内容
目的
まずPurpose(パーパス)とは、その語源を見ると「前に置かれたもの」(pur「前に」+pose「置く」)を意味する。
ここでいう「前」は、いまよりも先の時点=将来と解釈ができるし、現状よりも高い価値を実現している状態とも解釈できる。
すなわちこれは、「より大きな価値を実現している将来の状態」という目的の第一の性質を照らしたものだ。
〝目的は未来像そのもの〟という考えは、ここから出てくる。
次に Objective(オブジェクティブ)は、Object(オブジェクト、対象)の単語からつくられる。
対象はターゲットとも言いかえられ、いわば「狙いとするもの」の意味合いだ。
何かを狙おうとするとき、そこには人の意図を伴うから、Objective(オブジェクティブ)は「意図を持って狙いとするところ」という目的の第二の性質を示している。
逆にいえば、人の意図を欠いた客観的な事実(ファクト)だけでは、目的は成り立たない。
最後にGoal(ゴール)は、その語源(古期英語におけるgol)にまで遡ると、「限度・リミット」を意味するという。
これはいわば「到達点」という目的の第三の性質を表したもので、マラソンのゴールがイメージに近い。
中継地点や通過点は、目的ではないということだ。
これら3つの性質を合わせ持って「目的」は成り立っている(図 1- 3)。
つまり目的とは、「新たな価値を実現するために目指す未来の到達点」のこと。
これが、目的の意味の中心だ。
目的は、「押さえておけばいいことがある」という半端な意識で済ませていいものではない。
「確実に押さえなければ仕事が体をなさなくなる」絶対的な要素、それが目的だ。
なぜなら目的を欠いてしまうと、次のような深刻な悪影響が発生するからだ。
①そもそも対処すべき問題が何か分からない
②何を優先すべきか・劣後すべきか判断できない
③的外れなアクションをとってしまう
④上司にも部下にも動機づけ・説得ができない
目的・目標・手段
[第一層]Why ……成し遂げるべき「目的」を頂点として、
[第二層]What……目的を成し遂げるために達成が必要な「目標」が続き、
[第三層]How ……目標の達成に必要な「手段」が基盤となって受け支える
このとき、目的はその体系の頂上に位置づけられる。
ここで注目すべきは、上から下に「どのように?」と見た場合と、下から上に「何のために?」と見た場合に、〈目的─目標─手段〉はいずれの方向でも一貫してつながっていることだ。
「どのように?」と「何のために?」で三層がそれぞれ互いにつながっていること──これが目的を果たし、仕事で確実に成果を生み出すための要諦だ。
目的は、バラバラな人々の集団を一つの組織として方向づける
組織の階層と対応して、目的もまた階層構造をとる
目的はまさしく多様な人々を包摂する共通軸としてはたらく。
逆にいえば、目的という共通軸による包摂(インクルージョン)があって初めて、本質的な多様性(ダイバーシティ)は可能になる。
そうでなければ組織は混沌の中でただ空中分解するか、空疎なお題目の多様性を唱えて終わるだけだ。
ビジネスの目的は〝階層構造〟をとる。
なぜなら、階層化された組織が一つの大きな〝問題解決機構〟そのものであるからだ。
組織において目的を設定するとき、自身の周辺に置かれる上位目的や下位目的を把握し、それらとの一貫性(つながり)を意識することが必要
上位目的と下位目的を一貫してつなげようとするとき、注意すべきは上位目的とあなたのチームの間には〝断絶〟があるということだ。
リーダーであるあなたは、上位目的を単なるお題目に終わらせないために、あなたのチームが動き出せるようそれを現場の言葉に「翻訳」する必要がある。
ここでいう「翻訳」とは、経営の意図をあなた自身がしっかりと咀嚼・腹落ちして理解し、それを現場に向けてあなた自身の言葉で説きなおすということだ。
それによってトップの意図がボトムに接続され、組織が全体として上下一貫した動きをとることができるようになる。
「目的を見つけよ、手段は後からついてくる」
上位目的を確認する際に合わせて理解しておくべきこととは何か。
それは、上位目的の裏側にある「背景」だ。
目標
目標は組織やチームに対して次の4つの効能を与える。
①抽象度の高い目的を実務に落とし込める
②有効な対応策を体系的に洗い出せる
③リソースの無駄遣いがなくなる
④達成と成長が実感できモチベーションが高まる
目標は目的をいくつかの部分に分けて具体化したものだ。
言いかえれば、「目標の設定」とは「目的の切り分け」に他ならない。
そのときに基本となる切り口が次の二つだ。
1構成要素への切り分け
2時間軸での切り分け
目的をその構成要素にブレークダウンをしたら、次はその要素に目指す達成水準を与える。
それには次の2つの視点から設定すればいい。
どの程度の水準を?(目標の高さ)
いつまでに?(目標の期限)
目標が適切な強度で設定されているかを判断するには、次の3つの視点が役に立つ。
①コンフォート:現状のチームが無理なく達成できる水準
②ストレッチ:チームの成長・新たな能力の構築が必要だが、達成不可能ではない水準
③パニック:チームを混乱に陥れる可能性のある、あまりに高い水準
ストーリー
実現の道筋に見向きもせず「目的」しか語れないなら、非現実的な夢想家の誹りは免れない。
将来の目指す姿も示さず「目標」ばかりを追及するなら、それはただの監視役だ。
どこに向かうかも分からず「手段」に没頭し続けるなら、それはリーダーではなく作業者である。
これらのいずれも、これから僕らが目指そうとするリーダーの姿ではない。
〈目的─目標─手段〉は相互につながってこそ意味をなすものだ。
個別の部分をつまみ食いするのではなく、その全体の筋道を語ること。
そうすることで、〈目的─目標─手段〉は現場をモチベートする〝活きたストーリー〟になる。
そんな活きたストーリーを語れる戦略的リーダーを、僕らは目指そう。
よい判断・わるい判断
一つは、「すべきことをする」よう適切な実行を促す判断だ。
たとえば、「顧客訪問の前に顧客ニーズの仮説を持つ」「製造現場の可視化を図り改善を加速させる」「プロジェクトで発生した課題をタイムリーにチーム間でヨコ連携する」といったこと。
これらの「すべきこと」を確実に「する」ことで、仕事において価値を生み出すことができる。
これは一言でいえば、「価値創出の判断」と呼ぶことができる。
もう一つのよい判断は、「すべきでないことをしない」よう間違った行為を止める判断だ。
これは、「損失回避の判断」と呼ぶことができる。
「目的があやふやなまま仕事を始める」「安全確認を怠って危険作業にあたる」「意思決定に関わる重要情報の正しさを確認しない」といった「すべきでないこと」を制止するためにも判断は必要になる。
もしこのようなすべきでないことを制止せずにそれが実際に発生してしまうと、仕事において広い意味での損失(よくないこと)が発生する。
それを回避するには、「すべきでないこと」はしっかり「やらない」と明示することだ。
一方で、「わるい判断」は「判断のミス」と「判断のモレ」の2種類がある。
一つめの「判断のミス」とは、「すべきでないことをする」という間違った行為を促してしまう判断だ。
たとえば事業が時流から外れ明らかに継続性がない状況で、「投資を続ける」と判断するのは判断のミスにあたる。
本来は事業に見切りをつけるべきところを先延ばしにしているという意味で、これはわるい判断だ。
また、二つめの「判断のモレ」とは、「すべきことをしない」という適切な行為を見落としてしまう判断だ。
たとえば、投資判断に関わる重要な財務データのダブルチェック指示を怠り、誤ったデータによって有望案件への投資が取りやめになってしまうことがこの場合だ。
これは、本来は享受できるはずの好機を逃し、機会損失を生んでしまう点でわるい判断といえる。
優れた判断
優れた判断=判断の〝質〟×判断の〝スピード〟
そもそも何のために「判断」するのかといえば、それは問題を解決するためであり、ひいては目的・目標を達成するためだ。
だからこそ、〝目的・目標の達成に貢献するかどうか〟それが判断の〝質〟を決める。
では、判断の〝質〟はどのようにして高めればよいのか。
鍵は、「判断軸」に何を据え置くかだ。
僕らが判断を下すとき、その裏にはそうと決めた考え方、元となる根拠が存在する。
判断の結果が判断軸に左右される以上、判断軸の良し悪しはそのまま判断の〝質〟に影響を与える。
だから判断力を高めるためには、まず「自分が何を判断軸として判断しているか」に自覚的になることが肝心だ。
「判断軸」はどのように設定すればよいか。
考え方の要点は次の2つだ。
①目的・目標から判断軸を引き出す
②判断軸に〝重み〟を与える
プロジェクトの品質
プロジェクトの品質・負荷に影響する要因としてどのようなものがあるだろうか。
ここでは、プロジェクトマネジメントにおいて「鉄の三角形」とも呼ばれる次の三大要因を参照しよう。
Scope(スコープ)……プロジェクトの検討対象・範囲
Resource(リソース)…プロジェクトに投入される人員規模
Time(タイム)…………プロジェクトにかけられる期間
これら三大要因によって、プロジェクトの負荷状況は大きく左右される。
スコープが広すぎる、リソースが少なすぎる、期間が短すぎるといったように、三角形の頂点のどれか一つがバランスを崩してしまうと、プロジェクト全体の負荷状況も高まってしまう。
無理なプロジェクト運営の帰結として、プロジェクトの品質も落としてしまうことになる。
結晶性知能
イギリスの心理学者レイモンド・キャッテルによれば、人間の知能は「流動性知能」と「結晶性知能」の2種類に分かれるという。
流動性知能はいわば頭の回転が速い秀才のイメージで、環境の変化に対してスピーディに複雑な推論や計算を行うことで適応していく能力のことだ。
それに対して、結晶性知能は深い知恵を湛えた賢人といったイメージで、豊富な知識や経験をもとに物事に対して深い洞察を与える能力のことだ。
奇しくも、これら2つの能力は優れた判断の条件である〝スピード〟と〝質〟にそのまま当てはまる。
高速の情報処理を担う流動性知能は〝スピード〟に対応し、深い洞察によって正しい判断を可能にする結晶性知能は判断の〝質〟を支えるものである。
優れた判断とは、人間の知能をフルに活用することが求められる高度な知的営為だということなのだろう。
最小労力で最大成果
真に恐れるべきは、目的や目標を見失いながら急かされるままに成果に結ばない仕事に労力を割き、人生の時間を無駄にしてしまうことだ。
一度立ち止まって目的を確認するその〝たった5分〟が仕事の全体に影響を及ぼすことによく注意しよう。
正しい行動をとるために行き先と方向性を確かめるその5分は、後の成果すべてに影響を与えるきわめて〝ハイレバレッジな時間〟だ。
面白かったポイント
よくあるコンサルのロジカルシンキングの本だと思ったが、非常にまとまっていてハイライトする所が多かった。
目的・目標・手段の一貫性は基本だが、意外とできていないことが多い。
結局、基本をやりきるのは大変だが、やりきると必ず成果が出るということ。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆
目次
第1章 まず、「目的」から始めよ
第2章 「目的」をどう設定するか
第3章 目的から「目標」への落とし方、そして実行へ
第4章 成果創出の「手段」とあらゆる仕事に通底する「5つの基本動作」
第5章 〈認知〉 最小の労力で最大の成果を出す「問題の見極め方」
第6章 〈判断〉 最良の結論に最速でたどりつく「判断の方法」
第7章 〈行動〉 無駄な動きなく最高の成果を得る「アクションの導き方」
第8章 〈予測〉未来の問題を先読みし先手を打つ「リスク予測法」
第9章 〈学習〉 既知から未知を知る「学びのレバレッジ法」
終章 新たな始まりに向かうための思考〈問い〉の地図