プロフェッショナル原論

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『プロフェッショナル原論』波頭亮

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内容

一般企業の社員の行動原則はコストベースが主流であり、最も頻繁に出される指示は「もっとコストを削れ」である。

一方プロフェッショナルファームでは「もっとヴァリューを出せ」がそれに代わるキーワードである。

場合によっては「何故もっと金を使わないのだ」という指導すら現実にしばしば行われる。

コストを削ることによってアウトプットの質が落ちたり、クライアントに対するヴァリューが小さくなったりすることは決して許されないことなのだ。

そしてプロフェッショナルは、今自分は何をするのがクライアントに対して最も大きなヴァリューを出せるのかを常に意識していなければならないのである。

 

営業しない

この点がプロフェッショナルの仕事のルールの中でも最も特徴的だと思われるのだが、プロフェッショナルは仕事を取るための営業をしてはならない。

依頼人という呼称がプロフェッショナルの仕事の特殊性を象徴しているように、プロフェッショナルの仕事はクライアントからの依頼があってはじめて発生するものなのである。

つまり自ら売り込んだり営業活動を行ってはならない。

広告宣伝も禁止である。

 

何故ならば、プロフェッショナルの仕事の本分は公益への寄与であり、自らの収益を追求することではない。

従って収益を増大させるための行為である営業活動は行わないのである。

病気の治療にせよ、訴訟にせよ、その問題を抱えている当人から頼まれて、その依頼に応える形で仕事を引き受けるのが原則である。

 

しかも依頼された案件を全て引き受けるわけでもない。

全ての人を差別することなく治療する使命を負っている医者だけは患者を拒否する権利を持たないが、弁護士にしても建築家にしてもコンサルタントにしても、依頼された内容に対して自分がクライアントを十分満足させられる成果を出せると確信が持てる場合にのみ、その案件を引き受ける。

 

プロフェッショナルが依頼された案件を引き受けるかどうかの判断基準に置いているのは、依頼人の抱える問題をきちんと解決することが自分に可能かどうかという一点であり、ひいては自分がその案件によって社会に貢献し得ることができるかどうかというプロフェッショナルの本分につながっている。

プロフェッショナルの仕事の目的も、依頼された案件を引き受けるかどうかの判断基準も、共にクライアントへの貢献であって、決して自分の利益ではない。

間違ってもその案件によって自分がどれくらい儲けられるのかという観点を判断基準にしてはならない。

 

ファーム

ファームの組織形態の特徴であるが、ファームは原則的にはパートナー制である。

パートナー制とは、複数のプロフェッショナルが資本を出し合って仕事をするための事務所組織であるファームを設立し、ファームの運営方針はその資本を出したパートナー達の合議制によって決まるというものである。

プロフェッショナルの仕事は大規模な工場を建てたり大量の商品を仕入れたりする必要がないため、自分達だけでは賄えないほどの大規模な資本を必要としないということもあるが、それ以上にファームの経営に関して外部の資本家に口を出させないことが重要なのである。

 

一方通行的評価制度は封建的に聞こえるかもしれないが、プロフェッショナルファームにとっては合理的な面が大きい。

そもそもプロフェッショナルの仕事は高度で奥の深い技量が必要であるため、職能レベルの高い上位の者であってこそ下位の者の技量を正確に測ることが可能なのである。

従って、経験の浅い下位の者が上位の者の仕事のクオリティを適切に評価するだけの能力は持ちえていないのは当然である。

 

一流であり続けるために

プロスポーツ選手の能力的ピークは二〇代と言われ、科学者や研究者の頭脳のピークは三〇代後半からせいぜい四〇代前半までと言われる。

プロフェッショナルな職業の特性を考えると、強靱な体力と鋭い頭脳の切れ味の両方が必要とされるが、また一方で、経験の蓄積によるスキルの向上という要素も大きい。

こうした要素を考え合わせるとプロフェッショナルの職業人としての能力的ピークは四〇代後半から五〇代前半といったところだろうか。

いずれにせよ、四〇代に入ったら体力の衰えと頭脳の切れ味の低下は避けることのできない摂理であり、その衰えを日々の自己研鑽と経験の蓄積によってどれだけ補えるかが勝負なのである。

 

若い時には早く一人前になるためにハードワーキングをし、一人前になった後は一流であり続けるためにハードワーキングを続ける。

プロフェッショナルという職業は、一生ハードワーキングから逃れられないのである。

 

行動的

行動的という言葉を使って表しているプロフェッショナルの行動特性には、三つの意味合いがある。

まず文字通り体を動かすのを好むこと、次にタフであること、そして思いついたらすぐに行動を起こすことである。

 

皆、一時間単位のスケジュールで仕事に追われる超多忙なメンバーばかりだが、行ったことがない所、やったことがないことに対する興味と好奇心は極めて強い。

面白そうと思ったことに対しては、貪欲に行動を起こすのである。

 

プロフェッショナルは自分の行動を他人に相談して決めるということをほとんどしない人種なのである。

 

論理的

プロフェッショナルは仕事ばかりでなく何事に対しても、ものの見方や考え方が論理的なフォーマットに則ったパターンになり、思考特性として身につくのである。

そうなると、プロフェッショナルは何事に対しても原因と結果がきちんと理解できていないとしっくり落ち着かなくなる。

また何事も体系的に整理された形で頭に入っていないとちゃんと解った気がしない。

何事に対しても何故そうなのかという原因を究明しようとするのが癖になっており、また何事に対しても他の選択肢や可能性はないのかと探すのが習慣になっているのである。

 

実務家

「大学で先生をするようになったら終わり」とプロフェッショナルの世界では言われることがある。

大学で教えられるほどの知識や知力を持つのであるから有能な人であることは間違いないのだが、大学で学生を教える仕事をしているとプロフェッショナルとしての仕事の腕は鈍って来るという意味である。

対面する相手が生々しい重大な問題を抱えたクライアントではなく素人の学生であること、そして仕事の内容が実際に解決策を実現することではなく理論と知識を教えることであるため、プロフェッショナルにとって最も重要な緊張感と現場感が薄らいでしまうからである。

実務家でなければならないプロフェッショナルとしては、一流であり続けるためには現場の第一線に居続けることが極めて重要なのである。

 

プロフェッショナル

プロフェッショナルは、弱音を吐かず、プロフェッショナリズムを全うするしか人生とキャリアの成功はない。

プロフェッショナリズムとは調和しづらい経済至上主義の社会になったからこそ、プロフェッショナリズムをさらに徹底すること、即ち益々職能を磨き、一層厳しく掟を守ることがプロフェッショナル達のこれから進むべき正しい道なのである。

 

プロフェッショナルにとって最も重要なことはクライアントへの貢献である。

そして、プロフェッショナルの掟の第一に示されているクライアント  インタレスト  ファーストという掟は、プロフェッショナルに全てを与えてくれるのである。

つまり、クライアントへの貢献がまず第一に公益への奉仕につながり、第二にフィーを得る根拠となり、そして第三に自尊の念の源泉となるのである。

 

面白かったポイント

クライアントワーク職に転職したので読んだが、金言の宝庫でした。

プロフェッショナリズムとは何かが言語化されている。

一流になるためのハードワークはいとわないタイプなので、けっこう刺さった。

行動的、ロジカル、人にあまり相談しない特性は自分にかなり当てはまる。

コンサル会社のファームではなく株式会社化していることに苦言を呈しているが、それはしょうがない流れかな。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

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