内容
「一点集中」を貫けば、濃密で強固な対人関係をはぐくみながら、いっそう成果をあげられるようになる。
マルチタスクを封印
タスクからタスクへと注意を向ける先を切り替える頻度の高さは、生産性の低さと相関関係があるというのだ。
さらに、マルチタスカーはシングルタスカーより、外部から邪魔が入ると影響を受けやすい(ほかの情報を受けいれてしまうと、もともと取り組んでいた作業の能率が落ちる)。
本来、「一度に複数の作業をしようとする」こと自体が「気が散っている」ことを意味する。
脳は一度に1つのことにしか集中できない。
人にはマルチタスクをこなすことなどできない。
『できる』という人がいるとしたら、それは単なる勘違いだ。
脳は勘違いするのが得意である。
一般に「マルチタスク」と考えられている行為は「タスク・スイッチング」にすぎない。
タスク・スイッチングをしていると、「フロー体験」をできる可能性がゼロになる。
マルチタスクは「モンキーマインド」を体現する。
「モンキーマインド」という言葉は仏教の教えに由来し、落ち着きがなく、せわしなく、気まぐれでむらがあり、混乱していて、自制のきかない精神状態を指す。
意識的な努力を必要としない活動は、メインの作業と同時に行うことができる。
よって、これはマルチタスクにはあたらない。
どちらかが自動的におこなえるものであれば、互いに邪魔をしない2つの活動を同時におこなっても害はない。
しかし、集中力を要する複数の作業に同時に取り組もうとすれば、高い代償を支払うことになる。
複雑な2つの作業を同時に行おうとすると、脳の中で同じ部位(前頭前野)の取り合いが生じる。
一点集中術
シングルタスクには「強いエネルギー」と「鋭い集中力」という特徴がともなう。
「この時刻までは、この作業に専念する」と決めた時刻がくるまで、集中すればいい。
私たちには過去を変えることも、未来を予言することも、他人を意のままに動かすこともできない。
ただ、いまという瞬間、シングルタスクに集中し、自分の人生、仕事、周囲で渦巻いている世界を、よりよい方向に向けることだけが可能なのだ。
期待値コントロール
いっぽうマルチタスクの誘惑に負けてしまうのは、たいてい、他者の期待や要求に応じねばならないという義務感に駆られているときだ。
すると本来、自分が優先したいと思っていたことを後回しにしてしまう。
シングルタスクを実践するには、自身の「習慣」を変えるだけでなく、ほかの人があなたに寄せる「期待」も変えていかなければならない。
頼み事にいつでも応じるより、ときには応じないほうが断然いい。
四六時中、人の頼み事にイエスと応じていたら、自分の仕事など決してできない。
「ノーと言うからといって、無能なわけじゃない!」
「多忙」であることと「自分は重要な人間である」という認識には、強い相関関係がある。
「誘惑」と距離を置けば置くほど、私たちの意志の力を保つことができる。
自分を見つめる
シンプルに考えたいのなら、1日のあいだに「ひとりでじっくりと考え事をする時間」を決める。
自分を見つめれば他者に共感する能力を高められるという。
「みずからの感情と経験に触れれば触れるほど、ほかの人の頭にどんな考えがよぎるのかを、より正確に、より豊かに想像できるようになる」
じっくりとひとりで考える時間をもつからこそ、日々の生活が有意義なものになる。
休息
休息を定期的にとるほうが、かえって成果をあげられる。
しっかりと休憩し、自分を「オフ」にする時間があるからこそ、「オン」のときに集中できるのだ。
「タイムシフト」とは、生産性の高い時間とリラックスする時間を交互にもつという手法だ。
予定を立てる
毎朝、仕事を始める前にほんの3~5分でかまわないから、今日しなければならない仕事の予定を立てよう。
どうしても取り組まなければならないのだが、そう考えるだけでうんざりし、なかなか着手する気になれない用事は、朝イチで片づけてしまおう。
最重要のタスクと、とりあえず後回しにできるものとを区別する。
私たちが注意を維持できる時間はもはや光速並みにまで短くなっている。
重要なタスクをいつまでも先延ばしにしていると、それは重荷となり、あなたの胸にいつまでものしかかる。
すると、ほかのタスクに集中するのがいっそう困難になる。
優先順位をつけることができない複数の要求にさらされると、脳は圧倒され、うまく機能しなくなる。
というのも、マルチタスクを試みると、情報処理能力を低下させるコルチゾール(別名ストレスホルモン)が分泌されるからだ。
「1×10×1」システム
類似タスクをまとめて片づける手法の一種。
「1分間前後で片づけられるタスク」にいますぐ着手する。
次に「10分以内で片づけられるタスク」は、1日のうちできるだけ早い時間帯に取り組むのがいい。
最後に「片づけるのに1時間か、それ以上かかるタスク」は、作業に取り組む時間を今後2、3日のスケジュールのどこかに予定して取り組もう。
信頼をつかむ
すぐれた管理能力を発揮するには、対人関係の能力が、知能や技術的熟練度の2倍重要。
「ただ聴く」だけで信頼される。
「私の話を親身になって聴いてくれるんですよ」
たった5分でもよそ見をせず、話に集中してくれるほうが、長時間、ほかの作業をしながら話を聞かれるよりもよほどいいのだ。
身をいれて話を聴けば、相手が発する言葉以外のさまざまなシグナルに気づき、深いコミュニケーションをとることができる。
会話に没頭すれば、相手が無意識のうちに送っている本音のメッセージに気づくからだ。
オフの時間のシングルタスク
職場以外の場所でフロー体験をすることで、仕事のときに注意力をコントロールする能力も上がる。
これはなんにでも応用できる大切な能力だ。
脳は映画から得た情報も、実際に体験したかのように処理する。
食事のあいだは食べることに意識を集中させれば満足度が高くなる。
家族との食事を楽しみたい人は、スマホをそばに置かないこと!
毎晩、家族と一緒に入浴する。
湯に浸かると、リラックスして、浴槽から出たくなくなる。
おまけに、そうした気分を邪魔するものはない。
その家族は風呂場でずいぶん深い話までする。
幸福
人はなにかに専心しているときのほうが充足感を覚える。
シングルタスクを実践していると、人はより深い幸福を感じられる。
2つの心のはたらきと幸福のあいだに強い相関関係があることを明らかにした。
その2つの心のはたらきとは、「人生の一瞬一瞬に生きる意味を見い出す能力」と「結果にとらわれて自滅する生き方を放棄する能力」である。
つねにあわただしく過ごしていると、感動したり喜んだりする能力が失われてしまう。
能率よく多数の用事をこなすには、一度に1つのことに集中するしか方法はない。
面白かったポイント
スマホの登場によって、人はシングルタスクを実践することがますます難しくなっています。
スマホが近くにあるだけで集中力が切れて、ついついチェックしてしまいます。
いろいろな情報にアクセスし、気軽にコミュニケーションでき、生産性が上がっているように見えて、何かを生産するために集中力が低下しているのかもしれません。
1日の始めに、タスクを洗い出し、優先順位を決め、高い順からこなしていく、という昔から言われていることが一番よいメソッドだということが分かります。
定期的に読み返して、シングルタスクが実践できているか確認することが大切です。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆
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