内容
成長するために
成長するために、まず準備しなければならないのは、「あったらいいなというもの」ではなく「なくてはならないもの」である。
利益をもっとも上げやすい分野、つまり、相手にとって明確な成果をもっとも上げやすい案件に100%特化し、「あったらいいな」程度のものはすべて除外したのだ。
小さな一歩をひたすら繰り返し、立ち止まらないようにする、それだけだ。
お金が先
お金(つまり売上)が十分じゃない、と感じているうちは、それ以外のことに焦点を当てられないのだ。
1にも2にも3にもお金で、生きがいや自由はそのあとの話。
経費支払いにきゅうきゅうとしているときに、ほかのことを考えている余裕はない。
ニッチ
たったひとつの問題をずばり解決することに絞り込み、市場の進化に適応できれば、前途洋々。
すべて、「ニッチを決めて」いたからこそできたことだ。
ニッチを絞り込んでいくほど、何をしているかが相手に「ピンとくる」から、
①自分に関係あるかどうか、
②知り合いに関係のある人がいるかどうかがすぐわかる。
次を比較してみよう。
「はじめまして、アーロンです。証券投資情報サービスの仕事をしています」
「はじめまして、アーロンです。公認会計士です。ロサンゼルスのメディア企業数社と仕事をしています。いずれも売上1000万ドル以上の企業ばかりです」
特化する(ターゲット、要望、メッセージにおいて)ことで自分を制限するのではなく、顧客に「理解」してもらいやすくなるのだ。
簡潔プレゼン
「〔現在、市場にあるプロダクト/サービス〕に満足していない〔ターゲット顧客〕に、〔新たなアイディア/プロダクトカテゴリー〕として当社のアイディア/プロダクトが、〔主な課題/ソリューションの特徴〕を提供します。〔競合他社プロダクト〕とは異なり、当社のアイディア/プロダクトは〔主な特徴の説明〕です」
はじめて話を聞く相手にとって、こちらが何の会社か、何を売っているのか、SaaS企業なのかサービス企業なのか、オークションサイト、モバイル、なんてことはどうだっていい。
関心があるのは、何をしてくれるのか、ということだけ。
リードジェネレーション
売上を3倍にする一番いい方法は、営業の人数を3倍にすることじゃなく(営業主導の企業がやっている従来の手法)、有望リードの数を増やすことだ。
フェラーリだって、ガソリンがなければ動かない。
リードジェネレーションは成長のためのガソリンなのだ。
リードには3種類ある
①「シード(種)」は、口コミ、ネットワーク、人脈などから獲得する多対多のリード。
ほかを紹介してくれたり、何年も継続利用してくれたりするような顧客満足を通じて増やしていく。
セールスフォース・ドットコム、グーグル、フェイスブック、スラックなども、「シード」を通じて最初のハイパー成長に弾みをつけてきた。
②「ネット(網)」は、1対多の各種マーケティングキャンペーン。
いま流行りの、コンテンツマーケティングやインバウンドマーケティングもそうだ。
③「スピア(若芽)」は、ターゲットを絞ったアウトバウンドマーケティング、あるいは事業開発キャンペーン。
人が関わるケースが多く、ターゲット名簿、電話、メールなど、コンタクトしてアポをとる手法ならなんでも活用する。
インバウンドマーケティング
手間はかかっても、ライブで人を集めることほど気分のいいものはない。
しかも相手は、互いに学び合い、直接つながることを望んでいる人たちなのだ。
1度のイベントで輝かしい成果、とまではいかないかもしれない。
とにかく続けることだ。
オフラインが理想だけど、ウェブセミナーやグーグルハングアウトなどを利用すれば、オンラインでも可能だ。
ほかの人のコンテンツを紹介してもいいけど、独自コンテンツもある程度は入れるように。
自分自身の考えを率直に伝えよう!
「ニッチを決める」方法がなかなか見つからない人にとって、なんとかして見つける最善の方法になりうる。
イベント開催はほかにもいい点がいろいろある。
●再利用可能なコンテンツができる
●オーディエンスが増える
●リードや売上につながる
●生身の人間と接することができる(ワオ!)
プロのアドバイス
1、まず、ライブイベントの日にちを決めてしまう。
2、知り合いにその日を告知する(イベントのタイトルや開催場所など、詳細が一切決まっていないうちにだ)。
3、あとで日にちを変更するのは構わない。
4、なにがあろうと、おじけづいて中止しない!参加予定者がゼロでも(そういうこともありうる)計画どおり最後までやりぬく。
5、そこから学ぶことが、結果(参加人数や、喚起した行動をとってくれた人数など)よりも重要。
6、何度でも繰り返す。
アウトバウンド部門がスムーズにいき、拡大すると、同社は第2弾として、さらに資金調達してマーケティングに投資した(ネット)。
マーケティングの効果は最初から理解していたし、インバウンドリードを増やしたいのもやまやまだったけど、より速く順調なスタートを切れるのはアウトバウンドだとわかっていたのだ。
マーケティングに投資する準備が整った頃には、より効果的なマーケティングがおこなえるようになっていた。
顧客プロフィールに、メッセージ、アイディアにしても、アウトバウンド活動で効果が証明済みのものに基づくことができた。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスは、無料奉仕でも、形ばかりのカスタマーサポートでもない。
営業と同じで、コストセンターじゃなく、売上拡大の原動力となるべきだ。
カスタマーサクセスに投資することで利益をあげる、あるいは損失を防ぐべきなのだ。
カスタマーサクセスに投資することで次のようになるはずだ。
●解約率が低くなる。
いまの顧客を維持することが一番確実な収益源
●売上がアップする。
新たに紹介してもらえるほか、別のプロダクト/サービスを試したり購入したりしてもらいやすくなる(アップセルやクロスセル)
●マーケティングの質が上がる。
具体的な事例(成功談)や、順調で満足している顧客の声などで、リードジェネレーションや営業における一切を改善できる
営業が優先事項。
でも、それは、うまくいけば長期的な関係となるとっかかりだ。
営業を機能させるには、高い顧客維持率、照会、ストーリー、導入事例といったカスタマーサクセスのリソースが必要になる。
営業部門やマーケティング部門に過剰投資し、カスタマーサクセスへの投資が不十分なケース。
前にも言ったように、カスタマーサクセスのほうが5倍は重要なのだ。
顧客データ
●契約状況
停滞気味、更新、アカウントキーといった顧客のデータ
●サポート状況
優先順位の低いチケットや電話してこなくなった顧客が多い
●請求/支払歴
請求書への支払遅れは、ひょっとすると不満があるためかもしれない
●プロダクトや特徴の使用状況
どの特徴が好まれ、誰が使用しているか
●マーケティング
ニュースレターの購読解除
●アンケート
キーパーソンからの批判
●支持者の交代
コンタクトのあった役員がいなくなり、CMO(最高マーケティング責任者)が別の人に
データがあれば、次の点で役に立つ
●まずい事態になる前に介入するしくみを開発できる
取引停止を告げられる前に顧客を維持するほうが当然簡単!
最初は勘が頼りでも、そのうちに、履歴データや自動制動/警報システムに基づいて判断できるようになる
●介入を標準化できる
どのカスタマーサクセスマネジャーも同じ最善介入策を活用できるようにする。
一貫性があることで、介入策それぞれの有効性や問題/ソリューションの種類をより正確に判断できる
解約率
一般的にSaaS企業は、
①顧客数ベースのチャーンレートが年15%以下、あるいは
②売上ベースのチャーンレートが0%かマイナスを目標としたいところだ。
ギルドが解約率を引き下げた3つの手法
①90日で使えるようにさせる
カスタマーサクセス部門が顧客とやりとりし始めるのは、顧客がプロダクトを購入して利用し始めるとき。
同部門では、プロダクトの使い方や一番いい採用方法を新規ユーザーに教えてさらにギルドを売り込み、ファンになってもらうようにしている。
最初の90日でうまく使いこなせるようになってもらうと、そうはならなかった場合とくらべて、その後の利用頻度が3倍高くなった。
②四半期ごとに見直す
この見直しは正規のもので、顧客が契約した内容をきちんと理解してもらえるよう支援する。
顧客と一緒に現場でおこなうのが理想的。
③予測ツールを活用する
ギルドが利用しているカスタマーサクセスの主要アプリはゲインサイトで、ほかにゼンデスク(トラブルチケットや機能リクエストの取り込み)、セールスフォース・ドットコム、オラーク(チャット)。
解約率が月3~4%ほどになる。
そんなに多くないと思うかもしれないが、解約率が月4%なら、1年で顧客の約48%を失う計算になる。
チーム構成
ギルドのカスタマーサクセス(以下CS)部門は、約10名(全社員50人でだ!)で以下3つをおこなっている。
●インサイドCS担当
顧客教育、利用状況モニター、アナリティクスをおこなう。
ユーザー70名につき担当者ひとり
●アウトサイドCS担当
契約の更新を担当し、それで評価される。
関連顧客セグメント内のユーザー30名につき担当者ひとり
●エグゼクティブCS担当
アップセルのほか、急成長中で規模の大きい顧客セグメントを主に担当
「やるべきことをまずきっちりやったうえで、営業開発担当者をスケールさせないと、うまくいかない」。
機能するしくみもないのに、営業開発担当者や営業担当者を大量に雇ってもムダになるだけ。
●コンタクトをとる具体的な相手
●伝えたい内容
●断られる理由すべて
●80%以上機能しているリードジェネレーションと営業ファネル
●営業システムやツールにすべてスムーズに流入
営業
営業担当者ではなく営業部長(もっと言えばCEO)が商談を進めているようでは、成長が遅れてしまうから。
それじゃあスケールはできない。
というわけで、営業部長を雇うのは、少数精鋭の営業チームをスケール・構築・確立する準備が整ってからの話。
つまり、成果を出している(CEOや営業部長以外の)営業担当者が少なくとも2名はいる、ということ。
再現可能タイプ
この段階の営業部長の仕事は、「物事があちこちで進行していても、その理由が必ずしもよくわかっていない」状態を、「物事が何度も繰り返し進行していて、その理由もちゃんとわかっている」状態にすることだ。
ことを起こす人でなければならない。
パワーポイントのプレゼンや「パイプライン」ダッシュボードばかりで取り繕っているようではダメ。
このタイプこそ、まさにめっけモノ。
成長準備が整っている初期段階のどの企業にも本当に必要なタイプだ。
問題は、大半がこの段階で苦戦すること。
営業部長の肩書きを手に入れたのは、すでにきちんと機能していたものを計画的にうまく拡大させたからであって、自分が計画したのではない場合がほとんどだからだ。
営業部長の採用
①どのくらいの規模の営業チームがいまの当社に必要だと思いますか?(正解不正解に関わらず、回答できなければ、パス)
②どのくらいの平均取引額を扱ってきましたか?(自社と同じくらいでなければ、パス。すらすら答えられなければ、パス)
③直接指揮されたチームの話を聞かせてください。どのようにまとめましたか?(チームをまとめた経緯を説明できなければ、パス)
④どんな営業支援ツールを使っていますか。うまくいっているものとそうでないものを挙げてください(営業支援ツールを理解していなければ、真の営業部長とは言えない)。
⑤あなたと一緒に当社の営業チームに加わってくれそうな人はいますか?(有力候補者なら数人は思い浮かぶはず)。名前は挙げなくて結構ですから、その人たちの経歴を聞かせてください。
⑥営業とクライアントサクセス/管理はどのように協力すべきですか?(これに対する回答で、真の顧客ライフサイクルの理解度がわかる)
⑦ライバルに取られた案件について聞かせてください。当社がライバルを抑えて案件を獲得するには、どんなことが重要になりますか?
⑧この市場におけるFUDにどのように対処しますか?(ライバル社としのぎを削れるかどうかを探り出す)
⑨セールスエンジニアやセールスサポートと協働していますか?その場合、予算が限られている段階でその人たちが果たすべき役割は何ですか?(どう回答するかで、初期段階のSaaSスタートアップ企業での役割を果たせるかどうか、準備が整えばスケールさせられるかどうかがわかる)
⑩当社に来ていただいたとして、4カ月後の売上はどのくらいになりそうですか?(自由に説明させる。正解はない。ただし不正解はいくらでもある)
やっぱり全部で 11の質問にしよう。
⑪現段階で、当社の営業部門とマーケティング部門はどのように協力し合うべきですか?一般論ではなく、具体論をお願いします(これに対する回答で、リードジェネレーションやリードファネルのしくみを理解しているかどうかがわかる)。
学ぶために最低でも営業がふたりは必要
①最初の担当者の営業成績が悪くても、その理由がさっぱりわからないから。
その担当者はあなた(CEO/創業者)のせいにしたり、プロダクト、会社、マーケティングのせいにしたりするかもしれない。
実際そうかもしれない。
でも、その人が適任じゃない場合もあるし、そのせいでうまくいっていないとしても、そうと気づけない。
②最初の担当者の営業成績が良くても、(僕たちの経験上は)その理由が依然としてわからないから。
プロダクトが優れているから売れているのか。
担当者の電話トークが上手いからなのか。
取引規模か。
将来本当に獲得したいタイプの顧客なのか。
それとも、この担当者が得意なのはある種の顧客だけで、それ以外の潜在顧客が後回しになっていないか。
とにかく、わからないままだ。
採用後うまくいくタイプに5つの指標があることを見つけた。
①教え甲斐(これが一番!)
②成功体験
③労働倫理
④好奇心
⑤知性
営業の離職
営業の高い離職率の裏には無数の原因があるはず。
なかでも一番多い理由は次の3つだ。
①リードジェネレーション――担当者に有望リードを渡すサポート体制が不十分。
②特化――会社自体が適切なやり方をまったく特化していないか、やり方が不十分。
③マネジメント――上層部(主にCEOと営業部長)が「現場」を把握していないか、考え方が古いか保守的。
僕たちのお気に入りはこれ。
「人は会社を辞めるのではない。上司のもとを去るのだ」
歩合制
新たに大がかりなこと(新プロダクト、新チーム、新市場)をする企業に対し、ポールは常々、歩合制はなるべく避けるようアドバイスしている。
きちんとした歩合制を導入できるようになるのは、営業手法をしっかり確立できてから。
そうなるまでには思ったよりずっと時間がかかるかもしれない。
それまでは、毎月一律で支払ったほうがいいし、特別手当も任意にしておいたほうがいい。
経験もデータも十分に揃ってから、現実的な(気まぐれではない)報酬体系をつくり、歩合制も取り入れればいい。
達成可能な売上や事業目標を(たとえ同業他社を参考にしたとしても)勝手に推測し、歩合制を早くから取り入れてしまうと、八方塞がりになってしまう。
次のいずれかになるからだ。
●非常にまれなケースだけど、営業が顧客をことごとく獲得してしまうので、CEOであるあなた(あるいは経営陣)が営業に「払いすぎる」ことを(もちろん、全員が事前に同意していたにもかかわらず)心配してノルマを上げる。すると歩合給が減るから、営業が不満を抱くようになる
●あるいは(新プロダクトや新会社の場合は、ほぼこうなる)、営業が目標をまったく達成できない。あとから思えば、非現実的で独断的な目標だったからだけど、この場合もやはり、営業は不満を抱く。家賃など、最低限必要な生活費のために、少なくともある程度の歩合給を必要としている人だと、経済的に行き詰まってしまうかもしれない(決していいことじゃない)
スケーリング
営業チームをスケールできるかどうかは、すべてをシステム化することにかかっている。
ひとつ後悔していることがある。
営業支援システムの管理担当者をもっと早く雇えばよかった。
社員が40~50名になった時点で雇うべきだったのだ。
優秀な営業管理担当者にどんなことができるのか、雇ってみるまで理解していなかった。
セールスフォースもコールシステムもアプリ一切も、まったく心配しなくて済んだ。
どのシステムもちゃんと機能しているのも、この担当者のおかげだ。
サービス
●サービス及び実装費として15~20%、1プロダクトにつき月99ドルの研修料金をさらに請求するのはおそらくムリ。
できたとしても利益にならないだろうから、意味がない
●ただし、売上が数万ドルに達したら即、15~20%のサービス料金請求を検討する。
おそらく支払ってもらえる
●数十万ドル規模に届きそうな取引には、追加サービスの提供およびその料金体系を考える。
喜んで支払ってくれるし、そもそも当然だと思っている
成長モード
本当のハイパー成長モードに入るのは、自社のネットワーク(初期採用者、市場の15%に相当)から抜け出して、「普通の人」(メインストリーム、市場の85%に相当)に購入してもらえるようになってからだ。
ハイパー成長段階でのメトリクス
●収益予約
アメリカの健康保険システムは加入者を「ライフ(命)」と呼ぶ。
収益でいえば、月々の契約「ライフ」数だ
●雇用目標
収益が1年で20倍、その翌年は5倍になるなか、雇用が難関のひとつになった。
雇用ファネルの目標に達しているだろうか
●顧客維持率
顧客満足をしっかり監視している理由は次のとおり。
顧客満足で紹介者が増える、解約率が低い、照会プログラムに参加してもらいやすい
僕が知りたいのは次の2点だけ。
①成長率
②バーンレート
この2点がわかれば、全体を把握できる。
関心があるのは、売上100万ドルを達成後、キャッシュ流失することなく、毎月少なくとも15%成長しているスタートアップ企業だ。
やたら野心的な目標を根拠もなく設定すれば、見事に空振りするだろう。
でも、すでにうまくいっているものにすべてを賭けて一か八かやってみることで、相当高い目標でも達成できることに驚くかもしれない。
社員100人程度のSaaS企業の人員構成
営業
営業なら、ARRが1000万ドルの時点で、40名ほど必要になるはず(翌年の成長率100%を維持するため)。
①営業部長1名、営業支援オペ担当部長1名、その下に少なくとも1名のアナリスト(これで3名)。
ARR2000万ドル計画を達成するために、営業担当者が約20名。
翌年の年度末までにさらに1000万ドル積んでいくから(それが与えられたノルマ)。
実際には、年度半ばに向かって人手がもっと必要になる。
それだけ多くの正味新契約/ARRを積んでいくからだ。
全部で25人分の人件費が必要。
②営業開発担当者(SDR)は少なくとも8名で、リードジェネレーション、アウトバウンド開拓、インバウンドリード対応を担当。
ケースバイケースだけど、1対3の比率を目安にするといい。
多くの企業は営業開発担当をマーケティング部門に置いている。
その場合は、マーケティング部門がリードジェネレーションのノルマ達成に責任を持つ。
③3~4名の営業課長で25名の営業担当者を管理(課長ひとりにつき営業担当8名の割合がうまくいく標準)。
④以上は、企業規模や内勤・外勤で区別していないけど、ARRが1000万ドルになる頃には、大型取引を担当する外勤営業が2、3名いたほうがいいだろう。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセス部門におそらく20名ほど必要になる。
①カスタマーサクセス担当者(CSM)ひとりあたりのARRが150万ドルとすると、翌年の目標を達成するには15名ほど必要になる。
あとで増員できるけど、とりあえず15名としておこう。
②全体を統括するCS部長1名、CSMを半数ずつ管理する課長2名、データ分析をサポートするアナリスト1名など(計4名)。
マーケティング
マーケティング部門は外部スタッフによって変わってくるけど、4~8名程度。
①マーケティング部長
②案件創出担当課長
③外部マーケティング(イベント開催など)
④コンテンツマーケティング
⑤プロダクトマーケティング
⑥マーケティング有望リード(MQL)を管理する、リードを絞り込む担当者(2、3名)
この段階でのサポートチームは、電話対応も含めて24時間無休としたい。
それには少なくとも5名、できれば6名欲しい。
さあ、これで約70名になった。
エンジニアはまだひとりもカウントしていない!
プロダクト
では次に、プロダクト部門とエンジニア部門を詳しく見ていこう。
プロダクト部門には少なくとも4名は必要になる。
これでもまだ少ないくらいだ。
①全体を統括するプロダクト部長1名
②プロダクトの分割、統合、発表などを管理する課長2~3名
開発実行/技術実行部隊には、24時間無休の対応だけでおそらく3~4名は必要になるはず。
3名よりは4名のほうがはるかにいい。
ポケベル対応は疲弊する。
実際には6~7名必要かもしれない。
エンジニア部門には、厳しいかもしれないけど、20名は欲しい。
内訳は、「基本ハードウエア」担当に2名、次世代のぶっ飛んだものを開発する若干名、不具合の解決やバックエンドその他に専念する数名のほか、フロントエンドチームと協力できる設計者もこの時点までに2名は欲しい。
最後に、QAエンジニアが少なくとも8名、それに管理者が1名必要。
レインフォレストQAなどを活用すれば人員を減らせるかもしれないけど、そうじゃなければ、1対2のカバー率を想定しておくのがベスト。
つまり、調子が出てきたら、コードを書くエンジニア20名に対し、QAエンジニアが少なくとも8名、チームをまとめる上司が1名必要ということ。
これで、ARRが1000万ドルあたりなら、プロダクト部門とエンジニア部門で約40名だ。
つまり、全部合わせて110名で、さらに、総務、庶務、経理などの人員が加わる。
結局100名を超えてしまったけど、ここから適宜削っていけばいい。
ただし、拡大計画を達成するには、その削った人員も必要になる。
上場企業の一般的モデル(営業とマーケティングに売上の約30%)とくらべると、営業、マーケティング、カスタマーサービスに多くの人員を割いていることに注目して欲しい。
この時点の上場企業は、スタートアップ企業とくらべると、成長速度も遅いし、ノルマも大きいし、カスタマーサービスにそれほど積極的に投資していないからだ。
つまり、ARR1000万ドル規模のSaaS企業であれば、人員の大部分が、プロダクトづくりではなく、営業、マーケティング、サポートに携わるわけだ。
無償版
純粋自動無償版(サイトを用意しておくだけで、自動的にお金が入ってくるしくみ)は、うまくいけばすばらしいビジョンだけど、まだやってみたことがないなら、成功するのは思っているよりはるかに難しい。
無償版だけで大きなイグジットを目指す?
ありえなくはないけど、まずムリだろう。
要するに、無償のものを提供すれば魔法のように売上がアップする、なんて夢みたいな話を信じてはいけない、ということ。
無償版は出発点にすぎない。
それを足がかりとして、価格帯を増やし、より高価格帯のパッケージをより規模の大きい企業に購入してもらえるよう、上を目指していく必要があるのだ。
契約規模
顧客単価を2倍、3倍にする方法を考えるには、次の問いも必要になる。
●売上を10倍にするには何が必要か
●最大取引をさらに10倍にするには何が必要か
●提供しているソリューションにいまの価格の10倍の価値を認めてくれるような顧客を探して取引してもらうにはどうすればいいか
軌道に乗り、労働時間を増やすことなく成長を倍にするには、もっと大きな取引をまとめるのが最善策のひとつとなる。
取引規模が大きいほうが、
①利益がはるかに大きい、
②手間が少ない、
③顧客のさらなる成功を支援できる。
売り込んでいる相手が「理想の顧客像」に近ければ、取引額が1万ドルでも10万ドルでも、売り込む手間はそう変わらないし、時間だってそんなに余分にかかるわけじゃない。
つまり、手間と時間が2、3倍かかったとしても、10倍の売上が得られ、顧客も10倍の価値を手にできるなら、そうする甲斐があるってこと!
ニーズがさらに大きい大企業に売り込むなら、思い切って価格を上げるのも手だ。
取引規模が大きいほど、話をまとめるのに時間がかかる場合もあるけど、その甲斐はある。
小規模、中規模、大規模の顧客をうまく組み合わて顧客ベースを構築できる時代だ。
最重要取引先を1社に絞り、それ以外を補完的なものとして維持していくのがコツだ。
マーク・サスター(連続起業家、ベンチャーキャピタリスト)は顧客をウサギ、シカ、ゾウの3タイプに見立て、「スタートアップ企業が狙うべきなのはシカ」だとしている。
初期段階の企業はシカ(そこそこの規模の取引)に集中し、ウサギ(小さすぎ)やゾウ(巨大企業や超大口取引。営業やサービス提供が難しく、要求も厳しいため、なかなか成功しない)は避けるべきだと言う。
ビジネスプロセス上なんとかしたい問題を解決するものであれば、大企業に数十万ドル規模の契約をしてもらうのは(比較的)簡単だということ。
大企業ではそうした問題の解決が非常に高くつく。
リードジェネレーションとして、簡単に自由に使ってもらえる手頃な価格のものを用意しておくと、ちょっと使ってみてもらって、こちらのことを知ってもらえる。
無償または低価格のプロダクト、無料試用版、無料コンテンツなどが考えられる。
アーロンは最初の2年間ほど、キンドル版『Predictable Revenue』の価格を10ドルから99セントに下げて購入しやすくした。
本の売上は大きく減ったけど、読者数は3倍に増え、講演依頼や、数万、数十万ドル規模のコンサルティングビジネスにもつながった。
大企業相手
大企業相手の場合は、「売り込む」のではなく、「購入支援をおこなう」ことが営業の仕事になる。
つまり、相手企業のキーパーソン(こちらのプロダクトを必要としている人)が社内を説得できるようお手伝いする必要があるのだ。
大企業への営業サイクルを加速させる5つのコツがある。
①支持者を見つけ、その人が社内を説得できるよう支援する。
その企業で発言力のある人物を見つけられたら、その人に売り込むのではなく、その人が自分の部門を説得できるようなプランを練る。
そういう支持者や指導者、せめてガイドしてくれる人がいないと、行き詰まってしまう。
自分のネットワークにCEO/経営陣を紹介してくれそうな人がいないだろうか。
ネットワークが限られているなら、ターゲット企業の役員を調べて、紹介なしでアプローチしてみる。
伝える内容やパッケージは、個々のユーザーだけじゃなく、上層部にもアピールするものでなければならない。
最高情報担当責任者(CIO)が関心を持っていることは、エンジニアの関心とはかなり異なる。
②必要とし、早めに購入できそうな相手に絞り込む。
「営業サイクルの加速化!」をうたうヒントやコツは一切無視する。
相手企業の決定プロセスを加速させようなんて、交通渋滞で先を急ごうとするようなもの。
最初から渋滞を避ければいい。
見込客開拓は、早く購入してくれそうな相手に絞る。
それには次の③が関係してくる。
③「理想の顧客像」を明確にする。
購入してくれる企業と、見るだけの企業との違いは何か。
こちらのニッチマトリクスを常に最新にし、購入客と「ひやかし」との具体的な違いを見つける。
「うちのプロダクトはどこでも必要なはず」と思い込み、いろんな顧客に売り込んで労力を分散させてしまわないように。
④よくわかっていない相手は「ノー」と言う。
強く印象づけようとして書いたものは、論文だろうが、事業計画書だろうが、なんだこりゃ、と思われるのがおち。
何をしている会社なのか、どう役に立つのか、を理解してもらえないと、ノーと言われるのだ。
うちのプロダクトは相手に必要、とこちらにはわかっていたとしても、だ。
何の話をしているのか、理解してもらわなければならない。
一番いいのは、強く印象づけることではなく、「わかりやすくする」ことだ。
商談を新たに仕切り直し、伝える情報を整理しなおす必要があるかもしれない。
⑤口で説明するのではなく、実際に見せる。
あなたのことやあなたが言っていることをなぜ信じる必要があるのか。
口頭説明はなるべく少なくし、見せる証拠が多いほどいい。
大企業は特に、社会的証明をたくさん必要とする傾向がある。
成果をあげている同業他社の例を知りたいのだ。
リスクを冒したがらない、というのもあるけど、それだけじゃない。
いろんな企業からいい話ばかり聞かされているけど、その多くが「口ばっかり」だからだ。
法人営業
法人営業のプロセスにはさまざまなステップや段階があるが、最終的には、相手からの3つの問いに答えなければならない。
- なぜ買わなくちゃいけないのか。
- なぜおたくじゃないとダメなのか。
- なぜ今じゃないとダメなのか。
営業のここでの任務は、相手が成功を3つに分けて定義できるよう支援することになる。
①事業基準、
②設計/スケール基準、
③フィーチャーおよび機能基準。
さらにこのタイミングで、次の3レベルの相手に対する、情報、メトリクス、マーケティングを用意するのがベスト。
①企業レベル(経営陣、役員など)、
②部門レベル(本部長、部長、課長など)、
③ユーザーレベル(ユーザー集団とその直属上司など)。
スタートアップのほとんどは(この件に関しては大企業もそうだけど)、①か③を相手に主に営業しているから、こちらはこの3レベルすべての相手に常に営業すれば、勝敗率が変わってくる。
競争をすり抜け、技術検証に進む段階で、こちらの価値提案を検討してもらえるよう数値化しなければならない。
そうした「費用対効果診断書」を営業ツールにすることで、3つの利点につながる。
①プロダクトの性能、操作上の利便性、財務的価値を、相手の主要戦略構想に沿って調整し、位置づけられる。
②いまの運用状況における問題点や非効率的な部分を示すことで、いまの環境を把握しやすくなる。相手に必要なものがこちらにある、と示すだけでなく、値引き交渉にさらされにくくなる。
③このソリューションを実装すれば、最重要事業目標をまっさきに達成できることを保証しているので、評価判断の時間が確実に短縮される。
耐え忍ぶ時期
丸2年間必死で取り組んで最初の弾みをつけないとSaaSはうまくいかないのだ。
年8760時間、つまり1日24時間、365日、必死でやれるか。
溺れている人が息をしようとしてもがくように、必死で求めるなにかが必要なのだ。
「息をしないと死ぬ」、このくらいの(熱望、情熱、絶望あるいは恐怖の入り混じったものから来る)モチベーションがないと、習慣、ルーチン、快適ゾーンにどうしても陥ってしまう。
営業チームの再編成、辞めてもらったほうがいい幹部の解雇、企業イメージやパッケージの変更、「どんな問題でお困りですか?」を「当社は問題Xを解決します。御社は問題Xでお困りではありませんか?」に変えてターゲット市場に思い切って投資する、こうしたことを先延ばしにすることは、空気漏れしているタイヤでレースしているようなもの。
先延ばしにしているうちに、とうとう「地獄の年」に入ってしまい、ほかに選択肢もないからあとがなくなる。
変わらざるを得なくなるのだ。
具合の悪いことから目をそらす、知らないふりをする、弱みを隠す、厄介なことを避ける、そんなことをしても、スケールさせるのが難しくなるだけ。
やるべきことが多すぎて圧倒されているときは、次の3つを思い出してほしい。
③単刀直入に伝える。
社内でも顧客に対してもだ。
「簡潔でわかりやすく、行動しやすい」、(送り手だけでなく)受け取り手のためになる情報であれば、大量の情報のなかに埋もれることなく、相手に届きやすくなる。
はっきりと、率直に、役立つ情報を伝えること。
自分にもチームにも気恥ずかしくなるほど誠実であれば、弱みが原因でつまずく前に対処しやすくなる。
チーム内、顧客との信頼関係も深まる。
良心ほど安眠につながるものはない。
オーナーシップ
新しいアイディアを試したことで社員をとがめる(あるいは無視する)と、新しいことをやらなくなってしまう。
部下がもっと率先して、当事者意識を持って動いてくれればいいのに、と感じているのなら、問題は社員ではない。
組織運営のしくみを変えるべきなのだ。
部下が決めたことが「失敗」したり、うまくいかなかったりしても、責めてはいけない。
もう二度とリスクを冒そうとしなくなってしまうからだ。
責めるのではなく、失敗から学ぶべきことを教えてやる。
そうすれば、次はもっといい決断ができるはずだ。
次のチャンスを必ず与えよう。
上司であるあなたが部下の代わりに意思決定をすると、部下が自分で決定し、学ぶチャンスを潰していることになる。
その決定が結果的に痛みを伴うものであったとしても、失敗は新しいことをやってみる代償なのだから。
起業家のように考えて行動することを学んでいるときはなおさらだ。
意思決定を部下に任せて成長させれば、上層部での滞りを減らせる。
チャンス
必要なのは、 ①自分の関心事や情熱を探りながら、 ②価値とお金を生み出す方法も身につけていくことだ。
学んでいない人は退屈しやすい。
一見矛盾しているようだけど、幸せは不幸せな状態から生まれることが多い。
①日にちを決める(大がかりなものでないかぎり、だいたい 2、 3週間後)。
②その日にすることを決める。
③みんなに知らせる!
「自分で運命を決める」、仕事でも人生でも、なにかを達成するには、売り込み方の心得えが必要だ。
でないと、自分自身、自分のアイディア、自分の売り物を相手に納得してもらえない。
売り込みをしっかり効果的におこなうヒント
①習うより慣れよ。
売り込み上手になるには、実践あるのみ。
経験を積むにしたがって、相手の考えに意見すべきタイミングがすぐわかるようになる。
「御社はこうされたほうが/されないほうがいいです。その理由は……」
②感じよく粘る。
「メッセージを送ったけど返事がないから、興味がないにちがいない」と思っていないだろうか。
何度でもフォローアップすることが重要だ。
任意じゃない。不可欠だ。
そのメッセージを読んだとだれが言った?
見てもいないかもしれない。
ためらわずフォローし、そのまたフォローをする。ただし感じよくだ。
うっとうしがられるのは、本当にうっとうしいときだけ。
③ABT(Always Be Testing 常に試してみる)。
一番の習得法は、やってみてどうなるか確かめること。
机上の空論ではうまくいかない。
④ABL(Always Be Learning 常に学ぶ)。
10案件中ひとつも成約できないなら、一度冷静になって、変えるべき点を見つけよう。
⑤「ノー」を批判ではなく情報ととらえる。
納得してもらえない場合は、市場調査だと思えばいい。
適切なニーズのある適切な相手に対して、タイミングもメッセージも適切にターゲットしているだろうか。
改善するために変えるべき点は何か。
⑥数当てゲームのようなもの。
数打ちゃ当たる。
売り込む回数を増やせば、それだけ実践を積むことになり、失敗して学ぶ機会も増える。
⑦購入は相手のタイミング、こちらのタイミングじゃない。
死に物狂いになったりガツガツしたりする必要はない。
⑧「訊きにくいこと」ほど率直に尋ねる。
ちゃんと支払ってもらえるのか確認したいなら、ストレートに尋ねればいい。
「そちらはいま雨ですか?」と天気でも尋ねるような調子で「このための予算はどうやって捻出されるおつもりですか?」と訊けばいい。
うまい尋ね方についてアドバイスをもらい、ロールプレイングで練習するといい。
⑨ステップを踏む。
このすぐ次を読んで!
ためらわずフォローし、そのまたフォローをする。ただし感じよく。
売り込みステップ
●成約までに必要なステップのロードマップを理解する
●時間がかかったり不成立になったりしそうな危険信号や問題点がないか探りながら、フィットするかどうか確かめる
●取引の成立にとって相手側に必要な全ステップをきちんと伝える
●こちらのアイディア、プロダクト、プロジェクトを受け入れたらどうなるか、相手が具体的に思い浮かべられるようにする
●「その気」が本当にあるのか確認する(相手の本気度)
キャリアで成功したいなら、ずば抜けることだ。
人と違うところを見つけ、それを表現する(売り込む)方法を身につけたら、それをほかの人の問題解決に活かす。
面白かったポイント
めちゃくちゃ面白い。
SaaS企業必読の書です。
特に、SaaS企業の人員構成、規模別法人営業、KPIなどが納得感高い。
著者は元セールスフォースですが、私の実感とかなり近いので、やっていることは間違っていないと安心した。
タイトルがアレなんで、なかなか見つけるのが難しいと思うのでもったいない。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆