解像度を上げる

ビジネス

『解像度を上げる』馬田隆明

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内容

解像度が高い人が持っている4つの視点

深さの視点とは、原因や要因、方法を細かく具体的に掘り下げる

広さの視点とは、考慮する原因や要因、アプローチの多様性を確保する

構造の視点とは、「深さ」や「広さ」の視点で見えてきた要素を、意味のある形で分類

時間の視点とは、経時変化や因果関係、物事のプロセスや流れを捉える

 

「深さ」「広さ」「構造」「時間」は、どれか一つに、集中的に取り組めばよいわけではありません。

4つが相互に影響しあって、解像度は上がっていきます。

 

基本的に深さが足りない

こうしたアンバランスの中で最もよくあるのは、深さが足りないパターンです。

そこでまずは「深さ」から始めることをおすすめします。

 

従来は物事を広く知っている人が重宝されていましたが、昨今はインターネットで検索すれば様々な情報を誰でも獲得することができます。

構造化されたレポートや理論などにアクセスするのも簡単です。

 

一方で、「教育の現場で何が起こっているのか」「アプリの改善のために、企業が実際にやったことは何なのか」「起業の失敗の原因は何か」といった一定以上に深い情報はなかなかインターネットでは手に入らず、希少性が高まっています。

そこでまず、現場に転がる希少で具体的な、つまり深い情報を先に得て、解像度を上げましょう。

深い情報を持ち、共有することで、「この人は優れた洞察を持っている」と思われやすくなり、人を巻き込みやすくもなります。

そうしてつながった人から様々な情報を得たり、議論したりすることで、広さと構造、時間の視点は後から充実していきます。

まず深さを確保することで、解像度を上げるサイクルが回り始めるのです。

 

分からないことを分かる

分からないところが分からない、つまり、疑問がない、質問ができないのは、解像度が低いときの典型的な症状です。

研究者のように特定の分野を突き詰めた人ほど、「分からないこと」や「まだ分かっていないこと」を多く言える傾向にあります。

 

シンプルさと高い解像度

私たちは言説の「シンプルさ」を高く評価しすぎてしまっているように思います。

「複雑なことを単純に言えるのが頭の良い人だ」と言われて久しくなりました。

ユーチューブなどでも、社会の問題に対して「こうだ」とシンプルに言い切る人は人気を博しがちです。

 

要点をおさえて言えることは、解像度の高さを示す一つの兆候です。

しかし、それは複雑なことをきちんと複雑なものとして捉えたうえで、重要なポイントが何なのかが分かっていてこそです。

さらにいえば、物事を高い解像度で理解したうえで、相手が理解しやすい適切な解像度でのコミュニケーションをしているからとも言えます。

ただしその前に、複雑なものをまずは理解する必要があり、そのときには、複雑に見える専門用語や難しい概念を使う必要がある場面もあります。

 

複雑な問題に対して、シンプルな答えを提供したり、結論を言い切ることにも注意が必要です。

その一例が陰謀論です。

陰謀論は、陰謀を企てる人が社会を意のままに操っているのだという、シンプルな社会の見方であり、確かに分かりやすくはあるものの、間違っていることのほうが圧倒的に多い考え方です。

思想的リーダーと呼ばれる人たちの中にも、物事を過度に単純化して、世の中を一刀両断することで、人気を得る人もいます。

政治でも、一つの主張に対しての人々の賛否の細かなニュアンスを汲み取らず、シンプルに敵と味方、善と悪の二項対立に持ち込んで、人々を煽る政治家もいるでしょう。

 

人は曖昧さを嫌う認知的完結欲求があると言われています。

曖昧で混沌としている状況では特に、シンプルで分かりやすい答えをどうしても望んでしまうのです。

しかし、分かりやすさは、時として毒にもなります。

私たちは必要に応じて、物事を白黒ではなくグラデーションで捉えたり、分からないものはまだ分からないものとして、その曖昧さや複雑さに向き合わなければなりません。

複雑なものを複雑なままに捉えるためには高い解像度が必要です。

難しく、努力も時間も必要でしょう。

しかしそれは、世界を色鮮やかに見ることでもあると筆者は考えています。

 

解像度を上げることで、世界から受け取る情報の量や質を上げて、世界をより色鮮やかに体験することができます。

その結果、より良い表現を用いたり、新しいビジネスの機会を見つけたりすることができるのです。

 

解像度を上げるためには、そうした日常的な認識の「自動運転モード」をいったんオフにして、「マニュアルモード」で物事を見なければなりません。

面倒ですし、多大な労力や特殊なスキルも必要です。

複雑な世界を複雑なものとして捉えようとすると、認知的な負荷は高まります。

 

行動量を増やす

高い解像度には、「情報」と「思考」と「行動」の組み合わせで至ることができます。

さらにこの3つにはそれぞれ量と質の両面があるため、「情報」「思考」「行動」の「量と質」を高めていくことによって、高い解像度へと辿り着くことができる、

 

思考の材料となる情報が間違っていれば、どんなに思考能力が高くても正しい答えは出せません。

どんなに素晴らしい情報を持っていても、思考が下手であれば良い判断はできません。

そして良い情報と良い思考を持っていても、行動しなければ何も起こりませんし、結果からフィードバックを得ることもできません。

 

解像度を上げるうえではまず、情報や思考がまだ粗い状態でも、行動量を増やす、つまり、とにかく最初に行動しはじめることをお勧めします。

なぜなら、行動することで、周囲や市場からのフィードバックという、本やインターネットではなかなか手に入らない情報を得ることができるからです。

また行動して得られた経験によって、実感を伴った自分だけの思考も促されるようになります。

つまり、行動量を増やすことで、質の高い情報と思考を獲得するサイクルが回り始めるのです。

 

皆さんの周りにも、思考はそこまで鋭いわけではないのに、驚異的な行動量によって多くの機会を得て、有名になった人物がいないでしょうか。

たとえば自分の考えを外に出すのをためらわない人や、まだまだ下手な段階でも作品を世に出していく人です。

生み出すアウトプットの質が最初はそれほど高くなくとも、大量の成果物を生み出していく中で、質の高いものも生まれます。

打率が多少悪くても、打席に立つ回数が圧倒的に多ければ、ヒットの総数も多くなるようなものです。

そうして大量の場数を積み重ねていくうちに打率も良くなり、登壇や取材などの機会を得られることも増え、そうした機会から人脈を広げて、良い情報を得られるようになって、さらに良いアウトプットを出していくようになる、といったサイクルが起こっているのです。

 

良い課題

課題の大きさを考えるときは、強度と頻度の掛け算で考えることをお勧めします。

課題の強度とは、課題が一度起こったときにどれぐらいの痛みを感じるか、解決できなければどの程度の金額を失うか、解決できたらどの程度大きな金額を得られるか

課題の頻度とは、その課題がどのくらい頻繁に起こるか

 

他企業と差別化ができるポイントは、そうした誰でも手に入るデータではなく、少数の人しか持っていない顧客の課題への洞察

顧客よりも顧客の課題のことを深く知っているカスタマーマニアになれているかどうか。

 

内化(internalization):

読む・聞くなどを通して知識を習得したり、活動(外化)後のふり返りやまとめを通して気づきや理解を得たりすること。

 

サーベイ

事例のサーベイが十分できているかどうかの閾値は、関連事例を「100」程度知っているかです。

製品を作るのであれば、まずは自分の事業領域の関連製品を、成功事例も失敗事例も含めて最低100個は言えるようにしましょう。

言えるだけではなく、自分の手で触ってみることもお勧めします。

それでようやく競争のスタートラインに立てるぐらいだと思ってください。

300や400以上知ると、ようやく頭の中に地図ができてきます。

 

事例のサーベイがある程度終わったら、次は大きめの書店に行き、自分の課題に関連する業界の本を端から端まで買う

取り組みたい課題の市場に関する管轄省庁のレポートや白書を検索する

 

インタビュー

顧客にインタビューをする際、最も気を付けたいのは、顧客の意見ではなく、事実を聞くことです。

顧客の意見を聞いて、その意見の通りに何かを作ったり改善したりしても、たいていうまくいきません。

まずは顧客の事実を把握して、その事実から自分自身で仮説を立てることで、はじめて私たちは価値を出せるのです。

 

現場

現場で観察するときには、可能な限り写真や動画を撮ることをお勧めします。

あとで振り返るための記録という意味でも重要ですし、チームメイトにも共有できます。

さらに「写真を撮る」「動画を撮る」と意識することで、漫然とした観察を防げるようにもなりますし、日々の観察の成果を写真の枚数や動画の数で確認できるようにもなります。

 

顧客や顧客が日々向き合っている課題を知るために、顧客と同じ現場で働いてみる。

ITなどの新しい汎用技術を利用したビジネスの場合、技術を持っている人が現場で働いて課題を探すことで、新しい技術で解決可能な顧客の課題に気づける。

必ず事前に仮説を持って現場に行く

 

原因を人に帰属させすぎないことです。

人のせいにしてしまうと、システムを改善できなくなるからです。

 

外化(externalization):

書く・話す・発表するなどの活動を通して、知識の理解や頭の中で思考したことなど(認知プロセス)を表現すること。

 

この内化と外化を繰り返すことで、学習は進むと言われています。

インプットとアウトプットとどう違うのかと思われるかもしれませんが、内化には内に取り込んで血肉化するニュアンス、外化にはいろいろと試行錯誤しながらこねくり回し、情報が加工されて生み出されるニュアンスがあります。

 

書く

まず取り組んでほしいのは、「今、何が最も重要な課題だと思っているのか、それはなぜなのか」を仮説で良いから最初に書くことです。

考え抜いた「結果」を書くのではありません。

書くことは思考の「過程」です。

書くことで私たちは考えることができます。

 

最初の書き出しは箇条書きでも構いません。

ただし、より詳細に課題を検討するときには、文章として長文で書くことをお勧めします。

 

話す

自分が今考えている課題について喋ってみてください。

言い淀む部分はないでしょうか。

もしあるなら、そこがまだ解像度が高くない部分です。

 

解像度が低い原因は単に情報不足・情報整理不足である場合が多いのです。

良質な情報を内化できていなければ、良質な外化もできません。

 

壁打ち

一人で喋るだけでも効果がありますが、誰かと喋る、つまり対話するとさらに良い効果があります。

相手に伝えるために強制的に言語化が促され、さらに質問によって深さが足りないところを自覚できるからです。

 

課題を深掘りするのにお勧めなのが、壁打ちです。

2人が同程度話すのではなく、1人がアイデアを中心に話し、それに対してもう一方が意見を返すという対話の一種です。

壁に投げつけたボールが常にまっすぐ返ってこないように、壁打ちをすることで思ってもみなかった方向からの情報や視点が得られ、思考が深まります。

ただし相手は誰でも良いわけではありません。

「壁」役が、トピックについて同程度知っていることが重要です。

 

共同創業者がいる起業家は、事業の状況を同じぐらい知っていて、同じぐらい本気で考える人が傍にいるため、常に壁打ちしやすい環境であると言えます。

起業前に共同創業者候補と毎週末壁打ちしていたという話もよく聞きます。

壁打ちを通してお互いの相性ややる気も分かり、アイデアの改善の機会とともに共同創業者も手に入るので、一石二鳥です。

まずは壁打ちができる相手を探すところから始めるのも、課題の解像度を上げる一つの手でしょう。

 

言葉や概念、知識を増やす

私たちは語彙を増やすことで世界をより精緻に見分けられるようになります。

 

コミュニティ

「深める」ためのコミュニティは、最初は少ないメンバーで始めることをお勧めします。

多くて7人程度が良いでしょう。

 

私たちの思考に最も影響するのは、どんな人が傍にいるかです。

私たちは想像以上に周りからの影響を受けますし、周りに影響を与えます。

思考は誰かとの共同作業という側面があり、知性は集団に宿る

 

数字

もちろん数字は大事であり、客観的な視点を補助してくれる優れた道具です。

しかし数字だけを見てビジネスを判断することは、サッカーで最終的な得点だけを見て、選手のプレーを見ずに、試合を評論することのように思えるときがあります。

 

一つの売上には一つのストーリーがあり、そこには顧客の苦しみや悲しみ、喜びがあります。

そして次のビジネスにつながる洞察もあるはずです。

 

まだ数字にすらなっていないような現実を詳細に知ること、つまりその領域での高い解像度が求められます。

 

「深さ」の視点

インターネット上で ECサイトを運営するアマゾンでは、製品やサービスを実際に開発する前に、発表時のプレスリリースを書くそうです。

  • 見出し
  • サブ見出し
  • サマリー
  • 課題
  • 解決策
  • 開発者の声
  • 始め方
  • 顧客の声
  • クロージングとCall to Action

 

新製品やサービスがあるという状況を仮定して、それぞれの項目を詳細に見ていきましょう。

 

まず「見出し」の項目にはプレスリリースのタイトルを書きます。読者が理解しやすいものを書いてください。

次に「サブ見出し」では、誰が顧客で、どういった便益が得られるのかを1行で書きます。

「サマリー」では、読者が事前知識なしで製品の概要や便益を理解できる文章を書いてください。

「課題」では製品が解決する課題を、「解決策」ではどうやって製品がその課題を解決するのかを伝えます。

次の「開発者の声」では、開発した人がどういった思いでこれを作ったのかなどのコメントを入れて、「始め方」ではどうやれば使い始めることができるのかを書きます。

そして顧客がこの製品を体験したらどういった感想を持ってくれるのかを想像して「顧客の声」を書き、最後の「クロージングと Call to Action」でまとめと読者への次のステップを示します。

 

「広さ」の視点

視座の話に移る前に、視座・視野・視点を簡単に整理してみましょう。

まず「視座」とは物事を見る場所を意味します。

高い山と低い山では、それぞれ視座の高さが違います。

 

次に「視野」は見えている範囲のことです。

視界とも言えるでしょう。

 

視座の高低によって、そこから見える視野は変わります。

そして視野の中から、特定の部分に注意を向けた先、つまりどこを特に見ているかが「視点」です。

 

独自の情報は、自分の現場での経験から生み出されるか、人からもたらされることが多いようです。

「体験する」「人と話す」という広さの探索にきちんと時間と資源を割り当てておくことで、中長期的な生産性は最大化されるはずです。

自分の時間の2割程度は常に探索のために使い、いつもと違う人と話したり、違うことを体験してみる

 

解決策を広げていくうえで、多くの人が陥りがちなのは「自分ができないことは、解決策の選択肢から外してしまう」ことです。

「ない」のは「今はない」だけであって、その一部を外部から調達してくることもできるので、「今はない」からといってその選択肢を諦めるべきではありません。

良いアイデアであれば、必ず協力してくれる人やお金を出してくれる人は現れます。

 

極端なサービスレベルへの振り切り方は、顧客が欲しいものを知っている、つまり課題の解像度が高いからこそ行えることです。

特徴のある解決策であっても、その特徴自体が顧客の重要な課題を解決するものでなければ、価値は生まれません。

 

「構造」の視点

目的にあった適切な行動ができる単位まで分ける

行動できる粒度に課題を分けていくためには、解決策や技術の知識も必要

 

私たちはシステムの複雑さから目を背けて、因果関係や法則を単純化して見たがる傾向にあります。

単純化して解釈したり、伝えたりしたほうが良いときもありますが、解像度を上げるうえでは、過度な単純化は避け、複雑なものは複雑なものとして捉えて、システムを構成する要素とその間のつながりをきちんと見ていきましょう。

 

「時間」の視点

短期的な目標は何で、長期的な目標としてどこまで辿り着きたいのか、そこに至るまでの道筋はどういったもので、なぜこの道筋が最適なのか、そして長い道のりの中での途中の到達目標を数値で明確に言えるでしょうか。

こうした目標設定や計画策定は、面倒で避けてしまいがちですが、計画が粗かったり曖昧なままでは、物事をスムーズに進めることはできません。

それに計画が立てられないことは、目標に至るまでの過程の解像度が、まだ十分に高くないということでもあります。

なお、目的やビジョンはある程度定まっているものの、そこに至るためのステップや、最初の一歩として何から始めれば良いのか分からないときは、そもそもの目的やビジョンの解像度が十分に高くない場合も多いので注意してください。

 

計画を立てること自体が、解決策の解像度を上げる一つの手法

 

面白かったポイント

タイトル通り、解像度を解像度高く説明されている。

内容はコンサル1年目の教科書。

解像度を高めるには、読書と行動の両輪ですね。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

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