内容
企業は経済的に帳尻が合わないことをしていると、いつかは潰れてしまう。
だから、経済的に帳尻が合う構造になっているのかいないのかを知らなければいけない。
簿記は必ずやっておくべき。
現場で使える経営分析の能力は、しっかりした簿記の土台の上に築かれる。
戦争に勝つのはより多くの情報を持っている者。
経営改革という戦争の勝者になりたかったら、経営分析力を磨け。
経済的に帳尻が合う構造を維持し続け、上手に儲けを出している会社は、経験則的に、勝ちパターンを押さえて商売をしているものだ。
さらに突っ込んで言うと、価格(売り上げ)よりもコストが小さくコントロールできている状態が持続できる商売の構造を、ほぼ間違いなく持っている。
この勝ちパターンは、まず何よりも事業のコスト構造によって決まっていく。
価格や売り上げは、他社との競争や顧客のふところ具合に左右される。
すなわち相手のいる話だが、コストはひとまず自分でコントロールできる問題だからだ。
規模の経済
卸のように付加価値と共有コストが薄い業種では、売り上げ規模と利益率が正の相関を示さないこと。
売り上げが大きくなっても利益率は上がらず、むしろ、右肩下がりのグラフになる。
つまり、規模が効かない。
むしろ規模の不経済が働いている。
単純に規模を拡大しても、その効果が得られる業種は、実は驚くほど少ない。
共有コストが薄い場合、むしろ規模の不経済が働き、勝敗を決めるポイントは拡散する。
PLとBS
ストーリーを描くときの基本はPLである。
PLで描いて、その背景をBSでチェックするというのが基本的な考え方である。
この2つを同列に扱うことはできない。
すでに見たように、PLは事業モデルさえ頭に入れば、骨格の部分だけであっても、ある程度頭の中で組み立てられる。
単価に数量を掛ければ売り上げになるし、売り上げから仕入れ原価を引けば粗利が出る。
ところが、BSを頭の中でイメージすることは簡単にはできない。
どんな資産を持っているか、どれくらい借金をしているかは、実際のBSを見てみないことにはわからない。
実はすごい土地を持っていて何十億円もの資産があるとか、在庫を山ほど抱えて現金化できていないというような話は、BSを見て初めてわかる。
PLで全体のストーリーをつかみ、BSでそれを確認する。
どんなヒト、モノ、カネ、業務プロセスが絡んでいるかを、PLとBSからイメージ化できると「勘」が働きだす。
管理会計
とにかく単品ごとの利益を計算できるように指導する。
時間はかかっても、単品管理ができていれば、一瞬で自分たちが儲かっているのかどうかがわかる。
売上伝票を見ただけで、その数量分の原価はすぐに計算できるからだ。
経営改善の基本は、単品管理を徹底することである。
管理会計とは、経営トップ層や現場の管理者が、その情報をもとにさまざまな意思決定、軌道修正、業績モニタリング、業績評価などに使うことを目的としている。
そのため、財務会計とは、そもそもの目的が明らかに異なる。
激しい競争や環境変化の中でも、「売り上げ-コスト=利益>ゼロ」を持続的に実現できる堅固な仕組みを持っているのか、そこにヒビは入っていないのか、危機的な状況が起きたときに、頓死してしまうようなアキレス腱はないのか、こうした事柄に関わる事実、実態、実像にどこまで近づけるかが勝負となる。
面白かったポイント
経営、ビジネスモデルの読み物として面白い。
単なる理論ではなく事業再生を推進してきた臨場感がある。
コスト構造を管理して、勝ちパターンを作る、これが経営の本質ですね。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆
目次
第1章 リアルな経営分析とは何か?
リアル経営分析は企業の健康診断(精密検査)
リアル経営分析はテーラーメイド
そもそもどんな事業を分析しようとしているのか?
第2章 リアル経営分析の進め方
仮説と検証を繰り返して真実に迫る
PL、BS、CSを使いこなす
簿記はすべての基本
第3章 生き残る会社と消え去る会社―実例に学ぶ分析枠組み編
経営分析を始めるとき、まず持つべき目的意識とは?
規模が効くか効かないか
規模が効く業種と効かない業種
第4章 生き残る会社の数字のつくり方―ケーススタディーで分析訓練編
会社の事業モデルを自分なりに試算してみる
試算をベースに自分でPL/BSをつくってみる
相場観を身につける