無形資産が経済を支配する

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『無形資産が経済を支配する』ジョナサン・ハスケル

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内容

無形資産への投資

雇用と解雇に制約の多い国は有形資産に多くを投資し、無形資産への投資は少ない。

労働市場規制が有形資産に与える影響は直感的にわかる。

社員の雇用や管理が本当に面倒なら、企業はむしろ機械に投資したがるだろう。

 

だが無形投資への影響は逆だ。なぜだろう?

新しい無形資産が入ると、しばしば労働者は働き方を変えねばならない。

工場がリーンプロセスを導入したところを想像しよう──これは組織開発投資の一種だ──。

あるいは製品の性質を変えるとしよう。

新しい無形投資はリスクが高く、実業家たちは失敗の可能性をかなり高く見積もっても無理はない。

労働力が柔軟でないと、そんな投資はそもそも敬遠されるかもしれない。

 

知識、データ、情報

情報というのは変換されたデータと同じだと考えていい。

知識には、分析可能データで構成される情報から観察された、理論、仮説、相関、因果関係が含まれる。

 

スケーラビリティ

きわめて無形集約的な企業がいくつか巨大化しているはずだ。

スターバックスは効果的なブランド、運営プロセス、サプライチェーンを活用して、世界中に店舗展開することができた。

グーグル、マイクロソフト、フェイスブックは、かつての製造業の巨人に比べて必要な有形資産が少ない。

無形資産の束あるいはソフトウェアや評判をスケーリングできるので、巨大化が可能になった。

この手のスケーラビリティはもちろん、ネットワーク効果によりさらに拡大される。

 

無形資産のもう一つの性質はスピルオーバーだ。

企業は競合他社の工場を使えないが、競合他社の設計や組織構造やアイデアなら使える可能性がある。

 

スピルオーバー

ティールの経営哲学では、こうした防衛可能な機会をつくるには、正しい種類のソフトウェア、マーケティング、顧客とサプライヤのネットワークへ投資して(三つの古典的な無形資産だ)、それを競合他社には真似しづらい形で組み合わせることだ。

 

無形資産の経済的特質

無形資産は四つの変わった経済的性質を持つ。

こうした性質は有形投資にもあるが、全体として無形資産のほうがそれぞれの度合いが高い。

その特徴とは以下の通り:

  • スケーラビリティ
  • サンク性(埋没性)
  • スピルオーバー
  • シナジー

 

収益性

収益性は確かに興味深い主題だが、これは生産性と価格決定力との組み合わせだ。

 

格差

製造業では、イタリアとオーストリアは無形投資をあまりせず、製造業生産性の格差はあまり広がっていない。

これに対し、イギリス、スウェーデン、フランスは大量に無形投資をしており、生産性の格差もずっと開いている。サービスでも同じだ。

生産性の格差は、産業が無形投資をたくさん行う国で高まっている。

 

所得と富

格差の種類を明確にするには、二種類の経済概念を区別するのが有益だ。

所得と富だ。

所得は労働と資本(資産)により稼がれるもので、「フロー」だ。

労働所得は主に稼ぎだ。

資本所得は賃料や配当だ。

どちらもある時間の間に受け取る支払いのフローとなる。

 

富は所有する資産/資本の価値で、これは「ストック」だ。

家計の場合、富は通常は家だ。

企業なら、所有して生産に使う有形・無形資産だ。

 

フローは収益率によりストックから計算される。

資本所得は、富に富から得ている収益率をかければいい。

労働所得フローも、収益率で考えられる。

それはその人の「人的資本」ストックの収益率だ。

富の資本は通常、貯蓄と相続の結果であり、人的資本は教育と才能の結果だ。

 

インフラ

インフラという言葉にはそれ自体が無形である別の意味合いも存在する。

ルール、規範、共有知識、制度だ。

物理インフラと同じく、これらは生み出すのに費用がかかり、耐久性があり、公共的、社会的性格を持ち、経済全体をもっと生産的にする側面がある。

 

無形投資はスピルオーバーを生み出し、正しい無形投資をいっしょにすると驚くほど価値の高いシナジーが生じる。

こうしたトレンドを最大限に活かせる──他の人の投資からのスピルオーバーを活用し、新しいアイデアのシナジーを活用できる──と、個人や組織が栄える。

インフラはその実現を支援できる。

特に無形投資同士の結びつきの数と質を高めるのがその主な役割だ。

 

ダイナミッククラスターとは、革新的な企業や人々が出会ってアイデアを共有する可能性が高いところだ。

 

戦略リソース

独特な資産を「戦略リソース」と呼び、それが三つの特徴を持つと述べる。

(a)価値があり(たとえば特許)、(b)珍しく(たとえば忙しい空港での発着枠)、(c)模倣が難しい(たとえばスイスの腕時計の評判)。

だから経営者への助言は常に、独特な資産を構築し維持せよ、というものだった。

そして投資家には、そうした種類の資産を持つ企業を探せと言う。

 

この助言は無形世界で変わるのだろうか?

いいや。

だが無形リッチな世界は、まさにますますこの助言に従っている企業の天下なのだ。

 

ベンゲンルール

多くのアメリカの大学が毎年、彼らの基金のそこそこ一定比率(4%ほど)を支出に振り向けることを指摘した(この慣行にはベンゲンルールという名前がついている。これが基金や年金基金からの年間引き出しまたは支出率として持続可能だと計算した財務顧問にちなんだものだ)。

 

面白かったポイント

非常に興味深かった。

財務諸表では正確に表しきれない無形資産、そこへの投資の重要性が高まっている。

ソフトウェア、ネットワーク、サプライチェーン、ナレッジの価値によって企業の生産性が決まる時代。

無形資産は、スケーラビリティ、スピルオーバーなど有形資産にはない特質があるので、個人レベルでも意識して投資していきたい。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆

 

目次

第1章 無形資産の台頭で何が変わるのか?

第Ⅰ部 無形経済の台頭

第2章 姿を消す資本

第3章 無形投資の計測

第4章 無形投資はどこが違うのか?:無形資産の4S

第Ⅱ部 無形経済台頭の影響

第5章 無形資産、投資、生産性、長期停滞

題6章 無形資産と格差の増大

第7章 無形資産のためのインフラと、無形インフラ

第8章 無形経済への投資資金という課題

第9章 無形経済での競争、経営、投資

第10章 無形経済での公共政策

第11章 無形経済はこの先どこに向かうのか?

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