多くのチャンスをつかみたい」と向上心に燃える人もいるでしょう。

 

野心と向上心をもつ生産者には知識とノウハウを供給するプログラムを提供し、ツールを無料で提供してあげるのです。

サポートして背中を押し、彼らの活動を後方支援してあげましょう。

 

生態系を強固にする要素

価値の重ね合わせ

当然ながら、多様な価値をやりとりできる生態系のほうがより強固で盤石です。

生態系の成熟度によっては、扱う価値が変化することもあります。

 

コミュニケーションの促進

当然のことながら、参加者同士のコミュニケーションが活発であればあるほど、生態系は強固になって持続性が高まっていきます。

困ったことがあれば参加者同士で助け合い、わからないことがあればお互い質問し合える。

こういう関係性があると、問題があっても自分たちの力で対処していけます。

生態系の設計者は、参加者同士がコミュニケーションできる場を作り、コミュニケーションの頻度を増やす工夫をすることが大切です。

生態系の成熟を促すことができます。

 

ヒエラルキーの存在

ヒエラルキー(hierarchy)は「階層」や「序列」という意味です。

一般的にはネガティブなイメージのある単語ですが、ヒエラルキーが存在することによって参加者同士がコミュニケーションを取りやすくなり、関係性を築きやすくなります。

 

それぞれの業界で特定の指標が軸となってヒエラルキーが生まれ、ヒエラルキーをとっかかりに関係性が生まれていきます。

人間とは、ヒエラルキーを自然に作ってしまう生き物なのです。

ヒエラルキーがなければ、人間は自分と他人の立ち位置を推し量ることができません。

「ヒエラルキーは社会をいびつにする」と遠ざけると、お互いの関係性を構築するコストはかえって高くなってしまうのです。

 

流動性の確保

生態系内では、価値のやりとりが頻繁に行われ、コミュニケーションが活発に行われ、評価が短期間で更新される「流動性」を確保することが重要です。

流動性が高いほど生態系は活性化し、流動性が低いほど停滞していきます。

 

例えば、一度優位に立った人の地位がいつまでも固定化されたままだと、新しく入ってくる参加者には何の旨味もありません。

古くから存在する参加者は優位性の上にあぐらをかき、努力を怠り、新しい参加者は入ってこなくなります。

すると生態系全体が過疎化し、どんどん廃れていくのです。

 

不確実性の担保

不確実性は、生物の本能に宿る性質です。

不確実な環境に置かれたほうが、生物の集中力は増して活動が活発になります。

 

人間が自然界の真っただ中で暮らしていた時代は、天変地異に見舞われたり、他の動物から襲われたりする脅威に常にさらされていました。

人間は常に環境に適応して、生き残りの確率を高めようと努力してきたわけです。

それと同様に、生態系の外部環境や内部環境の変化が激しいと、生態系全体が活発化します。

 

何の変化もない環境に身を置かれた生物は、進化することをやめてしまうものです。

すると生態系は徐々に衰退していきます。

 

参加者個人を惹きつける仕掛け

生物の本能や脳の仕組みに根差したこれらの仕掛けは、世の中でヒットしているサービスやゲーム・コミュニティには織りこまれているものです。

 

①ランダム・フィードバック

自分のアクションに対するフィードバック(反応)がバラバラだったときに、脳が報酬を感じる性質が人にはあります。

人間がゲームを面白いと感じる理由の一つです。

人間はかつて、不確実な自然界のど真ん中で暮らしていました。

その時代の名残のような機能です。

自分の行動に対して返ってくる反応が一定ではないときに、そこに意識を向けてしまう癖が人間にはあります。

 

大半のゲームには、ランダム・フィードバックの要素が組みこまれてきました。

パチンコや競馬・海外のカジノといったギャンブルが典型的です。

予測不能なバグが発生するゲームに、人間の脳みそは本能的に夢中になってハマってしまいます。

ただし報酬系の刺激は中毒性が強いため、悪用には要注意です。

ちなみに、3、4回に1回ぐらいの確率で成果が出るものに人間は最もハマりやすいです。

 

②届きそうな目標の設定

達成可能な目標が目の前に置かれると、その目標に挑戦してみたくなる習性が人間にはあります。

常に目標を細分化して可視化しておけば、目標達成への継続性が高まり、努力しやすくなるでしょう。

ダイエットやトレーニングでも、最初から高すぎる目標を掲げるよりも、少しがんばれば達成できそうな目標を提示されたほうが長続きするものです。

 

③難易度のエスカレーション

目の前の作業の難易度が徐々に増していくと、熱中して食いつく性質が人間にはあります。

ゲームも最初のステージは超簡単ですが、ステージをクリアするごとにどんどん難しくなっていくものです。

すると面白くて、つい長時間やり続けてしまいます。

 

④社会的相互作用の可視化

人は社会的な生き物ですから、自分が周りからどう見られているかを無視できません。

そのため、単純に「他人から見られている」という状態が可視化されているだけでも、ついつい気になってしまいます。

SNSでも、PV数や「いいね!」の数が可視化されていると、つい気になって見に行ってしまうものではないでしょうか。

学校でも、テストの成績が廊下に張り出されるだけで生徒のモチベーションは大きく変わります。

 

「今自分が誰かから見られている」という状態が可視化されると、意識がそこからなかなか離れません。

こうした人間の習性は、生活のさまざまな場面で登場します。

 

⑤進歩している実感の提供

「自分の行動が徐々に進歩している」という実感をもつことは、行動を継続する上で非常に重要です。

小さな成功体験を積み重ねることは自信につながり、その積み重ねが楽しくて活動を続けやすくなります。

 

設計者が改善を繰り返しても、生態系は直線的には成長しません。

すべての要素が嚙み合ったタイミングで、指数関数的な成長を始めます。

ですから何の成果の兆しも出ない日々であっても、開発者は延々と改善を続けなければいけないのです。

 

そのときがいつ来るのかは、誰にも予測できません。

永遠にタイミングが訪れない可能性もあります。

 

経済合理性だけを考えるのであれば、メタバースへの投資は割に合わないギャンブルかもしれません。

メタバース構築を続けるためには、少なくとも生態系を創ろうとする人間に「何年かかっても絶対この生態系を成立させよう」という強烈な意志が求められます。

そして、この意志だけは他から借りてくることができません。

経済合理性を超えた設計者の「意志」と、それを形にするための「知識」と、成果が出なくても改善を繰り返し続ける「忍耐」が同時に求められる。

 

VUCA

現代は、Volatility(不安定さ)・Uncertainty(不確実さ)・Complexity(複雑さ)・Ambiguity(不明確さ)の頭文字を合わせて「VUCAの時代」と呼ばれます。

VUCAの傾向が強まれば強まるほど、生態系は威力を発揮していくでしょう。

なぜならば、生態系とは前述のとおり、複雑で不安定で不確実な環境でこそ、本領を発揮するからです。

 

面白かったポイント

メタバースやWeb3の解説は短めで、主に思想系の内容が主でした。

個人的には目新しさはないが、生態系の話がまとまっていてよかった。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆

 

目次

序 章 メタバースとは何か?
第一章 メタバースの衝撃
第二章 世界の創り方 I【視空間】
第三章 世界の創り方 II【生態系】
第四章 競争から創造の世紀へ
第五章 ポストメタバースの新世界
終章 世界の真実は自分の目で確かめるべき

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