内容
学習にとって重要なのは、子どもが教師の能力を信頼していることだ。
たとえその教師が嫌われていても、生徒から有能だと認められていれば、そのクラスは習得度がもっとも高かった。
私たちは、相手にどの程度の利用価値があるかを(無意識に)見積もっている。
どれほど親切でも、なんの権力ももたず、たいした能力もない相手はほとんど役に立たないのだ。
①日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない
②日本人の3分の1以上が小学校3~4年生以下の数的思考力しかない
③パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない
④65歳以下の日本の労働力人口のうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない
さらに驚くのは、この惨憺たる結果にもかかわらず、すべての分野で日本人の成績は先進国で1位だったことだ。
OECDの平均をもとにPIAACの結果を要約すると、次のようになる。
①先進国の成人の約半分(48・8%)はかんたんな文章が読めない
②先進国の成人の半分以上(52%)は小学校3~4年生以下の数的思考力しかない
③先進国の成人のうち、パソコンを使った基本的な仕事ができるのは20人に1人(5・8%)しかいない
行動遺伝学を語るときに欠かせないのが、2000年に行動遺伝学者エリック・タークハイマーが発表した「3原則」だ。
第1原則 ヒトの行動特性はすべて遺伝的である
第2原則 同じ家族で育てられた影響は遺伝子の影響より小さい
第3原則 複雑なヒトの行動特性のばらつきのかなりの部分が遺伝子や家族では説明できない
行動遺伝学がしばしば「遺伝決定論」だと誤解されるのは、第1原則(遺伝の影響は広範に及んでいる)と第2原則(子育ての影響とされているものの多くは親から子への遺伝である)しか見ていないからだ。
より重要なのは第3原則で、「個性(わたしらしさ)には遺伝と子育て以外のなにかが強く影響している」とする。
この〝なにか(ファクターX)〟が「非共有環境」だ。
行動遺伝学では、「こころ」を「遺伝率+共有環境+非共有環境」で説明する。
遺伝率は外見、性格、精神疾患などのさまざまなばらつき(分散)を遺伝要因でどれだけ説明できるかの指標で、身長や体重ではおよそ70~80%になる。
共有環境は「きょうだいが同じ影響を受ける環境」のことで、一般には家庭環境(子育て)とされている。
非共有環境は、当初は遺伝率と共有環境で説明できない「測定誤差」とされていたが、その値がきわめて大きいために「きょうだいが異なる影響を受ける環境」と定義し直された。
家庭内の非共有環境としては、「家族構成(生まれ順、性差)」「きょうだい関係(きょうだいへの嫉妬)」「子育て(子どもへの愛情のちがい)」などがあるが、きょうだいで親の接し方が異なるのは子どもの遺伝的特性によるかもしれない(手のかからない子どもにはやさしくし、手のかかる子どもはきびしくしつける)。
一方、家族外の非共有環境としては「学校や地元の友だち集団」「教師」「ソーシャルメディア」など一人ひとりが異なる体験をする環境が考えられる。
そのなかでももっとも影響力の大きいのがピアグループ(友だち集団)で、発達心理学者のジュディス・リッチ・ハリスは、子どもの人格形成に決定的なのは「友だち集団内の地位争い(キャラづくり)」だと述べて、「子育ての努力に意味はないのか」との論争を巻き起こした。
近年、知能の遺伝率は幼少期では相対的に低く、思春期に向かうほど遺伝的な影響が増していくことがわかってきた。
アメリカで「就学前教育」に大きな注目が集まったのはこのためで、逆にいえば、「学力に関しては、小学校に上がってからはなにをしてもムダ」ということだ。
トランプでもマージャンでも、手札や配牌を見ない状態で決めたルールがもっとも公正で、自分の手が有利か不利かを知ったうえで主張されたルールが不正であることは誰もが同意するはずだ。
面白かったポイント
面白い読み物
満足感を五段階評価
☆☆☆☆