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SCM経営を「見える化」で成功させる実務

ビジネス

『SCM経営を「見える化」で成功させる実務』石川 和幸

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内容

マネジメントとコントロール

受注・出荷は「マネジメント」ではなく、「コントロール」の対象です。

「マネジメント」とは、目標に向かって利害を調整し、ヒト・モノ・カネの資源を配分し、最適な意思決定をめざすことです。

実行の指示・進捗管理や異常対応は「マネジメント」ではなく、「コントロール」なのです。

 

過去と現在から未来を想定して、限られた資源を配分し、「必要なモノを、必要なときに、必要なところへ、必要な量を」届けるための意思決定をするサプライチェーン「マネジメント」こそ、築くべきだった業務なのです。

 

SCMの定義

SCMが生まれた当初は、物流として認識されました。

物的流通コントロールの手法がサプライチェーンだろうということです。

今でも、物流業界がSCMの中心だと思っている人は、この時代の印象が強いからです。

 

次に、物流にプラスして、物流をコントロールする指示を出すための実行業務(受注や出荷指示など)が、SCMの範疇に入ってきました。

受注から、オーダーの進捗管理や在庫管理までが対象になると、ERP(Enterprise Resource Planning=企業資源計画)の一部にこの機能部分が入っていることから、受注、出荷、在庫管理がSCMだといわれたこともありました。

ERP導入を、いまだにSCMプロジェクトという会社があるのは、このときの名残りです。

 

さらには、調達や生産がSCMとの認識も生まれました。

SCMと聞くと、工場の話だと思う人や、購買手法の話だと思う人がいるのは、このためです。

 

そしてその後、計画業務がSCMに入ってきました。

それまでのSCMは、どちらかというと実行業務ととらえられてきました。

しかし、ここにきて、はじめて計画業務が視野に入り、やっと「マネジメント」らしくなったのです。

SCMのもっとも重要な役割は、「計画」にあります。

海外のSCMパッケージのほとんどが計画業務を対象にしているのは、計画こそマネジメントの要であるとの認識からです。

 

そして近年、SCMの範疇に入る業務はさらに拡大し、商品企画や設計との連携、回収物流、リサイクル、CRM(Customer Relationship Management=顧客関係性マネジメント)まで視野におさめようとしています。

この変遷は、学問上でも論争の末に拡大してきたもので、コンサルティング業界でも右往左往した定義です。

 

アメリカのSCC(Supply-Chain Council =サプライチェーン協議会)は、SCMを「価値提供活動のはじめから終わりまで、つまり原材料の供給者から最終需要者に至る全過程の個々の業務プロセスを、1つのビジネスプロセスとしてとらえ直し、企業や組織の壁を越えてプロセスの全体最適化を継続的に行ない、製品・サービスの顧客付加価値を高め、企業に高収益をもたらす戦略的な経営管理手法」と定義しています。

著者は、もっと単純に、「必要なモノを、必要なときに、必要な場所に、必要な量だけ」届けるための戦略、計画、統制、実行の仕組みと考えています。

 

それでは、SCMを構成する枠組みは何でしょうか。

まず、会社のビジネスモデルを決める、SCM戦略があります。

ここが、SCMを描くグランドデザインになるのです。

 

このグランドデザインから、SCMインフラとしての、モノの流れとしてのロジスティクス(Logistics=原材料調達から消費までのモノの流れをコントロールして全体最適化をめざすこと)があります。

そして、このロジスティクス上で、資源(ヒト・モノ・カネ)をどう使うかを決める計画業務が、長期、月次、週次と階層化してあり、その最下層に、実行業務としての受注-出荷などの層があります。

こうした枠組みをもち、会社が儲け続けるためにそれぞれの階層を有機的に連携させ、マネジメントしていくのがSCMです。

 

事前に計画したマネジメントとコントロールが失敗していれば、どんなに優れた業務オペレーションを誇ってもムダになります。

それはまるで、すばらしい高速道路にまったく自動車が走らないようなもの、あるいは、高速道路の上を、牛も自転車も緊急車両もごちゃごちゃになって走り、高速道路の意味がなくなってしまうようなものです。

 

サプライチェーンモデルは、ビジネスモデルごとの在庫の構え方(デカップリングポイントの置き方と在庫の層別配置方針を基礎に、①在庫拠点と物流ネットワークを決定すること、②生産拠点と生産方式をデザインすること、③サプライチェーンを管理・統制(マネジメント&コントロール)するための、計画業務と実行業務の方針をデザインすることです。

 

SCMのスタートは中・長期計画

「必要なモノを、必要なときに、必要な場所に、必要な量だけ」届けることをマネージするのがSCMだとすると、すでに中・長期計画からSCMは始まっています。

なぜかというと、中・長期計画の過程で、今後どんな製品を市場に出していくのかという、製・商品開発ロードマップが検討されるからです。

 

このロードマップで、新たな部品、原材料が検討され、必要なサプライヤーや外注業者が選定され、販売チャネルの増設・改廃やパートナーの選定が行なわれることによって、SCMの今後の枠組みが決まっていきます。

また、中・長期計画の過程で、SCMのインフラ投資が決定されます。

さらに、SCMの今後の予算策定や、月次・週次の計画立案のガイドラインと制約条件が決まってきます。

このように、中・長期計画が、SCMの今後の計画・実行の、もっとも大きな枠組みとなってくるわけです。

 

また、中・長期計画では、海外関連会社の連結での運営管理方針も立案されます。

生産の一部を海外に移すのか、M&A(吸収合併)により新たな販路、新たな仕入先をつくるのかも決められます。

連結子会社の今後の成長計画も練られます。

こうした、中・長期計画上の意思決定が、今後の予算、年度計画のインプットになるのです。

 

中・長期計画の立案を受けて、中・長期計画のうちの初年度部分は年度計画が立案されます。

年度計画では、製・商品開発ロードマップにもとづき、年間の販売計画、在庫(需給)計画、生産計画、調達計画が立案されます。

販売計画ではキャンペーンの予算が見積もられ、生産規模と調達規模から原価が見積もられ、さらに、収益計画が立案されます。

いわば、単なる計画である設備予算も、年度計画で実行予算化され、生産能力が決まって人員採用計画が立案されます。

調達数は、キーとなるサプライヤーにも開示されることがあり、年間のパーツの買取保障、かつ供給保障としての「枠取り」が合意されることもあります。

販売数が計画されればはじめて、価格、生産能力、調達数が決まるという意味で、年度計画はSCMでもっとも重要な計画といえます。

 

週次で計画された生産要求数をもとに、生産指示が出され、製造指図が発行されます。

同様に、購買指図が発行され、部品の調達や商品の調達が実施されます。

ここでは、生産や調達がきちんと実行されることが必要不可欠です。

要求期日どおりに、要求数量どおりに満たされないと、「必要なモノを、必要なときに、必要な場所に、必要な量だけ」届けることができなくなるからです。

したがって、生産進捗管理や品質管理が重要になってくるというわけです。

業務の遂行の管理精度が低いと、SCMを根底から崩しかねません。

 

納期をきちんと守るために、業務の精度をアップすることと、せっかちな顧客の要求を満たすために、スピードアップが要求されています。

こうした要求にこたえられる会社は、強いのです。

 

在庫削減

層別分類を行なうときは、たいてい、出荷頻度(もしくは出荷数量)と納入許容リードタイムのマトリックスに集約します。

在庫の層別結果は、在庫拠点に配置していきます。

在庫拠点は、顧客へのサービスを考慮して配置されているという視点で考えます。

たとえば、地域デポは顧客のそばに置き、そこから上流に向けて地域倉庫、地域センター倉庫、グローバルセンター倉庫と配置していきます。

ここに、それぞれの顧客の、納入リードタイムと出荷頻度で層別した在庫を配置します。

 

出荷頻度が少なく、顧客が長い納入リードタイムを許容する製品は、顧客のそばに置く必要がないので、サプライチェーンの上流に配置します。

これで、全体としての在庫も減らせます。

各拠点で在庫すると、それだけ在庫量が増えるからです。

 

逆に、出荷頻度が高く、顧客が短納期を要求する製品は、できるだけサプライチェーンの下流に配置します。

在庫は増えるかもしれませんが、上流化と下流化の組合わせで、全体の在庫数量を下げられます。

 

とくに効果が大きいのが、滞留期間の長い、出荷頻度が少ない製品の上流化による、全体的な在庫数の減少です。

流動性の低い在庫が減ることで、資金繰りにも好影響が出ます。

以上は、層別分類による配置方針の一例ですが、バリエーションは豊富にあるので、自社にあった層別を選択して行なうことが肝要です。

 

需給調整

生産計画と調達計画の「見える化」のためには、生産要求数を出発点に、生産計画、小日程計画、製造指図、製造実績・進捗、資材所要量計画、部品在庫・原材料在庫、購買指図、入荷予定が関係付けられて、開示される必要があります。

計画システム(スケジューラー、MRP:Material Requirement Planning)と製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)、製造機器実績収集システム(PLC:Programmable Logic Controller、シーケンサー)、検査実績収集システム(LIMS:Laboratory Information Management System)の各役割分担がきちんと決められ、データ連携がされていることが必要になります。

 

製造・受注・出荷

製造実行に結びつく流れは、生産計画→所要量展開→小日程計画→製造指図となります。

実際、所要量展開しただけでは、すぐに製造ができません。

設備能力にも人員にも、かぎりがあるからです。

こうした制約を考えたときに、製造可能な小日程計画を立てる必要があります。

生産管理では、生産能力の限界を加味した計画を小日程計画と呼びますが、本書もその言葉を使います。

 

小日程計画では、納期に間に合い、かつ設備稼働を上げて実現可能な計画を立案することが肝です。

製造の順番をうまく組み合わせないと、納期に間に合わないうえに、機械も人も遊んでいるような非効率な計画になるときがあります。

これでは、ムダの最たるものになるので、納期を守った効率的な小日程計画が立案されることが、SCM上、重要になります。

 

とくに見てるべき制約は、設備能力や人員能力だけでなく、治工具の有無、段取り、生産順序による作りやすさの変動、作業員の習熟度などが必須です。

こうした必要な制約を定義し、最大限に効率的な計画を立案し、製造現場を統制していくのです。

 

小日程計画ができれば、あとは指示を製造指図として発行し、現場を動かしていきます。

製造現場では、小日程計画で指示されたとおりに製造が進んでいるかどうか、進捗を管理します。

不具合があれば、その場で直され、計画変更の必要性があれば、小日程計画担当に伝えられます。

週次の生産計画で立案された納期に間に合わない事態が起きたときは、週次計画側にフィードバックされ、次回の週次SCM計画で計画補正が行なわれます。

 

小日程計画で製造指図になった品目が完成し、検査で合格になれば、指図は閉じられ、実績が計上され、倉庫に引き渡されて出荷可能在庫となります。

こうして、出荷可能になった製品在庫が、受注により引き当てられ、顧客に出荷されるのです。

 

業務プロセスを可視化して、どう短縮できるか分析していきます。

IE(Industrial Engineering =インダストリアル・エンジニアリング)という作業改善の考え方で、ECRS(E:Eliminate =なくせないか、C:Combine =同時にできないか、R:Re-order =順番を変えられないか、S:Simplify =単純化できないか)を参考にして、プロセスを改革します。

 

たとえば、出荷時の出荷承認という業務ですが、通常は部門長に承認を得ていたとします。

出荷が立て込むと、部門長の処理が滞り、時間がかかります。

そこで、ある金額以下は承認なしで担当者が処理する、というスピードアップの方法が考えられます。

これは、まさに権限委譲をともなう、E=なくせないか、の採用です。

こういう方法を考えます。

 

また、標準化→自動化という方法でも、スピードアップします。

まず、標準化します。

ばらばらのやり方を自動化しても、いくつものやり方が残っていては、スピードもバラバラだし、自動化のための投資も余計にかかります。

そのうち、どれが正しいのかわからなくなって混乱することになるため、やはり、まず標準化すべきなのです。

たとえば、受注のたびに顧客台帳を探したり、価格を何度も計算したり、担当者個人持ちの台帳があったりします。

こうした、バラバラの業務を標準化し、共通のマスターにしてルール化するなどの手立てで、誰がやっても同じスピード、同じ品質になるようにします。

その後にシステム化するなどして自動化し、スピードアップします。

 

出庫(ピッキング)、梱包、出荷などの実作業は、作業改善によってスピードアップします。

作業者の動作、動線に関する改善方法はIEでたくさんの事例があるので、そこで示されているさまざまな方法を参照することで改善していくことができます。

作業改善も、永久改革テーマです。

 

製造、受注、出荷などの実行業務は、サプライチェーンマネジメントではなくオペレーションです。

マネジメントという意思決定の対象ではなく、実行統制であるコントロールの対象なのです。

このあたりを履き違えている人がいますが、実行業務は、単なる指示統制にもとづく粛々とした実行なのです。

 

もちろん、マネジメントするためには、こうした実行がきちんとなされていることが前提なので、実行業務は重要です。

しかし、この領域をSCMとかんちがいすると、実行が粛々と行なわれる仕組みさえできればSCMができあがるとかんちがいすることが懸念されます。

 

それは、たとえば、実行業務ができているからと、マネジメント層が財務結果ばかり追いかけたり、「売上を上げろ」「在庫を減らせ」と指示したりするだけで思考停止してしまうことです。

そうならないよう、SCMとは、単にモノがきれいに流れるだけではだめで、儲けを最大化し、リスクを最小化するために、モノをどう準備し、作り、配備し、流していくのかを意思決定するマネジメント業務を認識することが必要なのです。

 

「必要なモノを、必要なときに、必要な場所に、必要な量だけ」届けるためには、中・長期、月次、週次と、SCM計画の精度を上げ、実行統制へのインプットとなる意思決定が重要なのです。

マネジメントを明確に意識し、会社の儲けを決め、競争力を高めるためには、戦略をどう練り、強力なビジネスモデルにもとづくサプライチェーンモデルを組み上げ、その実現インフラである物流を基礎としてつくり上げることが必要です。

そして、そのうえで「ヒト、モノ、カネ」を効率よく配分して仕組みをつくり、業務を流していくSCM計画をつくり上げ、その結果、実行スピードが上がるようにする、というのがSCMの全体像です。

 

基準在庫

基準在庫は、基本的に必要とされる在庫数を計算するもので、この計算結果が在庫数量となります。

一方、安全在庫は、基準在庫の一部構成要素です。

いろいろな定義がありますが、ここでは、基準在庫は安全在庫数+期間計画数に分解することで定義します。

第2部第5章では、期間計画数を販売計画数と読み替えて、基準在庫=安全在庫+販売計画数として書きました。

 

販売計画数はバケットの短縮で小さくなることは既出のとおりです。

安全在庫は、安全係数と標準偏差とリードタイムの平方根の積なので、どれかを減らせば全体に安全在庫は減っていきます。

 

安全係数は、欠品許容度なので、20%(実際は、多いほうに要求がきた場合だけ欠品し、少ないほうにはずれる場合は欠品しないので、10%)か5%(同2.5%)か、あるいはほとんど欠品を許さないかで係数が変わります。

まず、品目の重要性から、どこまで許容できるかを方針として決めておくべきです。

 

標準偏差は、どれほどばらつくのかを表わします。

このばらつきが、見積もるべきリスクなのです。

つまり、「計画時点と実績時点でどれだけはずれるか」ということに対する準備は、この標準偏差にかかっています。

標準偏差は、実績から計算すると思い込んでいて、数学では人為的に下げられないと思っている人が多いのですが、そんなことはありません。

差異をどう見るかだけなのです。

 

たとえば、一般には、販売実績のばらつきを見ることがあります。

このときのばらつきは、すなわち平均を真ん中にして、どれくらいばらつくかです。

しかし、計画(または予測)の精度が高く、計画(または予測)と実績の差異のばらつきだけで対応できれば十分なときは、単純に販売実績よりもばらつきが小さくなり、その分、標準偏差が小さくできます。

販売実績の10個、20個よりも、販売計画-販売計画差異が2個、4個と計算できたほうが、小さいばらつきになるからです。

 

ただし、この方法も、あまりに計画精度(予測精度)が低い場合は使えません。

あくまで前提は、販売実績単独でばらつきを見るよりも、計画-実績(実際は絶対値で計算します)のばらつきのほうが小さいという前提です。

つまり、期間計画数が「はずれ」るときの変動分だけ見ようというのが、この思想です。

 

リードタイムは、リードタイム削減がそのまま在庫削減にきくと、177ページですでに書きました。

このように、安全在庫でさえ、ある程度抑えた数量にすることができるのですが、そのためには、やはり業務の質向上とスピード向上が必要なのです。

 

サプライヤーと連携

「調達枠」「供給枠」は、あくまで「枠」であって、実際の生産や販売が始まって、いざ部品購入となると、この枠が少なすぎたとか多すぎた、ということが生じます。

これを回避するために、計画を何度も見直し、枠を変更していきます。

予算、もしくは長期SCM計画を、実際の販売時期、生産時期が近づくごとに何度も見直し、ローリングしていくことで、必要な部品数の計画精度は上がっていきます。

見直しのタイミングは、月次SCM計画が中心ですが、当初の予算から大きく逸脱する場合、お互いの会社にとっての予算見直しになるので、マネジメント層の合意が必要になります。

 

「枠」を調整していく方法と並んで、段階発注というコミュニケーション方法があります。

調達計画期間に応じて、「予定」「内示」「確定」と分けていくのです。

 

「予定」とは、かなり先の調達計画で、ここで示される購入数はあくまで予定であり、参考情報として扱われます。

期間的には、2ヵ月先、3ヵ月先といった期間で、会社によって、この期間は変わります。

もし、この期間でサプライヤーが断りもなく納入品を生産した場合、発注者側は引き取る責任はありません。

ただし、この期間にサプライヤーが先行で原材料を購入しなければならず、かつその原材料の専用性が高い場合は、原材料だけ引き取る契約を結ぶときもあります。

 

「内示」は、引取責任をもった、予定情報です。

サプライヤーの能力が低い場合、まだ正式発注でなくても、先行で生産することを許容することです。

確実な調達を狙うためにも、先行生産を許し、引取責任を負うのです。

 

「確定」は文字通り確定発注です。

内示分の引取りと、新規の確実な生産依頼でもあります。

段階的に計画を見直しつつ、精緻化してきたので、このタイミングでの欠品や納期遅延は、サプライヤー側にとって許容されていません。

 

「予定」「内示」は、基本的に月次SCM計画で、サプライヤーに開示されます。

「確定」は、週次SCM計画からMRPを通じて、購買指図が発行され、発注に結びつきます。

サプライヤーは重要なパートナーなので、こうした方法を駆使して長期的にお互いをサポートしつつ、リスクと利益を配分できる関係を築くべきでしょう。

 

サービスと連携

サービスパーツロジスティクスには、主に、以下のような特徴があります。

①供給の遅れは顧客の満足度を極端に下げる

②取扱品目数が多く、管理がたいへん

③めったに出ない間歇需要品の予測が難しい

④長い期間、管理する必要がある

⑤サプライヤーが供給部品を生産中止する場合、大量買いが必要

⑥修理と連携しないと、仮出庫などの管理が煩雑化する

これらの特徴があるため、サービスパーツのSCMは、非常に煩雑な管理が要求されるのです。

 

①②への対応としては、在庫の層別管理、層別配置による供給の確保、迅速な物流体制の構築があげられます。

最近は、サービスパーツセンターを独立の事業と位置づけ、グローバルパーツセンターを立ち上げる会社も増えてきました。

また、迅速な物流体制構築のため、物流業務をアウトソーシングする、サードパーティーロジスティクスの手法も導入し、今までのコストセンターという位置づけから、売上・利益を稼ぎ出すプロフィットセンター化する企業も現われています。

 

③については、在庫配置で対応します。

間歇需要品は予測を当てるのは困難なので、「予測当て」の統計モデル追求にコストをかけるよりも、事前にいくつ在庫をもっておくかという、意思決定で対処すべきです。

 

④については、滞留期間を「見える化」します。

出荷数の多い品目は、長期間管理しても、その間にどんどん出荷され、新しい在庫に替わっていくので問題ありません。

しかし、めったに出荷されず長く滞留している品目は劣化の恐れがあるので、定期的にチェックするか廃棄するかできるようにしておきます。

 

⑤は、難しい問題です。

しかしこの点も、マネジメント層の意思決定として判断すべきです。

大量購入は、資金繰りの問題を生みます。

逆に、大量購入をやめると欠品が生じたり、再び生産依頼するときに金型や図面を起こしたり、広範囲での業務が発生します。

どちらにしても、一担当者が処理できることではありません。

 

⑥は、サービスパーツに特徴的なことです。

修理部位の特定ができないときに、仮に部品を出庫し、使わなければ戻すという業務があるためです。

この点は、業務ルールを明確化する必要があり、修理部門などのサービスと連動した出荷が迅速に行なえる体制を、サービス部門と連携して構築する必要があります。

 

SCMシステム

そもそも、どこかの1組織が、世界中の組織利害にかかわる意思決定を勝手にできると考えたこと自体、誤りです。

販売計画も在庫計画も、仕入・生産計画も、各組織の方針や利害がおります。

各組織の計画と実行指示は、単なる業務、つまりオペレーションではなく、利害の調整であり、意思決定であり、マネジメントなのです。

さらに、そうした組織「間」の業務をつなぐのも、マネジメントなのです。

利害を調整し、高い視点で意思決定することが必要だったのです。

 

SCM管理指標

個別場当たり的管理指標の設定ではなく、もっと組織的に構造化して、あるべき管理指標を設定すべきです。

構造化の手順は、以下のようになります。

ステップ1:ビジネスのあるべき姿(KSF)の確認

ステップ2:あるべき指標抽出・優先順位の検討

ステップ3:管理指標をあげ、結果指標と先行指標を関係付ける

ステップ4:指標の責任者を決める

ステップ5:データの取得可能性の確認とシステム化計画

 

ステップ3の関係付けですが、指標には、結果を提示する結果指標と、結果指標に先立って変化する先行指標があります。

結果指標は、主に財務的な指標で、先行指標は、この財務的な指標に影響を及ぼす業務的な指標です。

 

財務的な指標に関して、改善しろといってもアクションになりませんが、先行指標はアクションに結びつきます。

「在庫を減らせ」ではなく、「在庫を減らすために、納入リードタイムを短縮せよ、在庫精度を上げよ」ならば、なにをすればいいのかわかります。

納入リードタイム短縮のためのプロセス改善、計画精度向上のためのプロセス改善など、原因にさかのぼって改善アクションに結びつくのです。

管理指標はアクションに結びつくレベルまで展開し、構造化する必要があります。

 

展開するとは、たとえば、売上を上げることに貢献するのは顧客満足度、顧客満足度に貢献するのは欠品率低下、欠品率低下に貢献するのは在庫数と工場の納期遵守率、納入リードタイム短縮、といった具合です。

この場合、売上が結果指標で、目標となります。

アクションとしては、「売上を上げろ」ではなく、売上を上げるために、その先行指標を向上させると考えていきます。

つまり、売上向上→顧客満足度向上→欠品率低下→適正在庫数、納入リードタイムと関連付け、適正在庫数維持、リードタイム短縮を実際の先行指標として特定し、現場に改善指示し、改善度合いをトラッキングするのです。

こうすることで、売上向上には、在庫適正化と納入リードタイムの改善が動機付けられ、改善が推進されるのです。

 

ほしいデータは、定義されます。

データを提示する切り口も定義されます。

あとは、取引データや会計データをもつ基幹システムから、必要なデータだけ引き抜いてくればいいだけです。

 

あらゆるデータを取り込んで、あらゆる切り口で分析する必要はありません。

SCMはPDCAマネジメントサイクルなのです。

P(計画)-D(結果)が明確に業務定義されれば、それに関連したSCM管理指標も決まり、C(チェック)の業務が指標の管理として組み上げられるのです。

 

マネジメント

SCMはサプライチェーン「オペレーション」ではなく、サプライチェーン「マネジメント」と、最初に書きました。

会社の収益を決める、重要なマネジメントであるとの認識で業務を組み上げ、システムを構築していくことが必要です。

戦略を立て、ビジネスモデルを構築することからSCMです。

ビジネスモデルからサプライチェーンモデルを切り出し、時間軸で階層化したPDCAが回る、年次SCM計画、月次SCM計画、週次SCM計画と詳細化していってつながり、実行を統制し、結果を積み上げて、各計画段階で再び見直しが入るという、時間軸で階層化したPDCAマネジメントがSCMなのです。

会社が儲け続けるためには、「必要なモノを、必要なときに、必要な場所に、必要な量だけ」届けるために、各ポイントで、どこまでマネジメントの質を高められるかが、SCMを使ううえでの勝負です。

 

面白かったポイント

SCMについてまとめられた素晴らしい本。なんで今まで出会わなかったのか。

一般的な認識はSCMは物流という狭義の定義だが、DXまで含むのがSCMという私の認識と一致していてうれしい。

 

満足感を五段階評価

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