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『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』アダム・グラント

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内容

オリジナリティ

最低所得者層は一貫して、最高所得者層よりも「現状を支持する傾向がある」

オリジナリティの最たるポイントは、「既存のもの」を疑い、よりよい選択肢を探すことだ。

「成果をあげたいという欲求が中程度を超えると、創造性が低下するということが実証されている」

 

リスクレベル

本業を続けた起業家は、やめた起業家よりも失敗の確率が三三パーセント低かったのだ。

リスクを嫌い、アイデアの実現可能性に疑問をもっている人が起こした会社のほうが、存続する可能性が高い。

そして、大胆なギャンブラーが起こした会社のほうがずっともろいのである。

 

ある分野で危険な行動をとろうとするのなら、別の分野では慎重に行動することによって全体的なリスクのレベルを弱めようとする。

ある分野において安心感があると、別の分野でオリジナリティを発揮する自由が生まれるというメリット

 

「もっとも優れた起業家は、あらゆるリスクを冒そうという人ではありません。リスクテーキングからリスクをとり除こうとする人です」

成功を収めるオリジナルな人は、ある部分で大きなリスクを冒しつつ、別の部分ではことさら慎重になることでバランスをとっているのだ。

 

傑作を生み出す

創作者がみずからのアイデアを適切に評価できないとすれば、傑作を生み出す可能性はどうすれば高められるのだろうか?

その方法とはズバリ、「多くのアイデアを生み出すこと」だ。

サイモントンの研究によると、ある分野における天才的な創作者は、同じ分野にとり組む他の人たちよりも、とくに創作の質が優れているわけではない、という。

 

ただ、大量に創作すると、多様な作品が生まれ、オリジナリティの高いものができる確率が高くなるのだ。

「マイナーな製品がもっとも多く創作された期間は、メジャーな作品がもっとも多く創作された期間と同時期であることが多い」

 

自分のアイデアを適切に評価できるようになるには、何より他者からの評価を収集することだ。

とにかくたくさんのアイデアを提示し、どれがいちばんウケるのかを見てみる。

 

オリジナリティを正確に評価するには、自分自身で判断しようとしたり、上司に意見を求めたりするのではなく、同じ分野の仲間の意見をもっと求めていくべき。

多くのパフォーマーにとって、同業者からの称賛が何よりも重要という理由が説明できる。

 

豊富な経験

「幅広い経験」と「深い経験」が独特に組み合わさることで、創造性は発揮される。

 

もっとも創造的なコレクションは、ディレクターの海外経験がもっとも豊富なブランドのものであったが、とくに興味深い点が三つある。

一つ目は、海外に「住んだ」時間は関係なく、海外で活動的にデザインにたずさわり「仕事をした」経験が、新しいコレクションがヒットするかどうかの指標となったという点だ。

オリジナリティのもっとも高いコレクションは、二カ国または三カ国で仕事をした経験のあるディレクターのものだった。

 

二つ目は、接した外国の文化が自国のものとかけ離れているほど、その経験がディレクターの創造性に与える影響が大きかったという点だ。

アメリカ人が韓国や日本での経験から得られたオリジナリティと比較すると、アメリカ人がカナダで働いた経験で得たものは少なかった。

しかし、単に文化の異なる複数の国で働くというだけでは十分ではなかった。

 

三つ目の点にしてもっとも重要だったのは、「経験の深度」であった。

つまり、どのぐらい長く海外で仕事をしたかが重要だったのだ。

短いあいだ仕事をしただけでは、得るものはほとんどなかった。

外国の文化から得た新しい概念を自分のものとしてとり入れ、古い考えと組み合わせるには時間が足りないからである。

もっともオリジナリティが高いとされたコレクションは、海外勤務経験が三五年あるディレクターのものだった。

 

直感は、自分の経験が豊富にある分野においてのみ正しい。

 

弱点を出す

第一に、弱点を前面に出すと、聞き手の警戒心がやわらぐという利点がある。

マーケティングの教授であるマリアン・フリースタッドとピーター・ライトは、誰かが自分を説得しようとしていると感じると、心理的に自然と身構えてしまうということを見いだしている。

話し手が自信に満ちているときはとくに危険だ──相手の影響力からみずからを守らねば、とバリアを張る。

 

「悲観的なことをいう人は、頭がよく見識があるように見られる」と、アマビールは書き記している。

「一方で、肯定的な発言をする人は、世間知らずの楽天家だと見なされる」

アイデアの欠点を示しながら意見を通すことの第二の利点はここにある。

つまり、そうすることで、自分を理知的に見せられるのだ。

 

欠点を正直に伝えることの第三の利点は、信頼性が増すことだ。

会社が直面している問題を説明したことで、グリスコムは知識が豊かだと思われただけではなく、正直で謙虚な人物だという印象も与えた。

もちろん、聞き手がまだこちらの弱点を認識していない場合には、それを大っぴらにすることが裏目に出る場合もある。

アイデアをつぶす材料になるからだ。

 

ネガティブな点を示すことで、皮肉にも相手がネガティブな点を思いつきにくくなる。

 

単純接触効果

「単純接触効果」は、あちこちでくり返し生じている現象だ。

顔にしろ、文字にしろ、数字にしろ、音にしろ、味にしろ、ブランドにしろ、漢字にしろ、なじみになるほど好きになる。

これは文化や人種を問わず共通しており、ヒヨコでさえもなじみのものを好むのだ。

 

ある考え方に一〇~二〇回くり返し触れると、好感度は上昇し続ける。

 

問題の対処法

何十年もの研究の結果、不満の対象が仕事であっても、婚姻関係であっても、政府であっても、対処法は「離脱」「発言」「粘り」「無視」の四パターンなのだ。

 

「離脱」とは、その状況から完全に身を引くことだ。

つらい仕事を辞めたり、暴力をふるうパートナーと別れたり、圧政を敷く国を去るなどだ。

 

「発言」とは、その状況を積極的に改善しようと行動することだ。

職場の環境を充実させるために上司に意見を述べたり、パートナーにカウンセリングをすすめたり、活動家になって腐敗のない政府を選挙で選ぼうとすることなどだ。

 

「粘り」とは、歯を食いしばって我慢することだ。

息の詰まるような仕事でも懸命にがんばるか、忠実にパートナーのそばに留まるか、政府に不満を抱きながらも現状を受け入れるなどだ。

 

「無視」とは、現状に留まるが、努力はしないことだ。

クビにならない程度に仕事をしたり、パートナーとの距離をとるために新たな趣味を見つけたり、投票に行かなかったりなどだ。

 

状況を変えるには、現実的な選択肢は「離脱するか」「発言するか」だけである。

私たちにできることは何かというと、声を上げつつ、リスク・ポートフォリオを安全に保ち、必要であれば立ち去るために準備をしておくことだ。

長期的に見て私たちが後悔するのは、「行動を起こしたうえでの失敗」ではなく、「行動を起こさなかったための失敗」

 

先延ばし

先延ばしは、クリエイティブな仕事にはとくに有益であることがわかった。

科学におけるエリートたちは、「科学的な問題や解決策に対して、早まった選択をしないように、アイデアを温める期間として先延ばしをした」のである。

 

「アイデアラボ」社の創業者であるビル・グロスは、一〇〇件以上の起業にたずさわったのちに、会社を成功に導いたものは何なのかを分析した。

もっとも重要な要因は、アイデアのユニークさでもなければ、チームの能力や実行性でもなく、ビジネスモデルの質でも調達資金量でもなかった。

「いちばんの要因はタイミングです」とグロスはいう。

「成功と失敗を分けたのは、四二パーセントの場合でタイミングでした」

 

ある研究で、マーケティングの研究者ピーター・ゴールダーとジェラルド・テリスは、「先発企業」と「後発企業」の状況を比較した。

先発企業とは、いち早く行動したパイオニアであり、ある製品をいちばん最初に開発、あるいは発売した企業だ。

後発企業とは、開発や発売の開始が遅く、先発企業が市場を形成したのを見届けてから参入した企業だ。

 

三〇以上の異なるカテゴリーにおいて何百ものブランドを分析したところ、ゴールダーとテリスは、失敗の確率に圧倒的な違いを見いだした。

先発企業の失敗率は四七パーセント、そして後発企業はわずか八パーセントだったのだ。

先発企業は後発企業よりも約六倍、失敗率が高かったことになる。

先発企業は、生き残っても、平均一〇パーセントの市場を占有するのみで、対する後発企業の占有率の平均は、二八パーセントだった。

 

後発企業が参入するころには市場がある程度確立しているため、そもそも「何を」提供するべきかを考えるのではなく、「優れた品質を」提供することに焦点をあてることができる。

「二番目か三番目になって、先発者がどうしたかを見届けて……それから改良するほうがいいと思いませんか?」

市場の過熱ぶりが冷めたころまで待った起業家は、成功の確率が高くなっている。

 

「新しい科学的事実が勝利を得るのは、反対する者を納得させ、理解させたからではない。反対する者がいずれ死ぬからだ」

 

先駆者が優位になりやすいのは、特許技術がかかわっているときや、強い「ネットワーク効果」(製品やサービスのユーザーが増えると、その価値が高くなるという効果。電話やソーシャルメディアなどが好例)が存在するときだ。

 

パートナー

「非常に似通っている者同士のわずかな違いこそが、互いのあいだに違和感や敵意といった感情を生み出す原因になっている」

同じ価値観をもつグループと協力をするとき、〝手段〟が共通していることが重要。

共通した目標達成の手段があるかどうかが、同盟関係を築けるかどうかの重要な指標になることを突き止めた。

 

アイデア

奇抜なものを出発点とし、それに親しみやすさを加えたものがもっとも確実なアイデアである。

これには、パート3で触れた「単純接触効果」が活かされている。

奇抜な出発点のあとに親しみやすさをとり入れたアイデアは、実用性が平均一四パーセント高く評価されており、独創性が犠牲にされることもなかった。

 

他者の価値観を変えさせるのはむずかしいが、自分たちの価値観と相手がすでにもっている価値観の共通点を探し、結びつけるほうがずっと簡単である。

 

しつけ

しつけの際にはわけを話したり、説明したり、悪い行ないに対してつぐなう方法を提案したり、助言したりという方法を使っていたという点だ。

わけを話すことで相手を尊重しているというメッセージが伝わる。

またそれは、子どもたちがより分別をわきまえ、不適切な振る舞いをしなかった、ということを暗示している。

つまり、理解し、成長し、改善していける力が、その子にあると信じているということの表われなのである。

 

創造性豊かなグループの親は、しつけの際にきちんと説明していたことが明らかになった。

規範を示し、道徳や誠実さ、敬意、好奇心、忍耐力といった価値観に触れながら、何がよく何が悪いのか、親自身の考えを子どもに説明していた。

しかし、あくまでも「自分で自分なりのルールをつくり上げなさい、と強調していた」のだ。

 

子どもにしっかりとした価値観をつちかうには、親は子どもへの影響力を控えめに留めておくことだ。

親は、子どものオリジナリティを育んでやることはできるが、いつかはそれぞれの選んだ分野で、能力を発揮するための手本をみずからが見つけなくてはならない。

親ができることは、何よりさまざまな分野においてお手本となる人物を紹介することだろう。

 

人柄を褒める

人柄を褒められると、それを自分のアイデンティティの一部としてとり込む。

 

「不正をしないでください」という言い方ではなくて、「不正を働く人にならないでください」という人格に訴える言い方に変えることで、不正をする被験者が半分になったのである。

「不正をするな」といわれてもすることはできるし、一度くらいしたところで倫理観が損なわれるわけではない。

しかし、「不正を働く人になるな」といわれると、急にうしろ暗い感覚を覚えるものだ。

不道徳な行為がアイデンティティと結びつき、不正をすることにあまり魅力を感じなくなる。

 

不正という一つの独立した行為であると、「一つぐらいズルをしても、まあ、どうにかなるかな?」という「結果の論理」で判断される。

ところが、〝根っからのズルい人間〟ということだと、自意識が呼び起こされ、「私はどういう人間だろう?」「私はどういう人間になりたいのだろう?」という「妥当性の論理」が作用する。

 

組織モデル

業種に関係なく、主に三つの組織モデルがあがった。

①「専門型」、 ②「スター型」、 ③「献身型」だ。

 

①の専門型モデルでは、特定のスキルをもつ従業員の雇用を重要視した。

創業者たちは、ジャバスクリプトやC言語でプログラムできるエンジニアや、たんぱく質の合成に関する深い知識をもった科学者を重用した。

 

②のスター型モデルでは、有能な人材を迎えたり秀でた人材を引き抜いたりすることを重視し、現在のスキルでなく将来の可能性に焦点があてられていた。

スター人材は、現在は特定分野に関する専門知識がなく荒削りであっても、知識を吸収できるだけの地頭のよさがあることが求められる。

 

③の献身型の雇用方法は異なっていた。

スキルも将来性も大事ではあるが、企業文化に溶け込むことを絶対条件としていたのだ。

企業の価値観や基準と足並みをそろえることが最優先だった。

 

③の経営者は、モチベーションに対しても一風変わったアプローチをとっていた。

「専門型」と「スター型」をめざす創業者は、従業員にむずかしい業務を与えたり、自主性を重視したりするのに対し、献身型モデルの創業者は、従業員間もしくは従業員と組織間を強い絆でつなぐことに注力していたのだ。

「家族」や「愛」という言葉で組織の人間関係を表現し、従業員は、組織の使命に熱い情熱を注ぐ傾向があった。

 

献身型モデルの企業の失敗率はゼロだった。

倒産した会社は一つもなかったのである。

ほかのモデルを使った企業の未来は、そう明るくなかった。

 

創業初期の段階では、献身型の企業文化は実りが多いのだが、年月を経るにつれ、しだいにおとろえていく。

シリコンバレーでの調査では、献身型モデルをもつベンチャー企業には高い生存率や上場のチャンスをもたらしたが、上場後には株式市場価値が伸び悩んでいた。

献身型モデルの企業はスター型モデルの企業と比べ、株式市場価値の成長に一四〇パーセントの遅れが、専門型モデルの企業と比べると二五パーセントの遅れが見られた。

さらには、官僚型モデル(訳注:行政機関に見られるような、規則や手順のはっきりした形式的なモデル)の企業のほうが市場価格の伸び率がよかったのである。

市場が動的になると、強い企業文化をもつ大企業は孤立してしまうのだ。

 

文化

強い文化をつくり上げるためには、コアになる価値観の一つとして「多様性」を掲げなくてはならない。

「意見の相違を歓迎すること」

 

会社の規範に優先順位をつけずにいると効力が落ちる。

価値観の優先順位について、リーダーたちの考えが一致しなかった劇団は、チケットの売上げも純利益も低い傾向にあった。

価値観の優先順位について意見が一致していれば、その価値観がどういうものであるかにかかわらず、高いパフォーマンスを維持していた。

ルールの項目が多い場合にはとくに、どれが重要で、どれがそれほどでもないのかをはっきりさせることが大切です。

 

防衛的悲観主義

「戦略的楽観主義」と「防衛的悲観主義」だ。

「戦略的楽観主義」とは、最高の結果を予測し、冷静を保ち、目標を高く設定することだ。

「防衛的悲観主義」とは、最悪の結果を想定し、不安を感じながら、起こりうるあらゆる悪い事態を予測しておくことだ。

 

自己不信に襲われると防衛的悲観主義者は、わざと大参事を想定して不安を増幅させ、その不安をモチベーションに変えるのだ。

最悪のケースを考慮すると、それを何とか回避せねばという気持ちに突き動かされて、細部までありとあらゆることに気を回す。

こうすることで、事態をコントロールできていると感じられるのだ。

 

恐怖心を克服するには、なぜ、気持ちを落ち着かせるよりも、興奮するほうがうまくいくのだろうか。

強烈な感情を抑圧しようとするよりも、違う感情にすり替えるほうが簡単だ。

 

いったん行動を起こす心積もりができたら、不安が忍び寄ってきたときには防衛的悲観主義をとり、不安に向き合うほうがよい。

不安を感じているとき、「不確実であること」はネガティブなことよりも恐ろしく感じられるようだ。

心理学者のノレムの解説によると、いったん最悪の事態を思い浮かべると「コントロール感が得られる。ある意味、本番がくる前に不安が最高潮に達している。だからいざ本番になると、ほぼすべての対処がすんでいるのだ」。

 

現状を揺るがし、行動を変えないことで起きる悪いことを強調する必要がある。

行動しなければ確実に損失がある場合は、リスクを冒すことに魅力を感じるようになる。

 

面白かったポイント

めちゃくちゃ面白い。

 

刺さったのは、リスクのバランス、先延ばし、防衛的悲観主義です。

起業家はリスクを取って一点集中というイメージがあるかもしれませんが、リスクのある活動と安定のある活動のバランスを取ることがオリジナリティを発揮するというのは目から鱗です。

安定を軸にリスクのあるテーマにチャレンジし、それが成功して安定してから次にリスクにチャレンジするというのが成功法則なのだと思いました。

 

先延ばしは、ビジネスの成功要因はタイミングということがよく分かる。

基本は、後追いで、品質を高める戦略が成功しやすいということですね。

その戦略の成功要因は、分析と実行力。

 

防衛的悲観主義は、あらゆる悪い事態を予測し、対処することというのが面白い。

不安をモチベーションに変える。

不安を感じているから細部にまで気を回すことで、品質を上げることができるのだと思う。

神は細部に宿る、ということか。

 

あとは、傑作を生みだすには、大量行動と豊富な経験、つまり量をこなすということです。

常に動き続けることが大事と言うことですね。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

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