フリーエージェント社会の到来

ビジネス

『フリーエージェント社会の到来』ダニエル・ピンク

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内容

フリーエージェント

インターネットを使って自宅でひとりで働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネス。

フリーエージェントの魅力は「好きな時に、好きな場所で、好きな量だけ、好きな条件で、好きな相手と仕事をすることができる」こと。

「フリーエージェントとして組織に雇われないで働けば、自由が手に入る。とてつもない自由が手に入る。それは大きな魅力だ」

年間を通じて自分のスケジュールを自分で管理するということを極めて重要視している。

 

市場に直接の責任を負っているのだ。

会社員と違って、フリーエージェントは自分に対する評価をすぐに知ることができる。

責任とは、自分の生活の糧と評判を賭けて仕事をするということだ。

 

答えはすぐ見えた。

クライアントを減らすこと。金額は低く。親切な配慮。

自分とゲームを大切にする。人間らしい生き方を。

 

フリーエージェントになったおかげで、いつもありのままの自分でいられるようになった。

組織に雇われずに働くということは「自分の看板で仕事をするということを意味する」

 

デジタル技術は限界費用を限りなくゼロに近づけ、市場への参入障壁を縮小もしくは撤廃する。

女性は社会のフリーエージェント化の原動力であり、やがてフリーエージェント経済の支配者になる可能性がある。

 

フリーエージェントのカテゴリ

 

自己実現

自己実現を得るためのおそらく一番いい方法は仕事。

「人は誰でも無意味な仕事より意味のある仕事をしたがるものだ」「仕事が無意味だと、人生も無意味に等しくなる」

 

マズローのピラミッドの頂上に登るためには、多くの場合、会社を飛び出すしかなくなる。

カルヴァン主義の労働倫理は「鉄の鳥かご」になる危険性をもっている。

鳥かごの中に閉じこめられていても、かごの外にチャンスがあまりなければ我慢できるかもしれない。

しかし、かごの外にチャンスがいっぱいあれば、鳥かごは刑務所に等しい。

 

「高度な技能が求められる仕事を自由に行えると、その人の自我は豊かになる」のに対して、「高度な技能が必要でない仕事を強制されてやらされる」ほど気が滅入ることはほとんどない。

 

仕事を好きになるための条件は、自主性が認められること、難しい課題に挑戦できること、仕事を通じてなにかを学べることだという。

アメリカの労働者の中で最も仕事に満足しているのは、組織に雇われずに働いている人たちだ。

「成功したと言えるのは、朝起きて、自分のやりたいことをやれる人だ」。

 

多くのフリーエージェントにとって仕事は「明日のため」のものというより、それ自体がご褒美なのである。

 

オーガニゼーションマン

大組織のために個性や個人的目標を押し殺した。

この禁欲の代償として、組織は低収入と雇用の安定、そして社会における居場所を提供した。

出世するにつれて給料と責任は増えたが、だんだんと自分の好きなことをできなくなっていった。

中間管理職の陥る典型的な地獄だった。

 

組織を「最適化する」ということは、とりもなおさず「個人を犠牲にする」こと。

 

多くの人は自分の働いている組織よりも長生きする。

いまの仕事がずっと続くなどと言える人はどこにもいないのだ。

そう、今や私たちの誰もが「臨時」労働者なのだ。

 

変化の速度が増しリスクが大きくなった時代には、ひとつの企業にしがみつくというのは賢明な戦略ではない。

すべての人的資源をひとつの雇用主に投資するのは愚かだというのがフリーエージェントの発想なのだ。

 

会社は知識を得る場所であり、立派な経歴を手にし、人脈をつくる場になっている。

アンダーセンの従業員だったこと以上に貴重な財産とは、アンダーセンの卒業生である。

「シマンテックで働いていちばんよかったことは、みんなが会社を辞めていったことだ。おかげで、他のあちこちの会社に人脈ができた」

 

組織から個人

いま、力の所在は組織から個人に移りはじめている。

組織ではなく個人が経済の基本単位になった。

 

大勢の個人を常に戦力として抱える固定的な大組織は、戦略が常に入れ替わる小規模で柔軟なネットワークに取って代わられようとしている。

大量生産から手作りへ、既製品からオーダーメイドへの変化が起きている。

 

プロジェクト

「いま、仕事は二つの要素で構成されている。その二つの要素とは、人材とプロジェクトである」トム・ピーターズ

 

プロジェクトが完了するとチームは解散する。

その都度、メンバーは新しい技能を身につけ、新しいコネを手に入れ、既存の人脈を強化し、業界での自らの評価を高め、履歴書に書き込む項目をひとつ増やすのだ。

多くのフリーエージェントは顧客やプロジェクトの多角化を図っており、結果的に従来のように組織に雇用されるよりも安定している場合が多い。

 

人的ネットワーク

個人が組織に示すタテの忠誠心に変わって、新しいヨコの忠誠心が生まれつつある。

忠誠心の対象はチームや同僚、顧客、個々のプロジェクト、業界全体だ。

 

フリーエージェントとして働く場合、人的なネットワークはセーフティーネットとして機能するのだ。

人脈の幅が広く、人間関係が密であるほど、生き残っていきやすい。

 

フリーエージェントは、能力と引き換えに、機会を手にする。

その機会とは、魅力的なプロジェクトで働く機会の場合もあれば、新しい技能を身につける機会の場合もある。

新しい人と知り合い、人脈を広げる機会の場合もあれば、仕事を楽しむ機会の場合もある。

もちろん、金を儲ける機会の場合もある。

フリーエージェントが求め、会社などの顧客が提供するのは、収入と学習、それに人脈拡大の機会なのだ。

 

『思考は現実化する』の中でヒルは、事業を興したいなら、仲間と助け合うためのグループをつくるべきだと説いている。

このグループをヒルは「マスターマインド」と呼んだ。

「必要な専門知識をすべて自分で習得するのは無理だろう」と、ヒルは書いている。

「マスターマインド』グループの助けを借りて、弱点を補強するべきだ」

こうしたグループを成功させるために必要なのは、「他人の身になる」という原則を貫くことだ。

 

「なるほどと膝を打ちたくなる発見を得られるのは、他の参加者の問題を話し合っているときだ。いま話題になっている問題は、自分の抱えている問題とはまったく違うかもしれない。でも、そういうときに突然、ものすごいアイデアが思い浮かぶ。自分の問題を頭から追い出して、他人の問題について考えているから、自然とアイデアが湧いてくる。そういうことが何度も何度もあった。いちばん得るものがあるのは、自分の問題について考えているときではなく、他人の問題を検討しているときだ」

 

社会的ネットワーク

企業の組織図には概して致命的な欠陥がある。

組織で働いたことのある人なら誰でも知っているように、組織図は実際の業務の流れをまったくと言っていいほど反映していない。

仕事が実際に行われる現場に近くなるほど、組織図は現実とかけ離れてくる。

 

社会的ネットワーク分析の調査員は従業員に、「社内の誰といちばんよく話をするか」「誰を信頼しているか」「誰から情報やゴシップを仕入れるか」「難しい仕事を進めているときに力になってくれるのは誰か」「ランチは誰と一緒に食べるか」といったことを聞く。

 

役職上の地位は低くても組織の要になっているように見える人物がいた。

そうした人物は、ゴシップの発信源であり、仕事を処理するすべを知っている賢者であり、社内の誰とも親しく話せるただひとりの人物である。

そしてなによりも興味深いのは、そういう人物は、組織図のいちばん上にいたためしがないということだ。

いちばん金を稼いで、いちばん楽しい人生を送る。

その成功のカギは、人間関係-双方向のヨコの人間関係だ。

 

フリーエージェントという働き方は、様々な面でこれとは正反対の原理で動いている。

緊密な関係より緩やかな関係のほうが理想的な場合も多いし、人脈は質より量のほうが大事なのだ。

 

先にジェニーが会社を辞めていれば、エドにとってのジェニーの値打ちは高まる。

独立して働いていれば、ジェニーはエドの知らない人や場所、チャンスを知っている可能性が高い。

毎日会っていないからこそ、いっそうその価値が増す。

結びつきは弱まっても、その人脈の値打ちは増すのだ。

 

フリーエージェントのOSも、互恵主義を基本的な特徴としている。

これは要するに、「あなたがいつか力になってくれると思うから、いまあなたの力になろう」という発想である。

「与えた者が得る」という原則は、進化の法則にかなったものなのだ。

 

ドイツのビアガーデン、イタリアのバール、イギリスのパブ、アメリカのバーのような場所は、地域を活性化させるために欠かせない社交の場であると、オルデンバーグは書いている。

 

いま最も不足していて、最も貴重な資源、それは才能であり、人材だ。

優秀な人材を大勢集めることは、えてして、多額の資金を集めるより難しい。

人材の市場は資本市場よりはるかに効率が悪いからだ。

 

ライフスタイル

仕事と家庭の境界線を曖昧する、つまり「両立」ではなく「一体化」がフリーエージェントの答えなのだ。

 

工業経済の時代になるまでは、夫婦はたいてい一緒に働いていた。

現代のママの理想像は、家でビジネスを営む女性なのかもしれないと思うようになった。

私たちのような生き方を選べば、自分の好きなペースで好きな方向に向かって歩んでいくことができる。

 

そういう子供は、両親が働く姿をすぐそばで見て、両親の仕事を手伝うようになる。

これは、もしかすると理想的な状態なのかもしれない。

 

「歴史を通じて、中小の家族企業が強さを発揮し続けている」理由であり、家族企業が「世界で最も普及している企業形態であり、すべての働き口の約六割を生み出している」

 

教育

人類の歴史の大半を通じて、私たちは「師匠」や家族にものを教わってきた。

 

在宅教育とは、子供が従来のような学校には通わずに、自分の好きなように、親や家庭教師、他の子供の力を借りて勉強することを言う。

在宅教育は、18歳以下の子供たちにとってのフリーエージェント。

 

在宅教育は、子供たちが自分なりのやり方でそれぞれの関心を追求しやすくすることを目指すものだ。

在宅教育を実践する親は、強力なグループをつくって、教育方法や教育素材を紹介し合うなど、助け合っている。

 

全員一緒に、一斉に同じものを45分間つくらせて、成績をつけて、いちばん点数のいい子供に賞品をあげるかもしれない。

そうなればすぐに、五歳の女の子はレゴに対する情熱を失ってしまうに違いない。

子供でも大人でも、学校や職場、家庭で自由を奪われ、賞罰のシステムを押しつけられると、やる気を失い、学習や仕事に喜びを感じなくなるという。

 

この新しい教育の世界では、フリーエージェントが教育のプロになることもあり得る。

大工をしている人は、在宅教育の子供たちに大工の技術を教えることができる。

このなかには、おそらく完全には引退しないで、「eリタイヤ」して、在宅教育の家庭教師になる人も多いかもしれない。

 

将来は、たとえば、数学と会計、それにビジネスの基礎を複合した新しい教科が誕生するかもしれない。

やがて、10代の起業家は当たり前になり、もしかするとティーンエージャーの通過儀礼になるかもしれない。

フリーエージェントの時代には、ティーンエージャーは学校に通うよりも「実践」を通じて、様々なことを学ぶようになる。

 

子供の頃に主体的に勉強する習慣を身につけた人たちは、大人になっても独力で勉強する。

 

フリーエージェント経済のインフラ

フリーエージェント経済のインフラ

 

「ビート・サンプラスにもコーチはいる。タイガー・ウッズにもコーチがいる。オペラ歌手にもコーチがついている。コーチングによって、その人がすでにもっている力を引き出すことができるんだ」

「コーチに金を払えば、自分がいちばん望んでいることを最優先でやってもらえる。依頼人の頭を整理して、本当の自分になる手助けをすることは、コーチの仕事だ」

 

面白かったポイント

私がオーガニゼーションマンを辞めるきっかけの本です。

会社を辞めることが決まっていた時期に読んだので内容が刺さりまくり、興奮したことを覚えています。

会社で出世を目指すという方は読んでも意味がないでしょう。

 

フリーエージェントの魅力はやはり自由であることです。

通勤時間や退屈な会議、付き合いなどの時間をすべて削減してやりたいことに注ぐことができるので、毎日ヘトヘトになりますがかなりの充実感を味わえることができます。

 

自分のやりたいことが明確で、他人の指示ではなく自分で自分をマネジメントできる人はどんどんフリーエージェントになったほうがいいです。

ビジネスのスピードは全然違うでしょう。

10年前と異なり資金調達も人材探しも会社設立もかなり容易になっているので、今がチャンスだと思います。

 

巻末の玄田氏の解説も面白い。どうすればフリーエージェントになれるのか?

  1. 自分のホームページをつくり、フリーエージェント宣言する
  2. 与えたものが与えられる。情報発信→情報が集まる、癒す人→最も癒される
  3. 話し合える仲間や話し合う場をせっせとつくる。コネクション、同窓会、自治会、NPO活動
  4. 他人の問題を考える→そこに本当のビジネスチャンスがある

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

 

目次

第1部 フリーエージェント時代の幕開け
組織人間の時代の終わり
三三〇〇万人のフリーエージェントたち ほか

第2部 働き方の新たな常識
新しい労働倫理
仕事のポートフォリオと分散投資 ほか

第3部 組織に縛られない生き方
人と人の新しい結びつき
互恵的な利他主義 ほか

第4部 フリーエージェントを妨げるもの
古い制度と現実のギャップ
万年臨時社員と新しい労働運動

第5部 未来の社会はこう変わる
リタイヤからeリタイヤへ
テイラーメード主義の教育 ほか

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