内容
失敗から学べるのは、実力が足りないということと、もっと実力が必要だということだけだ。
はっきり言って、意味のある学びは成功の中にしかない。
ブランド
ブランド力は常に、守備範囲の広さに反比例する。
つまり、カミソリのように薄く狭い領域に集中し、最高の商品を仕上げる必要があるということだ。
それができれば、次はブランドを生み出し、自分の市場を定義するという魅力的な仕事が待っている。
スタートアップを死なせてしまわない
スタートアップを死なせてしまわないために、いくつか簡単なポイントがある。
一つ目は、最高の商品をつくることだ。
立ち上げ期に何より重要なのは、営業担当やマーケティング担当を雇うことではなく、自分たちで時間をかけ、いい商品、いいサービスを用意することだ。
十分に練り上げ、つくり込み、仕上げなければならない。
そうすれば、上客が集まり、彼らからの口コミで知名度が上がり、それが需要に結びつく。
事業がうまく軌道に乗らず、盛り上がりが起きないようなら、肝心の商品やサービスの改善に力を入れるべきだ。
二つ目は、自分や共同創業者が現場の動きの近くにいるようにすることだ。
調査だの、研究だの、フォーカスグループだの、フィードバックだの、他人のフィルターを通した情報はどれも忘れていい。
腰を上げて、現場に入らなければならない。
潜在顧客の近くで、自分の目で状況を理解することだ。
商品を実地で試し、その上で学び、調整しよう。
スタッフと話し、何が起きているのか直接確かめよう。
はしご
自分たちに最適な価格を維持する手法として「はしご」(段階価格)が気に入ってもらえるかもしれない。
はしご方式の価格設定は非常に有効なので、頭に入れておくといい。
すべてのものは相対的に決まる。
利益を出しながら成長
成長のために金を失ってはいけない。
この戦略を貫いた者は、「狂気大学」を最優等で卒業できる。
成長はもちろん必要だが、利益を出しながら成長しなければならない。
損失を出しながら成長してもまったく持続可能ではないし、最後には会社の経営権を失う。
そんな負け犬にならないよう、財務状況をきっちり管理して、商品に現実的な価格をつけ、あらゆる手段を生かして支出を引き締めなければならない。
機会費用
会社を経営するというのは、ノンストップのベルトコンベアで流れてくる決断の瞬間を次から次へと片付けていくようなものだ。
プレッシャーにさらされながら、多くの決断を素早くこなすことが求められる。
制約を好んで受け入れることを学び、小さな会社ではすべてのリソースに限りがあることを意識しなければならない。
目的地にたどり着くために最適なルートを選ぶため、キャッシュだけでなく、常にすべてのリソースに生じる機会費用を考えるのだ。
何をするときでも常に最大限の効果を引き出そう。
勝てる選択肢に賭けよう。
貴重なリソースを無駄にしてはいけない。
ブランド
ブランドはもはや、ただのロゴマークではない。
事業を構成する一つひとつの側面がブランドになっている。
ブランドとは、自分で操ることのできない、人の頭の中にある感情的な反応のこと。
つまり、認知の問題なのだ。
自分がどう思っているかではなく、他人にどう見られているかが問題になる。
自分がどう考えているかはどうでもいい。
顧客たち、または潜在顧客たちがそのブランドから何をイメージするかだけが重要なのだ。
ブランドとは、あなたの会社や、あなたのすることに対して世界が抱く感覚的な理解の集合体だ。
予算ゼロでも問題ない
どんな会社にでも、素晴らしいオンラインビジネスを生み出せる可能性がある。
仮に、あなたが魚屋で、持続可能なやり方でがんばっている漁業者からとびきり新鮮な魚だけを仕入れているとしたら、ネタは無限にある。
例えば、次のようなコンテンツがつくれるだろう。
・市場で撮った写真をインスタグラムで毎日公開する。
・その日の生きのいい魚の情報をツイッターに毎日投稿する。
・魚を仕入れている漁船でそれぞれ動画を撮り、ユーチューブで月に1本ずつ公開する。
・絶品の魚介レシピを2週間に1つ、ブログで公開する。
・ウェブサイトにコーナーをつくり、持続可能な漁法で魚を獲ることの大切さを紹介する。
パンク起業家の三本柱
世間の度肝を抜いてやろうと日夜励む21世紀のパンク企業には、確かな土台が必要だ。
一から会社を築き上げるうえで、外してはいけない基本的な要素が三つある。
今成功している企業の中に、この三つを抜きに成り立っているところは1社もない。
どれも一言だが、永遠の真理であり、すべてが凝縮されている。
次の三つがそれだ。
- 企業文化
- 核となる商品の質
- 粗利
これらすべてを頑丈な柱にしなければ、仕事に翻弄されて自分や仲間の時間を浪費した挙げ句に事業は泡と消える。
三本柱を完璧な状態することが、リーダーの最重要任務だ。
企業文化
文化は創業者から始まる。
創業者たちの情熱、エネルギー、そして共有する価値観から生まれるのだ。
形がなく、言葉にならなくても、常に存在する。
そして、どれだけ優れた文化を築けるかが、事業をうまく進めるための直接的な鍵となる。
価値観で行動に表す必要がある。
信じるものを自分で力強く体現しなければならない。
大事なのは会社の中で物事がどう実行されるかであって、言葉にして書き出すことではない。
予言の自己成就とでもいおう。
自分で方向を打ち出し、トップダウンで文化を生み出せば、それが本物になる。
優れた企業文化はすべてをまとめる接着剤になる。
組織をつくる基本の骨組みであり、すべての行動の原動力にすべきだ。
企業文化を維持し、育てることなしに成功はあり得ない。
企業文化はブランドの真の姿に根付き、正真正銘の、誠実で、本物でなければならない。
船には船長が必要
優秀な人材をチームに加えることができなければ、並みの連中でも常に優れた判断をくだせるような仕組みを整えるために、恐ろしいほどの時間を食われることになる。
ビジネスでは、できそこないの連中が嫌でも賢い決定をできるよう枠組みや仕組みを整えるか、賢い決断をする能力がある人材を最初から雇うかのどちらかが必要になる。
当然、心惹かれるのは後者だが、際立った人材を見つけるのは、できそこないで膨れあがった針山から1本の針を抜き出すほど難しい。
うまく仕上がっていたチームに力のない者を入れれば、士気や働きに大きな影響が出る。
最高の人材は最高の人材としか働きたがらないものだから、精鋭チームには、リーダーが責任を持って最高の人材だけを加えなければならない。
たいていの場合、チームの働きは、一番能力が低いメンバーのレベルか、それより少しましな程度のところに落ち着く。
素早く動き、圧倒しろ
落ち着いた場所からでかい発想が湧いてくることは、まずない。
落ち着かない場所を自分でつくらなければならない。
知っている範囲、わかっている範囲の外側を考えるべきだ。
落ち着いた場所は、平凡な連中が当たり前のことをするためにある。
脳は落ち着きを感じた途端に働くのをやめる。
繰り返しの仕事や日常的な環境に頭が慣れすぎる危険がある。
落ち着いてしまうことなく、新しい視点や難しい挑戦を取り入れなければならない。
環境を変え、脳細胞を刺激し、働かせよう。
インスピレーションを感じ、落ち着く場所の外を見るために時間を使おう。
結果は気に入るはずだ。
毎日がまったく新しいカンバスだ。楽しもう。
このときの決断で、堰を切ったように次々と行動が生まれ、広がっていった。
行動すればするほどチャンスが訪れた。
行動は行動から生まれる。
動きのないところからは何も生まれない。
だから、行動しよう。
ただし、本書で説明していることをすべて頭に入れて動いてほしい。
行動には知性が求められるし、使えるものを最大限に生かすこと、うまく交渉すること、財務状況や企業文化、商品の質をしっかり把握し、情報に基づいて動くことも必要だ。
そして、速さ、激しさも求められる。
リスクがあるからといって、行動しないことは許されない。
リスクはいつでもつきまとう。
それに、リスクは常にあるべきなのだ。
ブリュードッグが今の成功を収められたのは、リスクをまったく気にせず、動かずにいることを全力で拒んだからだ。
未来に備える一番の方法は、自分で未来をつくることにほかならない。
のんびりやるのがいいことだと言う連中もいる。
だが、ぼくらは速くやるほうがいいと信じている。
スピードがすべてを変える。
明日になれば、今日ある企業は2種類に分かれているだろう。
速い企業か、潰れた企業だ。
スピードによって流れが完全に変わる。
ハイスピードで進む力がなければ生き残れない。
ほかの連中があれこれ考えている間にスタートを切り、光のスピードで加速するのだ。
柔軟であることと、高速で物事を進められることがどれだけ競争で有利に働くかは、いくら強調してもしすぎることはない。
どの企業でも官僚主義が行き過ぎて、意志決定の手順が煩雑になっている。
身軽に動き、素早く反応できれば、優位に立てる。
スピードが鍵だ。
スピードには、世界を変える戦いで使う武器の中でも最強の力がある。
カオス
一つ目のポイントは、スピードと混乱を受け入れる姿勢を持った企業文化をつくり、ハイペースで、忙しく、ときに手に負えなくなるような環境に対処できるタイプの人材を雇うこと。
二つ目は、とにかくコミュニケーションを重視すること。
コミュニケーションは接着剤となり、会社が一気に成長する期間に、全体がバラバラにならないようまとめてくれる。
それが最高の状態になければ、ちょっとした混乱が、あっという間に手のつけられない大混乱に生まれ変わる。
情報はできるだけ漏れなくチームに伝えなければならない。
それができれば、会社が計画していることや、そのときに実現しようとしていることに一緒に興奮できるようになり、会社の計画や成果によって社員のモチベーションが高まる。
また、常に新しい情報を伝えておけば、大荒れの海を渡るときにも、全員が知るべきことを知り、同じ目標を目指して団結して混乱に立ち向かえる。
チームとして戦わなければ勝つことはできない。
また、個人がチームにどれだけ貢献したかを知らせ、彼らの貢献を目標や使命の文脈全体の中に位置づけてやることができれば、その分だけチームが本気で戦うようになる。
三つ目は、成長曲線を上回って事業を広げていく習慣を早く身につけること。
何であれ必要になる前に、より大きく、多くしておかなければならない。
人員を増やすなら必要になる前に、仕組みを導入するのも必要になってからではなくその前に、設備を入れるなら2年後の目標に合わせてやるべきだ。
四つ目は、財務に気を配ること。
それも、フック船長のかぎ爪でコンタクトレンズを外すくらい慎重に。
会社の財務に関してだけは混乱を許してはいけない。
利益は紙の上の数字でしかなく、急成長中は必要な運転資本が急激に増える。
それを認識することが、成長が加速しているときには重要になる。
運転資金がショートすれば、それでゲームオーバーだ。
粗利も死守しなければならない。
成長ペースを上げながら必要な運転資本をカバーし、成長曲線を上回るペースで拡大するための資金をまかなうには、特大の粗利が必要だ。
カオスは最後には自分たちの味方になるが、油断してはいけない。
常に注意を向け、状況を把握しておこう。
カオスも、混乱も、無秩序も、急成長中の会社にとっては避けて通れない日常の光景だ。
付き合いながら、受け入れ、カオスの中で力を発揮できるようになるしかない。
限界を超えた分だけ、生き延びられる可能性、そして使命を果たせる可能性が高くなるということを、チームに理解させなければならない。
常に状況を把握しろ
会社にとって重要なこと──粗利益、苦情件数、人員確保、出荷精度、労働コスト、為替、生産量低減、既存店売上高伸び率、売上高賃料比率、営業利益、減価償却前利益(EBITDA)、その他いくつもの指標──があれば、こまめに記録し、観察しなければならない。
まだ会社が小さく、立ち上げ直後で、指標を把握しておくことが重要に思えなくても、習慣づけておくことが役に立つ。
何かを観察し始めたら、次はその改善に取りかかれる。
ピーター・ドラッカーは「測定できるものは、管理できる」とはっきり言っている。
この言葉が持つ力はまだ十分に生かされていない。
何かに深く注意を向けると、それまであり得なかったところに思考回路がつながり、以前なら絶対に見えなかったものが見えるようになり、会社の行方を左右するようなことを、それまでより簡単に改善できるようになる。
「測定しない=報告されない=状況が見えない=誰も気づかない=最後には命もない」と覚えよう。
会社が生き延びるため重要なことがあれば、必ず測り、コントロールし、管理しなければならない。
システムで目標を達成する
目標には魔法の力がある。
理性にとらわれず進む者たちに「それでいい」と声をかける効き目がある。
次にどこを目指せばいいか知らずに進んでも、偶然そこにたどり着けるとは思えない。
全体的なビジョンを示し、それを守り、チーム全員にしっかり共有させよう。
そしてそのビジョンを元に、事業目標や部署ごとの目標、個人目標のような一つひとつの目標を立てていく。
人は誰でも、道筋を示す地図を必要としているのだ。
目標を立て、全力で実現する。
共有する。紙に書き、壁に描き、尻に彫り込み、食い入るように見つめ、サウナルームで繰り返し唱え、あらゆる手を使って頭に叩き込む。
短期目標も、長期目標も、正気と思えないでかい目標も、手を伸ばせば届く目標も、どれも必要だ。
そして何より、目標には意味が必要だ。
目標を立てるだけでは、まだ半分だ。
目的地を決めただけでハッピーエンドが迎えられるわけではない。
目標達成への道筋を示し、理解させなければならない。
達成できる見通しの立たない目標など、底の浅い無意味なたわ言でしかない。
そこに至るまでの文脈や方向を示せば、目標にたちまち命が宿る。
リーダーはチームの目標達成を助けるため、ビジョンと戦略、方法を示さなければならない。
そのためには多くのシステムが必要になる。
システムとは、いつも変わらず実行する行動ルールのことであり、これがあれば長期的な目標が達成できる可能性がぐっと高まる。
システムを一つ実行するたびに、その時々でどんな結果が出たとしても、目標の達成に一歩近づける。
面白かったポイント
めちゃくちゃ面白かった。
文体がよくて、経営者は気合いを入れ直すのではないでしょうか。
パンクとは言いつつも、企業を成長させるために必要な本質は他のビジネス書が言っていることと同じということがよくわかります。
繰り返し読みたい本です。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆