BIG THINGS

ビジネス

『BIG THINGS』ベント・フリウビヤ

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内容

計画に時間をかける

計画フェーズは安全な港で、実行フェーズは荒波での航海だ。

 

もちろん、アイデアを開発し、脚本を書き、絵コンテを描き、それを何度となくくり返すことにも、コストはかかる。

だがこの段階であれば、「試行錯誤のコストは少額ですむ」。

この膨大で緻密な作業のおかげで、奥深く詳細で精緻で確実な計画ができあがる。

ここでしっかり仕事をしておけば、制作フェーズに入ってからの作業はわりあい円滑、迅速に進む。

これは大事なことだとキャットムルは強調する。

なぜなら制作に入ると「コストが一気に膨らむ」からだ。

 

計画を立てるためには考える必要があるが、創造的で多面的で注意深い思考は、ゆっくりとしたプロセスなのだ。

 

私たちがこうまでも一貫して予測を誤るのは、一貫して経験を軽視しているからに違いない。

 

時間の浪費は危険を招く。

「ビジネスではスピードが肝心だ」と、ジェフ・ベゾスはアマゾンの有名なリーダーシップ原則に書いている。

「多くの意思決定や行動はやり直すことができるから、大がかりな検討を必要としない。計算した上でリスクを取ることには価値がある」

ただし、ここで注意したいのは、ベゾスが実行重視の対象を、やり直すことができる「可逆的」な意思決定に周到に限定していることだ。

この種の意思決定で時間を無駄にしすぎるな、とベゾスは諭す。

何かを試してみよう。

うまくいかなかったら、やり直したり、別の何かを試したりすればいい、と。

これはまったくもって筋の通った考え方だが、大型プロジェクトの決定の大半には適さない。

なぜなら、やり直すことが非常に難しいか、コストがかかりすぎるため、実質的に「不可逆的」だからだ。

 

「経営幹部向け教育クラスの受講生を調査したところ、幹部はタスクを計画しているときよりも、実行しているときのほうが生産的だと感じていることがわかった」と、経営学教授のフランチェスカ・ジーノとブラッドリー・スターツは書いている。

「とくに、時間に追われているときは、計画立案に労力を費やすのは無駄だと感じる傾向にある」

 

この考えを生んでいるのは、プロジェクトをとにかく早く始動させ、作業が始まるのを見届け、プロジェクトが前進している具体的な証拠を得たいという欲求である。

この欲求自体はけっして悪いことではないし、プロジェクトの関係者全員がこの欲求を持たなくてはならない。

問題なのは、計画立案をないがしろにし、まるでプロジェクトに本格的に着手する前に片づけるべき、厄介事のように扱うことなのだ。

 

当初予算は頭金

都市計画の世界では、当初予算はただの頭金に過ぎない。

実際のコストを最初から市民に知らせでもしたら、何も永久に承認されないだろう

『本当の見積もりを出したら、何も建てられやしない』

 

十分な情報をもとに、「何のために、なぜやるのか」を明確に理解すること、そして最初から最後までそれをけっして見失わないことが、成功するプロジェクトの基本である。

「顧客体験から始めなくてはいけない。そこから逆算して、テクノロジーまでたどらなくては」

 

学習曲線

人が何かを学習するプロセスを考えてみよう。

あれこれ試し、工夫を凝らし、何が有効か、有効でないのかを見きわめ、これらをくり返しながら学習する。

つまり、実験を通して経験を生み出していく。

専門用語で言えば「経験的学習」である。

人間は工夫を重ねて学ぶことに長けている。

 

よい計画は、実験または経験を周到に活用する。

優れた計画は、実験と経験の両方を徹底的に活用する。

 

反復的プロセス

第一に、自由に実験することができるからだ。

エジソンもこの方法で大成功を収めた。

「ばかばかしいアイデアを試せる自由が必要なんだ。そして、アイデアはたいていの場合うまくいかない」とドクターは言う。

 

第二に、このプロセスでは大まかなアウトラインから細かいディテールに至るまでのあらゆる部分が精査、検証される。

おかげで実行フェーズに入る前に、曖昧な点がすべて解消される。

 

第三に、ピクサーのような反復的プロセスは、心理学で「説明深度の錯覚」と呼ばれる、基本的な認知バイアスを克服するのに役立つ。

理解しているつもりのことを説明しようとして、実はわかっていないことを自覚すれば、錯覚が解けるのだ。

 

大型プロジェクトではトラブルが起こるのは確実で、「いつ」起こるかだけが問題だからだ。

反復的プロセスによって、その「いつ」が「計画フェーズ中」になる確率を大幅に高めることができる。

計画を立てる間に、打てるだけの手を打っておこう。

そして、計画はエクスペリリ(実験 +経験)をもとに、ゆっくり、徹底的に、反復的に立てよう。

 

計画立案は「能動的なプロセス」である。

計画立案には「行動」が伴う。

アイデアを試し、機能するかどうかを確かめ、その学びを踏まえて別のアイデアを試す。

 

パイオニアとフォロワー

パイオニアとして市場に参入した企業の半数近くが倒産していたのに対し、フォロワー企業の倒産率は8%にとどまった。

また、生き残ったパイオニア企業の平均的な市場シェアが10%だったのに対し、フォロワー企業のシェアは28%だった。

 

重要な問い

誰が権力を握っているのか、いないのか?

どんな利害や思惑が絡んでいるのか?

必要な支持を取りつけ、維持するにはどうしたらいいのか?

設計の主導権をどうやって握り続けるのか?

 

これらは美的センスや工学技術と同じくらい、プロジェクトの成否を大きく左右する重要な問いだ。

そしてこれらの問いへの答えは、言葉で完璧に説明できるような単純な事実ではないから、教室で学ぶことも、教科書で読むこともできない。

自転車の乗り方を学ぶように、試行錯誤をくり返して体得するしかない。

 

失敗の根本原因

失敗の根本原因は、実行以外の部分、実行が始まるずっと前の「予測」にあることが多いのだ。

プロジェクトが暴走するときには必ず、金額以外の、スプレッドシートには表れないコストが発生する。

最もわかりやすいものが、経済学でいう「機会費用」、つまりほかの選択肢を選べば得られたはずの利益である。

計画を誤ったせいで資金が無駄になり、ほかのプロジェクトに投資していたら得られたはずの利益を逸してしまう。

 

ストレスが創造性を阻害する

ストレスが創造性をとくに阻害する状況が2つあることを明らかにした。

1つは、自分では状況をどうにもできないと感じるとき。

もう1つは、自分の能力が試されているように感じるときだ。

 

あなたのプロジェクトが「手に負えなく」なれば、1つめの条件が当然当てはまる。

またそうした状況では、おそらくあなたの評判が危機にさらされるため、2つめの条件も当てはまる。

つまり苦境に陥ったプロジェクトは、まさにストレスが創造性を阻むような状況と言える。

 

「ときどきペースダウンして、2度、3度と見直すと、ミスが減る」と彼は言う。

「そのほうが、結局は早く完了するんだ」

心理的安全性があれば、「悪い知らせがすばやく伝わり」、その分早く問題に対処できる。

 

チームづくり

「チームづくりにはずいぶんとお金をかけたよ」とアンドリュー・ウォルステンホームは言う。

時間と労力もだ。

より直接的な経済的リスクも引き受けた。

 

だが、もしチームのパフォーマンスが標準どまりだったら、おそらく期限を過ぎ、コスト超過はたちまち数十億ドルに上っていただろう。

その意味で、チームづくりに費やしたお金は有意義な投資と言えた。

 

多くの小さいもの

小さいことはよいことだ。

なぜなら、小さいプロジェクトは単純だからだ。

 

「小さいもので大きいものをつくる」という優美なアイデアを表す無骨な用語が、「モジュール性」だ。

1つのレゴブロックは小さいが、9000個以上集まれば史上最大級のレゴセット、「コロッセオ」になる。

これがモジュール性だ。

 

反復はモジュール性の真髄である。

反復は実験を可能にする。

うまくいったことは計画に取り入れよう。

 

うまくいかなかったら、シリコンバレーで言うように「さっさと失敗」して、失敗の原因を分析、学習し、計画を調整しよう。

あなたは賢くなり、設計は改善される。

 

また、反復は経験を生み出し、パフォーマンスを改善する。

これが前に説明した、「ポジティブラーニング」である。

反復することによって学習曲線を駆け上がり、反復するたびにより効率よく、簡単に、安く、速くできるようになる。

ラテン語の格言にあるように、「反復は学習の母」である。

 

この方式を取れば全体の性質を変えずに、1から無限大まで好きなようにモジュールの数を増減して、スケールアップ/ダウンできる

 

これらのプロジェクトと、安っぽく見栄えの悪いモジュールとの違いは、想像力とテクノロジーにある。

モジュール性に秘められた可能性を完全に解き放つためには、またその驚くべき柔軟性を理解するためには、アップルの往年のスローガンである「シンク・ディファレント」(発想の転換)が欠かせない。

 

ヒューリスティック

「ヒューリスティック」とは、複雑な意思決定を簡素化するための、迅速で簡便な経験則をいう。

語源は古代ギリシア語の「ユリーカ!」。

何かを発見したときの喜びや満足を表す感嘆詞だ。

「ゆっくり考え、すばやく動く」も、そうした経験則の1つである。

 

マスタービルダー

マスタービルダーとは、中世ヨーロッパの大聖堂を建設した、熟練した棟梁に与えられた称号だ。

経験則を1つだけ選ぶとしたら、これである。

なぜならマスタービルダーは、あなたのプロジェクトの実現に必要なすべてのフロネシス(実践知)を持っているからだ。

あなたのプロジェクトが住宅リフォームであれ、結婚式やITシステム、高層ビルであれ、深い専門的経験を持ち、プロジェクトを成功に導いた実績のある人を雇おう。

 

よいチーム

「いくらよいアイデアでも、平凡なチームに与えたら台無しにされてしまう。だが優れたチームに平凡なアイデアを与えると、それを修正するか、もっといいアイデアを考えてくれる。だからよいチームさえ用意できれば、よいアイデアが手に入るんだ」

だが、そのチームは誰が選ぶのか?

できればマスタービルダーに選んでもらいたい。

実際、それがマスタービルダーの主な仕事である。

マスタービルダーは単独で仕事をするイメージがあるが、そんなことはない。

プロジェクトを実現するのはチームだ。

 

ゆっくり考え、すばやく動こう

実行フェーズでは、想像できるどんな悪夢も起こり得るし、実際に起こっている。

こうしたリスクへの露出を減らさなくてはならない。

そのために、十分な時間をかけて、詳細な実証済みの計画を立てよう。

 

計画立案は相対的に安価で安全だが、実行は高価で危険だ。

優れた計画によって、リスクが飛び込んでくる窓をできるだけ狭め、できるだけ早く閉じれば、プロジェクトを迅速に効率よく完了できる確率が高まる。

 

面白かったポイント

めちゃくちゃ面白い。

プロマネやってきた人には刺さりまくる内容だと思う。

計画を詰め切ることとモジュール化はほんとうにその通りだと思う。

あとは、チームメンバー次第。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

目次

■1章 ゆっくり考え、すばやく動く
人は危険なほど「楽観的」になる
もっと「前」に時間をかける
■2章 本当にそれでいい?
人は慎重に考えるより早く1つに決めたい
常に「ベストケース」を想定している
■3章 「根本」を明確にする
「なぜそれをするのか」をまず固める
目的を見失うと「顧客」が消える
■4章 ピクサー・プランニング
ピクサーは「灰色のモヤモヤ」から始める
木も森も見る
■5章 「経験」のパワー
最初から「貯金」がある状態で始める
先行者利益は「ほぼ幻」である
■6章 唯一無二のつもり?
「1年あれば終わる」が7年かかったわけ
先人から「あてになる予測」をもらう
■7章 再現的クリエイティブ
計画段階でこそ「創造的」になれる
「見直す」ほうが早く終わる
■8章 一丸チームですばやくつくる
必要なものを「ただち」に支給する
利害が一致すればおのずと「協力的」になる
■9章 スモールシング戦略
「ブロックのように組み立てられないか」
と考える
巨大だと「完成」するまでお金を生まない
■終章 「見事で凄いもの」を創る勝ち筋

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