本当のブランド理念について語ろう

ビジネス

『本当のブランド理念について語ろう』ジム・ ステンゲル

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内容

ブランド理念

ブランド理念は、単なる金額や数字の目標であってはならない。

金額や数字だけでは、人々のやる気をかき立てて大きな成果をあげさせることも、有能な人材を引き寄せ、つなぎとめることもできない。

組織で高い地位に就いているリーダーほど、多様な個人やチーム、グループ、部署、事業部門にメッセージを届けなくてはならないので、ひときわシンプルで力強いメッセージを打ち出す必要がある。

リーダーがその役割を果たすうえで、ブランド理念が役に立つ。

ブランド理念は、人間なら誰もがもっている普遍的な本能、希望、価値に関わるものだからだ。

 

「数値で測定するものが手に入るもの」

 

人間にとって大切な五つの基本的価値

喜びを感じさせる──人々が幸せや驚き、無限の可能性を体験する後押しをする

結びつくことを助ける──人々がほかの人たちや世界と有意義な形で結びつく能力を高める

探求心を刺激する──人々が新しい世界や新しい経験に乗り出すのを助ける

誇りをかき立てる──人々が自信や力、安心感、活力を高めることを可能にする

社会に影響を及ぼす──現状を揺さぶり、新しいビジネスの枠組みを打ち出すなどして、社会全体に好ましい影響を与える

 

商品を購入する理由

このブランドは、本当に価値あるものと消費者に思われているか?

社員と顧客に前向きな参加意識をいだかせられる崇高な理念をもっているか?

情緒面と機能面で、ライバルに差をつけられる強力な差別化ポイントをもっているか?

ビジネスモデルは、財務の観点で理にかなっているか?

 

イノベーション

ブランド理念を出発点に複数のイノベーションを同時に推進する方針を明確に打ち出すべきだ。

いかなる企業やブランドも、商品やサービスのイノベーション、純粋な商業的イノベーション、ビジネスモデルのあり方を変える破壊的イノベーションを並行しておこなう必要がある。

 

三種類のイノベーションを巧みに組み合わせていることだ。

一つは、持続的イノベーション(製品やサービスの日常的・継続的改良をおこなう)。

もう一つは、商業的イノベーション(製品やサービスそのものは変更せず、マーケティングによって新しい需要を生み出す。既存製品の新しい用途や新しい使用局面を提案するなど)。

そして三つめは、破壊的イノベーション(新しいビジネスのジャンルを発明・再発明し、ビジネスモデルを変更する)である。

 

好業績企業との比較

好業績の企業と比較すれば、それまでより厳しい基準で自己評価をおこなうようになり、自社が成長しているという安心感が揺さぶられる。

自己満足から抜け出せるのだ。

私は全社員にそういう経験を味わわせることで不安を感じさせ、目標を引き上げさせることを通じて、P&Gをもっと急速に、もっと大きく成長させたいと思っていた。

そこで、P&G全体のマーケティングを取り仕切るチームに、業種に関係なく世界で最も急成長している企業やブランドと自社を比較させた。

「どの企業が主要な財務指標で私たちより急速な成長を遂げているだろう?その企業からなにを学ぶべきだと思うか?」と尋ねた。

 

メディア

企業がおこなうあらゆる行動が「メディア」である以上、必要とされるのは高度なコミュニケーション能力だ。

コミュニケーションはあらゆる人間関係の土台であり、良好な人間関係こそがビジネスの成長を突き動かすものだからである。

ソーシャルメディアが普及して、瞬時に、そして常時、コミュニケーションを取り合うことが珍しくなくなり、この点がますます重要になっている。

 

ある企業やブランドがおこなうすべての活動は、ブランド理念に導かれた顧客体験という形で一つに集約される。

顧客体験とは、製品やサービスそのものだけでなく、人々が製品やサービスについて学び、それを購入し、利用し、それとともに生き、ほかの人たちとその経験を共有するプロセスをも含むものである。

 

ザッポスのコアバリュー

1  サービスを通じて、ワオ!を届けろ。

2  変化を受け入れ、変化を推し進めろ。

3  楽しいことを生み出せ。それと、ちょっとヘンテコなことも。

4  冒険しろ。創造的であれ。やわらかい頭をもて。

5  成長と学習を追い求めろ。

6  コミュニケーションを通じて、オープンで噓のない関係を築け。

7  前向きなチームをつくり、家族のような関係をはぐくめ。

8  少ない資源で、多くのことをやり遂げよ。

9  情熱的であれ。強い意志をもて。

10  謙虚であれ。

 

リーダー

リーダーとして成功するためには、自分の強みがビジネス運営者の面とアーティストの面のどちらにあるかを見極めたうえで、もう一方の役割を担える人物を見つけ、その人物に権限を与えることが重要だ。

 

顧客と社員の生活のなかでライバルブランドより大きな存在になろうと思えば、理念が欠かせない。

ブランド理念を追求することを通じて、人々の全人格に、言い換えれば人々の理性と感情、左脳と右脳の両方に結びつかなくてはならない。

そのためには、トップに優れたリーダーが必要だ。

 

リーダーに必要なのはこれと逆の発想をすることだと、ロバーソンは言う。

「こう考えるべきなのです。『適切な人材を雇ってある。この人たちなら正しい行動を取ってくれるはずだ。私たちのビジネスをよく理解してくれているのだから。社員に任せてみようじゃないか』と。こういうふうに考えて、リスクを受け入れることが必要なのです」。

私が会う経営者の多くは、ピラミッド型の組織をひっくり返し、社員に権限を与え、奉仕型のリーダーになりたいと言う。

しかし、言葉だけで終わる場合がほとんどだ。

ザッポスは、私が知るかぎりそれを最も高いレベルで実践している企業と言っていい。

 

人材

アップルがやっていたこと、それは優れた人材を見つけることだけ。

ビジネスを大きな成功に導く秘訣は、適材を見いだすことに尽きるのです。

 

理念の進化

成長を実現させ継続させるためには、この四原則に沿って、ブランド理念の達成度を評価するといい。

1  そのブランドの未来にとって最も重要な顧客や利害関係者との関係で、ブランド理念の実現状況を評価する。

2  ブランド理念を基準に、重要業績評価の指標を選ぶ。

3  ブランド理念の推進に貢献することを全社員の職務計画の一部とするよう義務づけ、ブランド理念に照らして社員の個人成績を評価する。

4  顧客や消費者と接する時間を測定し、そういう活動を奨励する。

 

要するに大切なのは、現状に満足せず、常に不安感をいだくこと。

そして、ブランド理念が意義を失っておらず、成長を牽引する力をなくしていないかを問い続けることだ。

理念を進化させる必要はないか?

テクノロジーの変化、消費者行動の変化、ライバルの変化に対応して、理念を定義し直す必要はないか?

理念を実現するために採用しているアプローチはいまも有効か?

こうした点をみずからに問いかけるべきだ。

 

ブランド理念を表現するビデオを制作するよう、いつも助言している。

ポスターでも悪くはないが、動画のほうがいっそう情緒面で共感を誘いやすく、その理念が嘘偽りのないものだと理解してもらいやすいからだ。

 

「速く進むためには、遅く進まなくてはならない場合もある」。

私の好きな言葉だ。急がば回れと言うように、きちんとした計画を立ててから始めないと、組織のメンバー全員が十分乗り気にならず、理念を実践するために必要な体制が整わないのだ。

 

ビジネスを成長させ、利益を生み出し続けたければ、人々の生活の質を高めるという道を進まなくてはならない。

 

面白かったポイント

なかなかよかった。

ブランド理念というと少しフワッとしたテーマに思えるが、要は軸を定義してブレずに実行することだと理解しました。

P&G編は、ビジョンを再定義して、ビジネスを立て直すリアルな描写が面白かった。

ビジネスの本質を再確認できる本です。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

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