内容
SaaS
業界を問わず特定の部門や業務に特化したSaaSを「Horizontal SaaS(ホリゾンタル SaaS)」と言います。
これに対して、特定の業界に特化したSaaSを「Vertical SaaS(バーティカル SaaS)」と呼びます。
HR分野と言っても、労務管理、タレントマネジメント、勤怠管理、従業員エンゲージメント、給与計算、採用管理。
T2D3
ARR成長率の有名なベンチマークとして、T2D3(ティー・ツー・ディー・スリー)というものがあります。
T2D3は、「Triple、Triple、Double、Double、Double」の頭文字を取ったもので、ARR1億円または2億円(海外SaaSでは100万ドルまたは200万ドル)をスタートとして、ARRを毎年3倍(Triple)、3倍(Triple)、2倍(Double)、2倍(Double)、2倍(Double)に成長させることを指します。
ユニットエコノミクス
State of the Cloud 2020に掲載されているユニットエコノミクスのベンチマークは、Good:3倍、Better:3〜5倍、Best:5倍と設定。
CACを減少させた時のメトリクス変化を見ます。
Life TimeやLTVに変化はありませんが、ユニットエコノミクスやCAC Paybackが改善されることが分かります。
また、最大マイナスキャッシュや累積キャッシュの黒字化までの期間が大きく減少し、5年後の累積キャッシュも基準値と比べると増加しています。
Churn rateを減少させると、CAC Paybackは変わりませんが、Life Timeが増加することによって、LTV、ユニットエコノミクスが改善します。
最大マイナスキャッシュ、累積キャッシュの黒字化までの期間も減少します。
5年後のキャッシュ増額が比較的大きくなることも特徴的な変化です。
新規顧客の獲得数を増やしても、Life Time、LTV、ユニットエコノミクス、CAC Payback、累積キャッシュ黒字化までの期間は変化しません。
最大マイナスキャッシュにおいては減少するどころか、新規顧客の獲得数が増える分、増加してしまいます。
5年後の累積キャッシュとキャッシュ増額は、基準よりは増えるものの、他のメトリクスを変化させた時よりも伸び率が小さくなっています。
これはSaaSプロダクト自体を改善しない状態で、マーケティング・セールスばかりを集中的に強化しても大きな成果が得られにくいことを示唆しています。
PSR
21年時点では利益率が低いほど、売上成長率が高いほど、高いPSRがついていたことになります。
つまり、利益率を犠牲にしても、より高成長企業の方が評価されていたことを示唆しています。
利益率の低さを成長率でカバーできるというものではなく、高い利益率を前提とした上で、さらに売上成長率も高ければ、より高いプレミアムがつきやすい。
高いPSRを維持するには、
①40%ルール水準よりも高い水準が必要であり、
②少なくとも粗利率は65〜70%以上の水準が求められていることを示唆しています。
売上成長率とEBITDA率には負の相関がある(売上成長率が大きくなると、EBITDA率は下がる)ように見えます。
これは成長性を追い求める企業は収益性を犠牲にしていて、収益性を追い求める企業は成長性を犠牲にしているというトレードオフの関係を示唆しています。
グローバルレベル
グローバルレベルに追いつくためには、
①コンスタントなM&Aによる継続的な非連続成長、
②エンタープライズ領域の顧客獲得の加速、
③大きなTAMを求めた海外展開
など、思い付きはしますが、いずれもそれを可能にする資金力や人材確保が大きな課題になりそうです。
面白かったポイント
SaaSのKPIまとめの本。
SaaSに関わっている人は目を通しておいてもいいんじゃないでしょうか?
満足感を五段階評価
☆☆☆