小売の未来

ビジネス

『小売の未来』ダグ・スティーブンス

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内容

業界全体の浄化が始まり、元から経営不振だった企業は消えていき、切り抜けられる企業はこれまで以上に大きなシェアを確保します。

同時に、新規参入の余地が生まれ、成長の新たな機会ももたらされます。

 

コロナ禍の消費者心理

死を想起させるものがあると、政治や共同体に対する態度にも影響が見られた。

自身の死を意識した人々は、大衆迎合型でカリスマ性のあるリーダーを好むようになったのである。

さらに、死の顕現化を受けて、人は自然界や動物界に対してあまり価値を置かなくなり、自分たちの経済的利益のために天然資源を利用する気持ちが高まりやすくなった。

 

消費のレベルが顕著に上がったのだ。

たとえば、人々の心の中でカネの力が大きく高まった。

物を所有することが格段に重要になった。

映画のレンタルやギャンブル、アルコール消費などが劇的に増加し、これに歩調を合わせるように精神疾患も増えていった。

 

結局、消費者は、自尊心や価値観を自分なりに肯定する製品やサービス、体験を求めるのだ。

理性的な範囲での贅沢や自分へのご褒美を消費者に働きかけるメッセージが威力を発揮するのは、まさにこの段階である。

 

マーケティング担当者としては、消費者が世界観を再構築する段階に入ってきたところで、分別をわきまえつつ、安全でささやかな自分へのご褒美という位置づけで製品やサービスを訴求すれば、大きな効果をもたらすはずだ。

 

ニューリテール

ニューリテールは、業態や体験、プラットフォームが完全に一体化されたエコシステムがあり、その中心を生活域にする顧客がいる。

ニューリテールを理解するには、核となる基本構造と、その原動力となる「新しいエネルギー源」を理解する必要があるとザッコアは説明する。

ブランドがこのエネルギー源を活性化すれば、ニューリテールが可能になり、「ユニファイドコマース」に発展するという。

 

2.7とは何か。

1つの地域で特定の商品がクリックされる回数が一定以上になると、それを追いかけるように、当該地域で当該商品の注文数も決まって増加することがわかった。

さらに、こうした注文は、クリック数の急増から平均2.7日以内に発生する傾向も浮かび上がった。

また、この注文数は、クリック数増加量の約10%に相当する点も明らかになった。

 

アマゾン

サプライチェーンを揺るがして効率低下や操業停止を招きかねない最大の原因を排除しようとしているのではないか。

その原因とは「人間」である。

人間は病気になる。

人間は過ちを犯す。

人間には、一緒に過ごしたい家族がいる。

そして何よりも、人間は人間らしく扱ってもらいたいという期待を抱く。

巨大企業は尋常ではない規模とペースで拡大を続けていかねばならない。

その妨げとなるのが、人間の脆さや弱さなのだ。

 

パンデミックを背景に消費者の90%が「ブランド各社の従業員の処遇が適切かどうかを重視する」と答えており、驚くことに品揃えの良さと並ぶ重要な条件に掲げている。

 

2018年、アマゾンの商品配送にかかったコストは約270億ドルだった。

その40%ほどが配送ドライバーの人件費である。

だからドライバーが標的になるのだ。

 

高度なデータ分析プラットフォームを駆使して、習慣的な購買行動を予測し、受注確率の高い商品を、その顧客宅に近い地点まで輸送しておくもので、前出の京東商城が実施している需要予測と似ている。

 

この店舗は、ウォークインクローゼットくらいのスペースの食品貯蔵庫風の構造で、客が好きなものを取り出すと、アカウントに請求があり、商品はウォルマートの配送チームが定期的に在庫を補充するという。

しかも、システムには人工知能が搭載され、顧客の好みに合わせて商品を推奨する機能もある。

 

クラウドサービスのAWSがそうだった。

元はアマゾンが自社用途にクラス最高水準のクラウドストレージシステムを構築したものだ。

とすれば、アマゾンの物流網もゆくゆくは他の小売業者向けにも提供される輸送サービスになるはずだ。

 

ただのテナントに過ぎないのだから、その家のルールに従わなければならない。

ついでに言えば、ルールはいつなんどき変更されるかわからない。

販売データが、こちらの意に反して、あるいは知らぬ間に利用されることがある。

独自商品が模倣されはしないか。

顧客との関係を悪用されないか。

そもそも、自分の店で購入してくれる客といっても、いったい誰の客になるのか。

どの懸念ももっともなことだ。

 

会社の目的

消費者が求めているのは、「徹底的な時間の節約」か「有意義に過ごす時間」のどちらかである。

 

アマゾンが潤沢な資金にいつでも手が届くというのなら、こちらはそれを上回るほどの潤沢な独創性を用意しようではないか。

アリババが想像を絶するほどのテクノロジー予算を抱えているというのなら、こちらは独自のエレガントなデザインを前面に押し出そうではないか。

ウォルマートが膨大な構造化データや非構造化データを解析しているというのなら、こちらは自ら現場で顧客と直接ふれあい、顧客をとことん深く知り尽くし、本当の意味での「顧客通」になってやろうではないか。

京東がサプライチェーンを駆使してずば抜けた力を発揮しているというのなら、こちらは誰からも愛される魅力的なバリューチェーンを構築し、ビジネスの中心に常に顧客を置いて勝利をつかむしかない。

 

頂点にいる怪物企業のビジネスは、顧客からの「依存」をベースに成功をめざしている。

つまり、顧客が基本的なニーズの大部分を頼ってくれるような生活システムを築くということだ。

 

顧客から「理屈で選ばれる定番」が怪物企業だとすれば、こちらは「感性で選ばれる定番」になるべきだ。

あちらが小売りのサイエンス(理論)に長けているなら、こちらは小売りのアート(わざ)を突き詰めようではないか。

 

ここで問いたいのだが、あなたの会社の目的は何か。

目的と言っても、会社の経営理念とかビジョンとか価値観などとは違う。

そもそも会社が存在する理由である。

 

平たく言えば、「なぜ、あなたのブランドが必要とされるのか」だ。

顧客の暮らしにどのような明確な価値を与えるのか。

どのような目的に応えるブランドなのか。

あなたのブランドに何らかの目的と価値があったとしよう。

だが、はたして消費者の暮らしのなかで「感性で選ばれる定番」となるのにふさわしい目的と言えるかどうかは、別の問題だ。

 

あなたのブランドが答えだとしたら、元の問いかけは何か。

 

小売り

とりわけデジタルネイティブのブランドやD2C系のブランドは、実店舗を販売コストと考えず、むしろ効果的なマーケティング費用と捉え始めていた。

 

小売が「売り場面積当たり売上高」の時代から、「ブランドのためのメディアチャンネル」の時代に軸足を移しつつあると早い時期に提唱した人物でもある。

他にも、小売とは貴重な顧客データを収集できる場であり、消費者と商品のふれあいを収益化に結び付ける場であるという考え方のスタートアップ企業が次々に現れている。

 

インターネットのおかげで、ニューヨークにあるものを何でも買えるようになった。

けれど、ニューヨークで買い物をするような体験は、ネットには望めない。

 

RaaS(小売りのノウハウやデータやITと連携させて業者向けに提供するサービス)モデルや小売りをメディア化したモデルまで、その形態も多種多様だ。

 

最大の資産は、定期的に来店して私たちのメッセージに耳を傾けてくれるオーディエンスがいることなんです。

その意味でメディアビジネスなんですね。

 

アップルストアは、来店客5人に対してスタッフ1人を配置する水準を維持していて、顧客のそばに常に誰かがいることで、親近感を覚える接客が可能になっている。

 

従業員が揃いも揃って正真正銘のエキスパートなのである。

実は、「販売店で働いてもいい」というプロ写真家を雇っているのである。

 

知識は、経験がなくても獲得できる。

ギリシャの島々を訪れたことがなくても、その知識は身に付けられる。

一方、ノウハウは、身をもって経験したことがなければ、磨きようがない。

歴史を振り返れば、今ほど、この違いがものを言う時代はない。

 

「背教者」型のブランドは、常識を覆すようなイノベーションを見つけ出し、市場に昔からいる既存企業に挑戦状を叩きつける。

場合によっては、産業界全体を敵に回すこともある。

そのようなイノベーションは、業界の価格と価値のバランスや顧客の体験をがらりと変えるほどの威力がある。

こうしたブランドは、テクノロジー、人材、サプライチェーンの効率化や、システム思考を生かし、狙いをつけたカテゴリーでの顧客の体験をまったく違うものに変えてしまう。

 

特定カテゴリーでのノウハウの強みを標榜するブランドもある。

このように専門性に強みのある小売業者は、そのカテゴリーで最高水準のノウハウ、コンシェルジュ顔負けのサービスで顧客をもてなす玄関口として、体験やコミュニケーションのあらゆるタッチポイントを強化する。

ベンチマークトレーニングプログラムや資格認定制度、セミナー、講座、ワークショップなどの要素を通じて、ノウハウに飢えた顧客に絶えず情報を提供できる。

 

「支配者」とは、模範であり、象徴であり、卓越した存在になることである。

だからこそ、特定のカテゴリーなり市場なりで、消費者が最初に思い浮かべる定番の座を獲得できるのだ。

 

体験

小売に関して味わう体験とは、突き詰めて言えば、特定の状況で私たちが受ける肉体的刺激、感情的刺激、知的刺激の総和である。

視覚、触覚、味覚、嗅覚で受け取るものや、こうした要素が醸し出す気分が渾然一体となって、「体験」を生み出す。

刺激の一つひとつは、実世界かデジタルかを問わず、コンテンツを構成する要素に過ぎない。

 

ショッピングの体験中に「自分のためだけに用意されている」という個別対応(パーソナライゼーション)を強く実感すると、予定外の商品をついつい買ってしまう客は2.1倍に増え、買い物の支払い額が予定よりも多くなる客は1.4倍になり、顧客の継続利用意向を測るネットプロモータースコア(NPS)という指標も1.2倍になることがわかっている。

 

優れた体験は、デザイン面でも実用面でも再現性がある。

本当に優秀な小売業者は、従業員のトレーニングだけでなく、リハーサルにも手を抜かない。

 

その意味で「作為的」とは、「徹底的に作り込まれたもの」と私は理解している。

用意周到に仕組まれたものということだ。

どんな企業でも、できることならそうしたいのではないか。

 

優れた体験に共通する5つの特徴

  1. サプライズ
  2. 独自性
  3. 個別対応
  4. 親密度
  5. 再現性

 

コンテンツ

専門性を高めることは、必ずしも取扱商品数を増やすことではない。

むしろ、もっと深く掘り下げ、思い入れが感じられる説得力のあるストーリーを顧客に語りかける必要があるのだ。

 

ティックトックにしても、インスタグラムにしても、テキストメッセージにしても、ファイスブックの投稿にしても、すでにそこが「店」になっているのだ。

そもそも広告はこれ以上いらないのである。

消費者が気になるようなコンテンツづくりに乗り出そうということなのだ。

人々が望むコンテンツ、楽しみたいと思えるコンテンツである。

思わず友達に教えたくなるコンテンツだ。

 

もしなくなったら顧客が心底残念がるようなコンテンツである。

いよいよとなれば、有料でも欲しいと思えるコンテンツです。

 

ブランドは、顧客を中心に置いて、本当に独創的なメディアを生み出し、顧客に喜んでもらえるコンテンツ、なによりもインタラクティブ性のあるコンテンツを惜しみなく提供することが大切だ。

 

私はカネを出すに値する内容のメディアとか、熱烈なオーディエンスに恵まれて、これがなくなったら困るとまで愛されているメディアについては、先行きを楽観視している。

 

本領を発揮するのは、ここからだ。

1つひとつの店に制作スタジオがあったら、と想像してみよう。

店内イベントや商品デモ、インフルエンサーの出演などをコンテンツに盛り込み、メディアのエコシステムに加えたらどうだろうか。

顧客に送り付ける広告量を増やすのではなく、独自のおもしろいコンテンツを顧客が心から楽しみたいと思うようになると、とたんにコンテンツの制作、露出、顧客とのやり取りが爆発的に増加する。

 

店舗は、商品流通チャネルからメディアチャネルへと変容し、パンデミック後の世界では、メディアチャネルとしての役割がますます重要になる。

自分たちの店が販売促進活動を展開するのに完璧な撮影スタジオであり、ストーリーづくりに自分たち自身がなくてはならないキャラクターであると身をもって知った。

店舗こそが、独自の魅力をライブで伝える強力なステージや場になっている。

しかもコンテンツ制作の素晴らしいスタジオでもある。

 

ある美容系のブランドが店舗で年間1億人の顧客と接触しているとすれば、これほどのブランドのインプレッションを生み出す店舗は、CMなど他の方法で同等のインプレッションを生み出す場合の市場価値と最低でも同じと見ていいはずだ。

実店舗はもはや、単なる商品流通の拠点ではない。

実店舗固有の価値を生かしたリターンが期待でき、顧客獲得戦略の文脈で語るべき存在になっているのだ。

 

会員

実はポイントプログラムは、得意客を増やす効果がないのだ。

入会無料のポイントカード制度が一番威力を発揮するのは、食品や航空、ホテル、クレジットカード、ガソリンなど、競合との差別化が難しい分野だろう。

 

有料会員制は、継続的な収益の源泉にもなる。

一方、ほとんどのポイントカード制度は、バランスシートの上では負債である。

この本質的な違いゆえに、各社はあの手この手でポイントカードの価値に制限をかけたり、あれこれ条件をつけたり、ときには価値自体を引き下げたりする。

かたや、有料会員制を用意している小売業者は、制度を拡充して、付加価値を高める施策を常に模索する傾向がある。

 

値引きをしたからといって、後日、それに見合う売り上げ増につながることはまずない。

たとえば、10%の値下げをしたら、仮にがんばって20%多く売っても、しょせん本来得られたはずの利益にしかならない。

そんな売り上げ増は不可能なだけでなく、そんな売り方をしているうちに、顧客には「そのうち、また値引きするさ」と期待を抱かせることになる。

 

ショッピングモール

ショッピングモールは、言ってみればアナログ版のインターネットのような存在だった。

  • 友達や家族が集う場→フェイスブック
  • 出会いの場→ティンダー
  • 映画を見る→ネットフリックス
  • フードコート→ウーバーイーツ
  • チケット販売→チケットマスター
  • ショッピングモール→アマゾン

 

かつて私たちは、電卓や目覚ましなど用途に応じて40種類くらいの電子機器を使い分けて暮らしていたが、スマートフォンの登場ですべてが淘汰された。

同じように、かつてショッピングモールが担っていた役割が、ほぼすべてインターネットに取って代わられてしまった。

実際、世界最大のショッピングモールが、手のひらに難なく収まってしまうのである。

 

循環型ビジネス

循環型経済では、エネルギーでも資源でも原材料でも、使用されるものは最終的にリユース(再使用)、リサイクル、リターン(返却)を経て再生可能なかたちで環境に戻し、未来の世代が使えるようにすることである。

商品の製造・販売について言えば、製品を作ったら最終的に使い道のない廃棄物になる直線型で捉えるのではなく、作ったら最終的に再使用されていく循環型をめざすべきだ。

インプット(投入)とアウトプット(産出)が常に同量になるシステムである。

 

・賃金…公正・公平であり、従業員が安心感と充足感を持ち、実りある生活を送ることができ、地域社会への貢献や投資が可能になる水準であること

・製造工程…事業拠点となっている地域社会に対して最終的に経済面・環境面でメリットをもたらすこと

・原材料…安全で非毒性の天然由来であることに加え、食物源またはエネルギー源として将来使えるように環境に戻すことができること

・製品…リユース(再使用)、再販売、修理、リサイクルが可能で、有用な期間が劇的に長くなること

 

面白かったポイント

小売の戦い方の方向性が分かる本です。

 

最初は、小売りの怪物企業であるAmazonのすごさが解説されていて、Amazonと真正面から戦わないやり方が示されています。

強力なシステムの前には勝てないので、センスやコンテンツ、体験を磨く必要があるとのこと。

今は、大企業でなくても発信する武器は無料で手に入るので、旧来型の小売りから一刻も早くシフトチェンジする必要があります。

 

ストーリーやコンテンツとセットで商品やサービスを売る時代です。

コロナによって小売りの変化が加速しているので、スピードも重要な要素です。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

目次

序章握手とハグが当たり前だった日々
第1章“基礎疾患"のあるブランド
第2章異世界へのタイムトンネル
第3章食物連鎖の頂点に立つ怪物たち
第4章大きな獲物が狙われている
第5章新しい時代を生き抜くリテールタイプ
第6章小売りの技を極める
第7章ショッピングモールの再生
第8章小売の未来

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