女子大生、オナホを売る。

ビジネス

『女子大生、オナホを売る。』神山 理子

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内容

勝率を上げる

購入理由が曖昧な顧客に対して、購入理由が明確になるような「コンセプト力の高い商品」を用意することで、新規参入商品でも優位性が高くなり、勝率が上がるのです。

 

新規参入でも勝率をさらに高めるためには、「買う側がちょっと冒険したくなる市場」を選ぶのも重要です。

「失敗してもいいから、面白そうなこの新商品を試してみよう」と顧客が少し冒険したくなるような商品ジャンルは、コンセプト力の高い新規商品との相性が良いでしょう。

 

さらに、「欲求が深い市場」であればなお良いです。

人間の三大欲求といえば「食欲」「睡眠欲」「性欲」ですが、現代ではそれら以上に「承認欲求」の欲求レベルの高まりを感じます。

「モテたい」「他者から〝成功している〟と思われ、尊敬されたい」「バカにしてきた人を見返したい」などの欲求は、広告でもよく見る訴求なだけあって、現代人を魅了する言葉なのです。

 

また最近では、「他者から承認されたい」という欲求から派生して「自分で自分を承認したい」という欲求も生まれてきています。

今流行っている言葉に置き換えるとすれば、「自己肯定感」でしょうか。

「他者からの肯定に依存するより、自分で自分のご機嫌を取れるほうが、自立していて良い」という認識は、間違いなく昔よりも強くなっているでしょう。

つまり、「食欲」「睡眠欲」「性欲」に加えて、「他者承認欲求」「自己承認欲求(自己肯定感)」は、現代人に向けての訴求として、かなり深い欲求であり、市場規模や客単価が上がりやすい傾向にあります。

 

「決済者と受益者が異なる市場」も狙い目です。

簡単にいえば「お金を払う人と、利益を受ける人が異なる市場」、専門用語を使うならば「一次顧客と二次顧客が存在する市場」です。

例えば、塾市場やギフト市場が挙げられます。

塾に通うのは子供ですが、お金を払うのは親です。

ギフトも、受け取る人とお金を払う人は異なります。

自分が受益者であれば、「ここまで高くなくてもいいかな」と、価格と受益額のバランス(いわゆる「コストパフォーマンス」)を考慮しながら、購入に妥協が生じます。

しかし、自分の子供の将来がかかっていたり、人へのお祝いという相手へのリスペクトを表現する場面になったりすると、購入動機として「安さ」の優先度が下がります。

結果的に客単価が上がり、利益率の高い事業になります。

 

「人よりもめちゃくちゃ好き」という狂った熱量は、事業を伸ばす上で想像以上に強い武器になります。

ここで重要なのは人よりも〝めちゃくちゃ〟好きということです。

「人並みに好き」程度では強みにならず、人がついていけないくらい狂ったように好きで初めて、競合と戦える武器になります。

 

事業が伸び始めると、参入障壁を突破してくる(模倣する)企業が現れるため、事業考案段階でそのリスクヘッジも同時に考える必要があります。

ベンチャー企業が市場開拓をし終わったタイミングで、大手が参入して資本力で殴られて全滅なんてこともあります。

 

オペレーションコストを少しでも減らすため、製造過程が単純で、製造難易度が低い領域だとさらに参入しやすいでしょう。

また「商売の基本は、安い値段で仕入れて高く売る」と言われているくらい、高価格で売り出しやすいかどうかは重要です。

より厳密に言うならば、「高い値段で売っていても違和感がない」ということです。

 

良いコンセプト

良いコンセプトとは、「良いインサイトに突き刺している」ということです。

そして「良いインサイトの発掘」とは、簡単にいえば「顧客の気持ちを、顧客以上に理解して、彼らすらも気づいていない悩みを代わりに見つけてあげること」です。

そして、彼らすら気づいていない悩みに対して、「先回りして解決策を提供する」のがコンセプトであり、事業です。

 

1.彼らにとって、理想の状態は何か。本当はどうなりたいのか。

2.その理想状態を実現するための、彼らの表面的な欲求は何か。

3.2に対して、彼らが現状、自分で思いつくことができる解決策は何か。

4.3が解決できない理由は何か(これが〝本当の〟悩みになる)。

 

まずはターゲット顧客になりうる層をセグメントに振り分けて、「どういう人を探したらいいのか」を決定します。

セグメントの切り口は様々ですが、「市場に対しての理解が浅いので、とりあえず解像度を高めたい」という人は、商材に対して、

・これから買おうか検討している人

・現在も使っている人

・過去に使っていた人(現在は使用していない)

というふうに分けるのがおすすめです。

 

購入されるまでの流れ

顧客の視界に商品が入ってから購入されるまでの大きな流れは、「差別化 →期待 →確信」です。

 

まずはコンセプトを含んだ商品名で「この商品は、他の商品と違って私の悩みを解決してくれるかも?」と目にとめます(差別化)。

次に顧客が理想とする、ワクワクするゴールを含んだキャッチコピーで「この商品は私が理想とするゴールへと導いてくれるかもしれない」と使用後の未来にワクワクします(期待)。

ここまで来てやっと、顧客は長文の商品詳細を読む気になります。

そして商品詳細で、コンセプトや商品の説明、その根拠を読んで、「この商品は、他の商品では解決できない私の悩みを解決してくれて、私が理想とする、ワクワクするゴールへと導いてくれる!」と信頼します(確信)。

 

キャッチコピーは、顧客が購入を決断するまでの過程でしかありません。

キャッチコピーのゴールは、「その商品がターゲットとする顧客に商品詳細を読んでもらうように繋げること」です。

 

自分の購買行動を把握して、徹底的に言語化するのもおすすめです。

自分が無意識に購入したものに対して「どうしてこれを買ったのか」を考え続けることで、消費者行動やカスタマージャーニーをより深く理解できるようになります。

 

ブランド

商品のラインナップを展開して、ブランド全体の方向性を形作っていきます。

細かくはデザインの統一感だったり、顧客体験の統一感だったり、様々なものが挙げられるでしょうが、その統一感の正体は「同じ課題(悩み)を解決しようとしている」ということにあると思います。

1つの抽象的な課題に対して、様々な解決策での商品ラインナップを展開することで、ブランドが形成されていきます。

 

フィールドワーク

他人の生活を実際に体験することで、調査を行う手法を「フィールドワーク」という。

その未知の体験の中で、これまで自分が気づかなかったインサイトを発見することは、人生を豊かにしてくれるはずだ。

 

面白かったポイント

マーケティング、主に商品企画の流れについてオナホという特徴的なジャンルで解説しているユニークな本。

内容は本質的で非常に勉強になると思う。

 

改めて気づかされるのは、戦う場所でビジネスの成功は決まるので、その場所を見つけるためにリサーチを惜しまず、ロジカルに導き出すことだと思う。

さらに、その導き出した結論も成功するのは10のうち1くらいだと認識した上で、事業を行うこと。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

目次

第1章【事業領域の選定方法 〜女子大生、オナホ領域を選ぶ〜】
1-1 クリエイティブで勝負が決まる領域を選ぶ~オナホとYOASOBIの共通点~
1-2 「少し冒険」でき「欲求が深い」領域を選ぶ~突き抜けたコンセプトで勝ち抜く~
1-3 「まだ解決されていない重大な悩み」が存在している領域を選ぶ~未解決の悩みに向き合う~
1-4 他社が参入しづらい領域を選ぶ~できるだけ競争しない~
1-5 製造コストが低く、高価格帯で売りやすい領域を選ぶ~流行りやイメージに左右されない~
1-6 信頼できる販売チャネルが存在する領域を選ぶ~参入初期は虎の威を借りる~
1-7 定番ブランドが存在していない領域を選ぶ~天下のTENGAに戦わずして勝つ方法~

第2章【成功のためのインサイト発掘方法 〜女子大生、オナホユーザーのインサイトを見つける〜】
2-1 思い込みを排除する~方向転換して音楽メディアを№1にした方法~
2-2 顧客の欲求を表にして捉える方法~本当の悩みが浮かび上がってくる~
2-3 顧客の本音を抉り取るインタビューの手順~準備から実行までの全行程~

第3章【売れる商品コンセプトの極意 〜女子大生、オナホを作る〜】
3-1 良いコンセプトとは何か?~まさにこんな商品が欲しかった!と言わせる方法~
3-2 売れる商品名」の付け方~商品名でコンセプトを伝える~
3-3 顧客を引き寄せるキャッチコピーの付け方~いかに顧客を期待させられるか?~
3-4 コンセプトの検証~既存商品と比較してなお欲しいと思ってもらえるか~

第4章【AmazonD2Cの制し方 〜女子大生、オナホを売る〜】
4-1 売れる商品名の設定方法〜悩み解決を期待できる名前になっているか?〜
4-2 売れるパッケージの作り方〜「とにかく目を引く」が最優先〜
4-3 広告の活用方法〜クリエイティブの良し悪しを見極めるための広告出稿〜
4-4 ヘビーユーザーへのマーケティング〜最強の味方を獲得しよう〜
4-5 さらにブランドのラインナップを展開する 〜1つの抽象的な悩みに様々な解決法を用意する〜

第5章【事業の売却 〜女子大生、D2C事業を売る〜】
5-1 起業家は適度に休んで、また立ち上がるが吉〜事業を継続していく上で大切なこと〜
5-2 事業売却の考え方~評価されているうちに売るという当たり前の話~
5-3 ネクストステージへ~新たな挑戦~

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