恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす

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『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』エイミー・C・エドモンドソン

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内容

相互依存体制

会社がグローバルで複雑になるにつれ、チームで行う仕事がどんどん増えてきている。

今日の従業員はレベルを問わず、協働する時間が20年前に比べて50%増加しているのだ。

もはや、優秀な人材を採用すればそれでいいという時代ではない。

優秀な人材が、力を合わせて仕事をする必要があるのだ。

 

今や大半の仕事において、人々はよく話し合い、次々と形を変える相互依存の体制を整えるよう求められる。

現代経済で私たちが価値を置くほぼすべてのものが、相互依存的な判断と行動、相互依存的であるがゆえに、効果的に協働しなければ成果の出ない判断と行動、から生まれている。

 

率直に話す風土

「自分の意見は職場で価値を持っている」の項目に対し、「非常にそう思う」と答えた従業員が一〇人中三人しかいなかった。

ギャラップの計算によると、この割合が一〇人中六人になれば、組織は離職率を二七パーセント、安全に関する事故を四〇パーセント減らし、生産性を一二パーセント高められるという。

以上のようなわけで、優秀な人材を雇うだけでは組織にとって十分ではない。

個人および集団の能力を引き出したいと思うなら、リーダーは心理的に安全な企業風土──従業員が不安を覚えることなくアイデアを提供し、情報を共有し、ミスを報告する風土──をつくらなければならない。

 

人々は思うがままを話す。

そして、率直な本物のコミュニケーションを促進し、問題とミスと改善の機会にスポットを当て、知識とアイデアの共有を増やしていく。

 

有能なチームには率直に話す風土があって、気軽にミスを報告したり話し合ったりできるのだとしたらどうだろう。

優秀なチームは、ミスの数が多いのではなく、報告する数が多いのだ。

 

私たちが情報や疑問を言わずにおく程度は度を超している。

それらの情報や疑問が重要かもしれない、ゆえに価値を付加する可能性があるかもしれないと思っているときでさえ、言おうとしない。

逆に、発言しすぎる人となると、めったに見かけない。

私は、基準を過度に下げてあらゆる種類の無駄な、あるいは不適切な発言を自由にさせるのは現実的ではないというより、むしろ、度を越して発言する人が期待するほどいないことを伝えたい。

 

心理的安全性

心理的安全性は、正直かつ率直に話すことを可能にし、ゆえに互いに尊敬しあう環境において確立される。

つまり、人々は職場で率直になれるし、ならなければならないと思うようになる。

実のところ、心理的安全性は野心的な目標を設定し、その目標に向かって協働するのに有益だ。

心理的安全性は、より率直に話し、好奇心旺盛で、協力し合い、結果として高い成果をあげる職場環境の土台なのである。

 

心理的安全性は才能を引き出し、価値を創造するためになくてはならないものだというのが、私の考えだ。

優秀な人材を雇うだけでは、もはや十分とは言えない。

職場は、人々が才能を活かすことができるし、積極的に活かそうと思う、そんな場でなければならないのだ。

ナレッジ(知識)が必要なあらゆる組織、とりわけ、多様な専門知識を統合する必要のある組織において、心理的安全性は成功の必須条件である。

 

グーグルのずば抜けて優秀で有能な社員でさえ、持てる力を確かに役立てるには心理的に安全な環境が必要であることを、彼らは突きとめた。

また、ほかにも四つの要因──明確な目標、頼れる仲間、個人的に意味のある仕事、その仕事に影響力があるという信念──が、チームのパフォーマンスに影響することを見出した。

しかしながら、ロゾフスキが述べたように、また、第1章の冒頭で引用したとおり、「心理的安全性の重要性は、群を抜いている。それは、他の四つの土台なのだ。」。

 

心理的安全性とは、対人関係の不安を減らすことだ。

勇気を出さなくても、質問したり間違いを認めたりできるようになることである。

 

リーダー

今日のリーダーが最高の仕事をするよう人々の意欲を高めるためには、人々の情熱をかき立て、コーチングし、フィードバックを与え、さらに、秀逸であることにやりがいを感じられるようにしなければならない。

 

VUCA世界で成功するためには、シニア・エグゼクティブが、あらゆるレベルおよび部署での業務に、思慮深く頻繁に関わる必要がある。

最前線に立って製品をつくったりサービスを提供したりする人々は、会社が収集しうる最重要の戦略データに精通している。

彼らは顧客が望むもの、競合他社の動き、最新のテクノロジーによってできることを知っているのだ。

 

「トップに立つ人間は最良の策を常に知っている。」と誰もが信じる状況を生み出しかねない。

ときには、ヒエラルキーの最上位の人は支配者でもあるべきだという絶対的な思い込みによって、致命的な結果が引き起こされる場合もある。

 

自分たちの意見が尊重されることを従業員が知っている職場には、本物のエンゲージメントと桁違いのパフォーマンスを生む新たな可能性がもたらされるのである。

創造的なプロセスは本質的に繰り返しの作業であり、面白い作品になるかどうかは、誠実で正直なフィードバックを得られるかどうかにかかっている。

 

大胆でクリエイティブな意見を述べたり率直に議論したりといったことをまずリーダーたちから始められるかどうかにかかっているということだった。

どうやら、彼らはそれを始めることができたらしい。

ある経営幹部が教授たちに次のように話している。

「私たちは[新しい会長を]恐れていないし、発言する内容を過度に気にしすぎる必要もない。会長と議論するのも、提案するのも、思いつくまま考えを話すのも、気兼ねなくできる」。

数年が経つうちに、提案したり浮かんだ考えをそのまま話したりするそのプロセスによって、新たな考え方、戦略、データ収集、選択肢、シナリオ分析などが生まれた。

 

優れた組織は、多様な従業員を絶えず惹きつけ、雇用し、つなぎとめるだろう。

そのような従業員こそが素晴らしいアイデアの源であることをリーダーが理解しているため、また、そういう組織には有能な求職者が引き寄せられ、仕事をすることになるためである。

優れた組織のリーダーは、ダイバーシティ実現のための採用を行えば十分というわけではないことも認めている。

従業員が仕事に関して本音を話せているかどうか──組織内のコミュニティを居心地がよいと心から思えているかどうか──も気にかける必要がある。

つまり、ダイバーシティを大切にするリーダーは心理的安全性も大切にしなければならない。

 

同僚が率直に意見を言いやすいと感じている一方で、その発言に価値が感じられないなら、あなたには支援する責任がある。

コーチングするのである。

たとえそういうタイプのフィードバックをするのが気が進まないとしても、同僚は何も知らないままでいるより自分にフィードバックが必要であることを知った方がいい。

 

ブレイントラスト

ピクサーのブレイントラストには、いくつかルールがある。

第一に、フィードバックする際には建設的に、そして個人ではなくプロジェクトについて意見を述べなければならない。

同様に、監督は批判に対して過敏になったり個人的なものとして受け取ったりせず、事実を告げる声に喜んで耳を傾ける姿勢を持つ必要がある。

 

第二に、トップダウンにしろその逆にしろ、相手に強制することはできない。

監督は作品について最終的な責任を負っており、提案された解決策を採用も却下もできる。

 

第三に、率直なフィードバックは「あら探しして恥をかかせること」ではなく、共感の観点から行わなければならない。

これについては、批評する側の監督たち自身も過去に何度もフィードバックを受けているため、その経験が活きてくる。

わけても監督の構想や夢に対しては、称賛と好意的な批評が惜しみなく与えられる。

 

キャットムルも述べているとおり、「ブレイントラストは心が広く、力になりたいと思っている。利己的な考えは持っていない」

 

効果的にフィードバックするグループにふさわしい人材の選び方について、次のようにアドバイスする。

曰く、その人材とは「より賢く考える力をもたらし、短時間に多くの解決策を提案できる人」でなければならないという。

 

プロジェクトがうまくいっていない場合にピクサーが監督をクビにする理由はただ一つだ。

すなわち、監督が明らかにチームから信頼されなくなっているか、ブレイントラスト会議で出される建設的な意見を受け容れ、その意見に基づいて行動するのを長期にわたって拒否している場合である。

 

社員それぞれの継続評価の統計データは、「ベースボール・カード」に記録される。

社員なら誰でも閲覧できるこのカードは、報酬、報奨、昇進、解雇について判断するためにマネージャーによって使われる。

社内の誰も、不透明性のなかに隠れることはできず、これはダリオも例外ではない。

全重役会議の動画をおさめる「透明性ライブラリー」は、方針や戦略がどのように議論されたかを従業員が知りたいと思った場合に、観ることができる。

 

議論に「勝とう」としてはいけない。

自分の間違いに気づくのは学んでいる証拠であり、それは正しくあることよりはるかに価値が高い。

重要なのは、些末なことにあまり時間をかけず、考えの不一致を解決するタイミングを見極めることだ。

 

会話のタイプ

会話の三タイプ(ディベート、議論、ティーチング)を区別しており、どのタイプが目前の問題にとって最適かを明確に判断するようマネジャーに助言している。

 

ダリオによれば、議論とは、組織においてさまざまなレベルの経験や権限を持つ人々が参加し、考えや可能性をオープンに探究するものである。

ここでは、質問し、意見を述べ、提案をすることが、参加者全員に求められる。

そして、すべての考えが歓迎され、じっくり検討される。

 

一方、ディベートは「ほぼ同等の人々」の間、ティーチングは「理解度がまちまちな人たち」の間で行われる。

フィアレスな組織では、コミュニケーションがおそらく三タイプすべてを併せ持っており、境界が流動的になりがちだが、反面、三タイプともが存在しているために、心理的に安全な環境での話し合い方について、有用な考え方とその構築の仕方がもたらされる。

 

「コミュニケーションが成功のカギである」こと、および、「耳を傾ける文化」が率直に発言する文化と同じくらい重要であることを繰り返し述べていた。

 

環境

圧倒的なレベルで率直に話し、エンゲージし、力を合わせ、リスクを取るという特徴を持つ環境を。

そしてそれらの特徴すべてがあればこそ、会社はありとあらゆる方面で成功を収めてきた。

 

鉱山を閉鎖したのち、アングロ・アメリカンの経営幹部たちは一度に三〇〇〇~四〇〇〇人の作業員を競技場に集めて、安全性の重要性について話をした。

作業員の使う言語がまちまちで識字率も低かったため、同社は、映像を使って安全性を説明したり、劇団を雇って作業員と監督者の間での安全性についての対話を演じてもらったりした。

その後、作業員は四〇~五〇人のグループに分けられ、安全に関する懸念や意見を率直に述べるよう求められた。

当然ながら、作業員はなかなか口をひらこうとしなかった。

なにしろ過去ずっと、発言権がなかったのだから。

 

事故が起きるのは(システムの複雑さではなく)能力不足のせいだという思い込みを、なんとかして皆に変えてもらいたいと思った。

ものの見方をそのように変えないかぎり、目にした問題やミスやリスクについて安心して発言することは不可能だった。

 

心理的安全性を経験する最良の道は、すでにそれを手に入れているかのように行動することかもしれない。

どうなるか見守ってみよう!

おそらくあなたは周囲の人々のために、より安全でエネルギーみなぎる環境も作り出す。

ちょっとしたリーダーシップを発揮するのである。

 

新たな組み合わせを発見するには、チームが有する知識の多様性が重要となる。

様々な知識を有するメンバーが協働すると、今まで見聞きしたことのない発想や意見に触れられるため、新しい組み合わせが見つけやすい。

 

面白かったポイント

VUCAの世界、優れた組織を作るために必要な風土について学びが多い本でした。

率直に意見を述べる風土、それをしっかり聴くこと、足りないところはコーチングすること、リーダーに求められる能力です。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

目次

第1部 心理的安全性のパワー
第1章 土台
第2章 研究の軌跡
第2部 職場の心理的安全性
第3章 回避できる失敗
第4章 危険な沈黙
第5章 フィアレスな職場
第6章 無事に
第3部 フィアレスな組織をつくる
第7章 実現させる
第8章 次に何が起きるのか

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