内容
マインドセットとは
自分の能力は石版に刻まれたように固定的で変わらないと信じている人「硬直マインドセット」の人は、自分の能力を繰り返し証明せずにはいられない。
しなやかな心の持ち方、「しなやかマインドセット」、その根底にあるのは、人間の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができるという信念だ。
硬直マインドセットの人は、自分が他人からどう評価されるかを気にするのに対し、しなやかマインドセットの人は、自分を向上させることに関心を向ける。
才能は伸ばせると信じていると潜在能力が最大限に発揮される。
努力と能力
努力をほめられた生徒たち(〈努力群〉と呼ぶことにする)は、その9割が、新しい問題にチャレンジする方を選び、学べるチャンスを逃さなかった。
次に、生徒全員になかなか解けない難問を出した。
〈能力群〉の生徒たちは、自分はちっとも頭が良くないと思うようになった。
頭が良いから問題が解けたのだとすれば、解けないのは頭が悪いからということになる。
〈努力群〉の生徒たちは、当然のように、なかなか解けないのだから「もっと頑張らなくちゃ」と考えた。
解けないことを失敗とは思わず、自分の頭が悪いからとも考えなかった。
能力をほめると生徒の知能が下がり、努力をほめると生徒の知能が上がったことになる。
子どもに「あなたは頭が良い」と言ってしまうと、その子は自分を賢く見せようとして愚かなふるまいに出るようになる。
私たちの研究では、子どもの能力をほめると知能検査の得点を下げる結果になった。
ビジネス
能力の劣る部下をいじめるのは、上司がそれによって優越感を得られるからだが、もっとも有能な部下がいじめの対象になることも少なくない。
硬直マインドセットの上司にとって、自分の地位を脅かす存在だからである。
ある大手航空機メーカーに勤務するエンジニアは、ホーンスタインのインタビューを受け、自分の上司についてこう語った。
「彼の標的にされていたのは、特に有能な部下たちでした。もし課全体の業績を伸ばすことを真剣に考えていれば、良い仕事をしている部下をいじめるなんてことはしないはずです」。
けれども、自分の力量ばかり気にしている上司は、そういうことが平気でできてしまうのである。
教育
次の言葉にひそむメッセージを聴きとってほしい。
「そんなにはやく覚えられたなんて、あなたはほんとに頭がいいのね!」
「マーサ、あの絵をごらん。あの子は将来のピカソじゃないだろうか」
「あなたはすごいわ。勉強しなくてもAが取れたんだから」
たいていの親は、こうした言葉を、子どもの自尊心を高める励ましのメッセージと思うだろう。
でも、もっと注意深く耳を傾けてほしい。
別のメッセージがひそんではいないだろうか。
子どもたちが受けとるのは、次のようなメッセージだ。
・はやく覚えられなければ、頭がよくないんだ。
・なにかむずかしいものを描こうとしないと、ピカソとは思ってもらえないんだ。
・勉強しないほうがいい。さもないと、すごいと思ってもらえない。
頭の良さをほめると、学習意欲が損なわれ、ひいては成績も低下したのである。
やはり、「ほめるときは、子ども自身の特性をではなく、努力して成しとげたことをほめるべきだ」
優劣や善悪の判断をくだすのはやめて、教え導いていこう。
今まさに学んでいる最中なのだから。
子どもの心にしなやかマインドセットの理想を植えつけようとする親は、頑張れば手が届くような目標を子どもに与える。
そして、長い目でその成長を見守ろうとする。
生き生きと活動しながら社会に貢献できる豊かな人間に成長してくれることを願うのである。
しなやかマインドセットの親が「わが子にがっかりだ」と言うのは聞いたことがない。
晴れやかな笑顔を浮かべて、「わが子がこんな人間に成長するなんてびっくりです」と驚きを語る。
優れた教師
優れた教師は、知力や才能は伸ばせると信じており、学ぶプロセスを大切にする。
ベンジャミン・ブルームは、120名にのぼる世界的なピアニスト、彫刻家、水泳選手、テニス選手、数学者、神経学者を調査して、非常に興味深いことを発見した。
彼ら彼女らのほとんどが、驚くほど温かくて度量の大きい教師に最初の手ほどきを受けていたのである。
けっして基準を下げたりしないが、生徒に評価を下すのではなく、信頼しあえる雰囲気で生徒を包みこむ教師たち。
「才能を値踏みしてやろう」ではなく、「教え導いていこう」というメッセージを発している教師たちだった。
しなやかマインドセットのステップ
硬直マインドセットになってはいけないと口で言うよりも、親みずからがしなやかマインドセットのお手本を示すことにする。
毎晩、夕食の席で、あなたがたは子どもたちに(または夫婦同士で)こんな質問をする。
「今日はどんなことを学んだ?」
「何か勉強になるような失敗をした?」
「今日はどんなことを努力した?」
それぞれの質問に対し、あなたも含めて1人ずつ順番に話していく。
どんなやり方で、どんな努力をしたか、どんな失敗をして、そこから何を学んだか。
昨日までできなかったのに、練習して今日はできるようになったことを話して聞かせる。
失敗しても挫けずに、それを逆手にとって成功に結びつけた話をミステリー仕立てで話してみる。
今、頑張って少しずつ進歩していることがらについて、面白そうに話して聞かせる。
するとまもなく、子どもたちは毎晩、待ちきれないように自分のことをしゃべるようになる。
そうしたら「へえー、今日は昨日よりも確実に進歩したのね!」と驚いてみせる。
娘が望んでいたのはもっと別のことだった。
両親に自分を受け入れてもらい、自由な成長を見守ってほしいと願っていたのだ。
そのようにしてやると、娘は本心からものごとに取り組むようになる。
自分が興味を持ったことをもっと深く学ぶために努力するようになる。
チャンスを逃さない心がけ
毎朝、1日がスタートするとき、自分にこう問いかけよう(紙に書いて鏡に貼っておくとよい)。
今日は、私にとって、周囲の人にとって、どんな学習と成長のチャンスがあるだろうか?
そしてチャンスを見つけたら、それを実行する計画を立て、次のように問いかける。
いつ、どこで、どのように実行しようか?
いつ、どこで、どのようにと考えることで計画が具体的なものになる。
どうすればうまく実行できるか、順を追って思い描いてみるとよい。
当然、障害には突き当たる。
失敗したら、計画を立て直して、次のように問いかけよう。
いつ、どこで、どのように新たな計画を実行しようか?
どんなに落ちこんでいても、行動に移すことが肝心!(これも鏡に貼っておこう)
そして、うまくいったら、次のように自問するのを忘れないこと。
逆戻りせずに進歩を続けていくためには、どんなことをする必要があるだろうか?
面白かったポイント
めちゃくちゃ面白かった。
努力と才能、褒めるポイントによってここまでマインドが変わるのかと勉強になった。
努力と才能は密接な関係にあると思っていたので、ここまで影響を明確に言語化するのはすごいと思う。
自分の考え方や部下の育成だけでなく、子供の教育にも活かせるすばらしい示唆を得られた。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆