マーケティング思考

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『マーケティング思考』山口 義宏

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内容

なぜ事業の成長ができたかは、そこまで単純化して答えるのは難しい。

なぜなら、複合的な意思決定と施策の掛け算の積み重ねによる成果だから。

 

事業を成長させるために必要な3つの要素

  1. 戦略
  2. 知識・スキル
  3. 社内外チーム連携

「外から見えない部分(戦略、知識・スキル、社内外チーム連携)」が良好だと、その結果として「外から見える部分」の施策アウトプットが良くなるという関係性

戦略は究極的には腕の良いひとりが立てればなんとかなります。

ですが知識とスキルは組織メンバーに身につけてもらう必要があり、それをもって3つ目の連携を推進するという構造があります。

 

顧客価値

・機能的価値:商品・サービスの仕様そのものが、顧客にもたらすもの

・金銭的価値:商品・サービスの利用または将来の売却などで金銭的に得られるもの

・社会交流的価値:商品・サービスの所有や利用を通じて生まれた他の人とのつながりから得られるもの

・自己表現的価値:商品・サービスで自己表現ができたり、気分が良くなったりするもの

 

短期的に売上を伸ばす取り組み

1.広告やPRにより、価値を高く評価する人(=誰に)へのリーチ、つまり接触範囲を拡げる

2.商品・サービスは現状のままで、「誰に?」と「何を?」の新しい有効な組み合わせ(ターゲット顧客層と顧客価値)を開発する

3.商品・サービスを得るための費用を下げる。具体的には、価格を下げる、トライアルの商品やプランを提供する、販売チャネルを増やして入手しやすくする、販売チャネルで目立つ場所に置かれるようにして探す時間を削減するなど(ただし価格を下げる場合は、販売量を増やすことでコストを下げ、収益を増やすシナリオが必須)

 

中長期的に売上を伸ばす取り組み(成果への反映に時間がかかる)

4.商品・サービスの実態となる仕様・スペックのレベルを高め、価値の大きさと、価値を評価する顧客層を拡げる

5.商品・サービスを新しく開発し、価値提案の幅を拡げる

 

顧客理解の素養で重要なのは、「多様性あるさまざまな価値観や生活様式の人と交流した経験」が育てる、「人を相対化して理解する目線」です。

顧客価値の整理で重要なのは、「趣味など自分なりにこだわって買った、関与度の高い消費経験の蓄積量」で、顧客が感じる価値を推察するために参照する自分の消費経験の引き出しの多さです。

 

数字

数字の相場観は非常に重要です。

指標として目指せるレベルの数字の水準がわかっていて、それらをさっと計算して「投資すべきか否か」の判断に必要な概算力を身につけたチームは、マーケティング施策投資のミスジャッジが大幅に減ります。

 

構造的に安く提供できる仕組み

・調達の優位性

・技術革新による原価低減

・事業規模拡大後にコストダウンできる事業モデル

 

独自性

独自性をつくる切り口はいろいろあり、それこそがクリエイティビティそのものですが、大別すれば3つの考え方があります。

この3つは排他的ではなく、重複もありえます。

1.ターゲット層 ~市場を絞り込み、そこに最適化した顧客価値をつくる

2.商品・サービスの提案 ~販売~提供~アフターサービスなどのプロセスで、他社ではできない(もしくはやっていない)ことを埋め込む

3.既存競合が参入しようとする場合、自らが提供してきた商品・サービスの自己否定につながってしまうような価値観の商品・サービスを提供する

 

企業のマーケティングを支援する業界も、本当に実効性の高い技術を持ちながらも、リテラシーが低い企業に最適化した会社は少ないです。

そのため、ビジネス機会があるように思えます。

 

LTV

LTVを高めるためには商品・サービスの体験の良さで継続購入率を高めることが大切なため、「良い商品・サービスと顧客体験をつくる(もしくは小売なら仕入れる)」という本質的なマーケティングをしてLTVを伸ばさないとユニットエコノミクスが成立しない業界が増えている。

 

市場規模

自社の事業・商材における市場規模を見る際、基本となるのは次の3つの切り口です。

・TAM:Total Addressable Marketの略称で、自社の事業が獲得できる可能性のある全体の市場規模

・SAM:Serviceable Available Marketの略称で、TAMの中で自社商材特性を踏まえて実際にアプローチできるターゲット顧客市場規模

・SOM:Serviceable Obtainable Marketの略称で、SAMの中で実際に獲得しうる顧客の市場規模(現実的な中期の市場シェア目標として扱われることもあります)

 

規模に応じた顧客価値のポジショニング

企業規模に応じた顧客価値ポジショニングのセオリーとしては、業界で大手といえる会社なら「業界でNo.1」や「すべてのニーズに対応する総合力」といった「大手と認識されているからこそ説得力のある顧客価値のポジショニング」が存在します。

一方で、世の中に数多く存在する小規模な会社であれば、大手ではなくあえて自社を選んでもらうためには「価格がすごく安い」もしくは「大手にはない独自性ある強みがある」というどちらかの顧客価値が認識されないと仕事は得られない。

 

経営的には、「顧客価値のポジショニング=付加価値」の曖昧さのしわ寄せは、収益性や社員の給料水準に響くことがあります。

大手と同じような仕事をしながら単価は下回るなか、社員の足や時間で頑張って価値を出す構造があり、その影響が会社の収益と社員の給料に出てしまうという構図です。

 

事業の停滞

フェーズ4の事業の成熟・停滞の原因パターンはいくつかありますが、主には「市場シェアの低下」か「市場カテゴリの成熟化(市場規模の縮小)」が挙げられます。

 

ダイヤモンド型組織

身も蓋もない話ですが、マーケティング知識・スキルのレベルが平均以上のメンバーの構成比が高いチームは、成果が出やすいというものでした。

裏を返して説明すると「チームのなかで少数の人だけ知識・スキルレベルが高く、他の大多数のメンバーはレベルが低いチームでは成果が出にくい」

 

マーケティングの知識・スキル

・戦略力:収益構造の把握、顧客理解、顧客価値、 PDCAサイクル

・施策力:商品・サービス、顧客獲得・広報PR、関係継続、販売

・AI・ DX力:業務効率化DX、顧客体験向上DX、システム・データ活用、AI活用

・チーム力:組織設計・連携、採用・育成、外部パートナー活用、リスク管理

 

学習

人材育成プログラムに参加する現場メンバーの学習継続率が大きく高まり、顧客満足が大きく上がったことの要因のひとつは、同僚と同じ時期に同じ内容の学習をする「クラスメイト型学習」を取り入れたことにあります。

社内の経営陣や上司など影響力が高い人が注視しているという様子や、まじめに学習を続ける人や実践して成果を出した人を褒めるコミュニケーションがあると、現場メンバーの学習と実践のモチベーションは高まります。

 

経営層の人材教育投資に対する不安・不信感

・教育の重要度が高いのはわかるし、一定の投資はするけれど、どこまで業績成果に結びついているのか?短期回収は難しいのはわかるが、投資に対する経済的なリターンがよくわからない

・教育機会を提供しても、元から学習意欲の高い上位1~2割の社員だけ頑張るけで終わってしまい、新しい知識・スキルを得てほしい残り8割の社員は変わらないのでは?

・社員に教育機会を提供したいが、業務を止めて売上が減ってしまう日をつくり、社員の移動コストもかけて一箇所に集める集合研修を実施するのは、労務管理としてもできれば避けたい(研修時間のしわ寄せをリカバリーするために、社員の労働時間を増やすのは現代では厳しい)

 

面白かったポイント

切り口はいいが、内容は抽象的。

マーケティング領域は幅広いのでしょうがないですが。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆

 

目次

第1章 なぜ「マーケティング」は難しいのか
第2章 成果を出すOS=「マーケティング思考」
第3章 マーケティング思考を構成する3つの共通言語
第4章 事業フェーズ別の考え方・判断基準
第5章 「マーケティング思考人材」育成の成功法則

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