商売が苦手なイラストレーターのための仕事のつかまえかた

ビジネス

『商売が苦手なイラストレーターのための仕事のつかまえかた』森健司

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内容

商売の基本原則

クリエイターが仕事を得るために最も大切なのは、まずは創り出す商品(作品)の価値が一定以上の水準にあることです。

職業として長く続けていくためには、商品的価値に加えて「商売として提供するサービス=商売的価値」が備わっていることが重要です。

現実的には「ほとんどの仕事は頼みやすい人に発注される」からです。

 

信用=商売的価値+商品的価値

商売的価値=営業力(新規獲得)+ホスピタリティ(リピート獲得)

商品的価値=うまい+はやい+やすい

 

信用の大きさで競合と仕事を取り合っているのです。

信用を可視化したものが実績であり、信頼できるソースからの紹介であり、選考基準を持ったエージェンシーへの所属なのです。

 

どの商売のフィールドに参入するか

多くのイラストレーターは、

  • 自分が「好き」だと感じるテイストで
  • 自分が「描ける範囲」のなかから
  • 自分の「オリジナルだと思い込んでいる」作品が
  • いつしかマーケットにも「認められて売れっ子」になる

のを、ただ、夢見ているのです。

人々が「何を求めているか」を考えずに「好きなもの」を置いているだけでは、その作品が手に取られることなど、ほとんどないのです。

 

「ユーザーが求めていること」は「営業」で多くの人に会うことや、SNSやイベントに参加する「宣伝/広報」から得られます。

マーケティングのなかで最も重要なのが、自分の「やりたいこと」と「できること」を総合的に勘案して、「どの商売のフィールドに参入するかを決める」ことです。

自分が描ける中で「できるだけ人が欲しいと思っている=需要がある」絵を描くことになります。

 

「どうせやるなら早いほうが良い」というのも商売の鉄則。

もちろん、参入するフィールドを間違えなければ、の話ですが。

 

大切なのは、「そのフィールドで必要とされる商品(作風)を嗅ぎ分けるセンス」ではないでしょうか。

この「嗅ぎ分けるセンス」には「発注者の伝えたいことがわかるセンス」も含まれます。

 

得意なものをかけ合わせる。

 

新規獲得

お客は少しでも自分の金と時間を無駄にするのを嫌います。

既知の店より低いサービスを提供されるかもしれない「知らない店」へ行くことにリスクを感じるのです。

それゆえ、企業が新規の顧客を獲得するには、まずはサービスを知ってもらうべく宣伝・販促費を投じます。

 

仕事の新規獲得の成果は釣りと同じで、

  • ターゲットが多くいる場所に
  • 食いつく可能性の高い手法で
  • キャスト(仕掛けを投げる)の回数を増やす

をいかに競合より効率よく行うかで結果が大きく異なってきます。

 

クライアントから「信用」を構成する「安心感」を得るためには、どうすればよいのでしょうか。

最も確実なのは、信頼あるクライアントの実績を積み重ねること。

次に、クライアントが信頼している人、たとえばアートディレクターや同業者による推薦(口コミ)でしょう。

これはいつの時代も変わりません。

 

相手に内容を最もよく伝えられるのは「直接会って話すこと」。

あなた自身が、ポートフォリオを見てみたい、会って話してみたい、と発注者に思わせるような魅力的な存在でいることが重要です。

SNSの投稿やメールの文面に最大限の気を配るのは、当然なのです。

 

仕事を始めるための第一歩は、とにもかくにも「発注者に作品を見てもらう」こと。

 

特に大切だと思うのは「私はあなたのビジネスをしっかりと検討した上で、さらに良くするための手伝いができる」というアピールになっていることです。

セールスマンはこちらの嗜好やライフスタイルをきちんとリサーチしてからプランを考え、自社商品があなたにとっていかにメリットがあるかを語るでしょう。

見積もりも何パターンか用意しているかもしれません。

 

まずは自分の提供するサービスが相手のためになることをアピールしなくてはなりません。

「あなたのためになる」という提案ありき。

それがなければ相手は興味を持ってくれないのです。

 

クライアントにとって宣伝費とは「投じた金額以上のリターンを得るための投資」だということ。

その案を採用することでプロジェクトの売上が向上する可能性が高いとクライアントが判断すれば、予算を上乗せするケースもあります。

 

大切なのは「仕上がりが想像できる」ことであり、プロならば「いつもクオリティが安定している」こと。

 

エレベーターピッチで必要とされる要素は、

G:Goal(自分が望む目的/結論)

T:Target(相手が望むもの/ニーズ)

C:Content(自分と相手の要望を結びつける要素)

 

コミッションワーク(受注型)の基本工程

  1. クライアントから依頼を受ける
  2. 条件交渉をする
  3. 受注をして指示書を受け取る
  4. 指示内容を理解してラフを作成、提出する
  5. ラフのフィードバックを理解する
  6. 締切日までに発注者の期待以上の作品を納品する

 

新規で受発注をする場合には、クライアントのほうは「きちんと指示した内容で仕上げてくれるか」「納品日を守ってくれるか」

一方、イラストレーターのほうは「指示が分かりやすいか」「不条理な修正はないか」「報酬を期日までに支払ってくれるか」という不安を抱えながら仕事をしています。

 

発注経験の少ないクライアントはディレクションをしにくく、実際に動いているものを見てからやっと「ちょっとイメージと違う」と感じたりすることが多いもの。

 

やっと受注に結び付いたとしても、担当者を満足させなければ次の発注はないのです。

そのとき「あなたのここがダメだった」と指摘してくれる発注者はほとんどおらず、ただ静かに離れていくだけなのです。

そうしたトライアンドエラーを繰り返すことで、何気ないコミュニケーションから相手が求めていることを察知し、発注時の指示書から行間を読み「相手が本当に求めていること」が理解できるようになっていくのです。

 

「相手の人生を豊かにするためのものを売る」

そのためには「買う行為を通じて相手に気持ちよくなってもらわなければならない」

 

リピーター

発注者にとって新しいクリエイターを探すのは手間のかかること。

クリエイターに初めて発注するということにはリスクが伴うのです。

実績の少ない相手なら、さらにリスクは高まります。

 

発注者が初めてクリエイターを起用するにあたっては、以下のような周辺情報を事前にかき集めます。

  • SNSのフォロワー数
  • SNSの投稿内容
  • 仕事の実績
  • 知人の紹介
  • 実績のあるエージェンシーに所属している

などです。

 

発注者が外注先を選ぶ基準は、

  • 手間がかからない
  • 自分を儲けさせてくれるかどうか

にかかっていると言えます。

 

発注者にとっては、時間を節約できる=自分の時間を増やしてくれる=自分を儲けさせてくれる、ということです。

「速ければ速いほど良い」は全世界共通の商売の原則。

全人類に平等に与えられた唯一の資産である「時間」を増やしてくれるため、商売の側面に限らずとも、圧倒的な正義です。

 

売れている人の共通点を具体的に言うと、

「依頼を受けて納品するまでに競合よりもお客を良い気分にさせる」

 

長く売れている人の共通点

  • 不平を言わずにいつも機嫌よく仕事をしている
  • 暇さえあれば絵を描いている
  • 感謝を忘れない
  • 承認欲求が低い

 

競合よりも良い商品を作り出すチャンスを生む好循環

  • 自分の仕事(商品)が好き
  • その喜びをお客にも分けたい気持ちでサービス
  • お客のほうが「買わせてほしい」という気持ちになる
  • さらに商品を良くすることに注力

 

ポジティブサプライズを提供するために「修正作業という時間を手間を投資している」

「修正に対して明るく対応する」のは費用対効果がとても高い投資だと思います。

 

リピートを増やしているなら、実績の増加による商売の「信用」の増幅と「宣伝効果」で、新規獲得件数は自動的に増えているはずです。

依頼をくれた発注者に少しずつでもポジティブサプライズを提供し、リピーターになってもらう確率を高める努力をするのが効率の良い商売というものです。

 

リピートが少ないのは、提供したポジティブサプライズが、「もう一度仕事をしたいと思わせるほどではなかった」ということ。

「トラブルなく納品した」だけでは、リポートしてもらうのは難しいのです。

 

「普通に良い」レベルではリピーターを獲得するのは難しくなっています。

どの段階でも、ライバルより少しでもポジティブサプライズを加算していかなければ、総合点で負けてしまうでしょう。

 

クライアントのポートフォリオ

クライアントを選んで、自分で組み合わせの選択肢を持つことができるようになる。

それが「クライアントのポートフォリオを組めている」ということです。

 

もしクライアントを選ぶことができないならば、生活のためにどんな内容の仕事でも引き受け続けなければなりません。

ギャラの低い仕事ほどほかのイラストレーターでも代替できるような内容で、スケジュールもタイトな案件であることが多いのが実際のところ。

つまり、「ほかの人なら断るような内容の仕事」が、巡り巡ってあなたのところに来ただけなのです。

 

短期間で高額の報酬が得られる仕事は、ポートフォリオ内のほかのカテゴリの仕事をするための燃料となります。

ただし、こうした仕事ほどコンペによる選定が行われるため獲得が容易ではなく、発注者の要求は厳しく、修正も多いかもしれません。

 

その仕事をすることが「自分の宣伝」になるような仕事です。

雑誌や書籍では基本的にイラストレーターのクレジットが記載されるので、報酬をもらいながらも、あなたの実績の宣伝にもなります。

名の知れたクライアントの仕事をいくつか自分のWebに掲載しておくだけで、初取引のクライアントは安心感を覚えるでしょう。

 

イラストレーターを目指した頃に夢見ていたクライアントや自分の趣味の領域にある仕事などは、報酬の金額とは関係なく大きな満足感を得ることができます。

 

自分のキャリアのための戦略として、将来的に参入したいカテゴリがあるはずです。

そうした仕事の依頼があったなら、たとえ現在の自分の実力では自信がないと思っても、将来のためのチャレンジとして引き受けるタイミングかもしれません。

 

一定期間の定収入が約束されることで経済的な安定も得られ、また連載を持つことができている心理的な充足感も大きいでしょう。

 

スキル

会社勤めをしていれば、会社が部門とあなたの目標を高く設定することで、否が応でもスキルを上げる必要に迫られます。

チームスポーツと同じように、仲間があなたを引き上げてくれるチャンスがあるのです。

しかし、フリーランスのクリエイターは、自分でより高い目標を設定し、その目標を達成するための勉強を繰り返されなければ、ただ失敗から学ぶだけの成長しかできないのです。

 

慎重に計画を立て、ひとたび計画を立てたら厳しく自分の行動を管理しながらも、躊躇することなく大胆に自身のリソースを投下せねばなりません。

 

面白かったポイント

イラストレーター向けに書かれていますが、すべてのクリエイター、フリーランスが読むべき商売の原則が書かれています。

 

どれも当たり前のことではありますが、すべてちゃんとできているかと問われればまだまだ不十分だという点を見つけられるでしょう。

このご時世、フリーランスの数が増えているとはいえ、仕事を頼みやすいクリエイターが少ないのが実情です。

 

この本に書かれていることをきちんと実践し、商売的価値+商品的価値を高め信用を積み重ねることができると、仕事に困らないどころがあなたの価値をどんどん上げていくことが出来るでしょう。

 

定期的にこの本を読み返すことで、忙しさにかまけて疎かになっているところがないかチェックするといいと思います。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

目次

第1章 商売のフィールドに入る
◆商売をしていますか?
・イラストレーターは商売が下手?
・商売の基本を知らずに仕事をすることは、交通ルールを知らずに車を運転するようなもの
◆商売をできますか?
・あなたにとってクリエイティブは「職業」なのか「趣味」なのか問題
・絵は人生を豊かにしてくれるが「なくてはならないもの」ではない
・絵を描けるって、すばらしい
・イラストレーターはバンドメンバーのようなもの
・二足のわらじも良いのでは?
・仕事のやり方は真似できる
第2章 商売の行動指針を持つ
◆自分が目指す場所を知る
・商売のフィールドを理解する
・クライアントのポートフォリオを組む
◆商売の方法を考える
・フリーランスは企業の業務のすべてをひとりで担う
・近所にある繁盛している飲食店を研究する
・フリーランスの40代問題
第3章 商売の基本を知る
◆商売の基本原則
・商売は「信用」がすべて
・「ポジティブサプライズ」をどれだけ増やせるか
◆マーケティング(商品開発)
・マーケティングは必要か
・どの「商売のフィールド」に参入するか
・得意なものをかけ合わせる
◆まずは商品価値だ
・重要なのは「商品価値」そのもの
・我が子のために厳しい親になれるか
・商品的価値の構成要素は「はやい・やすい・うまい」
・あなたが「天才」ならば商売をする必要はない
◆「価格」を知る
・価格の仕組みを知る
・価格は需要と供給のバランスで決まる
・価格の構成要素・クライアントの予算
・規定料金
第4章 商売のスタートを切る:新規獲得
◆まずは新規獲得から
・すべては新規獲得から始まる
・新規獲得の重要性
・最初にいちばんパワーが必要
・はじめの大きなハードル、アポとり
・良い発注者に会うのはハードルが高い
◆営業する
・ポートフォリオの送り方
・ポートフォリオの内容を吟味しているか
・何をプレゼンテーションするのか
・発注者は奇跡の一枚を求めていない
◆あなたと商品をセットで覚えてもらう
・作風と名前がセットで覚えられないと発注は来ない
・エレベーターピッチができるか
・自分の「売り」を簡潔な言葉で伝える
・仕事が順調に回るまではキャッチフレーズが大事
・能動的に動くか、待機するか
・個展を開催する価値
・「タダで描いてよ」問題~仕事を選んでいる場合ではない
◆受注して納品するために
・したい仕事のための準備はできているか
・自分のスピードを理解していないとチャンスを逃す
第5章 商売を安定させる:リピーター獲得
◆リピーターの重要性
・リピーターが仕事を安定させてくれる
◆あなたは「仕事をしたい」と思われているか
・ほとんどの仕事は「頼みやすい人」に発注される
・「その人でなければ成立しない」プロジェクトは1%あるかないか
・発注者は「儲けさせてくれる人」に仕事を頼む
・「速ければ速いほど良い」は全世界共通の商売の原則
・「仕事ができる人は即レス」は事実
・1秒の遅れが数時間のロスになる「赤信号の法則」
◆クリエイティブ商売もコミュニケーションが鍵となる
・「発注してもらえない」のには理由がある
・長く売れ続けている人の共通点
・お客にファンになってもらう
・「修正に明るく対応する」ことは効率の良い投資
・正論で勝ち、商売で負ける
◆考え方を少し変えてみる
・クライアントは自分の鏡
・「変態」しよう・財布はいくつか持とう
第6章 番外編
◆写真を勉強しよう
◆自己紹介
・ながいながい自己紹介
・BUILDINGが考えるイラストレーターの立ち位置
・もうひとつの財布を入れ替える
・クリエイティブな人生を

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