モビリティX

ビジネス

『モビリティX』木村将之

更新日:

内容

13年に出されたモルガンスタンレーの分析によると、将来の車の価値の大部分はソフトウエアとハードウエアに二分されると想定され、ソフトウエアの市場は車体販売の市場の1・ 5倍に到達するといわれている。

また、2030年には米国で3000万台のコネクテッドカーが登場し、800億ドルのサービス市場が生まれるとも予測されている。

 

もはや移動しなくてはならないという状況から解放され、車という様々な体験を演出する特別な空間に「移動がついてきている」と考えてもいい。

第一の目的が移動ではなく、移動中にどのような時間を過ごすかに変わる可能性すらある。

車体自体が、仕事をするための車、エンタメやショッピングを楽しむ車というふうに細分化するかもしれない。

目的に応じた車が誕生することを考えると、様々なアプリケーションやコンテンツを提供できるVRやガラスのディスプレーといったハードウエア設備が装備されることになるだろう。

また、車内に様々な家電が持ち込まれ、家に近い生活環境を提供することも考えられる。

 

オンスター

GMは96年より「OnStar(オンスター)」というコネクテッドプラットフォームを展開している。

オンスターは、GMとElectronic Data Systems(EDS)、それから衛星放送のDirecTV(ディレクTV)の開発元でもあったHughes Electronics Corporation(HEC)の3社の協力で設立された。

GMは車両の設計と統合、数百万台の車両流通システムに関する技術を、EDSはシステム開発、情報管理、顧客サービスなどの関連する技術を、HECは通信、衛星技術、自動車エレクトロニクスに関する技術をそれぞれ提供した。これにより、例えば96年に業界初の埋め込みテレマティクスシステムとして、自動車の中のエアバッグが開いた時に検知し、関連各所に連絡、直接現場に支援を送れるシステムを開発し、以来20年超にわたってドライバーの安全を守ってきている。

現在でもオンスターは月額29・99ドルの「セーフティー&セキュリティー」プランでサービスを随時追加している。

家族全員が位置情報を共有できる機能や、衝突時に事故検知すると自動でロードアシスタンスを呼び出せる機能、車両の盗難防止機能などだ。

これらの機能はモバイルアプリの「OnStar Guardian(オンスターガーディアン)」を通じて提供されており、顧客はどこからでも、どの車からでも、このオンスターのサービスにアクセスできる。

 

すべての車両がデフォルトでコネクテッド化され、GMが顧客データの収集・分析、データに基づいた新たな体験の構築を行える基盤を築いたといえる。

GMのシニアバイスプレジデントであるアラン・ウェクスラーによると、魅力的なサービスを適切に組み合わせれば、顧客はコネクテッドサービスに月額135ドルを費やすとの試算がされている。

 

OS

17年にはグーグルから車載インフォテインメント向けOSであるアンドロイドオートモーティブOSが発表され、ボルボへの採用が決まった。

その後もアウディやBMWといった自動車メーカーにも採用が広がり、今後圧倒的なシェアを予想する調査会社も出てきた。

 

ロボタクシーサービスでの体験を考える。

ロボタクシーサービスにおいては、顧客は運転から解放され自由に時間を過ごすことになるので、グーグルの基本アプリを車内で使えること自体、継続性が生まれ便利に感じる。

さらなる乗車体験をつくるうえでポイントになるのが、顧客が「いつ」「なぜ」「どのような状況で」移動したいのかという、移動デマンドの取得である。

グーグルは移動検索におけるシェア70%超を誇るグーグルマップにより移動の入り口をおさえている。

A地点からB地点への移動ニーズがグーグルマップに記憶されているわけである。

どこからどこに移動したいというニーズに、グーグルアカウントから得られる生活情報を加えて、顧客の移動目的、環境を把握することができる。

 

シェルは、車のオンラインメンテナンスの米Spiffy(スピッフィー)、車の所有者と修理業者をマッチングする英WhoCanFixMyCar(フーキャンフィックスマイカー)、フリート向けオンラインロードサービスの蘭TRAVIS(トラビス)、車の損傷の画像診断サービスを手掛けるイスラエルのRabin(ラビン)などに出資をしている。

 

様々な生活データを持つ企業とオープンに連携することに加え、例えば車内環境の開発においても、家電メーカー、家具メーカー、アパレルメーカー、スポーツメーカー、スポーツスクール、ゲーム企業などと組んでみてはどうだろうか。

 

面白かったポイント

シリコンバレーのモビリティ事情をまとめてくれているが、個人的には若干薄い内容か。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆

 

目次

序章 モビリティ産業を襲うDX、SXの荒波

Chapter 1 DXの誤解と本質 ~顧客体験から目をそらすな~
1 シリコンバレーで感じた「日本」のはがゆさ
2 「移動の価値」を再定義するウーバー
3 モビリティの体験価値を根本から変えたテスラ

Chapter 2 「CASE」の先にあるビジネスモデル変革
1 自動車業界でこれから起こる「価値の移動」
2 新たなビジネスモデルに挑戦するGMに学ぶ
3 グーグルも狙う「ロボタクシー」という新市場

Chapter 3 SXの誤解と本質 ~新しい企業価値のつくり方~
1 もはや不可逆な「脱炭素」という新潮流
2 変わる消費者、SX時代に愛される体験価値
3 世界の自動車メーカーは脱炭素にどう向き合うのか
4 モビリティ領域の覇権狙うエネルギー産業という「伏兵」

Chapter 4 「モビリティX」の先駆け、テスラの全貌
1 なぜテスラは「EVの覇者」になれたのか
2 テスラの“本命”がエネルギー産業である理由
3 異業種融合を進めるテスラの脅威とビジネスインパクト

Chapter 5 アマゾンが狙うモビリティ産業のゲームチェンジ
1 アマゾンから学ぶ「顧客体験価値」のつくり方
2 「モノの移動」を制すアマゾンのモビリティ戦略
3 「強い物流」をテコにヘルスケア業界も飲み込む
【Column】脱炭素化も業界をリードするアマゾン

Chapter 6 モビリティ産業の未来と日本の戦い方
1 モビリティX時代に求められる4つのアプローチ
① 「デザイン思考」「データドリブン」による体験価値創出
② 顧客の価値観の変化に寄り添うサステナビリティー変革
③ 中長期視点による「要素クロス」アプローチ
ファンクション産業と融合した新たな価値創出
2 グローバル市場で日本企業らしく戦うための秘訣
① 強みの製造品質を生かしてオペレーションコスト低減で勝つ
② 協調による異業種融合で日本流のモビリティXを
③ 高齢化社会をチャンスに変えて分散化時代の主権を狙う
④ グローバルなルール作りに入り込み、戦略的に迎え撃つ
3 シリコンバレーで学んだ企業を越えた個人連携の必要性

おわりに 「できない理由」はない。未来を切り開く日本へ「原点回帰」せよ

-ビジネス

Copyright© まさたい , 2025 All Rights Reserved.