内容
心理学的経営
心理学的経営では、人間を「べき論」や建前論では見ない。
いくらルールで決まっているからといって、その通りに大半の人間が行動していなければ、人間を理解するのにそのルールは額面通りには役に立たない。
人間が実際にどう行動しているか、またそれはなぜか、その理由やメカニズムを解明することで人間の真実の姿が見えてくる。
結局心理学的経営の目指すところは、人間をあるがままにとらえるところから出発して、人間を大事にする経営ということになろう。
では人間を大事にするというのはどういうことかと考えると、つまりは、一人ひとりの人間を尊重するということ、すなわち「個性」を尊重するという考えにたどりつく。
職務設計
第一の次元はスキルの多様性。
これは、その仕事を遂行するために、どれくらいさまざまな能力や技能が求められるかという観点である。
ほとんど誰にでもできるような、これといった能力を要求されない単純な職務もあれば、様々な能力を求められる複雑なあるいは高度な仕事もある。
必要とされる能力や技能が多様であればあるほど自分の仕事は有意義で価値があり、重要だと感じる。
つまり内的な動機づけが高まるとされる。
これが第一の次元である。
第二は、タスクアイデンティティといわれるもので課業の一貫性と訳される。
自分の仕事が大きな仕事の一部にすぎないのか、はじめから終りまで一貫して携わることのできる一定のまとまりのある仕事なのか、当然、自分の仕事としてまとまりのある自覚を持てる仕事の方が、アイデンティティが高まるであろう。
そして自分の仕事はこういう仕事というアイデンティティがはっきり自覚されるほど、内的な動機づけは高まることになろう。
第三は、仕事の有意義性といわれる次元である。
自分の仕事はいかほどの意味のあるものか、周囲の人びとにどれほどの影響をもっているものなのか、組織にとってなくてほならぬ仕事なのか、とるに足りない仕事なのか。
要するにやっている仕事の意味がどれほど自分にはねかえってくるのか、こうした仕事の意味が自覚され、自分の仕事は価値があり、重要だと感じるほど、内的動機づけは高まるであろう。
第四の次元が自律性といわれるもので、これは自分の仕事をどれだけ自分の裁量によってすすめることができるかという点である。
一つ一つ上司からの細かい指示にしたがってすすめなければならない場合と、人からあれこれ言われずに、自分の考えや意志によって自由に段取りを決め進める場合とでは、仕事への動機づけに格段の差が生じることになる。
この自由裁量の範囲が大きければ大きいほど、自分の仕事の結果に責任を感じることにもなり、内的な動機づけが高まるというのが自律性の次元である。
そして第五がフィードバックと呼ばれる次元である。
自分の仕事の成果を確かめることができるか否か。
極端な場合言われた仕事をただこなすだけ、その結果について何も知らされないような状況で、仕事に張り合いが出るわけがない。
これは当然のことだが、自分のやった仕事がどの程度うまくいっているのか、仕事の成果を上司や周囲を通じて知ることができるかどうかという問題で、フィードバックのある状況であれば、内的な動機づけにプラスに働くというのが第五の次元である。
モチベートする心理的条件
若者を仕事に駆り立てる条件は何かと問われて、私は〝内的動機づけにとって最も重要な心理的条件〟として三つのポイントにまとめたことがある。
まず第一が「自己有能性」、すなわち、仕事を通して自分の効力感を体験できることである。
これほど自分の成長欲求を充たすものはない。
この裏には挫折感があり、自信の喪失があるが、この種の心理的な葛藤を乗りこえて、自己効力感を体験できるところに、心理的に深い次元での動機づけのメカニズムが成立する。
そして第二が「自己決定性」、これは職務設計の次元でいえば、自律性に該当する。
自分の仕事については、自分で考え、自分で計画し、自分でチェックする。
自由裁量の幅が大きいだけでなく、自己責任性を伴うことが大事である。
そうした機会が日常的な仕事のなかに見出せなければならない。
第三が「社会的承認性」、とくに日本の企業社会の場合、職場の仲間や上司との人間関係が重要な動機づけ要因として意味をもつ。
自分の努力、苦労、そして成果が周囲に理解され認められて、社会的承認を実感できることによって、心理的な充足と情緒的な安定が得られる。
共同社会、そして視線社会としての日本の企業組織では、無視できない条件である。
自律性
いわゆる権限委譲の行き届いた組織ほど、自律性の程度は高くなり、メンバーの参加や自由度も保護され、組織の活性度も高くなる傾向がある。
集団凝集性
この集団の凝集性を高める要因としては、その集団の目標がメンバーにとって魅力的で、自分の目標として受容されていることや、集団のなかでのメンバー間の対人関係においてお互いにひきつけるものがあり、心理的な安定に結びついていること、さらにその集団が周囲から高い評価を受けているとメンバーが認知していることなどが重要なものとなろう。
目標
目標は具体的で明確なほど、エネルギーを方向づける力になりやすい。
これがまず第一の法則である。
むずかしい目標
むずかしい目標を与えられたグループの方がやさしい目標を与えられたグループよりも明らかに作業量が多いことが一目瞭然である。
低い目標よりも高い目標、安易な目標よりも困難な目標の方が、一般的にモティベーションが強まり、より大きな成果を生み出すということがいえるようだ。
このむずかしい、やさしいという目標のレベルは個人の主観的なものさしの上で判断されることなので、そのモティベーションに対する効果は、その目標が個人にどのように受容されるかにかかっているのである。
結果の分かりきっているやさしすぎるような目標は何らモティベーションにとって効果をもたないのと同様に、むずかしすぎる目標も、個人の受容範囲を超えて拒否反応を招き、モティベーションに結びつかないことは明らかである。
目標設定理論では、モティベーションにとって最も効果的な目標の水準は個人にとって成否の確率が五分五分のとき、つまり、背伸びをすれば届きそうな目標だといわれている。
社員に何か改善を要望するときには、現状の一~二割程度の改善を求めたのでは、従来のやり方の延長線上でしかことは運ばない。
リスクを伴うのを承知であえてとんでもない目標への挑戦を要望するなかから、現状の自己否定、そして革新や革命が生まれるという。
全く新しいものの創出は、創造的破壊とよばれる現状否定からはじまるのであって、新商品の誕生、新しい市場の創造、生産工程における新システムの開発、あるいはコストダウン等々、いずれも単なる現状の延長のなかからは生まれにくいのである。
カオス
合理の世界・タテマエの世界は、表面に現われた論理的整合性のある制度や仕組みの裏にかくされたドロドロとした情緒やエネルギーを押し殺してしまう。
活性化は、既成の構造としての秩序を破壊することからはじまる。
秩序の内側に眠りこけている人間の自然の生命力を挑発することで、組織のなかにゆらぎが起こる。
既成の価値体系、暗黙のうちに容認された行動規範に疑問が提示される。
さらに、今のままではダメだと現状を厳しく自己分析して、昨日までの成功体験を否定する。
こうした現状の自己否定が組織に葛藤と緊張をひき起こし、組織内の均衡状態を崩していく。
これがカオスの演出という活性化のための最初の戦略として認識されなければならない。
新しい秩序へのビジョンと目標の欠落したカオスは単なる混乱であって、脈絡のない異動の頻発は、長期的な構えで仕事に取り組む姿勢をメンバーから奪うだけである。
メンバーの抵抗や組織の混乱を承知の上で敢えてカオスを演出する人事異動の断行は、一方でビジョンと説得力を備えた強力なトップマネジメントのリーダーシップを前提としたものでなければならない。
成功のパラドックス
実は「成功のパラドックス」の危機をはらんでいる。
高成長は現在の環境への過剰適応の結果という側面をもっており、したがって外的環境が今後激しく変化すれば、過剰適応が自らにブレーキをかける事態を招来してもおかしくはない。
さらに、企業は成長過程において、ルールを組織内につくりあげたり、階層化や細分化によって官僚制が進行することで、いわゆる大企業病に陥る危険をはらんでいる。
イノベーションによって生まれた産物を効率的な生産体制にシステム化する企業努力が、一方で組織化による大企業病の弊害というつぎの成長への足かせを自ら構築するという矛盾を生じさせる結果となる。
変化の時代のパラドックスである。
認知的不協和
人は自分の行動が認知的に不協和をもたらすような情報は避け、認知的に協和をもたらす斉合性につながる情報を好んで探すのである。
管理者に有効な性格因子
管理者の適性を性格的に説明するのに意味のあると思われる因子が四個抽出された。
第一の因子は、管理者の性格的適性を示す最も基本的と思われる因子である。
自己統制力、決断力、自律性、自己主張性、非抑鬱性、非内閉性などが含まれており、いわば情緒的な適応に関係する性格因子である。
この因子を「性格的強靭性」と名付けたが、管理者として適応し、成功するための基本的なパーソナリティ要因と考えられる。
性格的弱さや脆さ、精神衰弱的傾向は、対人関係におけるストレスの最も多いこの職務には何よりも障害になると思われる。
第二の因子は、対人的な接触における積極性(外向性)、他人に対する主導性、指導性、競争心、攻撃性などを表わす因子で、それらを総合して「支配性」の因子と呼べるものである。
複数の部下を統率し、要望性のもとに集団を束ねていく積極的なリーダー像と重なる因子である。
第三の因子は、「決断性」と呼ばれる因子である。
同情するよりは分析することを好み、他人と議論することに積極的で、ときには他に対して批判的に行動する。
合理的・客観的な判断を好み、物事に対して毅然とした態度を取ることができる。
第一因子が情緒的な強靭さを表わしているのに対してこの因子は態度的・意志的な強さを表わす特性と解釈できる。
第四の因子は、人間関係への円滑な適応を可能にする対人適応性としての「社交性」の因子である。
適度の社交性が管理者に望ましい性格特性として要求されることを示している。
リーダーシップに有効な因子
リーダーシップ行動の有効成分としての因子を抽出したのである。
その結果見出されたのが、四つの因子である。
第一因子が「配慮(Consideration)」の因子、これは、メンバーを理解、尊重し、友好的で温かい思いやりを示す行動を表わす。
第二因子が「体制指導(Initiating Structure)」の因子、これは、メンバーの役割を明確にし、指示し、組織化する行動を表わす。
第三因子が「生産強調(Production Emphasis)」の因子、これはメンバーに対して、目標や使命を強調し、集団の生産性を高めようとする行動を表わす。
第四因子が「感受性、社会的感覚(Sensitivity, Social Awareness)」の因子で、周囲の状況や圧力に対する感受性や社会的感覚を表わしている。
以上であるが、この四つの因子のうち、第一因子、第二因子と比べ、第三、第四の因子は、全体への寄与率が極めて小さいものであったので、この研究は、リーダーシップ行動を二つの因子で説明する理論として有名になった。
すなわち、リーダーシップというのは、これを要約すれば「配慮」と「体制指導」という二つの機能としてとらえることができるとする二機能論である。
組織において管理者が発揮すべきリーダーシップは、二つの要素に集約されると考えて大きな間違いはない。
一つが組織の目標達成に向けて、メンバーに役割を与え、指示し、督励する機能であり、もう一つが、個々のメンバーを理解し、人間関係に配慮し、集団を維持する機能である。
リーダーシップ行動
リーダーシップ行動を構成する四つの因子が見出された。
第一番目が「情報提供」の因子、仕事を進めていく上で必要とされる情報(仕事の方針や計画等)や知識や技術を部下に提供する行動。
二番目が「職務能力」の因子、管理者自身が有している職務遂行能力、計画力、問題解決能力。
三番目が「配慮」の因子、部下の気持ちを受容したり、個人的な感情に配慮したり、部下を理解し支持を与える行動。
四番目が「督励」の因子、部下の仕事をきびしくチェックしたり、目標を達成するよう要望したり、部下の職務遂行を直接指示する行動。
リーダーシップ四機能論
第一因子は「要望性」と名づけた。
これは部下に指示を与え、能力の最大限の発揮を求め、生産性を高めることを指向した行動である。
オハイオ研究の「体制指導」、PM論のP機能に明らかに対応している。
第二因子は、「共感性」である。
部下の気持ちを受容し、都下の行動に思いやりと支持を与える機能である。
良好な人間関係や自由な雰囲気を醸成することに結びつく行動である。
オハイオ研究の「配慮」、PM論のM機能に対応している。
第三の因子が「通意性」である。
仕事を進めていく上で必要な意味のある情報を十分に提供すること、これは、上司に求められた第三のリーダーシップ機能である。
「寄らしむべし、知らしむべからず」ではダメで、大事な情報を上司と部下とがしっかりと共有することの必要を、この第三因子は教えている。
まさに新しい時代の、情報化時代のリーダーシップとして肝に銘じなければならない。
第四の因子が「信頼性」の機能である。
第一次研究ではこれを職務能力の因子と名づけたが、これを信頼性と命名した根拠は、部下からみて、上司を管理者として能力的に、あるいは人間的に信任に値するか否かを問うているからである。
もともとこの機能が不十分な場合は、リーダーシップの基盤が揺らぎ、他の機能の発揮を妨げる可能性がある。
第二次大戦における日本海軍司令官・山本五十六元帥の言葉として有名な「やってみせて、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ」という人を動かす要諦に表現された四つのリーダーシップ行動と、この四機能論は見事な符合を成している。
つまり、「やってみせる」は信頼性、「言って聞かせる」は通意性、「させてみせる」は要望性、そして「褒めてやる」は共感性とそれぞれ対応していることはあえて解説を要しないだろう。
リーダーシップサーベイ
要望性機能
・部下が予定通り仕事をしたときでも、さらに高い目標を要求するか
・部下の力からみてギリギリ一杯の仕事を要求するか
・部下に仕事の改善を求めているか
・部下がなまけたときしかっているか
・部下に会社の期待を上まわる業績をあげるよう要求しているか
共感性機能
・部下の成長に気を配っているか
・部下が仕事にやる気をなくしたとき勇気づけているか
・部下の人間関係がうまくいくよう気をつかっているか
・部下の仕事の上で問題が起きたとき、部下と一緒になって考えているか
・部下がいい仕事をしたときはそれを認めているか
通意性機能
・部下に仕事の計画を知らせているか
・部下に仕事に必要な情報を知らせているか
・部下に会社全体の動きを知らせているか
・部下の能力や知識の不足なところをつかみ指導しているか
・仕事の方針や計画を変更したときそのことをただちに部下に知らせているか
信頼性機能
・部下が問題を持ち込んだとき適切な処置ができるか
・いったん決定したことは実行しているか
・部下の仕事に対するアドバイスは適切か
・仕事に必要な知識や技術はもっているか
・部下は管理者の決定や判断を信頼しているか
行動変容
動機づけのエネルギー=不安の強さ×結果の誘意性×結果の見通し
自己概念の動揺
自己認知の得点、他者認知の得点、そしてそのギャップが表示され、同時に四つの機能ごとに集計された得点がプロフィールの形で報告書にまとめ.られ、本人に返されるのである。
プロフィールの特徴は、各人各様、当然個人差があるように、それぞれの受講者に与えるインパクトももちろん様々であるが、行動変容をもたらす心理学的メカニズムの第一段階が、このサーベイ結果のフィードバックによってつくり出される。
サーベイデータをフィードバックすることによって、これまでの自分の行動を支えてきた認知的基盤に揺らぎを生じさせ、これまで経験しなかった心理的葛藤によって不安を増大させると考えている。
行動変容へと動機づける第一段階であるが、LDPではこの段階を「自己概念の動揺」と呼んでいる。
結果の誘意性
第二の要因は「結果の誘意性」であるが、これは現在の行動から新たな行動へと自己を変容させることによって得られるであろう結果が、自分にとって魅力的に見えるほど、自己変容への意欲は高まるということを示している。
変容したときの自分の姿を描いてみるという一種のイメージトレーニングである。
結果の見通し
第二の要因「結果の見通し」を確かなものにできれば、リーダーシップ行動の変容を意図したこの研修プログラムは、成功に導かれることになる。
まず研修プログラムのなかで職場に戻ったときの自分をイメージし、そこで自らを変えるための改善策や解決策を考え、グループ討議のふるいにかけられながら、実現可能なものをつくり上げていく。
変容した新たな自分のイメージに魅力を感じるとともに、それは現実に到達することが可能という見通しをもてることが、職場に戻ってもとのもくあみにならないための必須要件である。
使用価値と存在価値
何ができるかという側面を「使用価値」、どういう影響力をかもし出すかという側面を「存在価値」と表現して、企業人評価の二つの次元をまとめて論じている。
そして、この二つの軸を組み合わせると、いずれも評価の高いグループの人を「できる奴」、使用価値は高く、存在価値に難点のある人を「一匹狼」、存在価値は高いが使用価値が不十分な人を「いい奴」、いずれも物足りない人を「ダメな奴」という人材の四つのタイプへの分類が可能になるという。
企業人適性
企業人適性の三側面を、職務適応、職場適応、自己適応という企業人の適応行動の三つの場面との関連においてとらえる考え方を提唱してきた。
職務適応は、仕事に対する能力によって左右される側面が大であるから、能力的適性の概念に対応する。
したがって、人材の使用価値という側面につながる。
職場適応は、対人的能力、対人的適応性に関連が強いが、この適応に関連する要因は、性格特性が大きなウェイトを占める。
そして職場の人間関係的風土にどんな影響をもたらすかという意味で、人材の存在価値という側面とのかかわりが強くなる。
さて、三番目の自己適応という概念が、経営的な観点から適性論に一つの転換を迫る意味合いをもっている。
つまり、能力中心の適性の考え方から一歩前進して、対人的な適応の要素を取り入れ、性格的な適性が論じられるようになることで、企業人評価の二大次元、対仕事と対人間という軸が定着した。
組織の側からみれば、この二つの側面をおさえれば十分のはずであったが、個人の側に立って、果たして本人が内的な価値基準や情緒的な適応、さらには、自己本来の価値の実現という点で、どの程度満たされ、自らに適応しているか、という個人の主体的適合性の側面が、この自己適応の概念である。
MBTI心理的機能
まず人間の行動を説明するのに、その心理過程として「知覚」と「判断」という二つの機能から出発する。
「知覚」機能とは、もの、人間、出来事、観念などをどうとらえるか、どう意識するかという心理的働きであり、「判断」機能とは、知覚したものについて結論を下す心の働きである。
この知覚と判断という二つの機能が、人間の心理的活動や外的活動の大半を支配している。
感覚と直観
知覚の二つの方法というのは、一つが〈感覚〉による知覚で、これは五感を通して直接ものごとをあるがままに意識するという方法である。
もう一つが〈直観〉による知覚で、いわば無意識のなかにある内在的な観念や想念を無意識的に外界の知覚対象に付加するという間接的な知覚である。
この二種類の知覚方法は、個人のなかで競い合う関係にあって、ほとんどの人の場合幼い頃からどちらか一方が優勢になるものである。
感覚的知覚のまさっている人は身のまわりの現実に強い関心をもち、実際何が起っているかという状況には敏感だが、現実にはない空想や想像にはほとんど注意が向かない。
これに対し、直観的な知覚がまさっている人は、直観によって気づくことのできる可能性の追求に関心が向かい、現実にあるものを看過してしまうことがあるくらいである。
前者は、目に見えるもの(visible)の知覚であるのに対し、後者はいわば目に見えないもの(invisible)の知覚ということもできる。
思考と感情
つぎに判断の二つの方法というのは、一つが〈思考〉を用いるもので、知覚したものに対して、論理的な方法によって客観的に結論を下そうとする方法であり、もう一つが〈感情〉による判断で、好みや個人的な基準によって主観的に結論を下そうとする方法である。
この判断機能からも二つの性格のタイプが導き出されることになるが、思考的判断を好む方を思考(thinking)型、感情的判断を好む方を感情(feeling)型と呼ぶ。
思考型の人間は客観的にものごとを分析したり、論理的に問題点を明らかにすることで割り切って結論を出すことを得意とする、いわば冷静なタイプであるのに対し、感情型の人間は、人の気持ちに敏感で、関係者の受け止め方や状況への配慮にもとづいて結論を出すタイプでる。
思考型は合理的に何かを決めるという判断は得意だが、周囲の状況を見落としてしまうおそれがあるのに対し、感情型は人間関係の調和を重視するあまり、割り切った結論を出すことができないという傾向がある。
問題解決のジグザグモデル
問題解決のジグザグモデルである。
まず最初のステップは感覚(S)機能であり、解決すべき問題について事実やデータにもとづいて状況を調べるというステップである。
第二のステップは直観(N)機能がつかさどるもので、可能性に着目し役立ちそうなあらゆる手段を探るステップである。
第三のステップは、いかなる解決を選択するかを決めるステップであり、合理的にあるいは論理的に判断して正しいと思われる解決策を選択するという思考(T)機能の働きによってなされるプロセスである。
そして第四のステップでは、その結果が周囲にあるいは関係者にどのような影響を及ぼすかを配慮し検討するプロセスで、これは感情(F)機能の役割である。
このジグザグモデルは、問題解決にあたって四つの機能すべてが駆使されなければならないことを教えている。
どの機能が欠けても最適な解決は期待できないのである。
Sが欠けては状況が事実にもとづいて見えてこない。
Nが欠けると新しい手段や方策への洞察が働かない。
Tが欠けると合理的な結論に至るという決定ができない。
そしてFが欠けるとその結果が周囲にどんな影響を与え、人々がどう受け止めるかという感情への配慮が欠けてしまう。
面白かったポイント
めちゃくちゃ勉強になりました。
組織のフレームワークに関する本ってなかなかいいのがないので、これだけ読めば大丈夫。
組織は所詮人の集まりなので、人への関心、理解度を深めることが大きなことを成し遂げるためには重要です。
人間の感情やモチベーションを考慮した組織や人事の仕組みやルールもある程度は必要です。
企業が成長し続けるためには環境の変化に対応できることが必要で、過去の成功にしがみつかない、カオスになることもいとわない姿勢が大切です。
やはり目標は高いほうがよい。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆
目次