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『経営を強くする戦略経営企画』株式会社日本総合研究所

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内容

経営企画の役割

本質的な役割を「会社の中心部で企業価値向上をリードすること」であると捉える。

 

より具体的には、全社レベルでの重点推進課題や部門横断課題について経営者や経営ビジョンの意をくみ、

「その推進に必要な情報や意見を一元的に収集し(機能1)」

「収集した情報を価値ある情報へと転換し(機能2)」

「価値を生み出す活動へと現場を駆り立てるコミュニケーションを促進する(機能3)」

組織であると定義する。

 

情報収集

情報収集にあたっては、経営者や経営ビジョンの意をもとに仮説を持って情報を収集すること、および数値情報などのデジタルな情報だけでなくステークホルダーの生の声や現場の感覚などアナログな情報を収集することが重要である。

また、情報をタイムリーかつ効率的に収集するための仕組み(情報伝達フロー、ルール、 ITシステムなど)の構築を併せて行うことが望ましい。

 

価値ある情報を抽出

経営企画部門には玉石混交の大量の情報の中から本当に価値ある情報を抽出する「目利き力」が問われる。

この際、取捨の重要な判断基準の一つは経営ビジョンとの整合性である。

また、情報と情報のマッチングによる新たな価値の創出の可能性を追求する姿勢も求められる。

 

施策推進をリード

3つ目の機能は、会社の進むべき方向性について主体的に提案し、重点施策の推進をリードする機能である。

「絵を描いて終わり」「口出しするだけ」ではなく、広くさまざまな関係者と能動的にコミュニケーションを取り、目まぐるしく変動する事業環境に対峙する会社の中心で重点施策実行の旗振り役となることが重要である。

 

経営企画の必要性

会社設立時点では創業者単独もしくは極めて少数の経営層が「企画」「管理」「実行」の全てを一手に担うことが多く、その後成長の過程に沿って、営業マンや生産従事者の雇用などにより「実行」の一部が分担されるようになる。

「実行」に携わる人数が増え、「管理」の専任者を置く必要が出てくるのがその次のステージであり、さらに事業や組織が大きくなってくると、事業戦略やそれに付随するいわゆるヒト、モノ、カネ、情報といったインフラをどのように構築していくべきかをクリエイトする機能(経営企画機能)を専任で置く必要性に迫られる。

 

経営企画部門は、ともすれば現業部門からは「何をやっているのか分からないが偉そうなことばかり言ってくる部署」「口ばっかりで何もできない部署」などと揶揄されることも多いが、横串機能として効果的なパフォーマンスを行うためには、経営層を含むさまざまな関係者の理解を得ることは不可欠であり、そのような意味においても、ミッションを明文化し、ミッションに基づいて発言・行動しているということを共通理解とすべきである。

 

ポイントは、「当社での対応方針の決定」をしっかり経営企画部門が主導権を持ってできるかどうかにある。

 

「常に変化が求められ、それに対して応えていく」ためには「継続的に変化を促すための仕組み」があるというのが、「戦略経営企画」としてふさわしいだろう。

 

いわゆる「リーダー人材」「経営人材」の絶対数が不足するという社会を想定するならば、「経営企画機能」は「経営者の参謀やサポート役」などという立ち位置から「経営者の代替機能」、例えば「経営者に不測の事態が起こったときなどの意思決定の代行」のような立ち位置に近づいていくことが必然的に求められるようになるのではないだろうか。

 

分析

分析視点には大きく5つのポイントがある。

「中立的な視点で情報をみる」

「情報の原因や背景を考える(情報の構造化ができないかを考える)」

「その情報に比較対象がないかを考え、極力比較をする」

「情報が数値化できそうなら数値化をする」

「その情報は 5年先にどうなりそうかを考える」

の5つだ。

 

戦略の階層構造

戦略は

全社戦略(企業全体としてどのような事業の組み合わせで経営を行い、自社の経営資源をどこにどのくらい投入するのか)、

事業戦略(個々の事業ごとにどこでどのように戦っていくのか)、

機能別戦略(生産や営業など企業の機能ごとにどのような方針を定めるのか)

という階層構造になっているが、経営資源別に強み・弱みをチェックしていくには、事業戦略を把握した上で自社の経営資源が事業戦略と適合しているのかを見ていけばよい。

 

模倣困難性

Imitability(模倣困難性)獲得する方法は 4つある。

①歴史性、

②因果関係の不明確さ、

③社会的複雑性、

④制度による制約

である。

 

経営企画部に求められるスキル

不確実な環境のなかで正確に自社の実力を評価するために、企業戦略の司令塔たる経営企画部に求められるスキルはどのようなものであろうか。

それは、「目利き力」と「課題設定力」である。

 

経営企画部に求められる能力としては、「ゼロから1を生み出す」「何もないところに光明を見いだす」能力よりも、「膨大にある情報から当社にとって最適なお宝を見いだす」「情報と情報とをつなげ合わせたり組み合わせたりすることで新たな価値・シナリオを見いだす」といった能力がより重要視されつつある。

つまり大量にある情報の中から自社にとって「変化の兆し」になりうる情報をいち早く見つけ出す、あるいは色々ある情報を組み合わせて自社にとっての「変化の兆し」となりうるシナリオを考察していく能力が求められているのだ。

 

「目利き力」を磨くには、常日頃から経営陣や現場はもちろん、顧客や同業他社など外部の人間も含め、あらゆる人と積極的にコミュニケーションを取ることが不可欠だ。

 

中期経営計画

中期経営計画とは、中期(主として3~5年程度)のありたい将来像を描くものであるが、裏返して言えば、「現状ではできていないこと」で「短期間(1年以内)での実現が難しい」が、「時間と労力をかけてでも実現しなければならないこと」とは何かをまず特定しなければならない。

そのための手法として「ビジネス環境」「内部リソース」「オペレーション」「財務」など多面的な視点で現状問題点、課題を洗い出していく。

 

戦略経営企画が着眼すべきポイントの一つは、「現場社員が本来持っているポテンシャル(知識、ノウハウ、意欲…)が100%引き出されているだろうか」、という点である。

 

戦略経営企画の重要な役割はビジョンから目標、施策に至るまでのツリーを明確かつシンプルに可視化し、トップから現場まで、あるいは部門間でしっかりと共有することである。

プレーヤーとしての比重が高すぎる状況は戦略経営企画と呼べない。

現場の目標を明確に設定し、腹に落とし、進捗を定期的にモニタリングする、というポジションの比重を高めて行かなければならない。

とはいえ、経営企画は、次から次へと新たな特命事項が降ってくるため、リソースのマネジメント、モチベーション維持も含めた評価・処遇の仕組みも含めたトータルの仕組みづくりの意識を持たなければならない。

 

単年度予算

単年度予算とは向こう1年間の計画を数値化したものであり、「売上計画」「経費計画」「損益計画」「設備投資計画」「人員計画」などを、部門別、事業別、拠点別などの管理単位別に分解し、四半期や月次などのタームに展開し、予算と実績の乖離状況などを管理するのが一般的である。

財務数値を扱うことが多いため、経理部門の所管とされる企業もみられるが、財務会計は経理部門、管理会計は経営企画部門というような役割分担としているのがポピュラーである。

戦略経営企画としての「予算」への関わりのポイントであるが、第一には中期経営計画やビジョン、戦略との一貫性の担保が挙げられる。

 

新規事業開発

新規事業開発に関しては、新規事業推進に関する専門組織(新規事業開発室、新規事業企画室など)を設置して推進するケースも多いが、特に初期的な検討や全社的な新規事業アイデア募集の取り組みなどは経営企画部門が主管・主導することが一般的である。

新規事業取り組みのスタートにあたっては、まず全社戦略の中での新規事業開発の位置付けを明確にしておくことが必要である。

このプロセスは、トップマネジメントとの距離が近い経営企画部門が検討をリードすることが多い。

 

そもそも新規事業開発の方向性として既存事業の派生系(既存の顧客基盤を活用、既存の技術・主要リソースを活用、川上・川下業界へ参入)を考えるのか、既存事業とは関連性の薄い領域を考えるのかなどを検討することで新規事業開発の位置付け・目的も明確になる。

目指すべき事業規模や投入資源の制約有無などもある程度明らかにしておく必要がある。

新規事業を推進していくにあたっては、リソースを補うためにM&Aや他社との戦略的提携を模索することが必要になるケースも多い。

 

当初は仲介機関を通じて自社名を開示せずに対象会社に接触し、相手方の興味を確認する。

対象先がM&Aに興味を示した場合には、対象企業と面談を行い、お互いの利害が一致すれば基本合意へと至る。

基本合意自体は法的拘束力を持たないことが一般的であるが、想定される取引条件(買収金額の想定額など)、役員・従業員の処遇方針(経営陣が引き続き経営にあたるか否か、従業員の雇用を維持するかなど)、M&A実行スケジュール(期限)、デューデリジェンスの進め方(協力義務)、独占交渉権といった事項について双方で確認する目的がある。

 

企業価値の算定は、将来創出されると見込まれるキャッシュフローを前提に価値算定を行うインカム・アプローチ、類似企業の企業価値(株価)を参考にするマーケット・アプローチ、純資産額をベースに算定するネットアセット・アプローチなど、複数のアプローチで実施する。

算出結果もそれぞれ異なるが、算定手法ごとの特徴を確認した上で、合理的な企業価値のレンジを検討・確認する。

 

カリスマ社長の課題

・社長を除く今の管理職層はいずれも社長のイエスマンであり、社長の指示には忠実であるが、自分達の意見は通らないことが多い。

・営業部と製造部のコミュニケーションの場はほとんどなく、情報の連携ができていない。

・当社の従来の工作機械の競争力は確実に落ちてきているものの、それに変わる新製品や新技術、サービスなどの検討がなされていない。

・明確な人事制度がなく、賞与の査定や昇格などの評価も社長の一存で決まってしまうため、社長のお気に入りの社員は順調に昇格する一方で、優秀でもなかなか日の目を見ない社員も多く、不公平感がある。

・当社の将来や自分自身のキャリアアップを悲観して入社1年以内に退職する若手が最近増えている。

 

面白かったポイント

経営企画の機能がよくまとめられている。

経営企画の役割は、会社のステージや社長との役割分担によって大きく変わる。

現場から「何やっているのかよくわからない」というのはあるある。

 

役割をまとめると

  • 情報収集と分析
  • 戦略立案
  • 中期経営計画策定
  • 単年度予算策定
  • 施策実行リード
  • 組織構築
  • 人事戦略構築
  • 資金調達
  • M&A
  • 新規事業開発

など多岐に渡る。

 

当然、すべての分野に精通することは無理です。

なので、ミッションが与えられた時に、いかに早く情報収集し、ロジカルに分析し、経営戦略に沿った企画を立案し、経営陣と握り、現場に落とし込むことができるかということです。

つまり、経営企画にはロジカルシンキング、プレゼン力、コミュニケーションスキルなどビジネスの基礎スキルを高いレベルで求めらるということですね。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

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