内容
大きな三つの行動特性
重要なコンピテンシーのうち、一つ目は「成果志向」だ。
何かのノルマを課せられたときに、成果志向が低レベルの人は「難しいとやめてしまう」、中レベルの人は「絶対にやり遂げ、目標はなんとか達成しようとする」、高レベルの人は「目標は越えることが当たり前で、そのための動きが早期から逆算でき、目標超えの結果を繰り返してナンボと考える」という具合で、階段状にスコアリングできる。
二つ目の「戦略志向」も、多くの現場で重要視されるコンピテンシーだ。
低レベルの人は「自部門の戦略を立てることはできる」。中レベルの人は「自社全体の戦略を策定できる」。高レベルの人は「業界や産業全体の戦略を立てられる」。
「ビジョン達成のためにどんな方法を取るのか?」
「他の人たちと違うやり方をするのか?」
「独自の道を見出すのか?」
「競争上の差別化要因をどうやって作っていくのか?」
このように、具体的な中身の高度さ、緻密さを探っていく。
三つ目は、物事を変えてゆく「変革志向」だ。
「現状打破のために何をすべきか?」
「変化の方向性はどのようなものであるべきか?」
「どうすれば、人々が熱狂して変革に取り組めるか?」
その他、他人と協調できるかどうかや、人を育成する能力があるかなど、さまざまなコンピテンシーがある。
器の大きさ
人の器の大きさ、伸びしろは、「好奇心(Curiosity)」「洞察力(Insight)」、「共鳴力(Engagement)」、「胆力(Determination)」の4つの因子で測ることができる。
ポテンシャルの因子
ポテンシャルの因子①「好奇心」
好奇心が実は優性因子である。
他の3つの因子をある意味では母親のごとく「育くむ」ものとイメージしたい。
もし何か一つだけを見ようとするならば、この好奇心だろう。
色に例えるとすれば赤色。
ヒーローもののセンターは大概レッドである(ちなみに1975年スタートの戦隊モノシリーズは、驚くほど色使いに変化がない)。
新しい経験、知識、率直なフィードバックを求めるエネルギーの強さと、学習と変化への開放性がこれにあたる(詳しくは後述する)。
ポテンシャルの因子②「洞察力」
洞察力は色に例えるとすれば青色だ。
頭のいい人たちを集めたい会社や、教育機関での冊子やホームページでは、落ち着いた青がどこかで使われるのが定番。
新しい可能性を示唆する情報を収集し、理解するエネルギーの強さを指す。
ポテンシャルの因子③「共鳴力」
共鳴力を色に例えるならば、黄色ではないだろうか。
たいがいイエローレンジャーは人気者だ。暖かく、仲間を盛り上げる。
これは、感情と論理を使って、自身の想いや説得力のあるビジョンを伝え、人々とつながろうとするエネルギーの強さを示す。
ポテンシャルの因子④「胆力」
胆力はなかなか色に例えにくいが、ヒーローもののアナロジーをもし続けるのであれば、個の強さを持つ黒色としておこう。
意味はというと、大きなチャレンジがある課題を好み、困難な目標に向かって戦うことに強いエネルギーを得て、逆境から素早く立ち直る力を持つことを指す。
ここで言う「エネルギー」とは、本人からすると無意識で、時に無自覚に、自然と湧き起こる「熱量」のようなものだ。
好奇心のサブセットは「吸収」と「更新」
洞察力のサブセットは「集める」と「つなげる」
「洞察力」のサブセットの一つめは「集める」だ。
さまざまな情報を集め、整理し、意味を理解することにワクワクするタイプである。
もう一つの洞察力のサブセットは「つなげる」である。
①「データ」から始まり
②意味を持つ「情報」
③つながりを示す「知識」
④離れたものの共通項を見出す「洞察」
⑤そして、その共通項をつなげる筋を見出す「叡智」
量産型と呼ばれるコンサルタントが年々増えているが、量産型と精鋭たちとの違いを分かつのは、この洞察力における「つなげる」エネルギーだろう。
洞察力のエネルギーは、いわゆる地頭の良さと近似する概念
共鳴力のサブセットは「結ぶ」と「響く」
「結ぶ」ことに強い喜びを感じる人たち
このサブセットの一つは「結ぶ」だ。
相手とのつながりポイントを無意識に探し、その結びつきボタンをしっかり押さえながら、自らのビジョンやアイデアを伝える。
そこから新たな物語が展開されたりすることに、強い喜びを感じたりする。
そのようなタイプのエネルギーだ。
この傾向が強い人は、頼みもしないのに、結びつきポイントがありそうな第三者をうれしそうに紹介してくることが多い。
自ら反響して高まっていく人たち
もう一つのサブセットは「響く」である。
音と音の共振のごとく、エネルギーの交換を無意識に求め、それがわずかな時間の間に、どんどん高まっていくようなタイプのエネルギーを指す。
この傾向が強い人の特徴は、よく笑うことだ。
それも、他人の話に笑うのではなく、自分で話しながらキャハハと笑うタイプの笑いである。
その笑いは、目の前の人間との共振を無意識に求める欲求からくる、ある種の自家発電的な行為なのだろう。
胆力のサブセットは「腹決め」と「律する」
「胆力」だが、その一つは「腹決め」だ。
迷いがありながらも、それらをすっぱり断ち切って、覚悟を決める。
「腹をくくる」と言い換えてもいい。
「胆力」のサブセットのもう一つは「律する」である。
きわめて大きな物事を成しとげようとしているのに、すごく謙虚という稀有な人がこの世には存在している。
「自分なら絶対にできる」と信じている半面、「自分はまだまだ。水準を満たしていない。自分自身を厳しく律しないといけない」と考え、その壁を越えていくチャレンジにエネルギーの高まりを感じる人たちだ。
この人たちは、「信じているが、信じていない」というある種のパラドックス状態を、深層心理としては楽しんでいるのである。
面談
インタビューする側が複数人になる場合はある。
それでもせいぜい2人だ。 2対1が限度である。3人以上だと圧迫面接になってしまうからだ。厳密にいえば2対1でも十分圧迫している。
したがって、ぼくは基本的に1対1での面談を推奨したい。
なお、いわゆる「圧迫面接」をしても、そこから得られることは何もない。
たとえ、新卒採用であってもだ。圧迫面接信奉者のロジックに、「プレッシャーがかかった局面で相手がどう反応するかテストしたい」というものがあるが、的外れもいいところだ。
なぜなら面接時のプレッシャーと、仕事におけるプレッシャーは全く違う代物だからである。
特にこのサイト( http:// www. 16 personalities. com/ ja/)がおすすめなので、まずは気軽に試してほしい。
エピソードで語られている内容の重心の置き方を分析することで、まずその人が大事にしている価値観のコアを知ることができるのだ。
ダメな面接の典型的なパターンとして、「志望動機を聞く」というのがある。
本来のマッチングという意味合いからすると、全く無駄な行為である。
はっきり言って、モチベーションなどあって当たり前だ。
あったところで必要な能力がなければ会社のお荷物になるだけ。
大事なのは、会社が求める能力を備えているかどうか。ポテンシャルの問題である。
だから、「志望動機=モチベーション」について面接で問うのはナンセンスだ。
もし、どうしても聞きたいのであれば、「あなたはどんな人生を送りたいと考えていますか?」という質問をすることだ。
その答えと、自社で働くことに連関があれば、それで十分なはずである。
そもそも企業カルチャーというのは、結果的に自然と生まれてくるものであって、変化し続けるはずだ。
だとしたらそれは、あまり物差しにはならないはずである。
しかし、絶対的な指標となりうる、会社のカルチャーの物差しはある。
それは二つしかない。会社の「評価システム」と「権限委譲システム」だ。
「評価システム」は、簡単に言えば〝よしとする姿〟と〝給料の払い方〟である。
一方、「権限委譲システム」とは、〝ものの決め方のスタイル〟だ。
権限委譲の程度があまり高くないと、中央集権的な意思決定の色が濃くなる。
そうすると、スピードは上がるが、多面的な検証はおざなりになりやすい。
移譲がかなりなされているスタイルだと、逆に多面的な意見のもと、是非を検討することができるが、スピードは遅くなりやすい。
EVILの分類
まずEVILの分類だ。
優秀なEVILは「マウント型」と「ナルシスト型」の二つに大きく分けることができる。
「マウント型」はその名の通り、威圧的に相手をコントロールしようとする。
いわゆるパワハラ上司の典型だ。
「ナルシスト型」は自意識過剰で、自分の欲求を満たすために周りを巻き込んでげんなりさせることが多い。
「自分が会社に到着したら全員起立して、おはようございますと言え」というようなオーナー社長はこのタイプだ。
やはりものすごく優秀で、IQも天才レベルだった。
そして、ふと気がつくと周囲にマウントを取る、攻撃的な人でもあった。
こういう人は、共感性が著しく欠如していることが多い。
相手の目に針を突き刺して、「これ痛いの、どうなの?もっと押してみる?」──なんてことは実際にはしないだろうが、部下などに「なんでこれできないの?君、ばかなの?」などということを平気で言ってしまう。言われたらどう思うかなど、知ったことではないのだ。
突発性EVILの3タイプ
【Aタイプ:目指すべき「目標」に意識が向かうことが強いタイプ】
このタイプは、有事になると他者を「操縦」して問題を起こす可能性が高い。
目的を達成することが第一なので、それがかなわない状況になると、あらゆる手を使ってでも成し遂げようとするからだ。
もちろん、ある程度の強引さは仕事に必要だが、度を過ぎると問題になる。
【Bタイプ:より良い「人間関係」を築くことに意識が強いタイプ】
このタイプは、物事がうまくいかなくて壁にぶつかると、うってかわって、他者に「依存」する。
それは、好かれたいからだ。
依存の仕方には二つあり、一つは「私、頑張っているよね」とか、「すごいって褒めて」とか、「やってます感」をアピールするパターンだ。
さらにストレスが増すと、このタイプの人はさらに変化する。
なかなか興味深いが、逆に他人に放り投げてしまうのだ。
「もう、何もわかんないから、あなたやって」と責任を押し付けてしまう。
これは一聞して動機がわかりにくいかもしれないが、人間関係にすごくこだわっているが故に、それを壊したくないという願望からの逃避行動だ。
【Cタイプ:「あるべき姿」を目指すことに意識が強いタイプ】
このタイプの典型は、法務部門や管理部門に多い。
道徳感やコントロール意識が強い傾向が見られる人たちだ。
このタイプが仕事上で窮地に陥ると、安全地帯を作ろうとする。
Bタイプのように他人に任せっきりにしたり、放棄したりするわけではないが、「本当か?」「リスクあるよね」といった感じで、一定の距離を置いて自分を「防御」するのである。
これは、自分自身が常に正しい姿でありたいからだが、上司がこのタイプだと部下は「えっ、責任取ってくんないの?」と失望するだろう。
距離を置くだけならまだいい。
こういうタイプは、事態がさらにのっぴきならなくなると、突然攻撃的になる。
トップマネジメント
トップマネジメントの登用は、どの会社にとっても一大事。
「誰を信じて任せるか」「誰を外すか」の決断で会社の将来に大きな違いが出てくるのだから、責任は大きい。
終身雇用が崩壊したのもあるが、技術の進化やトレンドの動きが速すぎて、知識が身についた頃には時代遅れということがありえるからだ。
それよりも、その時々に必要な人材を、的確に選んで採用したほうが、圧倒的に合理的である。
あるいは、右の社長のように〝何も言われなくても自ら学んで育つような人材〟をよくよく選別して採用するほうが効率的である。
面白かったポイント
人を見るためのフレームワークが面白い。
実際、人を見るための解像度はもっと高いのだろう。
トップマネジメントになると優秀だけど害悪という層をどう見極めるか、地雷を理解した上でどうマネジメントするかがカギになる。
自分も攻撃的なところがあるので、注意しないといけない。
満足感を五段階評価
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目次
序章 「人を選ぶ」ということの意義
第1章 「人を見る目」を分解する
第2章 人を「階層」で捉える
第3章 相手の本質を見抜く実践メソッド
第4章 人を見る達人となるために
第5章 地雷を踏まないための知恵
第6章 人を選ぶ現場で今起こっていること
終章 「人を見る力」がもたらす究極の喜び