Zero to IPO

ビジネス

『Zero to IPO』フレデリック・ケレスト

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内容

偉大な創業者の大半

創業者がリスクを好む可能性が高いのではなく、ほかの人に比べてリスクを計算する能力が高いというものだ。

「彼らはこの世界にほかの人が気づかないような関係性を見つける」とマクファーランドは言う。

「そのおかげで、彼らは必ずしも言葉では表せない(あるいは、気づいてすらいない)可能性をしっかり把握できる」。

 

MITの教授、ピエール・アズライによると、起業後に高成長する企業の創業者の起業時の平均年齢は、25歳でも35歳でもなく、45歳だという。

 

(特に名門校での)高い教育、業績のよい組織での何年もの職務経験(特に管理職の経験)がスタートアップの成功と関連があるという。

彼らは、機能性と効率性の高い組織がどのように運営されているかを心得ているからだ。

 

チーム

会社で大事なのは1人の人間ではない。

大事なのは才能豊かな人が集まったチームなのだ。

 

結局、適切な人材を探すあいだ一時的にその役職が空いてしまうより、ふさわしくない人物をそのままにしておくほうが、はるかにわが社の損失だった。

 

資金調達

これまでのミーティングで足りなかったもの、それは情熱だ。

いままではわが社についての物語を語ってこなかった。

それをわくわくするかたちで伝えるどころか、居眠りに誘うという正反対のことをしていた。

でも、このときは違った。

ラストチャンスかもしれないと思っていたからでもあるが、私たちがロボットのように話さなかったのも功を奏した。

私たちは自分たちの情熱をはっきりと表現した。

そのおかげでがらりと変わったのだ。

 

資金調達を始める準備が整っているかを見極めるチェックリストを紹介しよう。

□獲得可能な最大市場規模(TAM)が非常に大きい(つまり、10億ドル規模)ので、すぐに自社を10倍に成長させ、できれば100倍も見込める、有望なアイデアがあるか?

□創設チームが全員そろっているか?ある企業がそのチームを見て、「ああ、この人たちなら間違いなく実現できるだろう」と口にするだろうか?

□自分のアイデアがよいことを示す具体的な証拠はあるか?すでに販売しているのなら、売上をけん引しているものを把握しておいたほうがいい。また、潜在顧客から熱心な感想がたくさん届いていることもある。

□自社がどんな会社で、どうして成功するのかについての物語はあるか?それをすぐに説得力をもって語れるか?

□現実的なビジネスモデルがあるか?

□これから10年、この仕事しかしないという覚悟があるか?休暇もなく、週末もなく、誕生日も忘れ、眠れない夜がある覚悟はできているか?

 

VCの城を落とす鍵

エグゼクティブサマリー

これは、自社に関する重要な情報をすべてまとめた文書(メールに添付できる1、2ページのPDFデータか、提出できる書類)か短い映像(長くても3分以内)のことである。

そこには、大きな展望、取り組んでいる課題、開発中のプロダクト、創設チームのメンバーと重要な社員の名前と略歴、獲得可能な最大市場規模、自社のビジネスモデル、競合他社、有名なエンジェル投資家、資金調達したい金額を記載する。

エグゼクティブサマリーの目的は、読んだ人の興味を引き、ミーティングのアポイントをとりたいと思わせることだ。

必ず魅力的なかたちにしよう。

旅行のパンフレットのように、読んだ人にもっと知りたいと思わせるのだ。

 

ビジネスモデル

社内のビジネスモデルは、これから2年間の自社の詳細な財務状況(支出、社員数、予想売上高、調達した資金がショートするまでの予想期間)が記載されたスプレッドシートだ。

だが、投資家に渡すのは、それの簡易版になる。

現金がいくらあるか、月次(あるいは四半期)の資金回転率、現在の社員数、四半期ごと2年分の予想顧客数(定期購買者数、売上高など重要な指標ならなんでもかまわない)を列挙する。

 

ピッチデック

たいていのピッチデックは標準的なかたちをとる。

そこには、展望、課題、市場規模と市場機会、プロダクト、ビジネスモデル、牽引力(そのほかの検証内容)、チーム、競合他社、財務、資金調達額のスライドが含まれる。

ただし、簡潔にまとめておくことだ。

スライドは最大でも12枚までにする。

スライドが30枚もあるピッチデックなど誰も最後まで聞いてくれない。

 

さらに重要なのが、(トッドと私がベンとアンドリーセンに売り込んだときのように)ピッチデックなしで自分たちの話をできるようにしておくことだ。

これはいくら強調してもしすぎではない。

投資家の集団の前に立つときは、物語を語れなくてはならない。

みずからのビジョンを示して、相手を魅了しなくてはならない。

これがすばらしい機会だと説得し、どうして自分たちだけがこの仕事に取り組んでいるのかをわかってもらうために、自社の方向性を伝えるのだ。

 

自社の交渉相手についてたずねられることはある。

何気ない会話の体裁で聞かれると、ごまかすのも気が引けてしまうだろう。

そこで、そうしたときに使う魔法の言葉をお伝えする。

それは「ご想像のとおり、すばらしい会社からお声がけをいただいています」だ。

これには気まずい空気にならずにすむ以上の効果がある。

質問した相手に、駆け引きに気づいているとほのめかすことができるのだ。

おそらくそれ以上は追究されないだろう。

 

経営するための秘訣

エイミーから学ぶ自己資本で経営するための 5つの秘訣

1自社のプロダクトに惚れ込んでくれる潜在顧客を見つける。「これができないと、おそらく別のビジネスを探すことになる」。

2顧客の要望だけではなく、顧客が喜んで支払うものを知るために、顧客との距離を近くする。「顧客が渋々支払うようなプロダクトに長い時間をかけてはいけない」。

3海外の開発業者を使うとコストを下げられることを知っておいたほうがいい。このことは、その土地について知っていれば役に立つ。メダリアはノルウェー(ボルゲの出身地)とアルゼンチン(エンジニアの責任者の出身地)のチームと仕事をした。

4海外に発注するときには、特にグーグルやフェイスブックといった巨大企業との競合も視野に入れておく。費用の面では大企業に太刀打ちできないが、提示する仕事の質では張り合うことができる。大企業の仕事では、海外の開発者におもしろいプロジェクトがまわってくることは少ない。しかし、あなたの会社では、彼・彼女らは主要となる業務に欠かせないだろう。

5現地採用するときには工夫をする。メダリアは、出産後に復職する女性、退役軍人、大学院留学生の配偶者(就労許可が与えられることが多い)のなかからすばらしい人材を発掘した。

 

人は人からものを買う

VMウェアの従業員数を200人から2万人に、売上を4000万ドルから100倍となる40億ドルまで伸ばしたカール・エッシェンバッハの言葉を紹介する。

「顧客には説得力と自信をもって、『いいですか、いまは実施するリソースがそれほどたくさんはありません。これに関心を示す顧客がかなりたくさんいるので、いちばん重要なところにしか提供できないのです。もし真剣にお考えでないようでしたら、それでかまいません。後日またおたずねします』と伝える」。

 

企業文化

自社の企業文化は、特に上司がいないときに社員に求められるふるまい方になる。

 

「カウボーイになりたがる人はなんでも自分でやりたがるが、そうした人物は生き残れないだろう。ヒーローになろうとして何もかも自分でやると、チームに影響を与えられない」。

スタートアップが成功するには、全員が一丸となって同じ方向を向かなくてはならない。

しかし、これには2つの側面があり、ときに誰もが協力するのをいとわず、ときに助けてもらうのをいとわないことが必要になる。

 

1on1

たいていのマネージャーは直属の部下と定例報告会議を開く(1対1の面談あるいは省略して「1:1」と呼ばれることが多い)。

だが、ズオラのティエン・ツォはこれをしないそうだ。絶対にしない。

くり返そう。時価総額30億ドルの企業の創業者兼CEOは、上級管理職との1対1の定例面談をおこなわない。

そうしたミーティングをおこなうと、すぐに週の80%の時間が埋まってしまうが、それは誰にとっても有意義な時間の使い方ではない。

ティエンはそう判断した。

 

「私は幹部たちに『私の力を借りたいなら電話をするように。私もそうするから』とだけ伝えた」。

これは実に理にかなっている。

すばらしい人材を雇ったら、彼・彼女らがグループをしっかり運営してくれると信頼すればいい。

さらに、ティエンが言うには、このやり方のおかげでズオラはずっと効率的になったという。

1対1で面談するシステムだと、結局いわゆる「ハブ・アンド・スポーク」方式で問題の解決にあたることになる。

そうすると、「リーダーたちが自分で問題に取り組まず、すべてを創業者に持ちこむようになる」とティエンは言う。

 

人事

肩書きに値しない人物を昇進させるたびに、チームのほかのメンバーには気づかれる。

すると彼・彼女らも、それだけの資格がないのに同じように昇進を期待する。

同じように昇進させられない場合、自社の企業文化に疑問をもたれてしまう。

大事なのは本当に能力なのだろうか?

えこひいきのようなものがあるのではないだろうか?

困ったあげく、結局、彼・彼女らも昇進させてしまうかもしれない。

そうすれば、辞められずにすむからだ。

気がついたときには、凡庸な上級管理職のいるチームができあがる。

こうした短期的な決断は外部にも波及する。

並の人材にポストを与えると、一流の人材を雇用できなくなる。

優れた人材は凡庸な人の下で働きたくないからだ(ましてや三流の上司などもってのほかだ)。

さえない人物にポストを与えると、本質的に組織全体をだめにしてしまう。

それによって資金調達にも支障が出る。

資金調達の資料には、経営幹部のリストも含まれている。

そのリストに凡庸な人材がいると危険だ。

投資家はチームに投資するので、投資を見おくられてしまうかもしれない。

 

チーム運営

社員に権限を与える

インテグレートでは、社員は全員「自分の仕事のCEO」と見なされる。

「いつも自分たちより聡明な人材を採用し、どうしたらいいか教えを乞う」とジェレミーは語る。

社員は自分の職務を自由に進められる。

たとえそれで大失敗することがあるとしてもかまわない。

「失敗してもいいんだ」なぜなら、それはリーダーを育てる過程の一部だからだ。

 

社員に質問をして、問題を解決できるようにする

ある社員が苦労している仕事のやり方を知っていたとしても、まずは質問することからはじめたほうがいい。

教えてもらうよりもみずから思いついた場合、社員はそのやり方に全力で取り組む。

さらに、上司が提案しようとしていた方法より優れた方法を思いつくこともある。

 

このやり方で管理できるマネージャーや幹部を採用する

「これがおもな採用の基準になる」とジェレミーは言う。

「応募者があまりに尊大だったり、かなり細かいことまで管理しそうだったりする感じがしたら、採用を見送る」。

 

4本の柱

会社を機能させる4本の柱とは、人材、システム、プロセス、データである。

どんな規模でも、どんな課題やチャンスが目の前にあっても、会社の成長にともなって、これらをアップグレードしなくてはならない。

 

この4つの要素のうち最も対処するのが大変なのが「人材」である。

特に、自分の仕事に対応できなくなった社員だ。

これはたいてい、会社の成長にともない、仕事が手に負えないほど大きくなったことが原因になる。

 

管理職が困りはじめる以下の兆候に注意する。

・チームの仕事の質が下がりだしたとき

・ほかのグループに比べて離職率が上がったとき(こうしたことがたびたび起こるのはリーダーが社員の昇進のために監督したり教育したりする方法を知らなかったり、さらに悪いことには、社員を支配したり細かいところまで管理したりするからだ)

・その社員のまわりに、ほかの社員がいるようになったとき

 

大事なのはお金

特に大事な仕事が1つある。

これに失敗したら、ほかのものなど問題ではなくなる仕事だ。

その仕事とは、資金を切らさないことである。

 

創業者やCEOとして何より大事な仕事は、絶対に資金を絶やさないことだ。

それを最優先にして決断をする。

とにかく、金を切らしてはいけない。

 

ピボット

次の船に飛び移るのが早いほど、沈まずにすむ可能性が高くなる。

 

取締役会

役員たちは、創業者ができるだけ最善の決断をできるよう、最も役立つかたちで専門的な知恵を貸してくれる戦略的パートナーである。

 

友人を採用しない

必要なのは、厳しい質問をして、容赦ない意見が返ってくる人材だ。

 

仲の悪い2人を迎えない

取締役会の役員候補が既存の役員と問題がないか、よく調べること。

役員同士の緊張はデメリットが大きい。

 

難しい議論をしたがらない人は避ける

取締役会にとても聡明な人を迎えることもできるが、率直に話してくれないようなら、あまり役に立たない。

 

上場の準備

準備ができているかは以下でわかる。

重要な経験則だと、上場に先駆けて少なくとも4四半期(推奨するのは8四半期)の「上場企業のような運営」実績があるほうがいい。

こうすると、今後の数四半期の重要な測定基準(収益、粗利、キャッシュフロー、収益性など)を正確に予測できるようになる。

これをマスターし、有言実行しなくてはならない。

 

上場すると、大半の企業は、次の四半期や次年度の数字の見通しといった業績予想を金融市場に提示するからだ。

金融市場から信頼されるには、企業は通常、16四半期(4年!)のあいだ一貫して正確な予測をおこなわなくてはならない。

どうしてこれが重要なのだろうか?

それは、どれほど順調でも、何かしら問題が起こるのは避けられず、予測が外れるからだ。

 

面白かったポイント

面白いが、内容が若干抽象的かな。

創業からIPOまでの道のりを1冊の本にまとめるのは容易ではない。

原理原則はメモするなりして、定期的にチェックするのが有効に活用する方法だと思う。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆

 

目次

第1章 起業家になるべきか?
第2章 アイデア
第3章 チーム
第4章 資金調達
第5章 営業
第6章 企業文化
第7章 リーダーシップ
第8章 成長
第9章 大失敗
第10章 自己管理
第11章 取締役会
第12章 上場
第13章 その先へ

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