成長に投資して資本を築く(人的資本、社会資本、金融資本)

まさたい

抵抗勢力との向き合い方

ビジネス

『抵抗勢力との向き合い方』榊巻亮

更新日:

内容

抵抗のメカニズム

・現状維持バイアス

変化に対する強い動機や危機感がない場合、「まあ、今のままでいいか」と考えてしまう心理傾向を指す。

未知のものや未体験のものを受け入れず、現状は現状のままでいたいと、誰もが自然に考えてしまう。

 

・保有効果

自分が現在所有しているものに高い価値を感じ、それを手放すことに強い抵抗を感じてしまう心理効果のこと。

結果として新しいものを手にしたときに得られるメリットよりも、今、手にしているものを失うことによるデメリットを強く感じ取ってしまう。

「今のシステムを入れ替えるの?確かに使い勝手は相当悪いんだけど、愛着はあるんだよねえ。まあ、悪いところばかりでもなくてさ」。

こんなケースは保有効果が表れている。

 

・損失回避性(プロスペクト理論)

「利益」と「損失」では「損失」の方がより強く印象に残り、それを回避しようとする行動を取ること。

言い換えると「とにかく損はしたくない」ということだ。

新しいことにチャレンジして得られる「利益」と、被る可能性のある「損失」を比較すると、「損失」を重く捉える傾向にある。

そのため、「利益」が相当に大きくない限り、行動を起こせなくなる。

 

変革プロジェクトの3つの局面

変革プロジェクトは大きく分けて3つの局面が存在する。

「立ち上げ期」「計画策定期」「施策実行期」だ。

 

立ち上げ期:

プロジェクトが生み出され、人が集まり、本格的な活動に入る前までの時期を「立ち上げ期」と呼ぶ。

この時期はプロジェクトリーダーと、ごく少人数のプロジェクトメンバーが中心の活動になる。

 

計画策定期:

立ち上げ期が過ぎると、本格的に調査や分析、施策の検討など、実行計画を作っていく時期に入る。

これを「計画策定期」と呼ぶ。

この時期になると、プロジェクトチームだけでなく、一部の有識者や現場のキーパーソンを巻き込みながら検討を進めていくことになる。

 

施策実行期:

作成した実行計画が承認されると、施策を実行に移して運用に乗せ、成果を出していく時期に入る。

これを「施策実行期」と呼ぶ。

この時期は全社員が変革に巻き込まれることになり、爆発的に関係者が増える。

 

共有すべき情報

関係者に共有すべき情報は多岐にわたるが、例えば、以下のような内容は、どのプロジェクトでも必ず共有すべきものといえる。

・プロジェクトのゴール・コンセプト・必要性

・これまでの取り組みとの違い

・検討の進め方

・実施期間と体制

・真の問題やマズさ加減

・何が変わるのか

・何が今より良くなるのか

・何が今より大変になるのか

・懸念事項は何か

・今回、取り組まないことは何か

・意思決定のプロセス

 

抵抗への対応

表に出た抵抗に対しては、4つの段階を踏んで対応していかなければならない。

4つの段階とはこれだ。

(A)指摘や不満を“明らかに”すること

(B)方向性の不一致を解消すること

(C)進め方の不一致を解消すること

(D)客観的な判断力を取り戻してもらうこと

 

そもそも、なぜ批判が起こるのか。

批判は大きく分けて2つの“納得がいかない”によってもたらされる。

「プロジェクトの目指す方向性に納得がいかない」と「進め方に納得がいかない」の2つだ。

 

問題解決の6層構造

第1階層「現状」:

文字通り、今現在、何が起こっているのか、業務やシステム、顧客や従業員がどんな状況にあるのかを示す。

単なる事実であり、人の主観は入らない。

 

第2階層「課題」:

現状での困りごと、解決したいなと感じていることが課題になる。

または“現状と目指す姿との差”が課題という捉え方もできる。

 

第3階層「原因」:

課題が発生しているのはなぜなのか。

理由があり、背景があるはずだ。

これが原因になる。

 

第4階層「施策」:

課題を解消し、現状を目指す姿に近づけるための打ち手が施策になる。

通常、原因を踏まえたうえでないと、有効な施策が出せない。

また、目指す姿が見据えられていないと、表面的な改善にとどまりがちになり、本質的な施策が出せない。

 

第5階層「効果/投資/リスク」:

施策を実施しようとすると投資が必要になり、リスクも伴う。

また、得られる効果の大きさも施策ごとに異なる。

 

第6階層「目指す姿」:

施策によって現状が変わり、実現される状態が目指す姿になる(ただし、当面到達できない高みを目指す姿として設定することもある)。

 

「第1階層=現状」をそろえるために、3つの前提を合わせる

1.見ている事実

2.見ている範囲

3.見ている時間軸

 

行動に移せない原因

人がサボり、行動に移せない原因は、「頭」「心」「体」の3つに起因するものに大きく分けられる。

 

「頭」に起因するものとしては以下の2つが挙げられる。

1.そもそも何をすればいいのか理解できていない

2.しかるべき命令系統から指示がないため、自分がやるべきと理解していない

 

「心」に起因する問題はもう少し根深い。

頭では分かっているのだが、どうにも行動に移せない。

モチベーションがわかない、というのが「心」に起因する問題だ。

例えば、以下の4つが挙がってくる。

1.やることの「必要性」と「メリット」が理解できない

2.何らかの個人的な感情が邪魔をする(プロジェクトに対する印象や社内政治、個人的な人間関係など)

3.やることで何らかのデメリットが生まれる(ひと手間かかるとか)

4.やらなくても、何も困らない

 

「体」に起因する問題は比較的捉えやすい。

具体的には以下の2つだ。

1.時間が足りない(他にやることがあり、優先順位を上げられないなど)

2.やるだけの能力がない(知識不足やスキル不足など)

 

プロジェクト立ち上げ期の消極的な反応

・トップダウンでやることは決まったけれども、プロジェクトメンバーは何だかシラけている

・システム部門が変革の必要性を感じて現場を巻き込もうとするが、「そっちで決めてくれ」と言われる

・過去に何度か変革プロジェクトが不発に終わっており、「どうせ騒ぐだけ騒いで、今回も何も変わらないんだろう」と言われる

・「現業が忙しくて」という言い訳を盾に、優秀な人材をプロジェクトに割り当ててくれない

・「何だか大変そう、残業が増えちゃうな」と、プロジェクトメンバーの腰が引けている

 

立ち上げ期にすべきことは以下の3つだ。

1.納得度が高いプロジェクトゴールを定める

2.プロジェクトチームの熱量を上げる

3.経営陣を味方に付ける

 

素朴な疑問

我々が頭を切り替えてもらうためによく使う、定番の問いがあるので紹介しよう。

以下のような問いを投げかけながら、より効果的な「素朴な疑問」を探していく。

・プロジェクトに対して感じていることは何か?

・この取り組みで達成したいことは何か?

・モヤモヤしていることは何か?

・気に入らないことは何か?

・懸念点は何か?

ポジティブな話もネガティブな話も、洗いざらい思いをぶちまけてもらう。

 

プロジェクトゴール

最も重要なことは「ゴール、コンセプト、必然性」の3要素を意識すること。

ゴールを意識しないプロジェクトは今では減ってきたが、意義・目的や必要性を語るにはゴールだけでは不十分だ。

ゴールは「いつまでに何をするか?」しか示さないからである。

 

そこで以下の3つの軸が必要になる。

ゴール:いつまでに何を達成するのか?

コンセプト:ゴールの達成時に、どんな状況を作り出すのか?

必要性:なぜ、ゴール達成、コンセプト達成が必要なのか?

色々な軸を試したが、この3軸が最もバランスが良い。

 

心理的安全性

影響を与えていたのは、ただ1つ。

休憩中の会話の「活発度」だった。

休憩中の身体運動(≒コミュニケーション)が活発な日は受注率が高く、そうではない日は低いことが分かったのだ。

試しに同世代の4人チームで休憩させるようにしたところ、成約率が13%も向上したという。

 

参加者から発信する場を設ければいい。

私たちが必ずキックオフのアジェンダに組み込むのが「期待値の交換」である。

メンバー1人ひとりにこんなことを話してもらうようにしている。

・プロジェクトで何を達成したいか?

・プロジェクトの肝は何だと思っているか?

・どんなプロジェクトにしたいか?

・プロジェクトでどんな経験を積みたいか?

・不安、懸念は何か?

・周りのメンバーに期待することは何か?

・プロジェクトオーナーに期待することは何か?

これらを総じて「期待値」と呼んでいる。

これらをお互いに表明して交換するのだ。

人数が多い場合は紙に書き出してもらい、壁に貼ってみんなで眺めることもある。

 

素早くノーミング状態にたどり着くことを目的に、「自分の強みと弱み」「好きなことと嫌いなこと」などをぶっちゃけて話し合う場を設けるようにしている。

これがノーミングセッションだ。

キックオフとは別に比較的少人数のメンバーでやることが多いのだが、これがいい。

自分のパーソナルな部分をさらけ出してしまうことで「受け入れてもらえる」感覚が生まれる。

これが心理的安全性の確保につながる。

 

経営陣

経営陣にしかできないことは以下のようなものだ。

(1)関係部署と交渉して人材を確保する

(2)予算を確保する

(3)現場に働きかけ、影響を与える

(4)他の幹部に働きかけ、影響を与える

(5)何が正解か分からない問いに、経営判断を下す

 

経営陣が知りたい「本質的な部分」は以下のようなことだ。

(1)結局、何が悪くて、将来どう変わるのか?

(2)どんな施策を打つのか?

(3)投資対効果は出るのか?

(4)何のために、何を目指す取り組みなのか?

(5)根本的な問題は何だったのか?根治治療はできるのか?

(6)進めるうえでのリスクは何か?

(7)やっているメンバーはどう感じているのか?

(8)今回のプロジェクトで初めて分かったことは何か?

 

面白かったポイント

良書。

プロジェクト管理のコミュニケーションマネジメントがよくまとまっている。

プロジェクト前、問題発生時には読み返して、どういう手を打つべきなのかリマインドしたい。

重要なのは納得感のあるゴール設定と適切なコミュニケーションの仕掛けがプロジェクトの成功のカギになる。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

目次

-ビジネス

Copyright© まさたい , 2025 All Rights Reserved.