内容
プロジェクトの流れ
開始時点で立てた「問題、課題、打ち手」の一連の仮説を検証してブラッシュアップしたり、時に大幅に見直したりしながら、プロジェクトは進んでいきます。
では、こうした仮説の「検証」は、どのように行われるのでしょうか。
経営コンサルティングの仕事では、大きく3つのサイクルに分けて実践されています。
▶プロジェクトオーナーのレベルでの月次のサイクル
プロジェクトオーナーとは、プロジェクトの問題解決に最終的な責任を負う人です。
サークル活動でいえば、顧問のような存在でしょうか。
問題の解決という目的の達成のために、プロジェクトを組成することを選択した人で、企業の場合には、さらに上位の経営層に対して説明責任を負います。
通常、プロジェクトオーナーとは、プロジェクトの開始時に加えて、プロジェクトの中間と最終で議論の機会が持たれます。
このようなプロジェクトオーナーとの議論の場では、プロジェクト全体の仮説が議論され、プロジェクトの成否が評価され、プロジェクトが完了したり、延長されたり、中止されたりします。
▶プロジェクトマネジャーのレベルでの週次のサイクル
あまりに頻繁にプロジェクト全体のことを論じていても、細部を詰めることができません。
細部を詰めるには相応の時間を要します。
よって、プロジェクトオーナーとの議論の間で、細部を詰める活動を行います。
そうした活動を司るのがプロジェクトマネジャーです。
サークルの例でいうと、今回のお好み焼き屋出店プロジェクトの責任者として指名された上級生が該当します。
この人のミッションはプロジェクトを成功に導くことで、そのために、あらゆる手を尽くして、仮説の検証と見直しを行います。
個々の論点を解消していくと同時に、プロジェクトオーナーとの議論を意識しながら、検証の結果を統合して、プロジェクト全体の仮説を管理していきます。
いわば扇の要のような位置づけになります。
▶チーム内での日次のサイクル
プロジェクトマネジャーのレベルでの議論が個々の論点に関する仮説検証の結果と、プロジェクト全体の仮説の結節点にあたるとすると、個々の仮説検証作業を回して、その品質を確認する階層が他に必要になります。
仮説検証を構成する調査や分析は複雑なため、設計や実行について議論する必要があるからです。
また、当初考えていた検証方法で答えが出なかった場合には、追加の検証が必要な場合もあります。
そうした場合に、週次の議論サイクルを待っていては時間のロスが大きくなるので、検証方法を機動的に見直して追加の検証を実行することにより、仮説検証を行っていきます。
クライアントの定例会議
クライアントとの定例会議当日中
①最初に、定例会議でなされた議論(および、そこから導かれる宿題)と、当初計画していた論点とを踏まえて、次回の定例で扱うべき論点、および、それに対する答えの仮説( =主張すべきこと)を盛り込んで、サマリを書きます。
②それを用いて、チームで議論します。この際、どんな調査・分析を行うのか、それは工数やリードタイムを考えたときに現実的なのかも併せて議論します。
③議論した内容を踏まえてサマリを更新し、ストーリーとワークプランにまで落とし込みます。ここまでを当日中に実施します。
クライアントとの定例会議翌日 ~次回定例前日
④翌朝から重要な調査・分析に着手します。優先度が高い、すなわち、不確実性が高く、かつ、影響が大きいところから調査・分析を行い、結果をストーリーに集約します。このとき、テキストで主張と論拠・論理展開を集約し直すことで、全体の質が上がります。
⑤検証がある程度進んだ段階で、チーム全員が再び集まります。そこまでに検証された事項から何が主張できそうか、次々回以降で扱う論点まで見据えたときにも、その主張で十分かを議論します。
⑥社内会議での議論の結果を踏まえて、サマリ、ストーリー、ワークプランを更新し、ストーリーを写像する形でスケルトンを作成します。調査・分析の内容とスケルトンとをインプットに資料作成を行います。
⑦調査・分析の結果を踏まえて、資料とサマリをチューニングします。
問いの設定
この「問い」を設定するときのポイントは、「相手がすでに知っていること」や「すでに共有できている共通の目的」から、「相手がまだ知らないこと」や「相手がまだ共有できていない新たな目的」の順に展開することです。
このようなポイントは、一般に「SCQA」というフレームワークとして知られています。
これは、ビジネスコミュニケーションやプレゼンテーション、文章作成などで広く利用されている、構造化された思考とコミュニケーションの手法で、Situation(状況)、Complication(複雑化)、Question(問い)、Answer(答え)の頭文字を取ったものです。
この順に展開することで、メッセージを明確かつ効果的に伝えることができるとされています。
Situationは、話の背景や現在の状態を設定する段階です。
ここでは、聞き手が共通の理解を持てるように、状況の説明が簡潔かつ明確に行われます。
状況の説明は、上述のように、相手にとっても既知の情報を含み、共通の前提であることが重要になります。
Complicationは、Situationで共有された情報に、変化を加えます。
Situationを深掘りする中で見えてきた新事実や、時間が経つ中で生じた変化、外部要因で生じた変化や困難、などです。
ここで、相手にとって新規の事実や難しさを記述し、共通の前提から議論を展開します。
Questionは、複雑化を受けて自分たち自身が取り組まなければならなくなった「問い」です。
これは、話の焦点を絞り、聞き手が解決策や結論に向けて考えを進めることを促します。
わざわざ取り組む価値のある問いというのは、新規であったり困難であったりするものですが、それは裏を返すと、唐突であったり直視しづらかったりすることを意味します。
そのため、「Situation → Complication → Question」と展開することで、その問いについて論じる必然性が共有されることが重要なのです。
ストーリーが書けた状態
めざす「ストーリーが書けた状態(ストーリーを書くことの完了条件)」とは、「サマリで主張する内容の論拠が漏れなく体系的に整理されたうえで、その中からワークプランを作る必要のあるものが特定された状態」です。
プロジェクトの中での議論の場は、プロジェクトオーナーとの議論とマネジャーとの週次の定例議論の大きく2種類があるということです。
まず、プロジェクトオーナーとの議論(中間議論や最終議論)のような場では判断・意思決定を行います。
そして、その準備にあたる週次の定例では、プロジェクトオーナーが判断・意思決定できるように、主張と論拠の妥当性を確かめることになります。
そのため、プロジェクトオーナーとの議論(中間議論や最終議論)では、基本的には主張の背景の情報はすべて妥当性が確認された前提で議論がなされ、個別の分析の計算方法などにまで立ち返って議論がなされることは、基本的にはありません。
ピラミッドストラクチャー上で表現するなら、比較的上位の階層にとどまり、「問題・課題・打ち手」の流れにある程度は準拠します。
一方、週次の定例議論だと、そもそもの議論の目的が妥当性を確かめることにあるため、1つ 1つの論拠・根拠を緻密に確認します。
ピラミッドストラクチャー上で表現するなら、比較的下位の階層を扱うことになります。
伝える
まず「伝える」ですが、今回は「①伝える内容 × ②伝え方」という切り口で捉えます。
「伝える内容」は、仮説や論点の議論に関する点であり、「メッセージ ×論理的妥当性(納得性)」から成ると考えられます。
メッセージは、検証の結果であるメッセージが明確になっているか(何がnewなのか、スタンスを取れているか)、そして、「論理的妥当性」はロジックが通っているのか、特に聞き手が理解して合意形成に至れるのか、というのがポイントです。
「伝え方」で重要なのは、上司(聞き手)がパッと聞いて理解できるかという点です。
これは「話の構造」と「日本語表現」の 2つから成ると考えられます。
「話の構造」に関しては、コンサルティングのスキルとしてよく知られる「構造化」と密接にかかわっています。
「日本語表現」については、主語・述語・目的語や修飾・被修飾の関係、文言選びが重要です。
次に「見解をぶつける/昇華させる」ですが、①質疑応答(理解を揃える)、②仮説の進化の2ステップで構成されます。
②は、議論自体の主目的であるため、言うまでもなく重要ですが、①も忘れてはならない大事なプロセスです。
というのも、1日中同じ論点に対峙している皆さんと違って、上司は常により広範なテーマを考えて仕事をしており(時に複数のプロジェクトに従事しており)、細かな情報や過去の文脈が抜け落ちがちです。
そして、3つ目が「次の論点・アクションを明確にする」です。
これは要するに、上司との次の議論までに何をすべきなのか、どのような状態になっていることが必要なのかを確認する、ということです。
論点の変化点……仮説の進化に応じて論点がどこからどのように変わるのか(逆にどこまでは同じなのか)
ワークプランの変化点……ワークプランとして何をいつまでに検証すべきなのか
定性チャート
定性チャートは主に複雑な情報を整理し、その評価や手順を理解しやすくするために使用します。
大分類としては、以下の3つに分かれます。
分解……大きなトピックについて要素ごとの連関や依存性を表現する
優先順位づけ……複数の要素について評価軸に沿って適合性を表現する
その他……タイムラインや相互の関係性をもとに整理する
その各大分類の中で取り扱うケースごとに使用するチャートが異なり、視覚的にもより効果的に訴えることができるように適したチャートを選ぶことが必要になります。
各チャートの特徴を細かく見ていきます。
❶ツリー……階層的な構造を示すのに適します。1つの親要素が複数の子要素に枝分かれしていく構造を持ちます。各要素の関係性や階層が明確に示されます。
❷ステップ図……プロセスや手順の流れを示す際に使用します。各ステップを矢印や矢羽根でつなぎ、始まりから終わりまでの流れを明確に表現します。各ステップにおける依存関係がわかりやすくなります。
❸インフルエンスダイアグラム……要因と結果の関係を視覚的に表現します。図形から分岐を使って、要因や影響の方向性や程度を示すことができます。
❹評価テーブル……縦横の評価軸を設定し、複数の要素や項目の比較結果を表現します。各要素にスコアを割り当て、簡潔かつ明確に比較が行えます。評価テーブルは、一般に「比較表」とも呼ばれるもので、縦軸・横軸のいずれか一方を選択肢、他方を評価観点として、表の中に各観点での評価結果(〇 × △などと、そう判断される理由の定性情報)を書き入れることで、選択肢の間での比較を行うものです。
❺マトリクス…… 2つ以上の変数や要素の相互関係を示す行列形式のチャートです。縦横の交差点に要素をプロットすることで関係性や重要度が視覚的にわかりやすくなります。マトリクスは、縦軸と横軸の二次元で構成された図表で、各軸の要素の組み合わせによって平面を複数の象限に区切ったうえで、そこに分析対象の要素をプロットすることで、要素間の位置関係を視覚的に整理します。2 × 2の四象限のものが最もよく使われ、主に優先順位づけに使われます。
❻ロードマップ……時間軸に基づいてプロジェクトや計画の進捗状況を示します。将来のマイルストーンやステップが可視化されることで、全体の方向性が明確になります。
❼フロー図……プロセスや手順の流れを示します。処理のフロー、判断の分岐、作業の依存関係が簡潔に表現されます。
❽分岐図……判断や意思決定のプロセスを示すのに適しています。条件によって分岐し、最終的な結論に至るまでのフローがわかりやすくなります。
❾ビジネスモデル……ビジネス全体の要素を組み合わせてビジュアルに表現します。事業のキーアクティビティ、ステークホルダーの関係性や利害関係などが整理されます。
❿ピラミッド……組織内の人員や部門の関係性を示します。役職や階層が階段状に表示され、組織の全体像が視覚的にわかりやすくなります。
⓫レイヤー……異なる階層や要素を層状に表示し、それらの関係性を示します。独立した構成要素を示しつつ、全体で網羅すべき要素を構造化して視覚的に表現します。
定量チャート
さまざまな定量チャートがありますが、解釈が容易で、かつ、頻繁に用いられる表現に準拠することでコミュニケーションの効率は上がるので、ここに挙げた9種類のいずれかで表現することから思考を始めて損はないでしょう。
❶折れ線グラフ……データの傾向や変化を滑らかに表示し、時系列データや連続的なデータセットの視覚化に利用されます。
❷縦棒/積み上げ縦棒グラフ……単一な縦棒は数量や割合を示し、積み上げ縦棒は異なる要素の合計を視覚的に示すことができます。データの変化や比較に有効です。
❸横棒/積み上げ横棒グラフ……縦棒グラフと同様に、データの比較や変化を示します。縦棒よりも比較する項目数が多い場合や、ラベルとなる項目名が長い場合、またスペースを効率的に使用し、棒の長さをより際立たせるときに使用します。
❹ヒストグラム……データセットの分布をバーの高さで表現し、頻度分布を見て異常値や傾向を把握することができます。
❺散布図…… 2つの変数の関係性をポイントで示し、各点の座標によって相関や傾向を分析することができます。
❻バブルチャート……散布図の発展形で、各バブルのサイズで第 3の変数を表現し、複数の要因を同時に比較できます。
❼モザイクプロット……複数の項目のデータを面積の大小で表現し、割合や変化を視覚的に捉えることができます。構成しているデータを相対比較しつつ、注目すべきデータを強調します。
❽バーメッコチャート……異なるカテゴリや項目の数量を垂直または水平のバーの長さで比較し、注目すべきデータを効果的に可視化します。
❾ウォーターフォール……全体の数値に対して構成する要素や変化を段階的に表示し、各段階での増減を表現します。
パネルの種類
A: 1パネル・単一チャート
B: 2パネル・単一チャート
B-1:「情報処理の前提について説明」
B-2:「情報処理の過程(処理の過程で扱う要素)について説明」
B-3:「情報処理の結果について説明」
C: 2パネル・複数チャート
C-1:対比
C-2-1:詳細化(新規 →新規)
C-2-2:詳細化(再掲 →新規)
Aは最もシンプルな形で、ボディ=パネルになっています。
(A:1パネル)チャートに情報を特段追加する必要なくメッセージを導くことができる場合にはこの形が用いられます。
Bは、単一のボディが 2パネルに分かれており、左パネルのチャートを、右パネルの補足情報で補っています。
チャートだけでは、メッセージの内容が導けないとき、または、情報が不足してチャートの解釈ができないときにこの形を用います。
このパターンは細かく分けると、チャートを補足するパネルで補完する情報の種類によって3つのパターンに分かれます。
マトリクスチャートで優先順位づけを行うケースを例に考えてみましょう。
B-1:「情報処理の前提についての説明」……チャートの前提情報が不足している場合や、分析の対象データの抽出方法やクレンジング時の仮定など、通常はフットノートに書かれる内容の中に、議論の俎上に載せるべきものがある場合があります。また、どういった背景・目的から実施しているかを改めて参照する必要がある場合なども、これにあたります。
B-2:「情報処理の過程(処理の過程で扱う要素)についての説明」……チャートからメッセージを導くにあたり、チャート上でどんな処理がなされているのかを補足的に説明する必要がある場合があります。たとえば、マトリクスチャート上にデータポイントをマップする際、それぞれの座標や象限が反直感的な結果になっているとしたら、その理由の説明があることが望ましくなります。
B-3:「情報処理の結果についての説明」……チャートはメッセージの内容を支持するために用いますが、チャートから直接メッセージの内容を導くには、「距離がある」(何段階かの解釈を要する)ケースがあります。そのような場合には、たとえば、「チャートからはAAAAAやBBBBBが読み取れる。その論理的な帰結として、CCCCCと考えるのが妥当である」といったように、AAAAAやBBBBBのような位置づけの情報を補足情報のパネルに付記し、CCCCCを主張としてメッセージに記載します。
C-1:対比……このパターンでは、左右のチャートで対比がなされています。2つのチャートを比べて差分を抽出するケースと、左から右への移行を論じるケースとがあります。
C-2:詳細化(新規 →新規)……左パネルのチャートの一部に焦点を当てる形で、右パネルにおいて新しい情報が展開されます。
いずれの観点でも大切なのは、データを可視化して関係性や特異な値を明らかにした後、いったんデータから離れて「業務上どのような意味があるのか」を考えることです。
このように、データと業務の意味を行き来しながら解釈を深めていくことが、グラフを読み解く力を養うことにつながります。
面白かったポイント
よくまとまっているが、新人向けなので個人的には物足りなかった。
満足感を五段階評価
☆☆☆
目次
Part Ⅰ コンサルの仕事の全体像
Chapter 1 プロジェクト型の仕事の進め方――「プロジェクト」の全体像とメカニズム
Chapter 2 チームでの仕事の進め方――サマリ+ストーリー+ワークプラン
Part Ⅱ コミュニケーションの作法
Chapter 3 議論の進め方――伝え、語らい、進化する
Chapter 4 資料作成の進め方――正しく、速く、美しく
Part Ⅲ 仮説検証の作法
Chapter 5 文献調査・定性分析の進め方――広げ、深め、見つけ出す
Chapter 6 定量分析の進め方――集め、組み合わせ、ひねり出す
Chapter 7 インタビューの進め方――足で稼ぎ、思いを馳せ、場を楽しむ