内容
ダッシュボードは可視化して終わりではなく、「ビジネス課題を解決するためのもの」です。
ダッシュボードの条件
「ビジネス上の目的達成に繋がるデータがリアルタイムかつ継続的に可視化され、アクションを取るために必要な意思決定ができるもの」
「目的に直結すること」
「アクションに繋がる意思決定ができること」
「リアルタイムかつ継続的に見られること」
ダッシュボードの種類
ダッシュボードの利用目的には大きく三つあると考えています。
「モニタリング」「戦略・方針立案」「効果測定」の三つです。
データパイプライン構築
長期で高頻度に利用することを前提としたダッシュボードを運用する場合には、データマートの更新を自動で行うためにデータパイプライン構築を行う必要があります。
データパイプラインの設定に用いるプログラミング言語はPythonやYAMLとなりますが、ツールによって使用する言語が異なります。
プロジェクトメンバー
・プロジェクトマネージャー
・コンサルタント、マーケター、経営・事業企画担当者
・データアナリスト
・エンジニア(データエンジニア、 BIエンジニアなど)
ダッシュボードの全体構成
・全体サマリーダッシュボード
✓ KGI/ KPIが可視化されたエグゼクティブサマリー
・テーマ別ダッシュボード
✓各テーマの KPIサマリー
✓各テーマに紐づく主要な分析結果
・詳細分析ダッシュボード
✓各施策やサービス利用者の詳細分析結果
データ分析の目的
なぜ、私たちはデータ分析をするのでしょうか。
それは、データによって状況を客観的に評価することで最善の意思決定を行い、より大きなビジネス成果を得るためです。
分析を価値のあるものにするために、求めるビジネス成果と意思決定に必要な判断材料から逆算して分析要件を考えることは非常に重要であると言えます。
意思決定パターン
ビジネスにおける意思決定のパターンには大きく分けて四つあり、①〜④のプロセスに従い、大局的な意思決定から個別具体的な意思決定へと順を追って検討します。
①現状に対する意思決定:維持・中止・見直し
②選択と集中:リソース(予算、人材、商品など)を効果的に配分
③新たなプランの実行:データをもとに新たな戦略・施策の立案・実行
④評価と改善:実行した施策の評価と改善検討
①現状に対する意思決定
この意思決定のパターンでは次のような分析をし、現状維持・中止・見直しの判断を行うことが多いです。
・現状の把握:差によって判断
✓現在の数値が目標値に対して、どれだけ乖離があるかを把握
・指標の推移確認:増減の傾向、トレンドによって判断
✓増加・減少傾向の有無を確認、要因分析の実施を検討
・指標の予測:今後のシミュレーション結果によって判断
✓今後の推移・最終着地を予測、目標値との差を見積もる
・異常事態の察知:異常事態の構造理解と今後の影響から判断
✓数値の推移に大きな変動があるか確認、要因分析の実施を検討
②選択と集中
この意思決定のパターンでは次のような分析をし、リソースの配分を行うことが多いです。
・パフォーマンス、ポテンシャルの精査:投資対効果、期待値から判断
✓コストに対する成果( =パフォーマンス)を確認
✓成長余地やコストの回収効率( =ポテンシャル)を確認
・改善点の抽出:改善の実現性・方法から判断
✓課題に対して、軌道修正可能な改善点がないかを確認
③新たなプランの実行
この意思決定のパターンでは次のような分析をし、新たなプランを実行することが多いです。
・ビジネス成果を左右する特徴的な要素の発見:影響度から判断
✓ビジネス成果への影響要素(顧客属性、購買商品、店舗など)を確認
・有効なセグメンテーションの発見:動かすべきセグメントを検討
✓ビジネスの成功のために注力すべき顧客群を検討
✓セグメントの推定顧客数と施策実行した場合のビジネスインパクトをシミュレーション
・特徴的な行動特性の発見:セグメントの動かし方を検討
✓行動が起こる起点(トリガー)を確認
✓行動傾向を確認
④評価と改善
この意思決定のパターンでは次のような分析をし、施策の評価と改善を行うことが多いです。
・施策の詳細評価:目標や施策の目的と照らし合わせて評価
✓目標(KGI/ KPI)の達成状況の確認
✓ターゲットが想定通りの反応をしたか確認
・改善点の抽出:改善の実現性・方法から判断
✓目標との差の大きさから必要な改善の規模を理解
✓改善のために必要とされる規模に対して、誰を・どうやって動かすかを検討
指標の検討
①構造を整理し、重要な要素を指標に設定
②状態や行動の遷移を指標に設定
分析に使用する指標を選定する際は、その指標が改善に繋がる示唆を生む可能性があるかで判断するとよいです。
チャート選択
チャート選択は、「指標の比較方法」「比較軸の数」「比較軸に時間軸を含むか」の三つの条件の掛け合わせで最適なものを選択します。
データ調査
ステップ
- データソースレベルの調査
- テーブルレベルの調査
- カラムレベルの調査
データソースレベルの調査
- データソース名
- 提供するデータの概要
- データの提供元
- データ記録開始時期
- データ利用可否(BIツール接続可否)
- 管理部門
- 仕様がわかるドキュメントの所在
テーブルレベルの調査
- データソース名
- テーブル名
- テーブルのタイプ(トランザクション、マスタ)
- ユニークキー
- データ記録開始日
- レコード総数
- 1か月間のレコード新規追加量
- 更新頻度
- 更新方法
- レコード生成条件
カラムレベルの調査
- データソース名
- テーブル名
- カラム名
- データ型(数値型、文字型、日付型)
- 値の特性
- 欠損値の割合
データマート
ダッシュボード構築用に必要なデータを適切な粒度でまとめた「データマート」
ダッシュボードの構成要素
- ダッシュボードタイトル
- フィルターエリア
- ダッシュボードリンク
- 分析領域
基本のチャート
基本の6チャート
- 数値
- 折れ線グラフ
- エリアチャート
- 棒グラフ
- 数表
- クロス集計表
補足的な4チャート
- 散布図
- ヒストグラム
- バブルチャート
- 地理的表現
面白かったポイント
かなり良い。
ダッシュボードの設計・運用プロセスをかなり正確に体系的に言語化した本。
ダッシュボード構築に限らず、データドリブン組織構築の教科書にもなります。
ダッシュボードは見た目のウケはいいが、結局運用しきれず放置になりがち。
PDCAを回せるダッシュボード構築に大事なのは設計と運用なので、この本の内容を全部頭に入れておくこと。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆
目次
第1章 ダッシュボードの種類と課題
第2章 ダッシュボード構築プロジェクトの全体像
第3章 ダッシュボードの要求定義・要件定義
第4章 ダッシュボード設計
第5章 ダッシュボードデザイン
第6章 データ準備・ダッシュボード構築
第7章 運用・レビュー・サポート