内容
五感
人間の五感を、大脳における神経密度の高いものから低いものへと順に並べると、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚とランクづけできるという人がいる。
おもしろいことに、人間が豊かになっていくと、目や耳で満足する段階から、舌を満足させるようになり、最終的には匂いや肌ざわりにこだわるようになる。
つまり、神経密度の高い感覚から低い感覚へという、一種の「進化の法則」が存在するように思える。
外部の刺激が管のてっぺんに当たる。
常に外からの刺激を受けるため、その辺にセンサーができてくる。
つまり一番最初にできるのは触覚である。
その触覚が進むと、餌として食べられるかどうかを見分ける嗅覚になる。
五感というが、一番原始的で昔からあるのは触覚で、その次が鼻(嗅覚)である。
したがって鼻に対する刺激は、その人を動かす力が非常に強い。
目などは一番最後にできているから、目で教えてもなかなか人は動かない。
しかし、いい匂いをかがせるとスッと寄って来る。
良いお坊さんの条件
一.声、二.姿、三.学 と書いてある。
声がよくて、見かけがよくて、最後にできれば学もあったほうがいいというのだから、タレント、芸能人、国会議員とあまり変わらない。
イメージ
脳の「長所」もある。
たとえばチャレンジする分野、クリエイティブな分野では、イメージの力は非常に大きい。
コーチが出走を控えるランナーに「先頭を切ってテープを切るところをイメージしろ。お前の足は軽いぞ。手も足もよく動くぞ」と力強く語りかけると、それでほんとうに力が出るものらしい。
また、ファッションの世界でも、パリのモード・コレクションなどでモデルのヘアメイクを担当するアーティストは、髪をセットしながら「あなたはとてもキレイだ。今日は一段と美しい」と囁き続ける。
すると、モデルのほうも「今日の私は一段とキレイなのよ」という自信が生まれ、ステージ上の表情や身のこなしが変わってくる。
彼女が有名になれば、そのヘアメイク・アーティストにはまた仕事がくる。
ヘアセットをしているのではなく、モデルの心の中をセットしていると言ってもよい。
ちなみに、そういう男性が大勢いるのがパリやミラノで、まったくいないのが日本の大企業である……。
先進国の発展法則
先進国の歴史を見ると、第一段階は、まずは勤勉である。
そのため収入が増えるが、国民の生活水準は遅れて立ち上がるので、その差額が貯蓄になって、お金が貯まる。
おカネが貯まると利子率が下がるので、鉄道、発電などの大資本事業をするようになる。
それから、そのカネを回してもっと儲けたくなるから、金融、証券、保険業が発達してくる。
それが第二段階。
しかし、まだ動機は「金儲け」である(日本ではバブル時代がそうであった)。
しかし第三段階になると、変化そのものを楽しみたい、創造の喜びを味わいたいと思うようになるから、ときには有望な若者にカネを渡して、「なんか変なことをやってみろ」と言う。
また海外投資や援助をするようになる。
ある種の優越感の楽しみである。
バブル以降の日本はそんな雰囲気になって、海外進出と国際貢献とベンチャーが流行するようになった。
第三段階の国は、社会全体が豊かで、国民は学歴が高く、子供の時から遊んでいて、友人も多いし、好奇心と自主性がある。
そのため自然と先端開発をする子供になっている。
お父さんがいろいろ遊びの道具を買ってくれる。
学校の設備もクラブ活動も整っている。
子供に玩具を買う金額についての統計はあまりないが、ざっと考えてアメリカはヨーロッパの四倍くらいで、日本はさらにその四倍以上だと思われる。
その子供たちの将来が楽しみである。
天才を集める四つの条件
創造の世界に生きる人にとって最高の幸福は、自分が考えたことの結果を見ることである。提案の採用──これが第一の条件である。
待遇改善が第二の条件である。
発明から結実への時間が短いことは、発明基地になる重要な条件である。すなわち第三の条件は規制緩和( =自由)とスピードアップ。
四つ目の条件、これは案外気がつかないが、住み心地である。都市、風俗、人情、景色、家族など広い意味での住み心地で、環境と言ってもいい。
天才に流出されると、普通人はしばらくの間、まわりが平等で住み心地がよくなる。
しかし、やがて経済が衰退して失業がやってくる。
普通人がいくら誠心誠意、勤勉実直に働いても、先端開発をしないのでは、その国の産業はだんだんおいていかれるからである。
二流国は一流国がつくる新製品を、割高な価格で買わされて、せっかくの貯金も先端産業国にとられてしまう。
したがって、普通人多数で心をあわせて頑張ろうというのは、貧乏国や中進国が追いつくときの話で、日本人がこれ以上の所得向上を望むなら、天才歓迎、天才優遇の国づくりをしなくてはいけない。
天才といって語弊があるなら、「活力ある人材」とか「リスクをあえて取る企業家」と言い換えてもよい。
遊びながら儲ける
日本人は自分が働いて儲ける、
アメリカ人は世界の人を働かせて儲ける、
イギリス人は遊び遊ばせながら儲ける。
日本人は自分が勉強する。
アメリカ人はシンクタンクをつくって人に勉強させる。
イギリス人は遊びが勉強になっている、
同時生産、同時消費
文化に関しては「同時生産、同時消費」を喜ぶようになる。
そういう「同時生産、同時消費」のイベントを演出し、場を提供し、というのがこれからの文化産業の一つの特徴であり、ヒントである。
もう一つヒントを言えば、瞬間の喜びがウケる時代である。
生産も瞬間に生産して、消費も瞬間に消費する。
長持ちするものはもう大して売れない。
日本が持っている一人当たり四万ドルの所得はどこへ消えるのかというと、一瞬パッと花火が上がって、ワッと思うとそれで終わってしまう。
日本人が追求する瞬間の喜びは、世界の人がやがて憧れてマネをする。
日本でこれから出てくる特徴は、「個人」である。
個人で生産し、個人で消費するという二十一世紀文化を、日本はもうつくりかけている。
上から見下ろして何段下かはよくわかるが、下から見上げて何段上かはよくわからないようなものである。
サラリーマンの三段階
二十代は「新機能」を見せる第一段階である。
「今度入ってきた新人は中国語が喋れるらしい」などの評判をとり、失敗を恐れず、その新機能をアピールすべきである。
それが過ぎて三十代半ばになると、第二段階に入る。
ロシア語ができるという新機能だけでは、もはや通用しない。
ロシアへ出かけて行ってついでにポーランドで新しい商談をまとめてくる、というような「付属機能」が要求される。
さらに、故障が少なく、安定していることも求められる。
失敗しない手堅さが求められる。
四十歳を過ぎると第三段階に入る。
「あの人が仕事の中心に座ると皆が働きやすい」と下から慕われることや、「彼をリーダーにして任せると安心して見ていられる」と上からも信頼されることが大切な要素となる。
これが「周辺との調和」の段階である。
レッスンプロ
お師匠さんやトーナメントプロの意識を変えて、本物のエンターテイナー兼用のレッスンプロを始めれば、今からやっても儲かる可能性が高いということである。
遊ばせたり、笑わせたりしながら、しかも芸の真髄を教え、そのうえ初心者にピッタリの指導をするのはよほど賢い人でないとできないことである。
その国が商売で勝つ法則
ある国が世界を相手に商売して、必ず勝つ法則がある。
それは、その国にはふんだんにあるものを、ふんだんに使った商売である(それは国でなくても、「県」でも「我が社」でも同じである)。
ふんだんにあるものを、ふんだんに使うと勝つ。
面白かったポイント
森岡さん推薦の本、おもしろかった。
本質的な法則を仕入れることができた。
これから付加価値を高めるにはエンタメ性が求められる。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆
目次
第1章「普及率」の法則
第2章「五感」の法則
第3章「発展段階」の法則
第4章「先端国」の法則
第5章 さらなる「成功」の法則
第6章「アイディア倍増」の法則
第7章「世界の中の日本」の法則