内容
コーチという言葉が最初に登場したのは1500年代です。
もともとは「馬車」を指していました。
そこから新たに「大切な人を現地まで送り届ける」という意味が生まれました。
コーチングとは
コーチングとは、会話を重ねることを通して、相手に、目標達成に必要なスキルや知識を備えさせ、目標に向けての行動を促していくプロセスです。
部下がうまくいかない時は、彼らのやる気や人間性に問題があるのではありません。
自分の能力に気がついていない、適性がない、知識が不十分、技術が足りない、または、意欲を高める方法を知らないからです。
一方的に教えても選手はその技術や知識をそのまま使えないということがわかってきました。
選手が本当に使えるアイディアとは、それを使う本人が自分で見つけ出し、そのアイディアを発展させるアイディアも自分で見つけ出すという過程を踏むことが必要だったのです。
そうしてはじめて自分から行動が起こせることがわかってきたのです。
そこで最近は、コーチがつくり出す双方向のコミュニケーションの中で、選手自身がどんな考え方や技術を使えるかを見つけ出していくという方法がとられるようになってきました。
この「一方通行ではなく、双方向でアイディアを出し合い、それを検討する。行動に移すためのアイディアもまた双方向のコミュニケーションから生み出す、この一連のプロセス」を「コーチング」といいます。
つまり、目標やテーマを設定しそれを実現する過程で、クライアントとコーチが会話を重ね、その双方向のコミュニケーションを通じて課題を解決していく(インタラクティブ・ソリューション)のです。
アイデアを出すプロセスに参加すると、アイデアが行動に移しやすくなる。
「みなさんは、どんなサービスがしてみたいですか?
可能不可能は別として。
これまで受けたサービスであなたが嬉しかったもの。
まだやったことはないけど、やってみたいもの。
ほんの小さなものから、すごく大きなものまで」
人にとって管理されすぎること、自発性を奪われることは、何にも増して「害」なのです。
これは、コーチングにおいても同様です。
マネージャーが部下を管理しすぎることは、部下の自発性を奪い、状況対応力を低下させます。
部下は上司の指示に従えばいいという考え方が全部誤りなわけではありませんが、マネージャーには「任せる」技術が求められていることは否めません。
一方的にコーチが経験や知識を伝達するのではなく、選手や部下が自分で考える機会をつくるのがコーチの仕事です。
誰かの考えで行動する限り、責任をとったり失敗から学ぶといったチャンスを、ことごとく失ってしまうことになるでしょう。
最終的にコーチの目標は、「自分で考え、自分から行動を起こし、自分で評価できる」部下や選手を育成することです。
コーチ自身が教えるのではなく、コーチは、クライアントに、「彼らが目標を達成するために必要な知識や技術、ツールを備えさせる」のです。
このプロセスをコーチングといいます。
よいコーチになるということは、「私のおかげ」を放棄するということです。
自分の部下やクライアントの自立と可能性を引き出すことを自分の喜びと感じられないと難しいかもしれません。
コーチングの原則
- 聞かれたら答える
- 一回にひとつ
- 相手の感覚を大事にする、それを受け入れる
コーチング・フロー
本来のコーチとは、コーチング・フローを作り出す人のことです。
- 現状の明確化
- 望ましい状態の明確化
- 現状と望ましい状態のギャップを引き起こしている理由と背景の発見
- 行動計画の立案
- フォローと振り返り
一般にコーチングは週に一度、電話で三十分程度行われます。
そのほかにEメールを使ったり、時には面談をすることもあります。
一週間の間、クライアントは、プランに従って行動を起こし、次のコーチングでは、それを振り返り、より現実にマッチした行動予定を立てます。
ちょうどボクシングの選手がロードトレーニングをしている時に、コーチが伴走をするようなイメージです。
どんなに練った戦略を持ったとしても、現実との間には必ず誤差が生じます。
その誤差はリアルタイムで確認され、修正していく必要があります。
一回や二回のコミュニケーションでは誤差を見つけたり、それを修正するには十分ではありません。
定期的に現在進行形で課題について話し合う時間が必要です。
- 週に一度、今やっていることが目標に向かっているかどうか?
- 効果的に行動できているかどうか?
- 新たに必要となった知識や技術、ツールはないか?
それらを振り返ることにより、気づきやひらめきが生まれます。
定期的にコーチングの時間をとることの意義は、課題に対して集中することにあります。
それでもほかのさまざまな仕事によって中断を余儀なくされ、注意がそがれます。
何度でもリマインドして目標に目を向け続けていないと、ベクトルの方向がずれたり、分散したりしてしまいます。
具体的でビジュアルで、自分の内側ではっきりとイメージできる目標しか達成されない。
環境をつくる
コーチングはその人の考え方ややり方に直接関わるというよりは、環境を整えることに注意を向けていきます。
良い環境があれば自然に動けるようになるからです。
自発的に動けるようにするということは、動きたくなるような環境を整えるということです。
目標を設定してその目標に到達しないと、やる気の問題にされてしまう場合が多いのですが、それは上司やコーチ自身に目標を達成することに関する知識が不足しているからでしょう。
人が目標達成に向けて行動し続けるには、たったひとりで目標に挑むというイメージから自由になって、自分には十分なリソースや協力体制があるという実感が必要です。
どこに行けば知識を得られるか知っている、誰がサポートしてくれるか知っている、どこに行けばツールが揃うか知っている、リサーチが徹底していれば、より行動は起こしやすくなります。
聞く
聞かれていないと、焦りや不安、孤独感に陥ります。
自分の言っていることが聞かれないと、存在価値が下がったように感じます。
すなわち、「聞かれていない」イコール「おまえは大切な人ではない」と言われているように感じてしまうのです。
聞く能力が高いというのは、次のようなことができるという意味です。
- 相手が話しやすい環境をつくる(相手の緊張を解き、信頼関係を築くために聞く)
- 相手のタイプや状態、価値観や現在のコミュニケーション能力などを聞き分ける
- 相手のリソース、夢や目標を引き出す
- 相手の中にあるものを聞くための効果的な質問をつくる
- 自分が受け取った意味が相手の言いたいことと一致しているかを確認する
話す
人も話してはじめて自分が何を考えているのかに気がつく生き物なのです。
ちょうとコンピュータの中に入っているデータを見るためには、モニターで見るか、プリントアウトしなければならないように。
アイデアを生み出したり、アイデアを発展させるアイデアを見つけ出すための孤独な思索には限界があります。
集めた情報を咀嚼するために一人になることも必要ですが、アイデアを生み出すためには、コミュニケーションが欠かせません。
人は会話を交わし、言葉にしてアウトプットすることで、自分のアイデアを認識することができます。
人は自分の内側の情報を一度外に出さないと認識できないのです。
すなわち、話す相手がいなければ、自分の思っていることにも気づけません。
これが、私たちが話す最大の理由のひとつです。
質問
コーチが質問をする目的は
- 視点を変える
- 未来を予測する
- リソースを探す
- モデルを探す
- 問題をはっきりさせる
- 物事を具体的にする
- ビジュアル化する
- 気づきやひらめきを促す
- 目標を設定する
- ソフトモデルを見つける
- 問題を特定する
- 考えを喚起する
- アイデアを発展させる
- 知識、スキルを棚卸しする
Why、What、Howは、英語圏では、発見の疑問符と呼ばれ、通常、会話の最初または中ほどに使われます。
When、Where、Whoは、アクション・プランニングの疑問符と呼ばれ、会話を交わす双方が、次に会うまでに何をするか決めるためのものとして、毎回のコーチングの最後に用いられます。
深く洞察したり、視点を広げるために、「なぜ?」という質問は有効です。
お互いに向き合った時に「なぜ?」を使うと「責め合い」になってしまいますが、お互いが並んで座って同じ方向に目を向けている時には有効な質問となります。
頭の中のオープン・クエスチョンは、心を軽くします。
同時に、まわりの人たちへのオープン・クエスチョンはまわりの人たちの魅力を引き出します。
オープン・クエスチョンは、選択肢を広げ、行動を起こしやすくするため、そして、結果から学ぶ機会を増やすためになされます。
それが、次の行動のリソースになります。
アクナレッジメント
アクナレッジメントは、相手の変化や成果に気づき、それを伝えることつまり、アクナレッジメントというのは、相手に現れている違いや変化、成長や成果に、いち早く気づき、それを言語化して、相手にはっきり伝えることです。
そして、望ましくは、相手が自分自身では、まだ気づいていないことを先に察知して、それを伝えること。
より効果的なアクナレッジメントになります。
特にあなたが見たものをはっきり言葉にして伝えることです。
ただし、比較する言葉は使わないこと。
たとえば、「前よりずっとよくなってるね」。
これだと評価の雰囲気が強くなります。
提案
パーソナルOSのバージョンアップのために、コーチングで提案されるのは、まず第一に、選択の幅を広げる習慣です。
選択の幅が広がれば人は自発的に行動を起こせるようになります。
教えるのではない。
複数の視点をもたらす。
広い視野を持ち込む。
具体的には、常に三つ以上の選択肢を用意することです。
人が行動を起こすためには、目の前に「三つ以上の選択肢を用意すること」が条件です。
「やるか、やらないか」は脅迫であって、古いパーソナルOSの特徴です。
人はリクエストを受けることで、自分でも気がついていなかった能力や可能性を見出す機会を得ます。
いうまでもなくリクエストは、人を行動に駆り立てます。
人は基本的に、誰かのリクエストに応えて行動を起こすものなのです。
成功
成功のバランスがとれている
成功とは、お金だけでも権力だけでも実現されません。
成功は、いくつかの領域を満たし、そのバランスがとれることによって実現します。
経済の領域
自分に合った仕事を持ち、見合った給料を取り、病気や失業などの場合の保障がある。
大金持ちになるという意味ではなく、自分の予算内で生活ができている。
健康の領域
心身ともに健全である。
単に自分の判断だけでなく、医師の確認を得たもの。
自分に合ったライフスタイルの選択を行い、ストレスを軽減させる方法を持ち、ストレスに対する抵抗力をつけている。
個人的生活の領域
友人や家族との関係が安定していること。
人間関係に満足できている。
職業の領域
能率よく誠実に仕事をし、自分のキャリアパスがはっきりしていること。
自分の適性に合った仕事ができている。
また同僚からの信頼や尊敬を勝ち取っている。
ソフトモデル
さまざまな場面におけるソフトモデルを持っていることが望まれます。
たとえば
- 行動を起こしたい時
- 行動を変える時
- 障害にぶつかった時
- 新しいアイデアを出す時
- 苦手な人と関わる時
- 完了させる時
それぞれにソフトモデルを見つけておくと、いざその場に立った時、動きやすくなります。
内側で持つビジョン、その色、大きさ、形、動き、遠近感、言葉、音、音楽、匂い、手触り、皮膚感覚、これらの感覚を加えていくことでリアリティーが生じます。
コーチングを導入する目的
- 社員のモチベーションアップ
- チームワーク
- 社内コミュニケーションの活性化
- 組織変革を速やかに進行させる
- 成果主義人事制度の効果的運用
- 目標達成
- マネージャーのマネジメント力の向上
- 営業マンのコミュニケーションスキルの向上
- 新規事業の立ち上げ
- 新人、中途社員の新しい職場への適応プログラムの一環
- 昇級試験へ向けてのチャレンジ、企業経営
- 起業
コーチを雇う時の条件の第一は、コーチ自身がコーチをつけているということです。
面白かったポイント
コーチングとは何かについて、非常に分かりやすくまとめられています。
マネジメント層だけでなく、チームで動く人全員がコーチングのスキルを身に付けるべきだと思いました。
コーチングをベースにした健全なコミュニケーションを重ねることで、自分や仲間の能力を上げ、助け合い、目標を達成する強いチームが作れるのだと思う。
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